回帰共走







「あ…熱いね~」
「熱苦しい…っ」


ほんの半月前には、梅雨明け直後の大雨でジメジメ…そして酷暑に突入した。
急激かつ猛烈な暑さ…いや、熱さに、W杯関連の寝不足も祟ってバテ気味だ。
月島と山口は、四肢を大きく広げてフローリングにゴロゴロ…鋭意放熱中だが、
その努力は完全に『焼け石に水』状態…すぐ傍で『焼け石』が発熱中だった。

「熱さで参ってしまいます…ね♪」
「これだけくっ付いてれば…な♪」


先日から、黒尾と赤葦の二人が…熱い。
まるで新婚回帰と言わんばかりの、イきすぎた熱々ぶり…迷惑甚だしい。
本心では、二人に対するクレームを大絶叫し、鬱憤を晴らしたいのだが、
そのあまりに幸せそうな熱愛に、月島と山口は怒る気力すら溶けてしまった。

今では逆に、冷房の効いた部屋で『おでん』を食べる贅沢…みたいなカンジで、
この機に限界まで熱さを満喫し、ドン引きするカタチで涼を得るのも良し、
いっそのこと御相伴に与って、こっちも発熱発汗して熱さを忘れるも良し…

明らかに判断力が蒸発していたとしか思えないが、床に寝転がった月島達は、
応接ソファでベッタリと密着する黒尾達に、さらなる発火を促してしまった。


「えーっと、我らがHQ!!のアプリゲームに…ハマってるんでしたっけ?」
「それ、面白いんですか~?W杯以上に寝不足みたいですけど…」

プロ野球中継とW杯や、W杯の試合と試合の間、そしてウィンブルドン…
怒涛のスポーツ観戦マラソンのハーフタイム中…ちょっとした暇つぶしとして、
黒尾と赤葦は、研磨先生の紹介で、スマホゲームデビューを果たしていた。

「正直な所…3DSでヤったやつより、断然コッチのが出来がイイ。」らしく、
HQ!!界最強のゲーマーがそう断言するなら…と、恐る恐るヤり始めたのだ。


まずはお試し3日間。原則として課金禁止と、夫婦間でお約束の書面を交わし、
二人で同時にゲームスタート…直後に赤葦がズッポリ堕ちてしまった。




最初に自分が入部する高校を選択…期待に震える指で『音駒』をポチリすると、
一番最初のチームメイトの『黒尾』が、ホーム画面で常時待機…赤葦感涙。
ゲームの内容も進行も完全無視し、ホームから一歩も動こうとしなかった。

「だって…仕方ないでしょう?俺は黒尾さんの傍を離れられませんから。」
「そういうことなら…俺のスマホで、二人で一緒にヤるしかねぇよな〜!」

「このゲームで、黒尾さんと俺が同じチームになれる…遂に夢が叶います!」
「あぁ、そうだな。二人で一緒に、全国制覇を目指して…頑張っていこう!」

こうして二人は、これでもか!というぐらい密着しながら、小さな画面を凝視…
「さっきは俺がガシャ回したから、今度はお前がポチリ…な?」とか言いつつ、
実に仲睦まじく、ラブラブHQ!!ゲームを開始した…かのように見えた。


ゲーム開始時に引けるガシャで、最初の10人が仲間になり、
チュートリアルで貰えたコインで、更に2人の結構レアなガチャが引け、
アプリ開始から7日間無料で引けるスタートダッシュガチャで、もう1人…
これらを回し、様々な学校のメンツでドリームチーム結成を目指し始めた。

だが、最初の3日間で、どれだけガシャを回しても…『赤葦』が出なかった。
その間にも、ゲーム内では『黒尾』と『誰かさん』が一緒に練習を続け、
『絆レベル』とかいう仲良し度?が、ぐんぐん上昇…赤葦の機嫌は急降下した。


「どうして『木葉さん』とばっかり…仲良しになってるんですかっ!?」
「せめて梟谷ユニを着た奴をって…『木葉』しか持ってねぇだけだろ!」

「たとえゲームでも、俺は…嫌です。」
「っ!!!?そ、そうか…参ったな~」

そんなこんなで、もう見ていられなくなった山口は、研磨先生に救援要請…
「今すぐ『リセマラ』をヤらせなよ。」と、有り難いアドバイスを頂戴した。


スマホゲームの多くは、基本的に無料で遊べるのだが、
レアアイテムや強いキャラを入手するには、ガシャ(ガチャ)を回す必要がある。
このガシャを回すためのコイン等、ゲーム内通貨を購入…課金することで、
より効率的かつ有利に、ゲームを進めることができる仕組みになっている。

