ご注意下さい!

この話は、『R-18』すなわち、BLかつ性的な表現を含みます。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、 閲覧をお控え下さい。
 (閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)

また、当シリーズは前話『団形之空』で完結しています。
こちらはただの『蛇足』かつ、シリーズには驚くほど関係ありません。
そして、徹底的に『↓方向』のネタ及び『寝た』で貫かれております。

    それでもOK!な方  →
コチラをどうぞ。























































※『団形之空』の直後。




    無限之識







これからは4匹の蛇で…『イロイロ』と楽しみなよ!
あ、折角の機会だから、何か4人でイベントでも企画してみたら?
それじゃあ、引越頑張ってね~!!

…そう言い残すと、明光は早々に去って行った。


「明光君…明日の引越も、手伝ってくれないんだ。」
「あの人が居ない方が…スムースにコトが運ぶよ。」

残された4人は、月島宅での最後の『酒屋談義』を仕切り直すべく、
月島と山口は台所で洗い物…黒尾はそれを拭き、ダンボールに詰めた。
赤葦は『飲み直し』の一杯とおつまみを準備し、場を整えた。

「おっ、ついにソレを出すのか!」
「えぇ。折角の機会ですからね。」

赤葦が取り出したのは、棺の形をした木箱だった。
これも、赤ずきんの『おつかい』の際に購入した黒ワイン…ドラキュラだ。
封印を解き、眠りから覚めた吸血鬼…
荷造りせずに取り置いていたグラスに、赤黒い液体をトロリと注ぎ込むと、
薄くスライスしたスモークレバーを添えて、赤葦は全員に配った。

「『地水火風』ならぬ『血吸架封』…血を吸い十字架を封じる、です。」
「なるほど!!巧いコト言いますね!!」

手放しで称賛する山口に、赤葦は恭しく一礼すると、
俺の方はこちらで…と、鮮血色をしたザクロジュースに口を付けた。


「この流れでいくと、ドラキュラに関する考察になるんでしょうけど…」
「時間が足りないですよね。これも『お楽しみ』に取っておきましょう。」

それなら、ココで最後の『酒屋談義』に相応しいネタは…?
一堂に会した『4匹』の蛇で…『イロイロ』と『お楽しみ』…か。

ドラキュラが居そうな深い森の中で、『蛇の酒』と共に語り合ったあのネタ…
4人共が同じ結論に至ったが、とりあえずはそのネタの回避を試みた。


「そ、そう言えば、黒尾さん達は僕達よりも先に『新居』に入居しましたが…
   『住み心地』とか、『二人暮らし感』は…いかがですか?」

月島の質問に、黒尾と赤葦は顔を見合わせ…苦笑いした。

「『住み心地』…居住環境の方は、申し分ないですよ。1階が事務所用とは言え、
   実態は普通の住宅…三階建の広い二世帯住宅、みたいな雰囲気ですからね。」
「ただ…現時点で冷房が付いている場所は、リビングの1ヶ所だけだからな。
   そこもダンボールが積み上がってて、とても寝られる状態じゃねぇし。」

しかも、ガスの開通は明日…水シャワーしか出て来ない。
冷蔵庫や洗濯機等は、月島宅の『おさがり』…こちらも、明日の引越以降だ。

「一昨日は黒尾さんの所、昨日は俺の所…連日の引越でクタクタの中、
   結局駅前のネットカフェでシャワーを浴び、そこで2泊しましたよ。」
「そんでもって、今日は月島&山口宅の荷造りで、明日は引越本番だろ?
   さすがの俺も、新生活のワクワクを感じる余裕もねぇよ…」

引越が済んでも、数日間は荷解きやら買い物やら各種手続やらが山積。
そして来週には、再開発で移転した店子達が、置いて出て行った机や棚等、
什器の『おさがり』を貰いに行く…こっちも結局は引越作業である。

「大学が夏休み中で、ホントに助かったと言うか…」
「肉体を酷使するという意味では、まさに『夏合宿』ですね。」

文字通りに『疲労困憊』な表情で、黒尾と赤葦はだらしなく脚を投げ出し、
今日は久々の湯船&布団だぜ…と、疲れの色濃く混じった深呼吸をした。

「…ま、そんなわけだから、できるだけ『アタマ』を使わねぇネタで頼むわ。」
「ついでに言うと、『スッキリ』するような…発散系のモノを希望致します。」

だとしたら、やっぱり…『アタマ』とは逆方向のネタしかない。
4人は顔を見合わせ、何とも言えない表情で頬を緩めた。


「ちすいかふう…『智衰伽封』…智慧衰えて、御伽噺を封じる…ですね。」
「その代わりに…『恥睡伽富』…恥は睡らせ、夜伽噺を富ます…だよね!」

つまるところ…疲れと酔いに任せた、下方向の…『カラダ』のネタに決定した。



「4人で行った極寒高原キャンプ…そこで飲んだ蛇…ハブ酒。
   ハブには『アレ』が『4本』あって、『24時間連続』で『ナニ』が可能だったな。」
その『お強さ』から、ハブを漬け込んだ酒は、滋養強壮にキくと言われている。
ハブ酒を少々飲んだ黒尾…確かにグンとキいたぜ、と乾いた笑いを溢した。

さすがに『24時間連続』は難しいだろうが、もし仮にヤるとすれば…
『1人当たり6時間×4人』又は、『2人で3時間×8セット(1組4セットずつ)』と、
キャンプの時には皮算用したのだが…あの時とは状況がかなり変わっている。

「4人の累積で24時間というのも、ちょっと卑怯な感じはしますよね。」
「それに、実情としては『2組』ですから…それぞれの組内で重複してますし。」
「だとすると、『連続』の方をちょっと緩和して…
   ある程度の短い期間内に、1人1人が合計24時間ってのが、一番現実的か。」
「それならば…『8時間×3夜』が、ギリギリのラインでしょうか。」

溜まった疲れと酔いのせいか、誰一人根本的なツッコミ…
「それ、まさか本気でヤる気じゃないですよね?」を入れることもなく、
話は「いかにしてそれを実現するか」という、より実践的な考察へ入っていった。


「24時間よりはマシとは言え、8時間連続だって…結構ハードだよね?
   夜10時スタートで…翌朝6時までってことでしょ?」
「そもそも、どこからが『スタート』かも…判別が難しいんじゃない?」

これは、『ナニ』をすれば『付き合っている』と言えるのか?というのと同様に、
一体『ナニ』をヤったら『最中』と言えるのか…非常に難しい『定義付け』の問題だ。
まずはここから、じっくり考えていく必要があるだろう。

