ご注意下さい!


この話は、BLかつ性的な表現をまぁるく含んでおります。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、 閲覧をお控え下さい。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、責任を負いかねます。)

※今回はクロ赤です。


    それでもOK!な方  →
コチラをどうぞ。



























































    菊花盛祭 ~後夜祭~







「赤葦…悪いっ!」
「え…わぁっ!?」


パタン…と、リビングの扉が閉まり、程なくカチャリ…と、玄関が閉まる音。
顔を覆ったまま項垂れていた赤葦は、その音が聞こえなくなってから、
はぁぁぁぁ~~~と、大きくため息をついた。

「月島君達…呆れ果ててましたよね。」

いつまで経っても『新婚(自称)♪』な両親なんて…恥ずかしくてたまりません。
しかも、俺以上に『黒尾さんバカ』…お婿さん好き過ぎなのも腹立たしいし、
酔ってもないくせに、ド直球でフツーに↓方向のネタを平然と放つ…
もうホントに、勘弁して欲しいです!ヤりたい放題にも程がありますよ。

それに、月島君達に幻滅されるならまだしも、「あ~やっぱり。」って納得顔…
俺が遺伝子レベルで『猥褻物』認定されちゃったっぽくて…泣きそうです。

何が一番嫌かって、『ステキ体位』を実演させたことですよ!
それ…俺も高校時代に、二人に似たようなコトをヤらせた覚えがありますから。
親子で同じネタをヤっちゃうなんて、弁解の余地がありません。

「『居るだけでエロい赤葦京治』が、『自然法則』かのように思われて…
   …って、黒尾さん、聞いてます?」


聞いては…いる。
だが、全く俺の頭の中には、入ってきていなかった。
眼下に見え隠れする光景に、俺の思考は完全にオーバーヒートしていたからだ。

赤葦は今…俺の上に跨っている。
伝統的な『浴衣の時の振る舞い方』について、父から『実習』を受けた…
その時からずっと、俺の上に居座ったままなのだ。

話の流れから、この『体位』を解除する隙は、全くなかった。
顔を手で覆ったことで浴衣の裾から手が離れ、『孔雀の舞』ではなくなったが、
未だに『お馬さん』スタイルを継続中であることには、変わりない。


大きく広げた脚に、一度持ち上げて少し着崩れた浴衣が、緩く掛かる。
『孔雀の舞』ほど露わでないのに、艶やかな菊花の隙間から、
日に焼けることのない、白く滑らかな内腿が…眼下にチラつくのだ。

   (菊の異称は…隠逸花。)

たとえ暗闇の中でも、その清らかな香りで、そこに菊があるとわかってしまう…

闇夜に咲く菊花をあしらった浴衣。そこから見え隠れする、『ホンモノ』の花。
ちゃんと見えてないからこそ、吸い付くようなあの手触りを思い出し、
隠された花の美しさを見たい…この手で触れたいと、渇望してしまうのだろう。

   (これが、境界線上のチラリズム…)


まだ夜が明けやらぬ海で、赤葦が滔々と力説していたことが、ようやく解った。
解った瞬間…ドクリと全身が脈打ち、熱が駆け巡った。

このスタイル、このアングルからの、全裸の赤葦の姿…見慣れているのに。
何も着ていない時よりも、浴衣の隙間からしか肌が見えない今の方が、
ずっと煽情的で…まるで菊花のように、辺りに色香を振り撒いているのだ。

   (これは…マズい!)


「黒尾さん、聞いてます…ぁっ!?」

菊花の下に隠された茎が、密着した内腿に触れたのだろう。
熱を感知した赤葦は、忙しく動かし続けていた口を止めて頬を赤らめ…
濃紺の浴衣から覗く白い鎖骨まで、その赤みがじわじわと降りてきた。

   (着てる方が…断然エロいっ!)


