▲ご注意下さい!▲
この話は、徐行運転ながらBLかつ性的表現を含みます。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、閲覧をお控え下さいませ。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)
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「相互接続…完了、だな。」
「ここから…始発、です。」
赤葦に『最初のひと押し』を落とした瞬間、何故か雲が途切れ、樹々が揺れて。
朗々と輝く月明りが、赤葦の頬を照らし…朗らかに色付かせた。
(ーーーっ!!)
『朗』という字は『良い月』…清らかで美しい月明りらしい。
あぁ、成程。俺が今まさに見惚れているものこそが、『朗』ってやつなんだろうな。
澄み切った瞳に吸い寄せられるように、二度目、三度目の『ひと押し』を重ねていく。
(一片の曇りもない…朗色。)
ずっと片想いだと思い込んでいた相手が、キスを落とす度に清朗な視線で俺を見つめ返し、
『次のひと押し』を促すように、静かに瞳を閉じてくれるなんて、夢みたいだ。
このまっすぐな『朗色』に、嘘偽りなどあるわけがない…よ、な?
頭に過ぎった、当然の惑い。
だがそれも、月明りを更に求めるように伸ばされた赤葦の腕が、俺の首に巻き付いただけで、
あっという間に晴れ渡り…月明りごと、赤葦を両腕で包み込んでいた。
「赤葦…凄ぇ、好き。」
「俺も…好き、です。」
さっきまで、あんなに出し渋っていた?言い出せなかった?はずの『そういうキモチ』が、
嘘偽りの欠片もない直接的な言葉として、自分の口からスルリと出てきた。
俺の朗々たる言葉に、赤葦は戸惑うことも照れることもなく、朗らかに微笑み返してくれた。
初めて見る表情…月明かりのように優しく柔らかい笑顔に、呼吸が止まる。
「念のために確認するが…どちら様、かな?」
「それはこちらのセリフ…お互い様、です。」
零れ落ちる笑みを掬うように、四度、五度。
キスをすると、俺の黒い影が月明りを遮ってしまうのに、赤葦の頬の赤みは逆に増していく。
月明かりで朗色に輝くのではなく、まるで鉄朗色に染まったようにも見えて…六度、七度。
「黒尾、さん…もっと。」
「まだ、足りねぇ…よ。」
音を立てて、八度九度。
『ぶちゅっ!』という色より欲が勝る音に、内側から色んなものがじわじわ込み上げてきて…
互いにしがみつきながら、必死に笑いを堪え合った。
「ずーーーっと、片想いで終わるものだと、思ってたのに…っ!」
「やーーーっと、近付けたと思ったら、両想いって終点か…っ!」
下心100%の狸寝入りが、いつの間にか(何故だか)本気寝落ちになって。
名前しか知らなかった私鉄の終点で、まさかの恋心200%に増便され、相互接続するとは。
「どうか、夢落ちじゃ…ありませんようにっ」
「どうぞ、俺に夢中になって…下さいませっ」
真顔に戻り、無我夢中で祈願する。そのギャップがおかしくて、再びふわりと相好を崩す。
いつもの駅から繋がっている、遠い終点の駅。現実から繋がる夢に、少し似ている気がする。
知っているけど、現実感のない見知らぬ場所。だから素直に、夢中になれるのかもしれない。
お喋りを停止し、キスを再開する。
数えることをとうにやめたキスが、『いつもの赤葦』を『見知らぬ赤葦』に変えていく様は、
文字通り夢みたいな変化で…夢見心地のまま、止めどなくキスを続けてしまう。
(もっともっと…近付きたい。)
電車内で隣に座った時は、やっと『隣』確保!と、内心ガッツポーズをかましていたのに。
狸寝入り中の赤葦に肩を貸し、温もりが触れた時も、その『近さ』に震えそうだったのに。
今、電車と同じようにベンチに並んで座り、寝落ちした時よりもずっと近付いていても、
まだまだ遠い…真ん中で密着し合う二人の脚ですら、邪魔に感じてしまうのだ。
(この距離さえも、縮めたい。)
強く抱き締めていた腕と、噛み締めていた唇を同時に緩める。
ごく自然に協調して動いた赤葦の手を捕まえ、触れ合う脚の間に着地させ小指で腿を擽ると、
今度は緩んだ唇の隙間から、赤葦は熱い吐息で俺の唇を擽ってきた。
熱さと擽ったさから逃れるフリをしながら、互いの腿上に掌をそわそわ越境させ、
緩んだ唇の隙間を埋めるように、より柔らかい内側を食み、キスもより深く深く。
(うわっ、なんだ、これ…っ)
遠慮がちな手が、制服越しに滑る感覚。厚い布で隔たれていても伝わってくる、肌の弾力。
はじめて知覚する全てに、ため息が零れ…更に潤いを増した唇を、無意識に貪ってしまう。
「あか、あしっ、もっと…っ!」
「くろ…ぉ、さん、キス…っ!」
互いを求める言葉を発しながら、偶然を装って舌を伸ばし、唇にそっと触れてみる。
そのタイミングが完全一致…舌先同士もキスし合い、その感触に全身が跳ねてしまう。
(うわっ、うわぁっ…っ!!!)
