ご注意下さい!


この話は、夢ならではのBLかつ性的な表現を、どっぷりと含んでおります。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、 閲覧をお控え下さい。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、責任を負いかねます。)

※今回のEROはクロ赤ワッショイです。


    それでもOK!な方  →
コチラをどうぞ。



























































    夜想愛夢⑥







玄関先でいいと言われたが、黒尾と赤葦は律儀に外階段を降り、
きっちりと1階の通用口まで出て、月島を『お見送り』した。

こうして家の外まで『お見送り』することで、ズルズル出発を先延ばししたり、
月島本来の『出不精』発動を、防ぐことができる。

信号を曲がり、月島の背中が見えなくなるまで、二人は笑顔で手を振り続け…
「仲直りするまで帰ってくるな。」と、月島の背を有無を言わせず押し続けた。


「月島君…俺達にも、一緒に来て欲しそうでしたね。」
「何回も振り返りやがって…わかりやすい奴だよな。」

通用口から戻り、1階外廊下をのんびり歩きながら、二人は柔らかく微笑んだ。
何だかんだ得意げに『金縛り考察』をしていたが、それは単なる時間稼ぎ…
山口に逢いたいけど、逢うのが怖いという、月島の『可愛い迷い』である。


「仕事…終わったんですよね?」
本当は一緒に行ってあげても…よかったんじゃないですか?と、
2階へ上がる階段を、1段先に上りながら、赤葦は視線を後ろに流してきた。

「甘やかしすぎも…問題だろ?」
喧嘩の度に、俺達が仲裁…円満調停してやるわけにもいかねぇよ。
1階から2階へ…踊り場を回りながら、黒尾は赤葦の腰にそっと手を添えた。

「それに、『招集』待ちの方が、何かと都合がいい…そうだろ、参謀さん?」
「仕方なく行ってやった感を演出…恩も経費も、アチラ持ちになりますね。」

おそらく、一両日中には俺達も仙台行き…振り回されるのは確定なのだ。
だとすれば、できるだけコチラ有利の状況を作り、上手くコトを運ぶべし…
今までの苦い経験から二人が学んだ、最低限の自衛策である。


例によって、月島家代表として、明光が(面倒な仕事と共に)乱入してくるか。
月島父は…可愛い忠ちゃんが手元に居る時に、こちらに来ることはないが、
ツッキーの帰省を見越して、山口自身が戻って来る戦略だと…月島父も一緒だ。
はたまた、意表をついて月島母が優雅に乱入…これが一番、恐ろしいケースだ。

とにかく、いずれの場合でも、黒尾と赤葦にとっては『悪夢』でしかない。
あぁ…俺達の『真夏の夜の夢』は、やっぱり『悪夢』が基本、ということか。

そうと決まっているのなら、逆に腹が据わる。何があっても…想定内である。
なら、思い切って自ら『夢の世界』に飛び込み、現実逃避するのもアリだ。
好き放題ヤりまくり、『全て悪い夢だった…』と、責任転嫁してしまえばいい。

事態の収拾がつかなくなる?ヤケを起こした?…あぁ、その通りだ。
だが、このくらいタフでなければ、ヤってけないのも、紛れもない事実だ。
悪夢も悪夢なりに、全力で楽しむ…俺達が浮かばれるには、コレしか手がない。


「俺らに残された猶予も、あと僅か…」
その間に、本当に俺が『甘やかすべき相手』が居る…これも間違いねぇよな?

