ご注意下さい!


この話はBLかつ性的な表現を含んでおります。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、 閲覧をお控え下さい。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、責任を負いかねます。)

    ※今回はクロ赤のターンです。



    それでもOK!な方  →
コチラをどうぞ。



























































    帰省緩和⑫







   こんなに『欲しい』を訴えるキスが、
   この世に存在したなんて。

   力任せに奪うわけじゃない。
   全身全霊で『お前が欲しい』と、
   ただただ、俺を求める…キス。



ぽたり…シンクに置いたグラスに、やや締まりの悪い水栓から、水滴が落ちる。
まるで、その水が欲しいと願うように、水滴の音に合わせてキスが落ちてくる。

一滴、また一滴。
キスが降る度に、澄み切った青い波紋が全身の隅々にまで広がってゆき、
その波に揺さぶられ…ナカからじわじわと熱が反響してくる。

『欲しい』という欲望から生まれたキスが、こんなにも優しいなんて。
情欲を齎らし快楽を引き出すキスとも違う…『優しい』としか言えないキスが、
青ささえ感じさせるほど純粋な、黒尾さんの想いを伝えてくれた。

   (こんなにも、俺を、求めて…)


音として口から出た『言葉』じゃない。
でも、どんな『求める言葉』よりも、この優しいキス以上に真っ直ぐで、
はっきりと黒尾さんのキモチを伝えてくるものは、ないかもしれない。

   (この『求め』に、俺は…)

吸血鬼に触れ、思考が微睡み始める。
だが、今日はその生理的な作用だけではなく、内側から湧き上がる別のもので、
あったかくて、柔らかい…優しいなにかに、全身を満たされるような気がした。

   (俺も、あなたが…欲しい。)


壁に背を付け、黒尾さんを引き寄せる。
優しいキスで溶けてしまわぬよう、しがみ付きながらズルズルと滑り落ちる。
黒尾さんは、溶け始めた俺を一滴残らず吸い上げようと、キスを続け…
そのキスが、更に俺をトロトロと溶かしていくのだ。

「いいのか?ここは…職場だぞ?」

   仕事とプライベートは別。
   職場とは、神聖なる場所。

仕事終わりに二人で『お疲れ様』と酌み交わしながら、良い雰囲気になっても、
キス程度に止め、それ以上は上に帰ってから…という、暗黙のルールがあった。

「いいのか?」という確認は、『それ以上』を求め、『帰ろう』という誘い…
いつもはそれに応じ、黒尾さんが俺を抱えやすいように、体重を預けていた。
でも今日は、逆に俺の方へと強く抱き寄せて、床に完全に座り込んだ。

「今すぐここで…ダメ、ですか?」


俺の答えに、黒尾さんはひどく驚いた顔をしたが、口の端を上げて笑うと、
軽々と俺を抱え、一番端の丸椅子…黒尾さん専用の席に俺を座らせた。

「俺がずっと座ってる場所で、ナニしたか…仕事中に思い出してもいいのか?」

椅子の後ろから伸ばした手を、ベストの隙間からそっと差し入れると、
シャツの上から爪先だけを滑らせ、胸をほんのちょっとだけ掠めてゆく。
くすぐったいだけの微妙な感触がもどかしく…顔を逸らせてキスをねだる。

「俺は仕事中、ココに座ることはない…この景色を見ることは、ありません。」


我ながら、酷い屁理屈…それが一番恥かしくて、自分から蝶ネクタイを外した。
ベストも脱ぐから一旦手を退けて…と、仕種で伝えても黒尾さんは動かず、
唇を尖らせて不満を表し、そこへのキスを求めても…微笑みしか返ってこない。

「なら、赤葦がいつも居る場所…カウンター内のシンク前に立ってヤっても?」
「残念ながら、愛着のあるこのシンク…一緒に新設することになったんです。」

ほら、さっきから水滴がぽたぽた…水栓の締まりが悪くなってきているので、
他の設備と共に、これも新調…どんな痕跡を付けたとしても、問題ありません。

   だから、早く…お願い。
   これ以上…焦らさないで。
   今日は…ココがいいんです。


椅子ごとクルリと黒尾さんの方へ向き、ネクタイを引き抜いて放り投げ、
抱き着いて背を大きく撫でながら、舌で上からボタンを開けていく。

一つ開ける毎に、確認…いや、催促するように黒尾さんをじっと見上げ、
漆黒の瞳の中に、じわりと熱を帯びた色が滲み始めてから、俺は椅子を降りた。

そして、もう一度クルリ…
椅子の座面に覆い被さるように伏せ、チラリと黒尾さんの方を振り返った。
でも、その姿を視界に捉える前に、目の前が真っ暗に…背後が熱に包まれた。
それだけで、心の大部分が満たされたような気さえして…頬が緩んでしまう。