舌先が触れ合う度にビクつくカラダを抑え、ちょっと落ち着こうぜ!という名目を掲げて、
腿を押さえるように圧迫し、大きく撫で…小指の淵で際どい部分をわざとらしく掠めていく。
舌先が唇から口内へ進入し、舌同士を絡め始めた頃には、
腿の内側まで掌も進み、脈々と隆起した尾根の上を、中指が辿っていた。
「キスって…気持ち、イイ…です、よねっ?」
「キスが…キスだけが、じゃねぇ…よなっ?」
数多の感覚器が集まり、脳に直結している口腔内を、隅々までキスし合っていることや、
最も敏感で快楽超特急なラインを、掌全体で包み込み、指先で刺激し合っていることよりも、
惚れ込んだ相手と両想いになり、その人とキスし、その人の手が自身に触れてくれている…
相互に通じ合え、繋がれたという『事実』に、心が震え…あらゆる感動を呼び起こすのだ。
(赤葦の、手が、俺のを、触って…っっっ)
自分の脳内で勝手に夢見ていたのとは、全く違う。
赤葦が俺の隣にいるという夢のような現実こそが、本当の意味で気持ちヨくて堪らない。
(もっと、気持ちヨく、なって…欲しいっ)
動き始めたら、次の駅に向かって走るだけ。
キスを繋げたまま一旦手を離し、上着を脱いで二人の腿に掛け、ふわり…トンネルで覆う。
宙に浮いた手で赤葦の顎に触れ、喉を辿ってネクタイを緩めてから、
トンネルの中にその手を進め、ベルトとチャックを開け、更に奥へ奥へ…
並走していた赤葦の手が、俺の手と同時に熱に到着すると、一気に急加速だ。
「あっ…ぁっ…っ」
「んっ…んっ…っ」
こんなトコで、こんなコトを?
いや、こんなトコだから、こんなコトまでイケたんじゃないだろうか。
夢から覚めたら、相互接続した私鉄の果て…名前しか知らない終点の駅。
現実感のない場所にある、人の気配のない深夜の公園・トイレ裏のベンチ。
夢みたいなトコに到着したから、夢のようなコトに『はっしゃオーライ』できた気がする。
ここまで来ねぇと、似た者同士の俺らは、一緒に出発すらできなかった…かもしれない。
手の中の熱い拍動と、キスでも全て吸い切れない嬌声。
そして何より、鉄朗色に染まった瞳から、『果て』にイきそうなのが伝わってくる。
勿論、赤葦にも伝わっていて…キスで唇をすっぽり塞ぎ合ってから、最後の加速を開始。
「ーーーっ!!!」
「ーーーっ!!!」
ほどなく、並走列車は激しく振動しながら『次の駅』に到着。
赤葦はそこで力尽き、ぽてん…と俺の肩に頭を預け、すやすやと寝息を立て始めた。
「夢の先にも、俺が隣に…居ればいいな。」
二人で乗合せた同じ電車の行く先が、どうか幸多いトコでありますように。
朗色に彩られた夜空に向けて、俺は心からの願いを囁いた。
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次の駅(年年起点)へGO! -
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2022/05/14