「辞書的に言うと、『ナニ』つまり性交とは…
   『性的欲求に触発され、複数で行う一連の行為』…になりますね。」
「それだと、単独での自慰は『性行為』には該当するが、『性交』とは言えねぇな。
   逆に、複数で行うのであれば、射精の有無は問わないことになる。」
「『子孫を残すため』や『パートナー間のコミュニケーション』、それから、
   『快楽を得ること自体』が、『一連の行為』の目的になる…のかな?」
「『一連の行為』の様態を、時系列で分類してみると…
   『前戯』『挿入(または本番)』『後戯』に分けられますね。」

赤葦、その『本番』ってのは…フーゾク用語だ。
今回はそういう『ごっこ』じゃねぇから…真面目にイこうぜ。

黒尾は極めて真剣な表情で注意を促すと、『定義付け』の結論を導いた。
「つまり、『突っ込む』だけが『ナニ』というわけではなく、
   前戯・後戯を含め、パートナーとの『素敵タイム』に行われる、
   ムラムラっとクる『イチャイチャ』が…全て『一連の行為』に含まれる。」

この定義に従うとすれば…
「夜10時頃に『イチャイチャ』し始めて、だんだんと『ムラムラ』してきて…」
「そのうち、アレやらコレやら『素敵なコト(もしくはトコ)』に突入しつつ…」
「余韻を楽しみながら『コミュニケーション』を続け…気付けば朝6時です。」


日本人の『ナニ』の平均時間は20分…と、よく巷では言われているが、
それは単に、『前戯(挿入準備)15分+挿入5分』という『メイン』のみの話である。
平均20分の『メイン』を、8時間ぶっ通しで続けるわけではないのだ。

現に、ただゴロゴロしながら『盛り夜談義』をしていただけだったが、
それを明光に邪魔された赤葦は、『素敵タイム』をぶち壊されたと激昂し、
乱入した明光も、『上半身裸の黒尾+布団に籠る赤葦=オトナの情事』と判断した。

こうしてきちんと定義付けしてみると、『8時間×3夜』という、
引越記念イベント『4匹の蛇チャレンジ』は…十分実現可能ではないだろうか。


「となると、次に考察すべきは…ナニを以って前戯・挿入・後戯とするか、
   そして、それらをいかに持続し、長~~~~く楽しむか…だな。」




***************






    楽しみに節度があれば、心は穏やかで、長生きできる。
    溺れて顧みなくなれば、病が生じ、いのちが短くなる。

これは、中国古来から伝わる養生術である『房中術』…
房事すなわち性生活における技術を説いた書の、一節である。
要は、相手との心身の和合を目的とする、『元気と仲良しの秘訣』的なものだ。

酸素も脳も滞りなく回すべく、血液のような酒を、ゆっくりと流し込む。
この『酒屋談義』は、ただの『下方向のネタ』というわけではない…
4人の『和合』のための、楽しく節度ある…以下略である。


どうでもいい御託はいいとして、本質的な議論をしようぜ。
黒尾はそう言うと、全員の顔を見まわし、改めて次のテーマを示した。

「それじゃあ、まずは…前戯とは何か。どのようなものが含まれるのか?」

「文字をそのまま解釈すると、『(挿入)前のお戯れ』ですよね。」
「『戯』という漢字は、『イチャイチャすること』や『あぁ…』というため息です。」
「『手に持って遊ぶ』とか、おもむき…『自然と作られるイイ雰囲気』って意味も…」

この『戯』という文字は、『虎の頭の象形と、頭が膨らみ脚の長い食器』…
『虚』という字に通じることから、『むなしい』という意味を持つ左側と、
右側が『握りのついた柄の先端に刃のついた矛』の象形から、
『むなしい矛』すなわち『実用性に乏しい矛』…『オモチャの矛』という構成である。

「ホンモノのアレを入れる『前』に、オモチャで面白く遊ぶ…か。」
全員が『文字通り』の『オモチャ』を想像しながら…真面目に答えた。



「まず考えられるのは、キスですよね。
   これだって、軽いのから奥深いのまで、イロイロと楽しむ要素満載ですね。」
「それから…脱衣でしょうか。
   脱ぎ方や脱がせ方、どこまで脱ぐか、または脱がないかで…幅は広がります。」
「あとはもう、『ホンモノ』以外や、『別のトコ』を使っての愛撫…ですか。
   『実用的なオモチャ』を使ったり、あとはフェ…口腔や手指、大腿鼠径部等で…」

またしても『フーゾク用語』で答えそうになった赤葦だったが、
今度はちゃんと自制し、おカタい言葉で無難に解答した。

こうして列挙してみても、前戯に含まれるものは多種多様…バリエーション豊かだ。
ナニを以って前戯と言うかも、そこそこの難問である。

「イロイロあるが…総じて言えば、
   『挿入に先立って、互いの性的興奮を高める性行為全般』ってことになるか?」

黒尾の概括に、3人は異議なし!と…首を上下に振った。


「そして、次はいよいよ本番…じゃなかった、挿入だな。
   ここで考察すべきは、何よりも…『いかにして↑状態を維持するか』だな。」

若さも体力も、アレもコレも有り余る、超体育会系の4人…
とはいえ、何の策もなしに『配分』を間違えると、この難関チャレンジは成功しない。

「オモチャというよりは、本当に『実用的な』道具を使うとすれば…
   根元を締め付けて『↑』を維持させる、コックリングの利用…とか?」
山口の言葉に、全員が同時に息を飲んだ。

「コックリングの『cock』…本来の意味は、『lever』ですよね?」
「つまり…『蛇口』のレバー、ですね。」
「っつーか、アレ自体の隠語じゃねぇか。」
意外な所からアッサリと『蛇=子孫繁栄』を発見し、
4人は首を捻ってアサッテを向く振りをしながら、『4匹の蛇』に視線を這わせた。



「前戯なのか、挿入準備なのかの判別も、少々難しいところがありますが…
   挿入の手助けとなる『実用的な』道具…ローションの利用も考慮すべきです。」
挿入『される側』の下準備だけでなく、『する側』の↑維持にも…便利です。
月島は両掌をゆっくり擦り合わせ、『粘つき滑るモノ』を表現してみせた。

「コレにはホントにお世話になってるというか…ないと話にならないですよね。
   ただ、冷たいと『ひゃっ!』ってなっちゃうのが、難点と言えば難点…?」
「使う前に、あらかじめ掌でちょっと温めてから…これぞ『思いやり』だな。」
「それも大事ですが、そもそも『あったかいもの』を使う方法もありますよね?
   よく『温感ローション』というのを、ネット等で見掛けますが…」

