ご注意下さい!

この話は、徐行運転ながらBLかつ性的表現を含みます。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、閲覧をお控え下さいませ。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)


    それでもOK!な方  →コチラへどうぞ。


























































※『確定乗合』→『深夜始発』→当駅



    私鉄朗色







「相互接続…完了、だな。」
「ここから…始発、です。」

赤葦に『最初のひと押し』を落とした瞬間、何故か雲が途切れ、樹々が揺れて。
朗々と輝く月明りが、赤葦の頬を照らし…朗らかに色付かせた。


   (ーーーっ!!)

『朗』という字は『良い月』…清らかで美しい月明りらしい。
あぁ、成程。俺が今まさに見惚れているものこそが、『朗』ってやつなんだろうな。
澄み切った瞳に吸い寄せられるように、二度目、三度目の『ひと押し』を重ねていく。

   (一片の曇りもない…朗色。)

ずっと片想いだと思い込んでいた相手が、キスを落とす度に清朗な視線で俺を見つめ返し、
『次のひと押し』を促すように、静かに瞳を閉じてくれるなんて、夢みたいだ。
このまっすぐな『朗色』に、嘘偽りなどあるわけがない…よ、な?

頭に過ぎった、当然の惑い。
だがそれも、月明りを更に求めるように伸ばされた赤葦の腕が、俺の首に巻き付いただけで、
あっという間に晴れ渡り…月明りごと、赤葦を両腕で包み込んでいた。


「赤葦…凄ぇ、好き。」
「俺も…好き、です。」

さっきまで、あんなに出し渋っていた?言い出せなかった?はずの『そういうキモチ』が、
嘘偽りの欠片もない直接的な言葉として、自分の口からスルリと出てきた。
俺の朗々たる言葉に、赤葦は戸惑うことも照れることもなく、朗らかに微笑み返してくれた。
初めて見る表情…月明かりのように優しく柔らかい笑顔に、呼吸が止まる。

「念のために確認するが…どちら様、かな?」
「それはこちらのセリフ…お互い様、です。」

零れ落ちる笑みを掬うように、四度、五度。
キスをすると、俺の黒い影が月明りを遮ってしまうのに、赤葦の頬の赤みは逆に増していく。
月明かりで朗色に輝くのではなく、まるで鉄朗色に染まったようにも見えて…六度、七度。

「黒尾、さん…もっと。」
「まだ、足りねぇ…よ。」

音を立てて、八度九度。
『ぶちゅっ!』という色より欲が勝る音に、内側から色んなものがじわじわ込み上げてきて…
互いにしがみつきながら、必死に笑いを堪え合った。


「ずーーーっと、片想いで終わるものだと、思ってたのに…っ!」
「やーーーっと、近付けたと思ったら、両想いって終点か…っ!」

下心100%の狸寝入りが、いつの間にか(何故だか)本気寝落ちになって。
名前しか知らなかった私鉄の終点で、まさかの恋心200%に増便され、相互接続するとは。

「どうか、夢落ちじゃ…ありませんようにっ」
「どうぞ、俺に夢中になって…下さいませっ」

真顔に戻り、無我夢中で祈願する。そのギャップがおかしくて、再びふわりと相好を崩す。
いつもの駅から繋がっている、遠い終点の駅。現実から繋がる夢に、少し似ている気がする。
知っているけど、現実感のない見知らぬ場所。だから素直に、夢中になれるのかもしれない。

お喋りを停止し、キスを再開する。
数えることをとうにやめたキスが、『いつもの赤葦』を『見知らぬ赤葦』に変えていく様は、
文字通り夢みたいな変化で…夢見心地のまま、止めどなくキスを続けてしまう。

   (もっともっと…近付きたい。)


電車内で隣に座った時は、やっと『隣』確保!と、内心ガッツポーズをかましていたのに。
狸寝入り中の赤葦に肩を貸し、温もりが触れた時も、その『近さ』に震えそうだったのに。
今、電車と同じようにベンチに並んで座り、寝落ちした時よりもずっと近付いていても、
まだまだ遠い…真ん中で密着し合う二人の脚ですら、邪魔に感じてしまうのだ。

   (この距離さえも、縮めたい。)

