甘々愕々







「いや~、久々に喰らうとキツイね~」
「ウチは4人共、口が悪すぎでしょ。」


僕は幼い頃から、自他ともに認める口の悪さ…毒しか吐かないタイプだった。
殴る・蹴るなんていう暴力を使った喧嘩で負った傷は、いずれ癒える。
でも、言葉の刃で抉った傷は、一生癒えないトラウマにもなったりする。
即ち、口喧嘩こそ最強だと早々に悟り、僕は日夜鍛錬を重ねてきた。

痛いのはイヤだし、無駄な労力も使いたくないし、損害賠償も負いたくない。
費用対効果を考えるまでもなく、毒舌で相手を精神的に叩きのめす方が、
ずっと賢くて有利…僕は無気力系じゃなくて『効率重視系』だと自負し、
屁理屈こねまくりの速度を上げる勢いで上げ足を取れば、僕は喧嘩で負けなし…

…だと、若かりし頃は思っていた。


だが、上には上がいる…結構身近な所にゴロゴロいたりするものだ。
東京遠征合宿で知り合った『上』の人達は、僕より数倍弁が立つ猛者だった。
それが最高に楽しい形で発揮されたのが『酒屋談義』という考察の場で、
僕はそこで、屁理屈と毒舌を『趣味』として生かすことを学んだ。

そして、なんやかんやありつつも、その仲間と一緒に開業&同棲するに至り、
もうすっかり家族…山口と共に、黒尾さん&赤葦さんとも離れ難くなっている。
4人でしょーもないことをクソ真面目に語り合うのが、楽しくてしょうがない…
僕以上に毒々しい思考とセリフが出てくるのを、いつも心待ちにしているのだ。


本当に心を許し合える仲間…家族。
山口以外にそんな人ができるなんて、思いもしなかった。
ずっとこの4人で楽しく仕事をし、一緒に生活し、グダグダと語り合いたい…
最近の僕は、大好きな家族の前では甘ったれなワンコになりつつあるようだ。

だから、すっかり忘れていたのだ。僕の家族は僕以上におクチが達者なことを…
その毒が僕に向けられた時の、『言葉の刃』が持つ凄まじさを。

   (あの人達…口が悪すぎでしょ!)


研磨先生から貰った『お年玉』は、とんでもない起爆装置だった。
仲良しワンコの群れだった僕達に、喧々諤々な大騒ぎを勃発させ…
それによって僕は、結構深~い傷をココロにズシャっ!!と喰らってしまった。

何と、僕が相当なレベルの『ワンコ系』だと…『かまってちゃん』だと、
容赦なく言い当てて暴露した(悔しいけど否定する根拠がない)のが、
黒尾さんでも赤葦さんでもなく、僕には甘~いはずの…山口だったのだ。

   (た…立ち直れない、かも…)


比較的目立つ僕に隠れて、厳しい印象を持たれることは少ないみたいだけど、
山口だって結構言いたい放題…僕と一緒になって、毒を安定供給している。

僕と長年連れ添い、対等に会話を続けているだけで、口達者になって当然だし、
僕の毒を延々浴び続けた結果、年を追う毎に山口の毒耐性は各段に上昇…
元々の柔軟性もある分、誰よりも毒に強いメンタルを獲得してしまったようだ。

間違いなく、山口と口喧嘩しても…僕に勝ち目は1ミリもない。
腹黒策士と狡猾参謀という、規格外の毒舌家からも薫陶を受け続けているし、
僕は山口に対しておそらくデレ甘…強く出られなくなってしまっている。


僕と山口のこうした現状は、実は物凄〜く見覚えのある夫婦関係…
ウチの父さんと母さんにソックリな『パワーバランス』だったりする。
ヤりたい放題の月島家を統べるのは、先祖代々より『女帝』たる母であり、
月島家の男達は有史以来、女帝に1ミクロンも頭が上がらない家系のようだ。

幼い頃からウチに出入りし、現女帝(母)の操縦術を間近で見て育った山口は、
昨夏名実ともに月島家の人間となってからは、次期女帝としての成長著しく、
今や(元々か?)父も兄も、完全に山口の掌の上でコロコロ♪されている状態だ。

   (このままじゃ…マズいっ!!)


別に僕は、山口より上位や優位に立ちたいとは1グラムも思っていないし、
実は『カカア天下』が家庭円満の秘訣であることも、十分承知している。
それに、口喧嘩で山口を傷付けるようなことも、もう二度としたくない…
(「もうしません!」と、去年山口と固く約束…ミッチリ躾けられている。)

同棲開始(婚約)時も、結婚のすぐ後も。
節目ごとに厳しく躾けられた結果…結婚半年で、僕は見事に尻に敷かれている。
これも全て、山口との幸せな人生を送るため…実に喜ばしいことだと思う。
どう考えたって、ワガママな僕よりも、器用な山口が家庭を回した方が合理的…
僕は粛々と山口に従い、二人で協力して楽しく生活するのが、幸福への近道だ。


今だって、山口はベッドに寝転がる僕に乗り上げ、湯たんぽ代わりに尻に敷き、
本物の湯たんぽが山口のスペースを温めるまでの間、僕で暖を取っている。
僕は山口が気持ち良く寝られるように、下からしっかり抱き締めて温め、
すぐ僕に引っ付きたがる山口を、大事に大事にヨシヨ〜シ♪しているところだ。

この状態だって、悪いわけじゃない。
むしろ最高にほわほわ~♪な、就寝前のスキンシップ…至福の時である。
少し微睡みながら僕の胸に頬を乗せ、トロンとした表情で時折見上げてくる…
その緩み切った愛らしさに、腹を圧し潰される重さも、全く感じないくらいだ。

   (尻に敷かれる生活…万々歳!!)