これは世紀の大発明だよね!とか、世の中には賢い人がいるもんです…と、
山口・黒尾・赤葦の3人が賞賛していると、月島が慌てて止めに入った。


「だ、ダメです!『温感ローション』と言われるものは…使用を控えるべきです!」
場にそぐわない程の鬼気迫る表情に、3人は月島を凝視し…発言に傾注した。

「通常、ローションと呼ばれるものの主成分は、ポリアクリル酸ナトリウム…
   水溶性ポリマーと水ですが、これは食品添加物の増粘剤にも使用されています。」
そのため、何らかの原因で口に入ったとしても、特に大きな危険性はない。
ただ、パラベン等の保存料が含まれている場合には、化粧品荒れする人は要注意だ。

また、薬局等で『潤滑ゼリー』という名称で販売されているものは、
一般的なローションよりは潤滑性に劣るものの、簡単に洗い流せて使い勝手が良い。

「いわゆる『ローションプレイ』用のローション…ヌルヌル感がハンパないよね。
   風呂の床が滑って、股関節痛めちゃったり、浴槽の淵でカラダを強打したり…」
「しかも、シャワー程度じゃ全然落ちないから…湯船に浸かって、洗い直し。
   お風呂掃除だって、とんでもなく難儀したし…自宅じゃもう二度と使わないね。」
だから、『摩擦を軽減する』という目的では、潤滑ゼリーをお勧めします。
いろんな意味で、『怪我防止』になりますからね。

貴重な『経験者達の体験(失敗)談』に、黒尾と赤葦は神妙な顔で頷いた。


「すみません…横道に逸れました。問題の『温感ローション』なんですが…」
月島の滑舌は…何故だか途端に悪くなった。

「実は、温もりを感じさせるために…グリセリンが配合されているんです。」

これは主に、男性が『おひとりさま』用のオモチャを利用する際に使うものである。
それ以外の用途で使用すると、油脂分が『ゴム製品』を溶解させてしまい、
避妊効果が落ちてしまう等の、悪影響が出る可能性があるのだ。

「いや…それは別に…俺達にはあんまり…」
ソレをそこまで心配しなくても、大丈夫な気もするが…
ごく真っ当なツッコミをする黒尾に、月島は「性別関係ありません!」と反論した。

「グリセリンは、直腸検査時等に使用する…腸内洗浄剤の主成分です。」



月島の言葉で、場がキンキンに冷えた。
真っ青な顔をしながら、3人は震える声で感謝を述べた。

「そ、それは…大変貴重な…雑学ですね…」
「知らずに使ってたら…いやいやいや、想像は…やめとこうかな…」
「今まで色んなネタを、ツッキーは披露してくれたが…
   このネタが、今まででナンバーワン…『ためになる』雑学だったぜ…」

温かさを求めるなら、適温のお湯で少し薄めると、揮発も抑えられ長持ちします。
プロの方々は、業務用濃縮タイプを、そうやって使う…『思いやり』です。

ちなみに、誰とは言いませんが、名誉のために申し上げますと…
「このネタは、『そば打ち』を調べているときに、たまたま行きついただけです。
   そばの『つなぎ』に使うトロロアオイ(黄蜀葵)→『通和散』の主成分→
   ラブローション→温感ローション→グリセリン…本当にたまたまですから。」
間違っても、『経験者の体験(失敗)談』ではありませんからね!

なお、『通和散』は江戸時代の『ぬめり薬』…そのものずばり、ローションだ。
唾の代わりに使う『唾(つわ)散』から、名付けられたそうだ。
川柳や春画にもよく登場する、『閨房用秘薬』である。(類似品名・安入散)



ツッキーすげぇ!!という、キラキラ視線を受けた月島は、
「そろそろ次の考察に…イきましょうよ。」と、話題転換を提案した。



***************






「イロイロと『すったもんだ』したが…次は無事に『挿入』できた後だな。」

「関係ないですけど、『擦った揉んだ』と漢字で書くと…ヤらしいですね。」
「『擦る』はこする、『揉む』は両手でこすり合わせる…
   『似た手の動作を重ねることで、アレやコレのさまを表した言葉』…だって。」
「『吸った揉んだ』でも、別にヨさそうだよね。」

次の考察テーマを黒尾が示したが、3人からは『舌好調』の返答。
それを滑りよくスルーして、黒尾は改めてテーマを言い直した。
「…いかに『挿入』状態を長持ちさせるか?その案を真面目に出してくれ。」


「それは、一時期流行った『ポリネシアン』が…いいかもしれないですね。」

これは、ポリネシア地方に伝わる『ナニ』の技法であり、
肉体よりも精神的結合を重視し、長時間の絶頂を味わう方法だ。

    ①4日間はキスや軽めの愛撫のみに止め、5日目に挿入。
    ②挿入日も、前戯に1時間以上かける。挿入自体も、極力スローに行う。
    ③挿入後は、ピストン運動は行わず、『少し動いて休憩(愛撫)』を繰り返す。
    ④絶頂後も、結合したままにする。

この様な方法で、長時間かけてゆっくりと楽しむことで、
何度も絶頂を味わうことも…あるそうだ。

「『ガンガンいこうぜ』ではなく、『じゅもんをせつやく』…ですね。」
「『バッチリがんばれ』じゃなくて、『いろいろやろうぜ』ってことですね!」
これだと、無駄なMP消耗も抑えられて、大変助かりますね~と、
もろ手を上げて喜ぶ、赤葦と山口。

「これは…ちょっとずつ『復活系』の呪文を、かけ続けながら…」
「MP1でも発動しちまう『自爆系』を、何とか抑えろってコトか…」
4日間の禁欲後の、究極の『おあずけ』プレイの予感に、
黒尾と月島は、遠い遠い目をした。


どこかへ飛んでイってしまいそうな意識をなんとか引き戻し、
黒尾は最後の考察ポイントへの意見を求めた。
「最後は後戯だな。人間のみが行うらしいが…結構疎かにしがちだよな。」

「『相手へのフォロー』や『余韻を楽しむ』等は、人間しかできませんよね。」
「ココを充実させることで、『幸せだな~』って…一番感じるのかも。」
「軽い抱擁、柔らかいのキス、髪や頭への優しいタッチ、他愛ないお喋り…
   これぞまさに、『素敵タイム』と言えますね。」
「腕枕したり、重なり合って寝たり、『カラダのどこかが触れてる』状態…
   もうそれだけで、『我が人生に一片の悔いなし!』って思うぜ。」

後戯を大事にしよう!という点では、4人の意見は完全に一致した。
ここでの最大の問題点と言えば…


「絶頂後の、抗いようのない猛烈な眠気…これが難問なんだよね…」
気が付いたら、いつも…30分ぐらい経ってたりするもん。
その後は逆に、お酒飲んだ時みたいに『超クリア』なんだけど…