また、スマホゲーム開始時には、無料で何度かガシャを引けることが多い。
ユーザーの心を掴むため、ある程度のレアモノが出るようになっており、
ここでいかにレアモノをゲットできるかで、ゲーム進行がかなり楽になるのだ。

そこで、最初のガシャで欲しいキャラやアイテムが出るまで、
リセット(アンインストール)と再開を繰り返す、マラソン並の持久戦に挑戦…
それが、リセマラことリセットマラソンという、ゲーム開始前の戦いだった。


「うっわ、超絶面倒臭っ!!俺には絶対無理だよ~気が狂いそう…」
「何度もダウンロード待ちしたり、同じチュートリアルを延々…ただの苦行。」

横で見ていた月島と山口は、リセマラ3回目ぐらいでゲンナリ…
だが、同じチームになりたい!という、壮大な夢を叶えたかった黒尾と赤葦は、
その願望の強さと元々の辛抱強さ、そしてやたらとデカい器のなせる技か、
実に前向きに…勤勉かつ粛々と、リセマラチャレンジを続けていた。

「いろんなガシャが引けるし、これはこれで楽しい…俺は嫌いじゃねぇよ。」
「練習チュートリアルの、可愛らしい後姿を見れるだけで…俺は幸せです。」




最初は、★4とか★5のレアじゃなくても、『赤葦』なら何でもいいな~と、
謙虚に言っていた二人だったが、リセマラ開始から36時間程経った頃、
研磨先生からとんでもない情報が飛び込み…状況が一変した。

どうやら、新しいイベントが開始…
『ひと夏のステップアップ』?とかいう期間限定ガシャの中に、
『昼間ヤれない二人』?っぽい名前の、『黒尾赤葦セット』が登場したらしい。
この情報には、黒尾も赤葦も欲望に目の色を変え、一気にヒートアップした。




「まさかまさかのクロ赤ラブラブ♡セット…コレを狙う以外はないだろっ!」
「しかも、俺が一番好きな黒尾さんの名セリフがドンピシャ…最高ですっ!」

ここからは寝ても醒めても…正確に言えば、寝る間を惜しんでリセマラ激闘。
W杯観戦よりもハードな徹夜&睡眠不足の中、二人は地道に努力を続け…
限界間近の3日目になって、ついに念願の『赤葦』がゲットできた。




「やっと…やっと『赤葦』が俺達の所へ来てくれた!!それはいいんだが…」
「嬉しいっ!!嬉しいんですが…これは大変、困ったことになりましたね…」

お試し3日+リセマラ3日、計6日かかってようやく入手した『赤葦』に歓喜…
だが、例の『昼間ヤれない二人』ではないもの…一体どうしたらいいだろうか。
単品(★4)ですら6日もかかったのに、クロ赤セット(★5)は…出るのか?
黒尾と赤葦は、これ以上ないぐらい真剣に協議を続けたが、答えも出なかった。

思い余った黒尾は、とりあえずホーム画面の『赤葦』を確認…
すると、最愛の伴侶が、ゲームの中からドンピシャなアドバイスをくれた。




「さすがは『赤葦』…お前の言う通り、欲を出しすぎちゃいけねぇよな!」
「我ながら呆れる程の高嶺の花っぷり&アッパレな助言…お見事ですね。」


こうして二人は、他のメンバーそっちのけで、二人っきりの練習を開始…
その練習一発目のタイトルを見た瞬間、リセマラの努力が全て報われた。




「黒尾さんが『初めての相手』だと…よくご存知でしたね♪」
「あらゆるイミで、俺達にドンピシャ…全く恐れ入るよな♪」

「一発目を黒尾さんとヤれたこと…このために俺達は頑張ったんですね!」
「これからはずっと、二人一緒に成長し続けたい…いや、するしかない!」


6人以上必要な総合練習は除き、二人はひたすら『二人っきり』の練習を敢行…
同じスピードでレベルアップし、ぐんぐんと深まっていく二人の熱い絆に、
いちいち歓喜の声を上げ、盛大にデレデレしまくっていた。