2階から3階へ。
1段分の段差が身長差を埋め、いつもより近い位置にある…互いの顔。
間近に視線を交差させながら、赤葦は歩調を少しずつ落とし始めた。

「貴重な…二人きりの時間、ですね。」
まるで高校時代の俺達…黒尾さんの『海水浴ミニシアター』みたいですね。

3階の廊下まで、あと1段という所で、黒尾は赤葦の腰をグっと引き寄せた。
バランスを崩しかけた赤葦…だが、背後から黒尾がしっかり抱き止めた。

「黒尾さんっ!あ、危ないですよ…」
「大丈夫だ…しっかり捕まってろ。」


同じ高さにある瞳を覗き込み、視線を深く絡ませ…キスを奪う。
こんなトコで…?と、一瞬だけその瞳は躊躇で揺れ、拒もうと腕を上げるが、
深くなるキスに引き摺られるように、赤葦はカラダを黒尾の方へ向け、
上げた腕をゆるりと黒尾の肩に回し、唇を開き…自ら黒尾を求めた。

「何か、すっげぇ…背徳的だな。」
「密会、している気分…ですね。」

『ミニシアター』にするなら、そう…
極秘交際中の音駒主将と梟谷副主将。非常階段で繰り返す、秘密の…逢瀬。

「誰か来るかも…駄目、です。」
「こんなとこ…誰も来ねぇよ。」

 (夢物語とは…とても思えねぇな。)
 (えぇ…恐ろしい程、リアルです。)


合同練習の休憩時間。食堂の食器返却口ですれ違い、一言だけ言葉を交わした。

「黒尾さん、今日もお疲れさまです。」
「赤葦も、相変わらず大変そうだな。」

交わした言葉は、他愛のない挨拶。
交わした視線は、熱愛の籠る誘惑。

   『今夜…逢いたい。』
   『いつもの場所で…』

全員が寝静まったのを確認し、こっそりと宿泊所を抜ける。
体育館脇の非常階段。その一番上は、外灯よりも高い位置…真っ暗闇だ。

最初は、皆に隠れて休憩するための、サボリ目的の秘密基地だった。
だが、秘密を共有する内に、いつしか互いの距離が徐々に縮まり、触れ合い、
そして…互いの奥深くまで入り込む仲になっていた。

「あっ、こんなの…」
「駄目…だろうな。」

もし二人の関係が知られてしまったら、とんでもないスキャンダルだ。
二人で逢うのは、これで最後にしよう…と、逢う度に繰り返し言い続けてきた。

でも、堪えても堪えても、燃え尽きてしまいたい情動に流され、
『一時の過ち』と言って終われない程、二人で過ごす夜を重ねてしまった。


駄目だ…と、吐息で囁きながら、その熱を貪るように唇を重ね合う。
カクン、と赤葦の膝が折れると、黒尾は赤葦を階段に座らせ、
両脚の間にカラダを割り込ませるようにして覆い被さり、キスを続けた。
この腕を離したら堕ちてしまう…とばかりに、赤葦は黒尾を強く抱き締めた。

「これ以上は…あぁっ!」
「そうは見えねぇぞ…?」

  (ちょっと…ホントに、この辺で…)
  (その割に…ノリノリじゃねぇか…)

シャツに手を入れ、素肌を弄り。
ビクリと跳ねるカラダを抑えようと、両脚で黒尾の腰にしがみ付くが、
それが尚更、既に昂り始めていた互いの熱を感じさせ、更なる密着を要求する。

短パンの紐を緩め、硬くなった部分を引き出し、擦り合わせる。
激しく絡むキスで、唇から伝い落ちる雫のように、熱からも潤いが滲み出し、
ぬるぬると滑りながら、硬度を一気に高めていく。

「くろお、さん…気持ち、イイ…っ」
「俺も、めちゃくちゃ…っ…っん…」

   (これ、凄ぇ…燃える、な。)
   (クセに、なるかも…です。)

昨夜の『ソフレミニシアター』実践もそうだったが、
自分達を題材にした『ミニシアター』を自ら演じてみると、リアルそのものだ。
これは夢なのか、はたまた現なのか、境界が曖昧で…だからこそ、ハマる。

   (『ミニシアター』実演は…)
   (究極の『ごっこ遊び』だ…)