いつも大爆睡してゴメンねツッキー…と、申し訳なさそうに言う山口。
だが月島は、「全然問題ないよ。」と笑った。
「絶頂後の眠気は、ホルモン分泌によるもの…まさに不可抗力だよ。
   この眠気は、30分程度の軽い睡眠ですぐに吹き飛ぶらしいから、
   これは『素敵タイム』の一部と考えても…いいんじゃない?」

結局、いわゆる『賢者タイム』と、この睡眠後の『超クリアタイム』を、
いかに楽しく過ごすか…これが後戯最大のテーマになるだろう。

月島と山口は、ニッコリと笑い合いながら、
「それについては提案があります。」と、元気よく挙手をした。

「僕達はいつもこの『クリア』の有効利用として…『賢者』を実践してます。」
「『言葉遊び』こそ…この時間に最適なんですよ!」
ビックリするぐらいのネタが、天啓のようにクることがあるんですよ~

月島と山口の言葉に、黒尾と赤葦は意表を突かれた。
二人でよく『言葉遊び』や『歌合戦』をしているとは聞いていたが…
まさかこんな時に、『枕ことば』として楽しんでいたとは。


山口はスマホにカレンダーの画面を出し、全員に見せた。
「一昨日は黒尾さんトコ、昨日は赤葦さんで、明日がツッキーと俺のトコ…
   その翌日が、引越(禁欲)開始からちょうど『5日目』になりますよね?」
「その日は8月19日…奇しくもアニバーサリーな『俳句(819)の日』です。
   引越記念イベントの『お戯れ』として…それぞれ一句ずつ、詠みませんか?」

さすがに、回文作成ほどの高難度の遊びにしてしまうと、
後戯どころか、最中もずっとソレばっかり考えちゃいますから…本末転倒です。
俳句ぐらいでしたら、『後戯×3夜』もあれば、十分でしょ。

黒尾と赤葦は、「面白い!」と拍手喝采し、提案を歓迎した。
「俳句と言やぁ季語だが…正確には今は『秋』かもしれねぇが、
   気分的には『夏真っ盛り!』だから…『夏』にしようぜ。」
「折角ですから、その句の中に、自分の蛇…『地水火風』の字を入れませんか?」
「あ、それなら…自分の『つがい』の人の、『名前の一文字』を入れて、
   自分と相手の句が『対』に…『同じ文字』も、最低一文字入れましょう!」
「当然ながら、『パっと見』は風流な俳句に仕上げること…すなわち、
   『情事』を想起させる直接的表現は使わないこと、ですね。」


…以上の考察により、『引越記念イベント』の概要が纏まりましたね。
赤葦はそう言うと、指折りながらイベントのルールを列挙した。

    <1>チャンレジ開始までは、軽めのキス又は愛撫のみに止めること。
    <2>8月19日の夜10時に開始。翌朝6時迄を『1夜』とし、それを『3夜連続』行う。
    <3>体の一部が触れ、『そういう雰囲気』になり、その後『前戯』に突入した場合、
          チャンレジを『スタートした』とみなす。
    <4>途中に睡眠・食事・トイレ・入浴等も可能。
           ただし、『素敵タイム』が継続中とみなせる場合に限る(全裸のまま等)。
    <5>後戯や『賢者タイム』を利用し、『地水火風』の一句詠むこと。


「何か俺…ちょっと楽しみになってきたかも!」
「引越が無事に終わったら、この『お楽しみ』がある…
   そう思ったら、日中の片付けとか買い物も、頑張れそうだね。」
「『婚約&同棲記念イベント』に、『三夜連続』だなんて…
   まるで、平安時代の『通い婚』みたいですね。」
「成功の暁には、お祝いに『三日夜餅』でも…みんなで食うか?」

4人は『ワクワク』やら『ドキドキ』やら『ムフムフ』やら…
新生活と記念イベントへの期待たっぷりに、満面の笑みで掛声を掛けた。


「それじゃあ、明日の引越その他モロモロ…精一杯楽しもうぜ!!」



※これ以降はEROです。ご注意下さいませ。 月山編 / クロ赤編



***************






「じょ、冗談…だよね?俺の聞き間違い…かな?」
「僕は本気…だよ。『見せて』って…言ったの。」


目の前に『ご褒美』をぶら提げられた時…人は恐るべきパワーを発揮する。
僕のウチでの最後の『酒屋談義』の翌日、積もり積もった疲労が嘘のように、
月島・山口2軒分の引越を実に溌剌と終え、猛然と片付けと荷解き。
今日は朝から4人で車に乗り込み、役場での手続に始まり、
家電量販店や雑貨店、ホームセンター等で、生活必需品等の購入…

夕方には、2階…僕と山口の新居で、晩御飯(うな重)で精を付けた後、
黒尾さん達は足取り軽く「じゃ、健闘を祈る!」と3階へ上がり、
僕達は入浴後、冷房の効いたリビングのラグの上に、布団を敷いて…準備完了。

そのまま二人で並んで座り、静かに…10時の到来を待った。

ルールでは、チャレンジ開始までは『キス及び愛撫』は可能だったのだが、
とんでもない集中力で引越作業等を行い、そんな余裕は全くなかったこともあり、
ほとんど『接触ゼロ』のまま、5日目の『決行日』を迎えた。

僕と山口は、実質的には今までも同棲をしていたこともあり、
『好きな時に好きなだけヤれる環境』は…既に『日常』だった。
だからその分、こんなに長い間の接触ゼロ…『おあずけ』は実に新鮮で、
ここまで『ヤりたい!!』と思ったのは、実に久しぶり…あの『夏合宿』以来か。

やはり、初心に帰ることは大事だな…というのが、僕が一番痛感したことだった。



「ツッキー…」

10時ジャスト。山口は僕の名前を小さく呼ぶと、
小指と薬指だけで、僕のシャツの裾を小さく掴んできた。

逸る気持ちを何とか抑え、山口の腕に自分の腕を絡め、そっと手を握る。
久々に触れる互いの体温に、ただそれだけで熱い吐息が込み上げて来た。

組んだ二の腕に、頬を擦り寄せてくる山口。
反対側の手でその頭を撫でながら、僕はゆっくりと山口に語り掛けた。

「今回、『元々はどうだったか』…っていうのを、すごく考えさせられたね。」
「そうだね。『元』を忘れない…時には初心に帰るって、大事なことだよね。」
山口も同じ想いだったと知り、それだけで僕は嬉しくなった。