「今、自分がどんな格好してるか…ちゃんと自覚してるか?」
「たとえ神職でも、喰わずにはいられない…据膳でしょう?」

「万が一、明日、足腰立たなくなったとしても…いいってことなんだな?」
「帰省は明後日の晩…明日は一緒に、のんびり寝て過ごす予定ですよね?」

「俺は最初に、上へ帰ろうと提案した。ココで…って求めたのは、お前だ。」
「まるで月島君みたいな、言い訳三昧ですね。結局…応じて下さるのにね。」

「ツッキーの奴、常識人ぶっておきながら、ココよりはるかに神聖な場所で…」
「下手したら神社の神域で、『いただきます』してるかも…しれませんよね。」

「まぁ、俺も…赤葦の求めには、応じる以外の道はねぇんだけどな。」
「言っときますけど、最初に欲しがったのは…黒尾さんの方ですよ。」


他愛ないお喋り…言い訳をなすり付け合いながら、お互いの体も擦り寄せ合う。
どっちが求めて、どっちが応じたかなんて、本当はどうでもいい話…
二人の意思の合致があれば、心も体も重ね合わせていけばいいだけだ。

相変わらず、黒尾さんは優しいキスを絶え間なく続けてくれる。
でも、これから繋がる部分を解す指も、同じくらい優しいばっかり。
俺の意思によらず、不随意に黒尾さんの指を締め付ける動きが、
『あなたが欲しい』という、俺の欲望を伝えているかのようで…何だか悔しい。

優しいキスと、柔らかい愛撫。
既にそこそこ潤っている大地に、更に水を浸透させるような、焦ったさ。
もう溺れてもいいから…と、自ら脚を大きく開き、腰の高さを上げた。


「そんなん、じゃ…足り、ません。」
「そうか…なら、どうすればいい?」

「もっと…キス。それから、もう…」
「仰せのままに…息、吐いてろよ…」

俺の求める通りにキスし、そして…ようやく黒尾さんが入ってくる。
そのペースも、慣性の法則に従っているかの如く、じわりじわりという速度。
水栓から漏れる水滴よりも遅く、繋がったのに余計にじれったさが募っていく。

黒尾さんの動きが止まる。
あまりに緩慢な侵入と、吸血鬼の体液のせいで、痛みや負担は感じない。
その代わりに、『もっともっと』とカラダの隅々から欲が湧き上がり、
欲を絞り出すように収縮し、黒尾さんを締め付けるのに…まだ動いてくれない。

「ねぇ、なんで…?」と視線で問えば、「どうすればいい?」と視線が戻る。
あぁ、成程…今日は俺の求めに徹底的に応じて下さるということ、つまり、
こちらから求めなければ、何も応じない構えなんですね。

何でも聞いてくれる、優しい王子様のフリをして…ホントにズルいヤり方だ。
優しい方がキツいシリーズ…ソッチがその気なら、コッチも本気でイきますね。


「頭…撫で撫でして下さい。」
「わかった…イイ子イイ子。」

それから…頸も肩も背中も。手で撫で撫でしたところを、今度は唇で辿って…
ギュっと隙間なく抱き締めながら、上半身の前面も、撫で回して下さい。
そして、いつも念入りに黒尾さんが弄る部分を…いつも以上に、念入りに。

「シャツの上から?それとも…ナカ?」
「直接。両方共。んっ、そう、です…」

「俺が、気持ちっイイ、ように…」
「優しく縁を撫でて…軽く摘む。」

的確な刺激に、俺の腰が跳ねる。
その動きでナカが痙攣しても、黒尾さんの腰は…動いてくれない。

「俺も、まだまだっ、です…ねっ」
「それは…何とも、言えねぇなっ」

あ…声がちょっと、上擦った。
顔は見えないけれど、相当『頑張って』いるのが…バレバレだ。
『頑張り所』がズレズレなのが、妙に可愛らしく…俺は頬と緊張を緩めた。


「俺の、イイトコ…擦って。」
「それは…コッチの、ココ?」

「あっ、違っ!前は、包む、だけ…」
「了解だ。刺激し過ぎず…だよな?」

「動かして…下さ、い。」
「どこを…どのように?」

事細かく聞かれ、それに返事をするうちに、欲望も少しずつ引き出されていく。
『少しずつ』な分、恥ずかしさも薄れ…素直に口から欲が零れ出てくる。
きっとこの質問に答えたら、もうあとは止め処なく欲に流されるだけ…