抵抗らしい抵抗は全くないままに、黒尾は赤葦の短パンを足首までずり下げた。
滔々と溢れる二人分の滑りを、指で掬い取って絡め、赤葦の奥に触れた。

「さすがに、それは…っ、ムリっ」
「指だけ…俺のは、挿れねぇよ。」

ムリだダメだと言いつつも、その言葉を紡ぐ唇と舌は、逆のことを伝えてくる。
ムリせずダメじゃない範囲で…と、入口付近を擽る程度の黒尾の指も、
腕や脚と同じく、決して離してなるものかと…赤葦はキツく絞り上げる。


「ムリだって…言ってる、でしょう?」

焦れる動きだけを続ける黒尾の手を、赤葦は捕まえると、
その手を掴んだまま…自分の奥深くへと誘い、ゆるゆると動かし始めた。

「あ、おい、ちょっと…赤葦…っ!?」

あろうことか、黒尾の指を使って、自慰を始めた…赤葦。
自分で『イイとこ』を探り当てると、勝手に隣の指も掴み入れ…2本で戯れる。

  (指先…ちょっとだけ、曲げ…あっ)
  (こ、こう…か?あ…ココ、だな。)

予想だにしなかった痴態に、黒尾は肝も魂も、全部…ヌかれそうになった。
慌てて指を抜こうとしたが、逆の手で熱も捕まれてしまい、力が抜けてしまう。

「んんっ…あっ…」
「あ…か、あし…」

指も熱も、両方共赤葦のイイように使われ、自分では思うように動けない…
黒尾のカラダを使って、目の前で自慰に浸る赤葦…夢としか思えない光景だ。


  (ねぇ、黒尾、さん…)
  (な、何だ、赤葦…?)

ドロリと鉄を融かすように。灼熱の炎を湛えた瞳で、赤葦がそっと囁きかける。

『一夜に3回連続で出す』より、『1回出すのを耐える』方がツラいですよね?
でも、それらより、もっとツラいのは…

「『2回連続で挿れない』…でしょ?」

昨夜の『ソフレミニシアター』実践も、一緒にヌいて気持ちヨくなっただけ。
今日の『非常階段での密会』も、ソレだけだなんて…ムリですよね?


  (指とコレ、どっちがイイか…黒尾さんに選ばせてあげますよ。)

右手で指を、左手で熱を握り締め、黒尾に選択を迫る赤葦。

  (『魔に魅入られる』ってのは…こういう状態、なんだろうな。)

もしこれが『夢』だったら、間違いなく『夢魔』に襲われる夢だろう。
罪を抱いて堕ちてもいい…儚い夢でもいいから、浸りきってしまいたい。


「お前に…溺れてしまいそう、だよ。」




**************************




「いやはや…本当に参ったな。」
「俺自身…ビックリしてます。」

3階廊下にゴロリと寝そべりながら、黒尾と赤葦は火照った顔を見合わせた。
咄嗟の思い付きとは言え、『ミニシアター』実演に、ここまでハマるとは…

「って、当たり前か。俺ら昔っから…『ごっこ遊び』が好きだったな。」
「確かに、そうでした。これを機に…封印も解いてしまいましょうか?」

高校時代は、自分達の本心を隠し通すため、『ごっこ遊び』をし続けた。
昨年、『素の黒尾&赤葦』として向き合うため、それを封印していたのだ。
あれから1年…無事に結ばれ、もうお互いに本心を封印する必要もなくなった。

だから、『隠す』ために『ごっこ遊び』をすることは、もうない…
『楽しむ』ためにその封印を解いたとしても、何の問題もないだろう。

「『夫婦の楽しみ』としては…ソフレよりイイかもな。」
「今後の『素敵タイム』の選択肢として…アリですね。」

夢でも現でも、こうやって俺は『夢魔』に魅入られ続けるんだな…
そう黒尾が思っていると、赤葦が同じ言葉を口に出した。


「魔に魅入られる、と言えば…
   怪談話をしていたり、イチャついてる最中が、最も危ないそうですよ。」

魔は魔を引き寄せやすい…魔を語り合う場は、魔を呼ぶということだろう。
そして、人が最も無防備になるのが、睡眠中と…欲に溺れている最中だ。

「その説で言うと、つまりは…
   『かいだん』でイチャつきまくってた俺達が、一番危ねぇってことか。」

まずもって、物理的に墜ちて、怪我をする危険があるし、
罪に溺れて落ち…大スキャンダル発覚のリスクだってある。
その上更に、魔に魅入られ闇に堕ちてしまったら、本当に浮かばれない。