「良くも悪くも、僕達は『ずっと一緒』…ズルズルが一番怖いよね。」
「コッチの方も、ちょっとマンネリ気味だったのは…間違いないね。」
それに不満があったわけじゃないけど…こうして『おあずけ』喰らってみると、
腹の底からの『渇望!』って…すっごい久しぶりだったよ。

山口が言葉を発する度に、半袖シャツから出た部分に、唇が当たる。
それを十分わかった上で…わざとそこに鼻頭を付け、吐息で擽ってくる。
このままだと、『前戯で最低1時間』など…僕のメンタルでは到底無理だ。

僕は意を決し、山口にある『提案』を持ちかけた。


「僕達はめでたく婚約したわけだけど、『今まで通り』は…問題あるよね。
   新たなステージへ進む…その前に、『初心』を確かめるべきだと思う。」
「それは…ツッキーの言う通りだね。」
コクリと、素直に頷く山口。ちょっとだけ…後ろめたさが芽生える。

「僕達が『こういうカンケー』になった、『元々』のきっかけ…何?
   あぁ…こうなった『元凶』と言い換えても、いいかもしれないね。」

僕の言葉に、山口の動きがピタリと止まった。ゴクリ…と喉が上下する音が響く。
「ま、まさか…」
「山口が『ゆいごん書』を持って来て、兄ちゃんから『せいをたのしむ』を…
   僕は、あの時の山口の姿…今でも鮮明に覚えてるよ。」

初めての夢精を、不治の病だと思い込み、遺言書を手に駆け込んで来た山口。
無知な僕達は、帰省中の兄に助けを求め…一緒に『技』を伝授された。
兄の導きで、戸惑いながらも快感を得ようとする山口…
その姿が、『技』を実行する度に脳裏に浮かび、僕に擦り込まれていった。
その結果が…『こういうカンケー』と言っても過言ではない。

「僕達の原点とも言うべき『技』…山口が一人でシてるとこ…見せて?」


僕の言葉に、山口は顔を赤く青く点滅させながら、震える声で聞いてきた。

「あ、あのさ…『単独での自慰は性行為だが性交にはあたらない』んじゃ…」
「『挿入に先立って、互いの性的興奮を高める性行為』…前戯には該当するね。」

「それ…俺が一人でシてるのを見たら、ツッキーは、こ、興奮するってことに…」
「そうだけど?だから…『見せて』って言ったんだよ。」

「っ!!??は、恥ずかしくないのっ!?そんなこと、断言しちゃうなんて…っ」
「しょうがないでしょ。誰かさんのせいで、そう育っちゃったんだから。」

山口は絶句し…ガクリと頭を垂れた。そのまま、暫しの沈黙…

このまま押し問答を続けると、山口は泣いてしまうかもしれない。
そろそろ「冗談だよ」と笑って、『素敵タイム』に本格突入した方が…

僕が山口の頭を撫でようとすると、山口がごくごく小さい声で、何か呟いた。

「何?聞こえない…」
「いいよ、って言ったの。」

聞こえて来た言葉に、今度は僕の方が絶句してしまった。

「…えっ!!?」
「ツッキーが見たいっていうなら…でも、一つだけ約束して?
   俺が『いいよ』って言うまで…ツッキーは絶対に動かないって…」
「天地神明に誓って、石の如く固まって…大人しく見てるからっ!!」


それなら…と、灯りを暗めに落とし、僕の正面に移動した山口。
恥かしそうに目を閉じ、緊張がこもる息を大きく吐くと、
短パンの上から、震える手で…ゆっくり中心を撫で始めた。

冗談半分でも、言ってみるもんだ…
まさか「いいよ」なんて…山口が言うと思ってなかった。
だから、この状況は…まさに神様からの『天恵』である。
一瞬たりとも見逃してなるものか…と、薄暗い室内の中、必死に目を凝らした。


「…っ」

声を漏らさないように、唇を噛み締めながら、擦り上げていく。
徐々に質量を増し、薄い布を押し上げてくる部分…
山口は薄目を開けてチラリとこちらを見ると、太腿付近まで露わにし…
片膝を立てて胡坐をかく僕の前に、コロン…と横向きに寝転がった。

実家暮らしの頃、家族にバレないように…こっそり布団の中で。
山口はこうやって、声を殺しながら…一人でシていたんだろう。
何度も行った山口家の部屋を思い出すと、自分の中心がドクンと脈打った。


「はっ…んっ…」

幼い頃、兄に教わった通り…指で輪っかを作り、下から上へ動かす。
息を漏らす時に、少しだけ赤い舌を出し、唇を舐めていく。
これはもしかすると、キスしている感触を、再現しているのだろうか…
その仕種を見ているうちに、自分も無意識に舌を口内で動かし、
唇を掠め…生唾を飲み込んでいた。

「気持ち…ヨさそうだね?」
「あっ…!」

できるだけ低く、落ち着いた声で…そっと囁いてみた。
二人での『最中』に、僕が山口の耳元でよく言うセリフと、言い方だ。
案の定、山口はビクリと体を震わせ、身を縮こまらせた。

いつもは、触れた体を通して感じる山口の動きを、
今日はこうして、少し離れたところからじっくりと観察する…
体感していた以上に淫らな山口の姿に、脳もカラダも、痺れてくる。

全く意識せず、自然と右手を動かし、既に張り詰めていた中心を…

「ダメだよ、ツッキー…まだ、動いちゃ、ダメ…」
「っ!!?」

涙を浮かべた熱い視線で見上げながら、山口がストップを掛けた。
僕はその声に驚き、上げていた右手を握りしめ…両手を後ろに回した。
こうでもしておかないと…また自分で触れてしまいそうだった。

…とは言え、このままの『待て』が続くのは…かなりキツい。
できるだけ早く、山口が『いいよ』と言うように…
僕は唯一自由に動かすことができる口を、存分に使うことにした。


「ねぇ山口…禁欲してた割には、時間掛かってるよね?」
「っ…そ、んな、コトは…」

「もしかして…ソッチだけじゃ、イけないんじゃない…?」
「…っ!!?」

ふるふると頭を振り、違う…と、唇を噛み締めながら呟く。
さっきまでよりも少し早いペースで、手を動かし…くぐもった声を漏らす。

「僕がいつもしてるように…自分でほぐしてみたら?」

我ながら、意地悪な発言だ。
十分染まっていた頬が、更に紅さを増し、山口は首を激しく左右に振った。
額に滲む汗が、布団にパタパタと落ち、丸い跡を残す。


あぁ…本当に山口は、意外と強情なんだから。
さっさと降参すればいいのに…してくれないと、こっちが…

触れてもいないのに、ドクドクと脈打つ僕の中心。
何とか落ち着けようと、腹の底からゆっくりと息を吐く…
それを、潤んだ瞳で見上げていた山口も、大きく息を溢した。

「ツッキーには、絶対、わからないよ…
   自分以外の、誰かが…自分の中で、熱くなる、感覚…」
あの快感を知ってしまったら、もう…『元』には、戻れないよ…
一人で…なんて、もう全然…

