帰省緩和⑪







   どうしても外せない来客があるので、
   御出勤お願いします。


赤葦からこの連絡が来たのは、俺がポロリと『あの言葉』を零した…三日後。
その間、赤葦からは全く音沙汰なく、当然こちらからは連絡が取り辛く、
更には、研磨から『吸血鬼は出禁』の張り紙写真が送られてきてからは、
あのビルに近付くことすらできず…出逢って初めて『ノー赤葦デー』が続いた。

山口は二口と帰省…時期的に考えても、青根も例大祭のために帰っただろうし、
もしかすると、ツッキーも一緒に、アイツらの郷に帰省しているかもしれない。
研磨は研磨でウチの郷に戻ったらしいことが、実家猫の写真から判明している。

つまり…ヒマだ。
『黒猫魔女』も『レッドムーン』も、揃って休業期間中だし、
嘱託をしていた献血ルーム三丁目店も、夏前に閉鎖…新宿駅前店と合併し、
移転のゴタゴタが落ち着くまでは、出勤しなくていいことになっている。

…ん?この話は…皆にしたっけ?
誰かに道案内を頼んだ記憶もねぇから…ま、そのうち言えばいいか。


そんなこんなで、引越作業もあらかた終わり、ヒマを持て余していた俺は、
ぶらぶらその辺を散歩…もできず、ただ部屋で読書に明け暮れていた。

いつ赤葦から連絡が来てもいいように、スマホを片時も離さず傍に置き、
風呂やトイレには、ジップロックに入れてまで持って行っていたところ、
ごく淡々とした出頭命令…ではなく、業務連絡が届いた。

ビル全体が大規模修繕中で、休業を余儀なくされているにも関わらず、
無理をおして店を開ける程の来客とは…余程『特別』な相手なのだろう。
ツッキーから引き継いだ『黒服の手帖』にも、物々しく書かれていた方々…
確か『七人の侍』だか『戦国の七雄』だか、『竹林の七賢』だったか、
『※要するに超VIP…パパ的な人です』と、注意書きが付されている人物だ。


   (パパ的な人…か。)

おケイに貢ぐ常連客は、どいつもこいつも『太い』…一晩にボトル数本入れる。
それに、平均的サラリーマンの月収分程度ならビクともしない太客を集めると、
『水滸伝』ができる大人数…『七』ではとても収まりきれないのだ。

その『七』のうち一人は、月島父…歌舞伎町の不動産王だから、
少なくともそのレベルの『パパ』が、本日俺が接客すべき相手ということだ。

「歌舞伎町の女王…高嶺の花どころか、俺には『雲の上』の存在かもな。」

素の赤葦本人は、至って普通の青年…地味で堅実な裏方が似合うぐらいだが、
生まれ持った素養は隠しきれず、類稀なナニかが、赤葦を女王たらしめている。
性別や性格も超越した部分で、誰しもが赤葦を『女王』だと感じるのだろう。

そんな赤葦を支える七人のパパ…臣下達を、俺は納得させることができるのか?
下手したら、歌舞伎町どころか日本の権力中枢を敵に回すかもしれないが。

まぁ、赤葦のためなら、永田町や兜町を壊滅させるぐらい造作もないけれど、
敵はその程度の小物じゃなくて、赤葦本人かもしれないのが…最大の難関だ。

   (俺に愛想尽かしちまった…かもな。)


あんなタイミングで、あんな風に、あの言葉を言うつもりなんてなかった。
勿論、どんなにカッコつけたとしても、鈍感で不器用な俺のことだから、
気の利いたシチュエーションや言葉なんて、出て来ることはないだろうけど…
それでも、あんなに酷い『ポロリ』よりは、かなりマシだったはずだ。

   今日こそ…言うぞ。
   今がチャンス…言っちまえ!
   今を逃すと…きっと言えないままだ。

『レッドムーン』と同じビルに事務所移転し、俺自身も引っ越すと決めてから、
脳内でありとあらゆるシミュレーションをし、タイミングを見計らっていた。

ズルズルと相手を待たせてしまうのも申し訳ない…その気持ちもあったが、
それ以上に、引越を言い訳にしてしまっても良いのかという…葛藤があった。

   どうせ『同じ屋根の下』になるなら、
   この機に同棲しちまってもいいだろ。
   いっそのこと、一緒になっとくか…?

