ご注意下さい!

この話は、BLかつ性的な表現を含みます。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、閲覧をお控え下さい。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)

鬼も呆れ返る程、脳内が『春♪』な話です。
何のひねりもない、どストレートの『↓方向』です。


   
それでもOK!な方  →コチラをどうぞ。


























































    翌日来春







「今日は節分…ってことは、明日から春だな。」
「ご近所でも、梅や水仙が…春は間近ですね。」

まだまだ寒い日は続くが、春は確実に近づいてきている。
プロ野球もキャンプ入りして、球春も近い…心踊る季節になってきた。

「この時期は、様々なイベントも目白押しですよね。」
バレンタインにホワイトデー、新年度へ向けて人生大変革の季節でも…
と言いかけて、赤葦は「しまった!」という顔をし、黒尾も苦笑いした。

「新年度の前に避けて通れないのが、年度末だよな。」
建築関係や再開発事業等、『お役所』に書類を提出し、仕事を納める職種では、
『年度末』とは即ち長期間の『修羅場』を意味する。
年度内納品の嵐…業種によっては、年明けからの3ヶ月で、一年分を稼ぐのだ。
稼ぐつもりはなくても、一年分の仕事が集中してしまう、地獄の季節である。

ただでさえ過酷なのに、トドメを刺すのが、もう一つの『年中行事』である。

「何でわざわざこの時期に、『確定申告』をさせるんだろうな…」
「まさに『お役所仕事』な…非人道的なスケジュールですよね。」

会社であれば、定款で決算期を自由に定められるため、繁忙期を回避可能だが、
個人事業主にはそういった制度は存在しない…
たとえ地獄からでも、3月半ばには所得税の申告をしなければいけないのだ。
頑張って申告して、還付があるならまだいいが、払う場合は…泣きたくなる。

あぁ…『本日の業務』を終え、リラックスタイムのはずの風呂場で、
今一番、逃げてしまいたいネタ…嫌なことを思い出してしまった。
黒尾と赤葦は「はぁ~~~~。」とため息をつき、ズルズルと湯船に浸かった。


自らの話題選択ミスを挽回すべく、赤葦は気分を切り替え、明るい声を出した。

「仕事は明日の立春から…『春』になったら修羅場モードにしましょう。」
今日までは『冬』ですから…二人で『節分』を楽しみませんか?

赤葦はそう言うと、小さめのタオルをクルクルと巻き、大きく口を開けた。
すっかり全国区になった、大阪発祥の『節分』伝統行事…のようだが、
濡れたタオルから零れ落ちる水滴と、上気した頬、そして艶に潤んだ瞳が、
違う『春』の到来を、如実に予感させていた。

「そう言えば、恵方巻は…大阪の『花街』が発祥の伝統なんだったよな?」
この時期漬かるお新香入りの太巻を、切らずにそのまま、遊女に食べさせる…
という、花街の『遊び』が、恵方巻の由来だそうだ。

大きく口を開け、棒状のモノを咥える…
その食べ方に、誰もが一度は『そういう妄想』をしたであろうが、
それはただのエロオヤジ発想ではなく、実に伝統的な…エロオヤジ発祥なのだ。
いやはや、安心…ではなく、納得だ。

「恵方巻の具は『七福神』を表す七種類…」
「蛇のように鬼を『丸呑み』して厄払い…」
節分行事にちなんで、さぞや深~~~い考察ポイントがあると思いきや、
こちらが強引に『方向転換』するまでもなく、『↓方向』が正解だったのだ。
もうこれは、伝統的に…どうしようもないじゃないか。

「『そういう伝統だから』…そう言われると、深く考えなくなります。」
「『昔からやってるから』…その理由を考える思考を、停止させるな。」
きっとそうやって言いくるめて、花街の旦那衆は『恵方巻』を愉しんだのだ。
誰かの『口から出まかせ』が、↓方向の思惑で広まっただけ…かもしれない。


湯船から半身を浮かせた赤葦は、これ見よがしにタオルに舌を這わせると、
黒尾の手を引きながら、ご参考までに…と言い添えた。
「今年の『恵方』は壬(みずのえ)…北北西です。」
我が家でいうと、丁度ここ…『浴室』にあたります。

我が家の恵方…浴室の壁に背を着け、バスタブの縁に腰を預けて座った赤葦。
黒尾は湯船に浸かったまま赤葦の腰を抱き、黙って『恵方巻』を口に含んだ。

ゆっくりと『願い』を込めながら、少しずつ。
まるで咀嚼するかのように、唇で優しく食んでいく。
奥まで咥え込み、唇と舌で食み続けているはずなのに、
減るどころか増える一方…コレのように、我が家も『福』多からんことを。


食む動きに合わせて、ちゃぷん、ちゃぷん…と、テンポ良く湯が跳ねる。
時折、ビクリと跳ねる赤葦の動きで、湯のリズムにも強弱の波が現れる。
くぐもった声を出さないようにと、あえて開いた喉と口から、
湯が跳ねるのと同じリズムで、熱い吐息がこだまする。

    (黒尾さんが、俺の、モノを…)

愛しい人が、懸命に口を開き、独特の表情で『自身』を頬張る姿は、
自分に『ご奉仕』して貰っているという、ある種の征服欲と独占欲を満たし、
得も言われぬ快感と悦びを与えてくれる…特別な『姿』である。
何かと言い訳をして、この行為を模した表情をさせたいと願ってしまう、
世の男性の気持ちが…本当に良く分かる。

    (黒尾さんは、俺の、モノ…)

『特別』なのは、それだけではない。
乳白色の水面から、動きに合わせて見え隠れする…黒尾さんのモノ。
動きと質量が大きくなったことで、それが徐々に露わになってくる。

    (黒尾さんのモノが、俺を…)

愛しい人に『内』から満たされる歓びも、自分は知っているのだ。
男としての征服欲と、誰かに独占される庇護欲の、両方を味わえるなんて…
この『特別な立場』だけに許された、至上の悦楽かもしれない。

    (まさに、『福は内、鬼も内』…贅沢三昧です。)


「あっ、黒尾、さん、そろそろ…」
俺も『節分』を味わいたいんで…『交代』しませんか?

赤葦は立ち上がり、今度は黒尾を『恵方』に座らせようとした。
だが、湯船から半身を上げた黒尾は、そのまま赤葦を腕に抱き取ると、
クルリと赤葦を反転させ、赤葦に『恵方』を…浴室の壁側を向かせた。

壁に手を付ける赤葦の背後から覆い被さり、黒尾は耳元に囁いた。

「お前も『恵方』を向いて…な?」
こっちの『口』から、『福』を内に…招き入れてくれないか?

何という…エロオヤジ発言。
たが、恵方巻の発祥を思えば、これは間違ってない…のかもしれない。
恐らく、昔から夥しい数の人々が、同じことを考え、同じことを言いながら、
芽吹く『春』を体感してきたのではないだろうか。


「黙ったまま…食べられそうか?」
メインの『太巻』の前に、『細巻』を与えながら、黒尾は赤葦に問いかける。

「『早食い』でなければ…多分。」
行きつ戻りつ、なかなか訪れない春のように…じっくり味わいますね。

赤葦は小さな声で「いただきます。」と呟くと、
声を漏らさぬようタオルを口に咥え、ゆっくりと『福』を招いた。


我が家の浴室に、一足早く春が来た。



- 完 -




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※黒尾・赤葦宅平面図 ↓ (クリックで拡大)

3階黒尾・赤葦宅

2017/02/02

 

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