山口は目を閉じて深呼吸すると、僕を見上げたまま仰向けになり、
腕を伸ばし…枕元に置いてあった潤滑剤を手に取った。

左手の指先に、少しだけゼリーを垂らすと、数回それを指で捏ねて温め、
ギュっと目を瞑り、恐る恐る…繋がる部分にその指で触れた。

「ーーーっ!!!」

喉を突きあげる嬌声を、必死に飲み込もうとするが、
抑えきれない指の動きに引き摺り出されるように、
紅い舌と共に、喘ぎ声が徐々にあふれ出してくる。

全身を硬直させ、足先までピンと力一杯伸ばし、快感に耐える。
先端からトロリと垂れる雫が、添えられた山口の右手を伝って落ちる。
徐々に慣らされ、チラチラと見え始める、結合部の桃色。
誘い込まれるように、そこを出入りする、山口の左指。

山口にとって、これはとんでもない羞恥プレイだろう。
だが、僕にとっては…予感していたよりも遥かにキツい、焦らしプレイだ。

数日間の禁欲で、そもそも『耐久値』は限界付近だった。
しかも、『お楽しみイベント』に『期待値』の方は膨れ上がる一方。
その上で、目の前で愛する人の艶めかしい媚態…
自分が言い出したとは言え、限界突破目前だった。

最初は、山口が見せても『いいよ』と言ってくれた…『天恵』だと思った。
だが実際は、動いて『いいよ』と言ってくれるまで…『天罰』でしかない。


「『羞恥心』に耐えるのと、『焦らし』に耐えるの…
   どっちが、辛いんだろうね?」

山口はそう言うと、ゆっくりと起き上がり、衣服を全て脱いだ。
そして、僕の肩を押して横たえ、下だけ剥ぎ取ると…
腰付近に跨る様に膝立ちし、その場で再び、後孔を解し始めた。

その手の動きが、限界を迎えつつある僕の中心を、少しだけ掠めていく。
体温で熱く蕩けた潤滑ゼリーが、ぽたぽたと滴となり、僕を濡らす。


「ゴメン、山口…これ以上は、もう…」



やっと…ツッキーが白旗を上げてくれた。
本当にもう…強情なんだから。

真上から見下ろす、ツッキーの姿…実に『新鮮な』眺めだ。
いつもは俺の方が『いっぱいいっぱい』で、
ツッキーをじっくり観察する余裕なんて、ほとんどなかった…
というよりも、この体位だって、俺が恥かしがって、あまりヤった覚えがない。
もしかしてこれが、『頂きの景色』…違う、『頂きますの景色』かな。

ツッキー…いつもイきそうな時、こんな顔してたんだ…
眉間にいつもと違う皺を寄せ、磁器のような白い肌を染め、
伏し目がちの瞳…それを縁取る長い睫毛の上で、汗の珠が震える。

手を伸ばして眼鏡を抜きとると、俺の額から汗が落ち…
高い鼻の稜線を伝って、ツッキーの頬を滑っていった。

その全てがキレイで…ツッキーは本当に美形なんだと、再確認させられた。
こんなにキレイな人が、俺と繋がりたいと切望し…快感に身を捩っているのだ。

羞恥心に耐えて、よかった…こんなツッキーが見られるなんて。
俺は密かに満足し、息を吐きながら…後ろを弄っていた指を引き抜いた。


「ねぇツッキー…『待つ』って本当に、辛いよね…」

俺の言葉に、ツッキーは大きく目を見開いて息を飲み…
辛そうな表情で、「ゴメン、山口…」と、もう一度呟いた。

これは…この謝罪は、調子に乗って『見せて』なんて言ったことじゃなく、
長年俺を待たせ続けたことへの…『ゴメン』だろう。

「羞恥心に打ち克つ方が、待つよりも…ずっといい。」
やっと僕にも、それがわかった…よ。

そう…その言葉が、聞きたかったんだ。
二人で『新たなステージ』を進む前に…絶対に、聞きたかった。


俺はツッキーの中心をそっと握り、繋がる入口に先端を押し当てた。

「もう俺を待たせないって…約束してくれる?」
「あぁ。もう絶対に…ありとあらゆる神々に誓って、絶対に…待たせない。」

はっきりと断言してくれたツッキーに、俺は心から歓喜した。
そのままゆっくりと、ツッキーに乗る様に、じわじわと腰を落としていく…


「じゃあ、今すぐ…動いて。俺ももう…待てないから。」




『夏山に 降れる夕立 地を濡らし』
    月島蛍
『夕闇の 汗ばむ水辺 蛍待つ』
    山口忠



- 月山編・完 -



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「『8時間×3夜』が、ギリギリのライン…って、巧いコトいいやがって。」
「『男のロマン』を達成するなら、皆で楽しくヤった方が…イイですよね?」

赤葦は、さも『真剣に考慮した結果』のように言っていたが、
『三夜連続ヤって三日夜餅を食べる』ことこそ『真の目的』だと知っていた俺は、
横で聞きながら、思わず吹き出しそうになっていた。

「それにしても…ここまで徹底して『↓方向』の考察は…初めてでしたよね。」
「予想外に『大真面目』…ちゃんと考察すると、実に奥深く…勉強になった。」

実際のところ、俺も赤葦もコレに関してはただの『耳年増』…
知識先行型で、実践の方はやっとスタートしたばかり。
付き合い始めてまだ一か月弱…実践回数も、片手で十分コト足りる。

「俺らの現状としては、『やっと町からフィールドに出た』ぐらいだな。」
「まだ『布の服』と『おなべのふた』ぐらいしか、装備品もないですね。」

つまるところ、何もかもが目新しく、とりあえず何でもヤってみたい…
元々強い好奇心(と、たぶん下心)に満ち溢れる冒険者達…といったところか。


赤葦は現在時刻を確認…チャレンジ開始まで、あと…5分程か。

「この三夜連続チャレンジ…俺達にとっては、短期集中型の『夏合宿』ですね。」
「この短期間にどれだけレベルを上げられるか…手やらナニやらで探る日々だ。」

こんなにじっくりと、大手を振るって、正々堂々とナニを頑張れる機会など、
そうそう訪れるもんじゃない…『イベント』と銘打たないと不可能だ。
これぞまさに、『若気のイったりキたり』…じゃなくて、『若気の至り』だ。