…等、引越の『ついで』みたいに、『あの言葉』を言いたくはなかった。
一緒に住んだ方が合理的だし、それなら道理を通しておこう…なんていう、
御都合主義的な流れで、赤葦との将来を決めてしまいたくもなかった。

だからこそ、慎重にコトを運ぼうと、熟慮に熟慮を重ねていたはずなのに…

   (熟慮…いや違う。ヘタレなだけだ。)


結局は、何だかんだ言い訳をして、『あの言葉』を言う勇気がなかっただけだ。
その結果、子どもじみた独占欲に支配され…ポロリと零してしまった。
自分の失態が信じられない…どうして言ってしまったのか全く理解できないし、
カッコ悪いを通り越し、赤葦に申し訳なくて…合わせる顔がない。

「はぁ…仕事、行きたくねぇな。。。」

言うぞと決めてからも、言ってしまってからも、こうして悶々とし続けている。
濃い青みがかった雨の日の暗い夜空みたいな、重々しくて欝々とした…胸の内。
こんなに自分の内に『青』を感じたことは、300年ほどの人生でも初めてだ。

   二人で幸せになるはずなのに。
   そのための『第一歩』なのに。
   どうしてこんなに…青いのか?


赤葦と幸せになるためなら、たとえどんな手段を使っても障害は消し去るし、
俺の人生の全てをかけて、赤葦を幸せにする覚悟はできている。
なにものにも代えられない、唯一無二の存在…自分の命だって惜しくはない。

「それぐらい好きだから…尚更、な。」

   一刻も早く謝りたい。
   謝って、真意を伝えたい。
   それから、改めてちゃんと…

わかってはいる。
残された時間は、そんなにない。周りは敵だらけ…うかうかしていられない。
それでもやっぱり、青黒い何かに囚われて…踏ん切りがつかないのだ。


「仕事行きたくねぇ…ヤる気出ねぇ…」

溜息と共に渦巻く青をネクタイで絞め殺し、強引に仕事モードへ切り替える。
さすがの俺も、赤葦の所へ繋がる道は、もう迷えねぇよな…と自嘲しつつ、
重い重い脚を引き摺りながら、職場へ向かった。



*******************




「ようこそ『レッドムーン』へ。隣…よろしいでしょうか?」


店に到着すると、既に『特別な御客様』と赤葦は、楽しそうに談笑していた。
扉を開ける前に、赤葦本人の珍しく軽やかな笑い声が聞こえたこと、そして、
「やだなぁ、京治ってば~」と、赤葦を本名で呼ぶ、俺の全く知らない声に、
緊張感と警戒レベルが一気に上昇…喉がカラカラに乾き、手に汗が滲んだ。

   (間違いなく…『七人』の一人だ。)

いや、七人どころか、四天王だとか随神クラスのスペシャルVIPの登場に、
仕事行きたくねぇ~なんて言ってたのが嘘のように、俺は『殺る気』に漲った。
もしソイツが一瞬でも赤葦に色目を使ったら、速攻で…消させてもらおう。

   (吸血鬼をなめてもらっちゃ…困る。)

まずは自分のドス黒さを消し去り、目映い『営業スマイル』を貼り付けてから、
意気揚々と店内に入り…敵と赤葦の顔を見ないよう、手を胸に当て深々お辞儀。



「隣…よろしいでしょうか?」の問い掛けに、返事は…なかった。
返ってきたのは、「はっ…」と息を呑み込む音×2人分のみ。
あまりに何も返ってこないから、静かに頭を上げると…予想外の反応があった。

「か…っこ、イイ…っ♪」

ぽわん♪…と、音がするほど頬を染め、ウットリとした視線を泳がせる主賓。
突き刺さるような敵視を待ち構えていた俺は、完全に出鼻を挫かれてしまい、
毒気も殺る気もすっかり消え失せ、「はぁ…」と息を零して立ち竦んだ。


「ちょっ…ちょっと京治!こんなステキな人が入ったなんて…聞いてないよ!」
「聞かれてないから、言ってない。」

「嘘うそウソ~!その顔は、京治が『隠しごと』してる時の顔だもんねーっ!」
「…お、俺は忙しいから、その新人黒服さんに相手して貰ってよ。」

「あ、そう?じゃぁ、僕達は勝手に楽しんでるから…仕事頑張って~♪」
「…っ!ほ、ほどほどに、ね。」


な…何が起こってるんだ?
よくわからんが、拗ね気味の赤葦が主賓の隣に俺用のお手拭きを雑に投げ置き、
何故か主賓さんが「ささっ、どうぞこちらへ~♪」と、椅子を引いてくれた。