「黒尾さんと一緒に、二人きりで練習…これだけで、俺は凄く幸せです。」
「赤葦が俺と同じ場所…ネットのこっち側に居るなんて、夢みたいだな。」




あまりに小さくて慎ましい、黒尾と赤葦の『幸せ』に、月島と山口は絶句…
狂おしいほどの激愛に、苦しいほどの熱々を忘れ、思わず涙してしまった。


常に『一緒』がデフォルトである、幼馴染の月島と山口…セットが『当然』だ。
公式グッズや一番くじでさえ、『月山セット』扱いで、大変ありがたかった。
だがそれ故に、大好きな人と『セット』とみなされることが、
どんなに嬉しくて、心が熱くなって、幸せなことか…やや忘れがちだった。

「カレンダーで隣同士に描かれただけでも、あんなに大喜びしてたんだもん…」
「そこでまさかの、夢実現&垂涎ネタ連発…僕も心から祝福したくなったよ。」

マイナーなカップリングだからこそ、突然降って湧いた幸運の一つ一つに、
ここまで大きな幸せを感じ、些細なネタでも愉しむことができるのだろう。
ただの『ないものねだり』ではあるが、黒尾達がちょっぴり羨ましくなった。


「大好きな人との『セット』…その悦びを増幅させるのが、二次創作かもね~」
「ただの脳内妄想を、文章や絵として具現化する…夢の実現と言えるかもね。」

最初は熱苦しくて迷惑千万だと思っていたけれど、
これほどまでにお互いを想い、小さな幸せを喜び合う二人の姿に、
いつしか月島達もホッコリ…幸せのお裾分けを頂いた気分になってきた。
少々鬱陶しくても、大切な人が喜んでいる笑顔は、やっぱり嬉しいものなのだ。


月島と山口は、床に寝そべったまま穏やかに視線を絡めて頷き合い、
『火に油を注ぐ』『飛んで火にいる夏の虫』という箴言から、一旦目を逸らし…
「僕達からの、プレゼントです。」と、『ミニシアター』を紡ぎ始めた。



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「あっ、おはようございます。随分とお早いんですね…黒尾さん。」
「おっ、おはよう赤葦。お前の方こそ、ちょっと…早すぎねぇか?」


梟谷グループ合同合宿、二日目早朝。
もうじき夜は明けつつあるものの、活動するにはまだかなり早い時間…
ラジオ体操が始まるまで、あと2時間以上も余裕があるというのに、
第三体育館裏の自販機前で、黒尾と赤葦はバッタリ出くわした。

合宿中は、日中行われる全体練習そのものが、かなりキツめのスケジュールで、
これをキッチリこなすだけでも、慣れないうちは相当ハードなものである。
その中で、エネルギーが有り余った有志一同が、課外の自主練を適宜行うが、
それも夜9時までというお約束…休息することも、大切なカリキュラムだ。

推奨就寝時刻は夜10時、最終消灯リミットは12時となっているが、
あくまでもこれは目安…初日あたりは消灯超過して大騒ぎしまくっているし、
日程が進む毎にだんだん寝る時間が早くなり…最終日には夕食後に即寝落ちだ。

…というのが、大多数の合宿生活。
ごくごく一部の者達が、これとは随分違う過酷な生活を強いられている。


「ついさっきまで…ココに居たよな。」
「えぇ…ココで一緒にお茶しました。」

音駒と梟谷、2つのチームのまとめ役である、黒尾と赤葦の二人。
日中の合同練習後は、課外自主練…上司や部下達のお守に奔走する。
彼らの指導(躾)後、片付けやら寝かしつけやらを終えてから、その他の雑務…
消灯時間ギリギリに入浴等を済ませ、倒れ込むようにようやく床に就いていた。

『わくわく楽しい合宿♪』とは無縁…自由時間どころか、自分の時間もなく、
とにかくひたすら働き続ける、中間管理職ならではのド修羅場だった。
昨夜も、就寝間際に監督達に頼まれ、急遽二人で物品の確認作業…
12時半頃…たった4時間前に終え、ココでグッタリと茶ぁシバいたばかりだ。