この貴重な機会を有効に使うには、まず『目標』を立てることが必要だ。
俺は赤葦に向き直ると、「作戦会議だ。」と指示した。

「技術の習得に必要な段階は?」
「『準備・練習・応用』です。」
さすが参謀。迅速かつ明確な解答に、俺は深く頷いた。

「俺達の現状を鑑みると、まずもって必要なのは…『準備』だ。」
「この度習得を目指す技術では…『知識と事実の照合』ですね。」
これは、雑誌やネット、AV等で収集した『知識』と、目の前の『事実』を見比べ、
先行知識がどの程度使え、事実とどう違うのかを、じっくり観察することだ。
この『現状把握』という『準備』を疎かにしては…先には進めない。

「ということは、初日はまず…『ちょっとした疑問』の確認はどうだ?」
「考察もナニも、スタートはまずソレが肝心…黒尾さん案に賛成です。」

赤葦は壁掛時計を視線で示し、「残り2分です。」と伝えた。
俺は「わかった。」と首を縦に振ると、作戦会議のシメに入った。

「この合宿で…どのぐらいが『イイ具合』かを見極める…これが目標だな。」
「全くの同意です。限界値…『翌日ヘバらないライン』を、探りましょう。」


…時間です。

時計の長針が真上を指す音と共に、赤葦は『優秀な参謀』から、
『妖艶な恋人』へ…ガラリと雰囲気を変貌させた。
その劇的な変化にゾクリと身を震わせながら、俺は赤葦の手を取り、
枕の脇に山と積まれていたクッションの上に、静かに座らせた。

壁を背にした即席ソファー…そこに座った赤葦の両脚の間に挟まるように、
俺は床面…布団の上に胡坐をかき、赤葦の腰に腕を回した。

「俺の『ちょっとした疑問』は…ナニの『詳細』なんだ。」

俺の言葉に、赤葦は一瞬息を飲んだが、冷静さを装って返答した。
「ソレは…ご自分のモノを見慣れていらっしゃるのでは?」

「そんなに俺、柔軟じゃねぇし…自分のは『距離』があんだろ。」
「だから、俺のを『目の前』で観察しよう…ということですか。」

「『一番使うモノ』だから…どうなってんのか、詳しく知りてぇ…だろ?」
「その気持ちは、十分わかりますが…コレのナニを、どう『観察』する…」

そんなの、決まってんじゃねぇか。
コレの最大の神秘は…『どのようにして膨張していくのか』だ。
同じモノを持っているから、『体感』や『手で触った感じ』は熟知している。
だから、『それ以外』の部分で…『実感』してみるのだ。

俺の意図を察した赤葦は、音がする程頬を染めたが…拒否はしなかった。
短パンの腰ゴムに手を掛けると、脱がせやすいよう、腰を浮かせてくれた。
できるだけ刺激を与えないように、ゆっくりと下着も剥ぎ取ると、
まだ『通常モード』のモノが、目の前に露わになった。

「…コレを『真上から』見ることはあっても…『正面』は初めてだな。」
「俺自身…『通常モード』をこんなに『まじまじ』とは…初めてです。」

あの…さすがにそんなに凝視され続けると…
できれば、その…お早めに、『観察』を開始して頂けると…

羞恥故か、無意識に膝が内側を向く。
滑らかな腿が頬に当たり…その感触に、お互いビクリと背を震わせる。
赤葦の言う通り、早めに始めた方が良さそうだ。

俺はゴクリと生唾を飲み込むと、そっと『観察対象』を…口に含んだ。


「っ…!!」

頭上から、赤葦の呼吸が止まる音がする。
逃げようとする腰を、両腕でしっかりと固定し…『観察』を開始した。

触感と同じく、『通常モード』の食感は…ふにふにと柔らかい。
舌を自在に動かしながら口内で転がし、『全体像』を把握する。

チラリと上を見上げ、赤葦に視線を送る…そちらの状況を説明しろ、と。
視線一つでそれを汲み取った赤葦は、俺の頭に手を添えながら答えた。

「温かいものに包まれて…くすぐったいです。
   あと…腰の辺りから、じわじわと…血液が集まってくる感じでしょうか…」

赤葦の言葉通り、段々と集まってきた血液で大きくなり始め、
下顎と舌裏の間では、挟めなくなってきた。
舌に乗せて、上顎で圧すと、拍動しながら形を変え、硬度を増してくる。

「ん…っ、ちょっと…熱くなって、きました。」

時折小さく跳ねるカラダ。
深呼吸の度に上下する、引き締まった腹部が、密着した額と前髪を擦っていく。


かなり『完成形』に近づいてきたようだ。
舌はもう口内で自由に動かすことは難しく、大きく口を開かなければ、
『全体像』を舌で『観察』できない…だが、『細部』の詳細が掴めてきた。

「ぁ…んっ」

腰が跳ねる頻度と大きさが、赤葦の高まりを如実に表現する。
両脚にも力が入り、その都度両側から、俺の頬を包んでいく。

もう一度上を見上げると、戸惑うような熱い瞳とぶつかった。
目が合った瞬間、赤葦はビクリと大きくカラダを震わせ、
一気に膨張したモノが、上顎を押し上げた。

「直接的な刺激も、凄く…イイんですけど…
   この『光景』が、一番…キます、ね…」
あなたが俺のモノを…この凄絶な景色に、ゾクゾクします…

零れそうな程の情欲を湛えた瞳で、熱い吐息を漏らす姿。
舌で細部をなぞる度に、ドクドクと脈打ち返してくる反応は、
これ以上ないぐらい、はっきりと赤葦の『快感』を伝えてくる。

その素直な反応に、もっと気持ちヨくしてやりたい…と、
ただそれだけの想いで、唇で挟み上下させ、先端を舌先で刺激する。


「ちょっ…そ、それ以上…はっ…」

言わなくても…それはわかる。
必死に耐えようと俺の頭を抱え込み、両脚全体で俺の体を挟み込む。
それなのに、決定的な快感から逃れようと…腰は引き離そうとする。

俺が口でシて、こんなにヨさそうにしてくれた…
それが嬉しくてたまらず、逃がしてなるものかと、更に腰を強く抱く。
もうやめろと言いつつも、頭に添えられた手に、全く力は入っていない。
その手にも動きが伝わるように、わざと大きく、頭を動かした。

「や…っ、も、もう、ホントに…離し…」

離すわけ…ねぇだろ。
本当にマズいと、手に力を込めて俺の頭を剥がそうとするが、
それ以上の力で赤葦を捕まえ、痙攣する腰を煽るように撫でた。
そして口内全てで赤葦を包み込み…強く強く吸い上げた。