「えーっと、お邪魔、します…?」
「は~い、いらっしゃ~い♪京治、彼には…『スレッジハンマー』を。」

『スレッジハンマー』は、ウォッカにライムジュースを加えたカクテルで、
これが意味するものは、確か…『心の扉を叩いて』だったはずだ。
つまり、腹を割って話をしようという、主賓からのストレートな申し出だろう。


「すみません…頂きます。」
「じゃぁ次はね、この季節にぴったりな『セプテンバー・ムーン』を。」

9月の月…『あなたの心はどこに』と、相手を探る意味を持つカクテルだ。
いきなりこの二つを俺に出したということは、主賓のターゲットは…俺だ。

俺としては、赤葦に色目を使ったら抹消しようと思っていたが、
俺が標的なら話は別…適当に楽しい時間を過ごし、気持ちよく帰って頂くのみ。
赤葦が安全だとわかった途端、少し落ち着きを取り戻した俺は、肩の力を抜き…
脚を組んで主賓との距離を少し詰めながら、マスターに注文を頼んだ。

「こちらの御客様に、最も相応しいものを…差し上げてくれないか?」
「…わかりました。」


赤葦が何を出すかで、主賓との関係性が見えてくる。
俺の希望としては、『ウィスキーフロート』で『楽しい関係』辺りが理想だが、
パパ的な人なら『カリフォルニアレモネード』で『永遠の感謝』も良しだろう。

必死に覚えたカクテル言葉から、自分に都合の良いものばかりを選んでいると、
全く予想していなかった…俺にとって最悪と言えるものが、出てきてしまった。

注文を受けた赤葦は、何故かバックヤードに入ったかと思うと、
寿司屋で貰った『魚偏』漢字が羅列されている、休憩中専用湯呑を持って来た。
その中に氷を数個入れ、おケイ専用の江戸切子ボトルを出して注ぎ入れた。

   (おいっ!ちょっと待て…っ!)

そのボトルは、当店で最も高価…俺だって、恐れ多くてまだ飲んだことがない。
しかもそれを、店のグラスではなく普段使い用の湯呑に入れて出すなんて…

   (何、考えて、やがるんだ…?)


自分の方から仕掛けた罠なのに、逆にこちらが大ダメージを喰らってしまった。
受け取った主賓も、おウチっぽい湯呑をごくフツーに受け取って、ごくごく。
おまけに冷蔵庫から出した、赤葦専用お菓子…ビスコを美味そうに頬張った。

その甘味?は、甘い物苦手な赤葦が、唯一好きだと言っていたビスケットだ。
「おなかにやさしい乳酸菌が1億個…どうやって入れたのか気になります」と、
1袋5つ入りのうち、たった1つだけを俺にくれる、超お気に入りのおやつだ。
せめてもう1つ欲しいと俺は常々思っているのに、主賓には1袋丸ごと…だと?

   (無性に…腹立たしい。)

俺にもくれ…と、指で四角い形を作って見せたが、赤葦は別のものを出した。
シャンパングラスにチョコ&イチゴポッキー…御客様用のオシャレな乾き物だ。
俺だって甘い物は苦手なんだから、せめて柿ピーを…じゃなくて。

   (俺の方が…客かよっ!)


あぁ…やっぱ、今日は仕事に来るんじゃなかった。
きっとこれは、赤葦からの『返事』…俺に対する拒絶を意味するのだろう。
俺よりも赤葦の『内側』に相応しい人間がいると教えるために、ここに呼んだ…

   足元から湧き上がる…『青』。
   その沼に、全身が…沈み込む。
   青に包まれ、呼吸が…止まる。

「どうしたの、黒尾君…?」
「あ、いえ、何でも、ありません…」

今すぐここから逃げ出してしまいたい。
でも、今は仕事中…それに、足が青に囚われて全く動けない。
酸欠でキーン…と耳鳴りがする中、主賓は俺の取り繕った笑顔に微笑み返し、
無邪気に『たのしい酒屋トーク』を、俺に投げ掛けてきた。