一度大きく息を吸い、酸素と黒尾さんの気配をしっかりと肺に充満させ、
それが脳に回りきって、甘い痺れを感じてから…アレもコレも吐き出し始めた。

「黒尾さんの、熱を、俺の、ナカで…」

ゴクリ…と、喉を鳴らす音が耳元に響いてきた。
自分で言い出しておきながら、今頃緊張し始めるとは…面白い人ですね。

それでは、早速…


「まずは入口付近を浅めに。ランダムにその速度と深さを変えて下さい。
   勿論、その際には俺のイイトコを時折掠めつつ、徐々に強度を増す方向で。」
「っ!?わ、わかった。」

「あっ、何ですか、その、ぎこちない動きは…そんなんじゃ、足りません…っ
   これでは、明日…高尾山に、遠足に行っても、ヨユー…ですよっ、あっ…」
「俺の方が足腰もちそうにないんだが…年寄りは、労わってくれよ…なっ!」

「あっ!ん…やっ、れば…デキ、る…じゃ、ないですか…っ
   もっと、ぎゅっと、抱き締めて…ぴったり、引っ付いて…」
「赤葦の欲望…底なし、だ…なっ」

予感はしていたが、ひとたび欲を曝け出すと、本当にとどまることを知らない…
箍が外れた水栓のように、溢れる自分の欲深さと快楽に、溺れてしまう。


「そのまま、奥へ…ずっと、入ってて…俺から、離れ、ないで…っ」
「こうで…いいか?」

「もっと…もっと、俺の、傍に…」
「あぁ…キツくねぇ、か?」

「俺が、イイと言うまで…んぁっ、ずっと、ずっと…キス、して…」
「キスしてたら、言えねぇ、だろ…他にも、何かあるか?」

「最高に、気持ちヨくして、それから…
   俺と、結婚して、下さい…」
「わかった。万事りょうか…いっ!?」

「あっ!?何で、もうイって…っ!?」
「いやいや、お前今、何イって…!?」


予告もなく最奥に注がれた熱と圧迫に驚き、こちらも同時に…零してしまった。
吸血鬼の体液に酔い、意識が朦朧とする中、首を捻って後ろを振り向くと、
顔を真っ赤にして、口をパクパク…黒尾さんが呆然と固まっていた。

あまりの気持ちヨさに、俺より一瞬早くイったのが、恥かしかったんですね。
それでは、後片付けと介抱、帰宅してお風呂と、寝起きにもう一回ゴクラクへ…

「あ、朝ごはんは、海苔の入った、厚焼き卵が…食べたい、です…」
「それはわかった。わかったが…さっきの『求め』は、その…っ!」

「さっきの、『求め』…?あ、お風呂でも、一回イっときます、か…?」
「それも了解!いや、そうじゃなくて…あークソ!もう、応えるぞ…!」

独占欲でついポロリした俺が言うのも何だが、情欲が嵩じて零すなんて…なぁ?
アレもコレもソレも、全部いっぺんに…イっちまったじゃねぇか。
たとえポロリでも、お前の『求め』…凄ぇ嬉しい。だから『応じ』させてくれ。

「まだ寝るな。一言だけ聞いてくれ。」
「…?何、です…?手短に…どうぞ…」

ズルリ…と、黒尾さんが離れていく感覚に、無意識の内に手を伸ばす。
俺から離れないでって、言ったのに…ずっと俺の傍にって…

あぁ…眠い。もう…落ちそう…
だが、落ちそうだった意識は、力強い抱擁と明朗な言葉で引き上げられた。


「お前からの求婚、喜んで受ける。
   …結婚しよう。そして、二人で幸せになろう。」



「…目、覚めちゃい、ました…」




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おねがいキスして10題(2)
『06.優しいキスをして』


2018/09/17  

 

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