「赤葦…悪いっ!」
「え…わぁっ!?」

俺は慌てて上体を起こすと、赤葦の襟元を掴み…バッと浴衣を開いた。
突然の行為に驚き、俺の上から退こうと浮かせた腰を、ガッチリ抱きながら、
ひらひら舞う帯の結び目に手をかけ、一気に解いて…浴衣を剥ぎ取った。

「ーーーっっっ!!?」

いきなり乱暴にひん剥かれた赤葦は、声を失って全身を朱に染めたが、
俺の方はむしろ、見慣れた『露わな姿』に安堵…深呼吸し、熱を抑えた。

   境界線上のチラリズム…恐るべし。
   赤葦家のエロ遺伝子…参りました。


不安よりも驚愕、驚きよりも期待の眼差しで、黙って俺を見つめる赤葦。
やっぱり、なにも着てなくてもエロい…という『自然法則』を再発見した俺は、
場を支配しかけた濃密な香りを誤魔化すように、明るい声で笑いかけた。


「脱いだついでに…風呂、入るか!」





********************





リビングで浴衣を脱ぎ(脱がせ)、金魚掬いの水槽みたいな柄の手拭いで、
やや『起動開始』し始めていた部分を、水中に隠すようにしながら、
赤葦家の浴室へ向かう…当然ながら、二人一緒に、だ。

風呂場の折れ戸を押し開けると、ふわりと林檎のような香りが漏れてきた。


「お、いい匂いだな~」
「ほわっとしますね~」

バスタブの蓋を取ると、甘酸っぱく爽やかな香りが、浴室中を満たした。
湯船に浮かんだ白いパック(お茶?出汁パック?)を、両手でそっと掬い、
赤葦が中身を確認…どうやら、乾燥させた白い花のようだ。

「これは…『カモミール』です。」
「小さな白い…ハーブだったか?」


俺でも知ってるアロマ…赤葦母は、この香りが好きなんだろうか。
棚に並べられた、シャンプー、コンディショナー、ボディソープのボトルにも、
真ん中が黄色い丸の周りに、小さな白い花弁をつけた花の絵が描かれている。




なるほど…そういうことですか。
赤葦は一人で納得した様子で、花のパックを静かに湯船に戻した。

「今日は『重陽』…菊の節句です。」
「カモミールは…キク科の花だな。」


菊の花は、中心から花びらが放射状に並んだように見える形をしている。
皇室の菊花紋章や、伊勢神宮等の天皇を祀る神社にも、菊花紋が使われている。




キク科の花の特徴は、頭状花序…一つの花に見えて、小さな花の集合体である。
真ん中に集まっている丸い部分が筒状花で、周りの放射状の部分が舌状花だ。
筒状花ばかりで構成されているのがアザミや紅花で、タンポポは舌状花のみ…
両方を持つのが、カモミールやヒマワリ等である。

『花の絵を描け』と言えば、大抵の人がこのキク科の形を描くだろうが、
世界中で2万種以上、地球上のどこにでもキク科の花が存在する…
最も進化し、最も分化し、最も繁栄した花の種類である。
この花らしい花の形をしていれば、ほぼキク科と思って間違いない。

「『菊』は草冠に『米+勹(つつむ)』…『まるく包む』花って意味だよな。」
「手でまるく包んで『掬う』…麦をまるく包むように『麹』は繁殖します。」

米を両手で掬い取る時の、揃った指のように、花が一点に集まって咲くため、
キク科の花を表す『菊』という漢字ができたそうだ。


「菊の節句に、カモミールの湯…母の考えそうなことです。」
「伝統を大切にする赤葦家…さすがとしか言えねぇよな~?」

大きな風呂用椅子と、一回り小さな椅子を、腕が当たらないようずらして並べ、
(何故か椅子が2つ…我が家もこの伝統を受け継いでいる。)
同時にわしゃわしゃと髪を洗いながら、声を響かせて話を続ける。


「重陽って、『節句シリーズ』の中じゃあ…あまりメジャーじゃないよな。」
「陽数の極である9が重なる日…かつては最も重要な節句だったようです。」

世界は『陰』と『陽』のバランスで成り立っているとする、陰陽五行説。
一番大きな陽数が重なる重陽は、陽の気が強すぎ、負担が大きな節句と言われ、
古くは不吉なものと考えられ…それを祓う行事が行われていたそうだ。

「平安時代には、菊の花を日本酒に浸した『菊酒』が飲まれていたんです。」
「『菊酒』は神仙の飲物で、長寿に効果があるって、聞いたことがあるな。」

菊酒で長寿を祝う習慣が、のちに敬老の日へと受け継がれているのだろう。
花札の『菊と酒盃』が、まさに菊酒…『月』の札と合わせて『月見酒』だ。


「カモミールって、林檎みたいな香りがしますよね?」

語源はギリシャ語で『大地の林檎』という意味だそうですよ。
そして、この『林檎』繋がりで、同じキク科の花が…ニガヨモギです。

「ニガヨモギは確か、『ワームウッド』だったよな?」

エデンの園で、アダムとイブに林檎を教えたのが…蛇。
その蛇が楽園を追放される際に這った跡から生えたのが、ニガヨモギだった。
ニガヨモギから作る酒が、かつて『酒屋談義』でも味わった『アブサン』…
一時はその強い幻覚作用から、製造禁止となった、『幻の存在』だ。