「ねぇねぇ、黒尾君には…恋人いる?」
「恋人…今は、御客様ですよ?」

「そうじゃなくて!僕は…プライベートを聞いてんだけどな~?」
「………。」

定番中の定番、今まで何度も御客様と語り合い、躱し続けたトークだ。
いつも通りの定型句で、適当に誤魔化せばいいはずなのに…

目の前に赤葦から置かれた3杯目は『アラスカ』…その意味は『偽りなき心』。
今の俺にとっては、「正直に答えろ」という、これ以上にない脅迫だ。

   (あぁ、そうかよ。)

完全に『青』に染まった俺は、視界から赤葦をシャットダウン。
半ば…偽りなく申告すれば100%『投げやり』な気持ちで、主賓に相対した。


「恋人、いますよ。いや、正確には…いた、ですね。」
「じゃぁ、今は…いない?」

「俺としては、恋人『以上』を望んでいたんですが、
   俺が不甲斐ないせいで、求婚に大失敗してしまい…フラれてしまいました。」
「えっ!!?黒尾君をフっちゃうような人がいるのっ!?
   蛍クンほどじゃないけど、黒尾君だって…物凄く魅力的で素敵なのに。」

蛍クン…か。
赤葦と同じぐらい秘密主義で、不愛想な元黒服の本名も知っている仲なのだ。
そんなスーパーVIPがいるなら、ちゃんと手帖に書いてくれないと困るだろ。


「その人のこと…諦めちゃうの?」
「…元々、相容れない存在だったのかもしれません。」

「凄い年の差とか、身分違いとか?」
「まぁ…そんなもんですね。」

「それさぁ…めっちゃ赤々と燃え上がるシチュなんじゃない?」
「いや、もう全て燃え尽きて…真っ青なカンジですね。」

今、冷静になって改めて考えてみると…
年の差もケタ違いだし、コッチは人外…吸血鬼だし、アッチは歌舞伎町の女王。
あらゆる意味で、相容れない…棲む世界が違い過ぎるじゃないか。

   (浮かれてたんだな、俺も。)

あまりに劇的な出逢いと、身を焦がす激情に流され…どうかしていたんだろう。
しがない吸血鬼(しかも300歳のジジィ)が、結ばれていい相手じゃない。

欝々と沈み込む俺に、主賓…俺より240歳ぐらい若い中年の男性は、
「そう…だよね。懐かしいなぁ~」と、年下とは思えない発言を口にした。


「わかるよ、黒尾君の気持ち。僕も…同じだったから。」
「貴方も吸…じゃなくて、それはどういう意味ですか?」

「僕も、とんでもない身分違いの恋をしたんだよ。」

あれは30年ぐらい前…かな。
新入社員だった僕は、初の接待で初めて歌舞伎町へ来たんだけど、
同僚が頼んだ濃厚梅酒と、僕のジャスミン茶を間違えて飲んじゃって…ダウン。

道端で昏睡し、財布も何も全部取られ…そんな僕の前に、天使が舞い降りた。
どのくらい天使だったかと言うと、京治にピンクを着せてラメで飾ったカンジ!
僕は天使に一目惚れ…その場でプロポーズ(他イロイロ)しちゃったんだよね~

「それはまた、欲望に正直…あー、えーっと…運命的、ですね。」
「僕も自分でそう思うよ。でも、そこからが…文字通りに地獄だったんだ。」


天使に手を出した僕は、彼女のパパ達どころか、歌舞伎町全体を敵に回し…
若くして莫大な『水揚げ料』の支払義務を背負うことになっちゃったんだよ。

「僕の『異類婚姻譚』は、幸せな借金地獄だったってわけ。」
「っ!!?」

いやぁ~、参っちゃうよね~
借金返すために、僕も歌舞伎町で働こうと思ったんだけどさ、
『強奪魔は出禁』って、街全体からはぶられたし、怖い人が追いかけてくるし…

あ、でも今は大丈夫だよ?
僕の借金を肩代わりしてくれた人に、最愛の息子を差し出して…チャラだから♪

「はぁっ!?息子を売ったのかっ!?」
「あははっ、違うよ~多分、だけど。」


何なんだ、この主賓…とんでもねぇ化物じゃねぇか!
こんな御仁が、どうして赤葦のパパ的な存在に…『七人』の一人なんだっ!?