「赤葦…あんまり無理すんなよ?」
「黒尾さんこそ…無茶厳禁です。」

同情混じりに互いを労わりながらも、出来ない相談だよなぁと、力なく苦笑い。
聡い二人は、相手が何故ココ居るのかを察知…自分と全く同じ理由に違いない。

いくら役職付とは言え、レギュラーが確約されているわけではない。
チーム内の熾烈な戦いを勝ち抜かねば、スタメンとしてコートに立てないのだ。

だが、これはまだマシな方…人に教える立場に就いてしまった以上、
成長を続ける『下』よりも、常に『上』の技量を保持し続けねばならないし、
当然ながら、別チームに勝つためには、自チームを率いる立場の者こそが、
一番の成長と安定を求められる…誰よりも鍛錬が必要なのは、自分達である。


「自分のためだけの練習時間なんか…」
「早朝ぐらいしか…取れませんよね。」

こうして、自らの置かれた状況と、課された責任の重さを自覚している二人は、
誰よりも早く起き、自己研鑽の時間を確保するしか、他に方法はなかったのだ。

「飛びぬけた才能のねぇ俺は…地道に努力するしか、生き残る道がないんだ。」
「こうでもしないと、飛びぬけた才能には…付いて行くことはできませんよ。」

堅実に、コツコツと。
終わりの見えないマラソンのように、ひたすら走り続けるしかなかった。


とは言うものの、早朝に単独で可能な練習は、それこそ走り込み程度しかなく、
今まではたった独りで、できる範囲のことを黙々とこなしていたのだが…

   チラリ…視線を微かに交わし合う。
   口の端を僅かに上げ…同意し合う。

「二人ならできること…物凄くたくさんありますよね?」
「昼間はヤれないコト…二人だけで集中してヤろうぜ!」

サーブ&レシーブ、トス&スパイク、スパイク&ブロック…二人ならばできる。
いや、『二人きり』だからこそ、自分のためにじっくりと練習ができるのだ。


「俺自身のための自主練に、お付き合い下さるのは…黒尾さんが初めてです。」
「俺のための練習に、自分以外の誰かが一緒に居る…俺も、赤葦が初めてだ。」

   よろしく…頼むな。
   えぇ…こちらこそ。

自分達以外には、蝉すらもまだ起きていない…静かな体育館。
その静寂を破らないように、そっと握手を交わそうと手を伸ばし…

   (えっ、この人って、こんな表情で…)
   (柔らかく笑うなんて、できるのか…)


力みが抜け、穏やかに微笑む顔なんて、一瞬たりとも見たことがなかった。
主将や副主将といった『役職付』ではない、ただの『個人』としての素顔…
初めて見たその表情に目を奪われ、時間も呼吸も…全てが止まってしまった。

握手をしようと伸ばしていた手も、宙に浮いたままフリーズしてしまい…
硬くなった指先に、相手の指先だけがほんの僅かに触れた衝撃に驚き、
同時にビクリ!と全身を震わせ、思わず手を引っ込め…大慌てで取り繕った。

「あっ、いや、その…汚れが…悪いっ」
「すっ、すみませんっ…俺も、汗が…」

何故かわたわたと焦りながら、タオルで念入りに自分の手をゴシゴシ拭うと、
今度は力いっぱい両手で握り締めてぶんぶん…ペコペコと頭を下げまくった。

「ふっ、ふつつつつかもの、ですが…」
「すっ、すえながく、よろしくっ…!」


原因不明の不整脈と、吹き出す汗…
何だかこれから、物凄く熱くなりそうな予感を、二人はじわじわと感じていた。




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「わぁ~初々しいねぇ~♪何だか俺も、高校時代に戻りたくなっちゃったよ♪」
「あの頃のピュアなキモチに回帰できるという点で、実に素敵なゲームだね。」

自分の人生は、ゲームのようにリセマラをすることなんてできないけれども、
ゲームを通して擬似的に青春回帰し、甘酸っぱいキモチが蘇ってくるなんて、
創作冥利に尽きると言うか…ネタをありがとうっ!と運営さんを拝みたくなる。

「やっぱ俺…HQ!!が大好きだな~」
「僕も、改めてそう思ったよ。」

自分達で『ミニシアター』を創作しておきながら、自らじんわり幸せに浸る…
セルフで幸せを創出&満喫できるのも、二次創作のオイシイところだろう。


月島と山口の二人は、『一方、その頃の月山は…』を語り始めようとしたが、
ソファから聞こえてきた二人分の嗚咽…喜びとは違う冷た〜い声に、
全身にぶるりと寒気が走り、咄嗟にお互い抱き着きながら、床から飛び起きた。
冷気の発生源は勿論、ガクガクわなわなと震える…黒尾と赤葦の二人だ。