強く抱き締めていた腕と、噛み締めていた唇を同時に緩める。
ごく自然に協調して動いた赤葦の手を捕まえ、触れ合う脚の間に着地させ小指で腿を擽ると、
今度は緩んだ唇の隙間から、赤葦は熱い吐息で俺の唇を擽ってきた。

熱さと擽ったさから逃れるフリをしながら、互いの腿上に掌をそわそわ越境させ、
緩んだ唇の隙間を埋めるように、より柔らかい内側を食み、キスもより深く深く。

   (うわっ、なんだ、これ…っ)

遠慮がちな手が、制服越しに滑る感覚。厚い布で隔たれていても伝わってくる、肌の弾力。
はじめて知覚する全てに、ため息が零れ…更に潤いを増した唇を、無意識に貪ってしまう。


「あか、あしっ、もっと…っ!」
「くろ…ぉ、さん、キス…っ!」

互いを求める言葉を発しながら、偶然を装って舌を伸ばし、唇にそっと触れてみる。
そのタイミングが完全一致…舌先同士もキスし合い、その感触に全身が跳ねてしまう。

   (うわっ、うわぁっ…っ!!!)

舌先が触れ合う度にビクつくカラダを抑え、ちょっと落ち着こうぜ!という名目を掲げて、
腿を押さえるように圧迫し、大きく撫で…小指の淵で際どい部分をわざとらしく掠めていく。
舌先が唇から口内へ進入し、舌同士を絡め始めた頃には、
腿の内側まで掌も進み、脈々と隆起した尾根の上を、中指が辿っていた。

「キスって…気持ち、イイ…です、よねっ?」
「キスが…キスだけが、じゃねぇ…よなっ?」

数多の感覚器が集まり、脳に直結している口腔内を、隅々までキスし合っていることや、
最も敏感で快楽超特急なラインを、掌全体で包み込み、指先で刺激し合っていることよりも、
惚れ込んだ相手と両想いになり、その人とキスし、その人の手が自身に触れてくれている…
相互に通じ合え、繋がれたという『事実』に、心が震え…あらゆる感動を呼び起こすのだ。

   (赤葦の、手が、俺のを、触って…っっっ)

自分の脳内で勝手に夢見ていたのとは、全く違う。
赤葦が俺の隣にいるという夢のような現実こそが、本当の意味で気持ちヨくて堪らない。

   (もっと、気持ちヨく、なって…欲しいっ)


動き始めたら、次の駅に向かって走るだけ。

キスを繋げたまま一旦手を離し、上着を脱いで二人の腿に掛け、ふわり…トンネルで覆う。
宙に浮いた手で赤葦の顎に触れ、喉を辿ってネクタイを緩めてから、
トンネルの中にその手を進め、ベルトとチャックを開け、更に奥へ奥へ…
並走していた赤葦の手が、俺の手と同時に熱に到着すると、一気に急加速だ。

「あっ…ぁっ…っ」
「んっ…んっ…っ」

こんなトコで、こんなコトを?
いや、こんなトコだから、こんなコトまでイケたんじゃないだろうか。

夢から覚めたら、相互接続した私鉄の果て…名前しか知らない終点の駅。
現実感のない場所にある、人の気配のない深夜の公園・トイレ裏のベンチ。
夢みたいなトコに到着したから、夢のようなコトに『はっしゃオーライ』できた気がする。
ここまで来ねぇと、似た者同士の俺らは、一緒に出発すらできなかった…かもしれない。


手の中の熱い拍動と、キスでも全て吸い切れない嬌声。
そして何より、鉄朗色に染まった瞳から、『果て』にイきそうなのが伝わってくる。
勿論、赤葦にも伝わっていて…キスで唇をすっぽり塞ぎ合ってから、最後の加速を開始。

「ーーーっ!!!」
「ーーーっ!!!」

ほどなく、並走列車は激しく振動しながら『次の駅』に到着。
赤葦はそこで力尽き、ぽてん…と俺の肩に頭を預け、すやすやと寝息を立て始めた。


「夢の先にも、俺が隣に…居ればいいな。」

二人で乗合せた同じ電車の行く先が、どうか幸多いトコでありますように。
朗色に彩られた夜空に向けて、俺は心からの願いを囁いた。




- 次の駅(年年起点)へGO! -




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2022/05/14

 

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