しょーもない言葉遊びに、二人で声を上げて笑い合う。
こうやって笑ってオチをつけておけば、魔も呆れて寄って来ないだろう。


「ついでですが、『怪談』と『溺れる』繋がりの話なんですけど…」
赤葦は寝転がったまま、『海』と虚空に文字を書いた。

『海』という字の旁『毎』は、髪飾りを付けた女性が、黒く長い髪を結う様子…
そこから転じて、『広く深く暗い』という意味を持つそうだ。
広く深く暗い海に揺蕩う、長い黒髪の女性…海の怪談話にピッタリだ。


「黒尾さんが、何故か海に行きたがらないのは…
   もしかして、海の怪談話が怖いから…だったりしますか?」

赤葦はクスクスと笑いながら、冗談半分で黒尾に問い掛けた。
だが、黒尾から返ってきたのは、予想外に真剣な表情と…重く暗い声だった。

「いや、怖いのは怪談…夢じゃない。もっと現実的な話だよ。」

そうだな、言うなれば…髪飾りだ。
櫛や簪を付けた、長い黒髪の女性繋がり…もしくは、八岐大蛇の『親族』かな。

それは一体、どういう意味ですか?
赤葦がそう尋ねようとした瞬間。


バシャン!と、水が零れるような音が、突然階下から響いてきた。




*************************




「い、今の、音…?」
「し、下から…か?」

カラダに残っていた事後の余韻も、『賢者タイム』以上に、スーっと急冷…
黒尾と赤葦は慌てて衣服を直し、ガッチリ手を繋いだまま、階下を覗き込んだ。

月島と山口は仙台に帰省。今日は来客の予定もないし、宅配便は夕方着指定。
自分達以外には、誰も居ないはず…それなのに、何かが這い廻る音がする。

ゴクリ…と、喉を上下させるが、乾ききって生唾も下りてこない。
水気を含んだ、ズ…ズ…という音は、徐々に近づいて来ているように聞こえる。

  (まさか、本当に…魔に魅入られた?)
  (いや、そんなこと…あるわけない。)


足音も息も、殺せるだけ殺しながら、一歩、また一歩…階段を降りて行く。
降りる度に、廊下を這う音も、一歩、また一歩…間違いなく近くなってきた。

2階には…誰も居ない。音は…下だ。
慎重に、慎重に…踊り場を回り、恐る恐る1階の廊下を覗き込む。

「あっ…!!?」
「えっ…!!?」


1階廊下の、真ん中辺り。
丁度事務所の入口付近に、それは居た。

   黒く長い髪をした、白い服の…女性。
   海から出て来たような…ずぶ濡れ姿。

黒髪から水を滴らせながら、ズ…ズ…と廊下を這い、こちらに近づいて来る。


「う、そ…だろ…」
「そ、んな…っ…」

互いにしがみ付きながら、恐怖で掠れ、震えた声で、
これは、きっと夢だ…と、現に『見えるもの』を、必死に拒もうとする。

   ここから、逃げなきゃ…
   夢の中から、逃げないと…

そうわかっていても、金縛りに遭ったかのように、足は全く動かない。

せめて、赤葦だけでも…
繋いだ手を何とか動かし、黒尾は自分の後ろに赤葦を隠そうとした…瞬間。


   とん…

背後から、冷たく濡れた…手。

その手に肩を叩かれた二人は、声を上げることもできず…暗闇に堕ちていった。




- ⑦へGO! -




**************************************************

※非常階段のクロ赤シリーズ →『来店予約』『真偽不明』『前方興奮

※クロ赤のラブソング(情事詩)
   →access 『SCANDALOUS BLUE』


2017/07/28  

 

NOVELS