ほわほわ~♪と、人畜無害そうな雰囲気を醸してはいるが、よく見ていると、
笑みを絶やさないその瞳の中に、時折猛禽類のような鋭い光が走るし、
歌舞伎町全体を敵に回したという言葉に相応しい、滾るような灼熱の血…

   (…ん?この血って、まさか…っ!?)


「ちょっと待って。その話…俺も知らないんだけど。」
「だって…聞かれてないから、言ってないよ、そりゃ。」

本気で驚いた顔をしている赤葦に、主賓はあっけらかんと言い放った。
さっきの赤葦と同じセリフで切り返す…本当に、タダモノではない。
いや、あるはずがない…俺がこの『血』を、見間違えるはずがないじゃないか。

   (や…やられたっ!!)


「あのー、つかぬことを、お伺いしますが、御客様の奥様…天使さんって…」
「聞いて驚け!何と僕の天使は…先代の『歌舞伎町の女王』なんだよ~」

女王様に手(とかアレとか)出しちゃったんだもん、そりゃぁ出禁だよね~
街全体から出禁を頂いたのは、歌舞伎町近代史では僕ともう一人だけ…
『オロチ襲来伝説』の、どこぞの可愛い大蛇魔女だけらしいよ?

「それ、俺の身内…部下、です。」
「そうなの?今度紹介してよ~♪」
「山口君が…伝説のオロチっ!?」

街を干上がらせた オロチの正体…山口が酒の天敵だと知らなかった赤葦は、
衝撃的な事実に、羨ましい…と呻き、顔を真っ青にしてその場に突っ伏した。


「これで、黒尾君の『身内』には、二人も出禁対象者がいるってことになるね。
   あ、君も京治から出禁中なんだっけ?じゃぁ、僕とは出禁仲間だね~♪」

歌舞伎町の女王に手ぇ出しちゃった先輩から、後輩の黒尾君へ…アドバイス。
身分?人種?違い程度で諦めちゃダメ。っていうか、諦めるなんて無理でしょ。
だって、相手は天使なんだよ?独占欲でついポロリプロポーズ…ヤって当然!
あ、カンケーないけど、蜜の滴り具合とお元気さが、蜂蜜サプリみたいだね〜♪

「黒尾君が出逢ってその場で天使を喰ったとしても、僕だけは君を擁護する!」
「あっありがとう、ございます…いやいや、貴方がソレ言うのは大問題だろ!」

大体ね、天使の血を色濃く継ぐ京治を、出逢って今まで囲ってないってことが、
僕としては信じられない…もしかして黒尾君、実は不能だったりするわけ?
そうじゃないなら、一刻も早く…一両日中に『御挨拶』に来るべきでしょ!

僕がコレ言うのも何だけど、京治のエロスは人外級じゃん?漏れ漏れで超危険!
さっさと安全な人に囲って貰わないと、犠牲者が増えるだけだからね~

「先代女王も、首を長~~~くして、王子様参上!を…待ち望んでるから。」


…あっ!念の為に言っとくけど、君好みのデリシャスな血を持つ僕の天使に、
色目使ったり、無礼を働いたりしようもんなら、たとえ吸血鬼でも絶倫王でも…

「…消すから。」

それじゃあ、明日か…明後日がいいな。明後日の晩、ウチで待ってるからね~
ばいば~い、おじゃましましたっ!!



満面の笑みで手を振り、店を出て行く主賓に、俺はただ呆然と手を振り返し…
店先まで見送りに出た赤葦が戻り、入口の扉を閉めて鍵を掛けたところで、
足元に広がる爽快な秋晴れの『青』に促されるように、赤葦に一歩近づいた。

「俺に、聞きたいことや言いたいこと…言うべきことが、ありますか?」

そんなもの、山ほどある。何から聞くべきか、言うべきか…
俺を嵌めたな?あの人はパパ『的な人』じゃなくて『モロに』パパだろ!?
…違う。そんなことよりも、もっと言うべきこと…言いたいことがある。


   手を伸ばし、腕を掴む。
   間近に赤葦を引き寄せ、  
   両手で頬を、包み込む。
   溢れ出る欲を、ポロリ…

「何よりもまず、今はお前と、めちゃくちゃ…キスしたい。いいよな?」




- ⑫へGO! -




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※おケイ専用ボトル →『下積厳禁③
※オロチ襲来伝説 →『再配希望⑨



おねがいキスして10題(1)
『06.欲望だけのキスをして』


2018/09/12

 

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