「んーーーっ!!!」

ビクビクと激しく律動し、熱いモノが口内を潤す。
その爆発的な躍動と焼け付くような温度に、心底驚嘆する一方で、
名状しがたい歓喜が、俺を飲み込んだ。


「あ、あの…『観察』の、ご感想は…?」

上がった呼吸を整えた赤葦は、俺の頭を抱えたまま、
小さな声で恐る恐る…問い掛けてきた。
らしくなく不安そうな声…俺は安心させるように、
抱いたままだった腰をポンポンと撫で、明るい声で断言した。

「『口』や『舌』も性感帯ってのは…ホントだな。」
俺の中で、お前が気持ちヨくなってくのが、ダイレクトでわかって…
それだけで、俺の方も…すっげぇ感じたぜ。

それを証明するように、着ているもの全てを脱ぎ、下肢を曝した。
既に天を仰ぐ『完成形』に、赤葦は感極まったような表情で頬を紅潮させ…
それを隠す様に、Tシャツを脱ぎ捨てた。



積み重なっていたクッションを一つ下ろし、半分程の高さになった所に、
腰をやや浮かせるような形で寝転がり…圧し掛かる黒尾さんにしがみ付く。

先程の『観察』と同じ様に、黒尾さんはそのまま俺の脚の間…
大きく開かされた腿で、今度は黒尾さんの腰付近を挟みながら、
未だ慣れない…繋がる部分に『生温いモノ』を塗る感触に、耐えていた。

慣れない感触だから、慣れるまでその違和感を耐えているだけで、
特にそれに不快感や…痛みを感じることはない。
本当は、とんでもないトコに、とんでもなモノを…なのに、である。

自分が思っている以上に、カラダには負担が掛かっていることは、
翌日以降の『地に足が付かない浮遊感』等で、理解してはいるのだが…
全てを押し出されそうな強烈な圧迫感はあったものの、
巷で言われているような…想像を絶する激痛とは、無縁だった。
というよりも、初回から感想は『極楽♪』のみという…幸運さなのだ。

自分の『ちょっとした疑問』とは、この点に関するものだ。
この『極楽ばっかり』な理由として考えられるのは…

    <A>黒尾さんがものすご~く丁寧かつ入念な『下準備』をしている。
    <B>実はこの赤葦京治、とんでもなく『卑猥なカラダ』をしている。
    <C>上記の<A>及び<B>の両方。
    <D>本当はイれてない。

…この4つのケースが考えられるのではないだろうか。
翌日以降の実感から、きっと<D>の可能性は低いだろうが、ゼロではない。
だから今日は、<D>の可能性を確実に消去すべく…『観察』しようと決めた。


「黒尾さん…俺も、ちょっと、確かめたいことが…」

俺の言葉に、黒尾さんはピタリと指の動きを止め、
視線だけで「何だ?」と聞いてきた。
…最近、この人の言いたいことが、視線だけでわかるようになってきた。
その事実に内心満足しながら、俺は『ちょっとした疑問』を口にした。

「どうやって黒尾さんと『繋がってる』のか…謎なんです。」

俺の質問が意外だったのか、黒尾さんはキョトンとした顔をした。
「そうか、お前からは、全然見えねぇんだよな…勿体ねぇ。」

見えねぇなら…『別のトコ』で確認すればいい。
そう言うと、黒尾さんは俺の左手を取り、そのまま下へと導いた。
「このまま、ここに手を添えて…しっかり確かめてろよ?」

人差し指と中指の間で、結合部を挟み込む様に手を添えると、
その手と指の股を、ヌルリとした黒尾さんの指先がなぞり…

「すげぇ『ビクっ!』となるの…わかるか?」
ビクっ!というよりは、キュっ!というか…想像以上の収縮だ。

「息吐いて…力抜いて…ほら、柔らかくなってきただろ…」
詰まりそうになる息を、大きく口から吐き出すと、
付近の緊張も緩み…濡れた長い指が、スムースに出入りし、広がってくる。
逆に、こうしたら…と、頸筋に息を吹きかけ、鎖骨の窪みを舌で舐められると、
腰がピクリと跳ね、指をギュっと締め付けているのが…物凄くよくわかる。

「これは…俺が気持ちイイの、全部黒尾さんに、バレバレ…ですね。」
「まぁな。コレに締められる俺が…すっげぇイイのも…わかるだろ?」

俺の人差し指を連れて、黒尾さんの人差し指が中に滑り込む。
初めて触った自分の内部…その熱さと、包み込まれるような感触に、心底驚いた。

まるで、中へと誘い込むような収縮…さぞや気持ちイイことだろう。
これならば、黒尾さんもきっと満足しているはずだと『実感』でき、
俺はこっそり安堵し…『<B>は確定』なことも、密かに自認するしかなかった。


再び黒尾さんに手を引かれると、今度は『自分以外の熱』に触れた。
じっくりと形を確かめるように、指先で溝を撫で、円を描く。
それに手を添えたままの状態で、結合部に先端を当てられた。

「さっきみたいに…ゆっくり息、吐いて…」

言われた通りに、息を大きく吸込み…できるだけゆっくり、息と力を抜く。
自分の手と指を通し、『黒尾さん』がじわじわと結合部を押し開きながら、
自分の中に沈み込んでくるのが…ダイレクトに伝わってくる。

さっき黒尾さんの唇が、自分のモノを包み、飲み込んだのと同じように、
今度は自分が黒尾さんのモノを、中へ引き摺り込んでいく…
そして、添えていた手の甲に、圧し掛かる肌と骨盤が触れ、
腕ごと全部、黒尾さんのカラダに挟まれ、動かせなくなってしまった。

唯一動かせる指先で、付近を触ってみる。
二人の境界がなくなり、隙間なくピッタリと交接している様を、
その部分以外…『別のトコ』で、これ以上なくはっきりと確認できた。


「間違いなく…黒尾さんと俺は、『繋がって』ます…ね。」

確認作業を終えた俺は、手をカラダの間から引き抜き、
黒尾さんの首に両腕をしっかりと回し、更なる密着を求めた。



『夜を越えて こもる熱風 葦を撫で』
     黒尾鉄朗
『天仰ぎ 黒髪越しに 見る花火』
    赤葦京治



- クロ赤編・完 -



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『朗々と 京(みやこ)の山を 照らす月』 =M=

※五大(地水火風空)+識 = 六大
※ハブ酒について→『林檎王子
※『付き合っている』の定義 →『諸恋確率
※兄に教わった『技』 →『技能伝承


2016/08/19(P)  :  2016/09/27 加筆修正

 

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