『酒屋談義』を続れば続けるほど、色んなことがお互いに繋がり合い、
今まで知らなかった世界が、どんどん広がっていく…その快感が、堪らない。

順番にシャワーで髪の泡を洗い流すと、赤葦は手すりに掛けていた手拭いを、
ふわりと大きく広げて、菊の湯船に浮かべた。
その様子はまるで、湯船いっぱいに黒と赤の金魚が泳ぎ回っているようだ。


「重陽では、『菊の着綿(きせわた)』という習慣もあったとか。」

重陽の晩、菊花に真綿を被せ、明くる早朝に朝露のついた綿を菊から外し…
その綿で身体を拭うと、菊の薬効で無病になると言われていたそうだ。

現代風にアレンジすると…こんなカンジでしょうか。
赤葦はそう言うと、湯船の金魚をまるく包んで掬い取り、黒尾の肩に乗せた。
そして、健康長寿を願って…俺がお背中お流ししますね、と囁いた。


*****


「手拭いだと、ボディソープはほとんど泡立たないみてぇだな。」

『お背中お流しします』と言っていたのに、赤葦は黒尾の腿上に跨って座り、
菊香の立つボディソープを、ぬるぬると滑らせ、黒尾の全身をマッサージした。
泡立たない液体ソープは、ただの潤滑剤…独特の肌触りに、カラダが跳ねる。

「これは、『陽を抑える』どころか…『陽』の気がもっと昂っちまうな。」
「んんっ、それこそ『健康の秘訣』…『陽』を、出し切る『秘策』です。」

手拭いはいつの間にか足元へ落ち、お互いに掌で菊露を掬い、撫で回していた。
カラダでカラダを洗うように、ピッタリ密着しながら滑り心地を愉しみ、
露を滴らせながら、互いの『舌状花』を絡ませ合う。


ローションプレイの『薬効』だろうか…その滑りの良い感触に煽られて、
普段は止まる嬌声が、するすると口から溢れ出てくる。

「ん…あっ、ふ…んんんっ」
「声…凄っぇ、響く…なっ」

そう言えば、今年は節分や桃の節句等の『季節の行事』を、浴場で語り合った。
今年最後の『菊の節句』も、こうして浴場で欲情とは…伝統バンザイだ。


「なぁ、片手…こっちに。」
「あっ、な、何…ですか?」

赤葦の片手に、自分の片手の指先だけを絡めて組み、丸い『筒状花』を作る。
その手で、カラダの間で熱を放つ2本の『陽』茎を、すっぽり重ねて包み込む。

「これぞまさに…『重陽』だろ?」
「なっ!!?お…お見事、ですっ」

本当は『お馬鹿さんっ!』と言いかけたのに、赤葦は艶やかに微笑み、
黒尾のしょーもないネタに絶句することもなく、美しく昇華させた。
その咄嗟の機転と深い優しさが…堪らなく愛おしい。


片手で陽を重ねながら、赤葦を抱いていたもう片方の手を、腰から下に滑らせ…
隠された『菊花』にそっと触れ、開花を促していく。

   浴場を震わせる艶声。
   仄かに立ち昇る色香。
   菊花よりも美しい姿。

こんなに美しく、こんなに香り高い菊花など、この世に存在しないだろう。
少なくとも、俺にとっては…『陽』に絶大な効果のある花だ。
高技能、高器量、そして…高濃艶。二人で一緒に、アレもコレも味わい尽くす…
節句ごとに『ソープランドごっこ』をしてくれるパートナーなんて、
古今東西どのスパを探したとしても、見つからない…『幻の存在』だろう。


「お前の方がずっと…『スパダリ』な存在だよな?」
「これぞまさに、『スパ・ダーリン』…でしょう?」





- 完 -





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※『スパダリ』はソープランド店『スパ・ダーリン』の略ではありません。
    →『大失策!研磨先生①

※『ステキ体位』を実演 →『大胆不適
※境界線上のチラリズム →『夜想愛夢~想望之海*』
※『アブサン』について →『予定調和
※浴場で『季節の行事』 →『翌日来春*』『上司絶句*』



2017/09/09  

 

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