「俺、音駒での合宿時は学校の敷地内、ホームの梟谷の時は学外を走って…っ」
「俺はその真逆のコースを、早朝独りきりで延々ランニングしてたんだが…っ」

「梟谷と音駒以外の時は、自主練用体育館の正面脇の木陰で、柔軟体操…」
「俺は、その対極側にあたる体育館の裏側で、ストレッチをやってたな…」

早朝4時半。どうせ誰も起きてない…誰も相手なんてしてくれないと思い込み、
たった独りで、地味に自主練を続けていた…似た者同士の苦労人達。
ごくごく至近距離で、ソックリ同じようなことをヤっていたにも関わらず、
あの頃の二人は交わることがなく…ズルズルと無自覚片想いを続けていたのだ。

「何で一度ぐらい、いつもと違うルートを走ってみなかったのか…」
「できることなら、俺達自身もあの頃に回帰してしまいたいです…」


知りたくなかった『現実』に、黒尾と赤葦はガックリと力なく項垂れ…
あまりの切なさに憐れみを覚えた月島達が、慰めようと駆け寄った瞬間、
二人は一転キラキラ笑顔…お互いの手を取り合い、更にベッタリと密着した。

「こうして俺達が『現実』に結ばれたのは…幸運通り越して運命ですねっ♪」
「そのことを改めて気付かせてくれた…このゲームには心から感謝だなっ♪」


   あーはいはい、そうですね~。
   お二人が幸せなら、それでイイです。

衝撃の事実にショックを受けて、ジメジメされるのも鬱陶しいが、
それを自分達に都合よく解釈し、ラブラブされるのは…輪をかけて鬱陶しい。

自ら飛び込んだとは言え、予想通りにクロ赤の炎に焼かれてしまった月島達は、
グッタリした心身をやっとのことで引き起こし、応接室から去ろうとした…が、
今度はのほほ~んとした暢気な声で、爆弾発言を投げ付けられてしまった。


「あ、そうそう。リセマラ中に面白いレアモノを入手したんだよな。」
「結局リセットしたので、とりあえず御写真だけ残しておきました。」

俺達の『ミニシアター』を創って下さったお礼に…はい、どうぞ。




「第三体育館での…僕とリエーフ?」
「んなっ!?めがねなしツッキー!」

★5だし、レアツッキーだから悪くはねぇんだが…俺は赤葦至上主義だからな。
心から残念だったが、これとはオサラバしちまったんだよな~
そう言えば、今ならこういうのもヤってる…これも結構なレアツッキーだろ?




「うそっ…居眠り中の、ツッキー…」
「こんなネタまで、あるんですか…」

実に可愛い月島君ですが、『体力温存』というだけあって、数値は悪いんです。
一言で言えば、使えない…月島君マニア御用達の、コレクターアイテムですね。
余裕があればぜひ手に入れたい逸品ですが…俺は黒尾さんが最優先ですからね。

「どうせ当たるなら、俺はコッチの方がイイなぁと思ってるんだが…」
「『昼間ヤれない』が大本命、コッチは二番手ですが…欲しいです。」




黒尾達が淡々と見せた『御写真』達に、月島と山口は完全に脱力…
その場にヘロヘロと崩れ落ち、涙目で黒尾と赤葦に詰め寄った。

「何で…もっと早く教えてくれないんですかっ!!?酷すぎますよっ!」
「僕達も今すぐ、リセマラ開始…ソレが出るまで、仕事は休みますっ!」

「おいおい、W杯も終わったし…そろそろ仕事を始めねぇとマズくねぇか?」
「課金は一月五千円まで…ゲーム開始前に、お約束書面を書いて下さいよ?」

色ボケ上司達の的外れな発言を無視し、月島と山口は猛ダッシュで飛び出し、
大きな足音と喚き声を家中に響かせながら、自宅へと駆け上がって行った。


「このクソ暑い中…ホント元気だな〜」
「熱々仲良しで…焼けちゃいますね〜」




- 終 -




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赤葦が一番好きな黒尾のセリフについて →『拍手小咄2
※ネットのこっち側を切望 →『興味津々/ 狂震未浸
※一番くじ『月山セット』 →『一揃二式
※カレンダーで隣同士 →『後背好配
※なお、リセマラなしの場合は、『赤葦』登場までに12日かかりました。


2018/07/17

 

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