「ねぇ、ツッキー…?」

頬を擦り寄せて甘える振りをしながら、トロリとした目で…チラリ。
眠気とは違う『気』で瞳を染め、尻に敷いた僕をじわじわ刺激しはじめる。

僕より遥かに柔軟なアタマとココロを持つ山口は、自分の感情にも素直だし、
僕と違って無気力系でもない…何事も積極的に受け入れる器を持っている。

思い返すまでもなく、こういうコトをする時も、山口主導のことが多々ある…
実に半分以上が、欲望にも忠実な山口の『尻に敷かれる』スタイルなのだ。

   (勿論コレも大歓迎♪なんだけど…)

たまには『ワンワンスタイル』で僕にガンガンやらせて!という話じゃない。
正常位だろうが後背位だろうが、騎乗位と変わらず『山口主体』だし、
僕を受け入れて頂いている以上、それが当然のことだと思っている。
『上』だろうが『下』だろうが、僕は精一杯山口に尽くすのみだ。

僕が譲れないのは、ただ一点のみ…
横書きで僕達をセット表記した時に、僕が『左側』であるだけで、もう十分だ。

   (これだけは、何としても…死守!)


山口は僕よりもずっと柔軟で素直だからこそ、このままでは本当に危険…
溢れる好奇心と欲に従い、『左右交代』を言い出しかねないのだ。

実際に、ただの悪戯だったとは言え、今まで何度か『ご提案』されかけている。
研磨先生からの『お年玉』を「ナイストスありがとう~♪」と勝手に受け止め、
結婚半年の節目だし…とか言って、ここぞとばかりに『ヤる気』を見せ、
強烈なスパイク(という名の躾)を、僕に放ってくるかもしれないのだ。

   (今日が…勝負の時!!)

今日どのように『仲良く』するかによって、今後の僕達の道が大きく変わる。
何としても今日だけは、僕がリードを引いておくべし!と、本能が叫んでいる。

   (僕のペースで…ヤらないとっ!!)


僕の上からズリ落ちないよう、体勢を整え…がてら、欲で欲を圧迫される。
山口は右手で僕の眼鏡を取り外しつつ、左手で太腿の内側を撫で上げて…

「や、やまぐち…っ!」

僕は色んな感情が籠った息を、山口の名前を呼ぶことで誤魔化しながら、
山口の手がそれ以上の『秘奥』に侵入しないよう、腿で強く挟み込んで止めた。
そして、これ以上山口のペースでコトが進むのを阻止し、気を外らせるため、
ひたすら口を動かし…僕のペースへと流れを引っ張り始めた。


「今日の酒屋談義は、キャンキャンワンワンならぬ…喧々囂々だったね!」




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「けんけんごうごう…?それって、『けんけんがくがく』のこと?」
「それ、実は誤用なんだって。」

月島が下から吠えた言葉に、山口は興味津々…耳をピンと立てて動きを止め、
ねぇねぇツッキー、何ソレ!?と、尻尾をわくわく振って話の先を促した。

「『喧々諤々(けんけんがくがく)』は、元は別の2つの言葉らしいんだ。」

大勢の人がやかましく騒ぎ立てる『喧々囂々(けんけんごうごう)』と、
正しいと思うことを正々堂々と議論しあう『侃々諤々(かんかんがくがく)』…
その2つが混同され、大勢が意見を言い合い騒ぐ『喧々諤々』になったそうだ。
誤用から始まったものだが、今は『喧々諤々』が使われることも多い。

喧しく騒ぎ立てるだけじゃなく、考察の中で議論も行う『酒屋談義』は、
まさに2つが混じり合った『喧々諤々』な語り合いと言えるだろう。


「確かに、今日は皆…びっくりするぐらい言いたい放題だったよね~」

ツッキーはあの赤葦さんに、堂々とエロギツネ…『来つ寝』って言っちゃうし、
黒尾さんもそれに乗っかって、『狡兎死して走狗煮らる』なんて言うじゃん?
兎が居なくなれば参謀の狗も用済み…高校時代の赤葦さんが聞いたら泣くよね。

「山口だって、狐…狛犬のように『ぁん♪ぅん♪』喘ぐとか言ってたじゃん。」
「今頃きっと、ワンコじゃなくなった狼と…『阿吽の呼吸』で楽しんでそう♪」

っていうか、赤葦さんが黒尾さんに対して、『狼になりそこねのワンコ』って!
イヌシデ、イヌマキ、イヌビワ…『使えない・劣っている』イヌ呼ばわりだよ。
黒尾さんに『据え膳』食って貰えなかったのを、実は根に持ってたんだね~

「ツッキーも黒尾さんの苦労は無駄で、手痛く噛み付くぞ~って宣言したね。」
「盛らないワンコが一匹狼に…山口の発言も、かなり手痛いと思うけど?」


子犬が跳ねるように、二人でコロコロと軽やかな笑い声を立てる。
ホントーにこのおクチは、お行儀が悪いよね〜と、他人事のように呆れつつ、
まるで躾け合うかのように、お互いのおクチをチョンチョンと啄んだ。

「あの狐と狼なワンコ…激可愛いね♪」
「可愛くて仕方ない…ワンコ系だね。」

何だかんだ言いつつも、ウチの過激なドEROワンコ共が愛おしくて堪らない。
本当はあの二人にも、むぎゅ~~~っと抱き着いて、思う存分スリスリしたい…
山口が頭を擦り寄せる仕種から、正確にその本心を読み取った月島は、
慌てて山口の頬を両手で捕まえると、耳を垂らしてクゥ~ンと鼻を鳴らした。


「や、やまぐち…」
「っ!!?だいじょ~ぶ!そんなこと、絶対にしないから…ね?」

月島の不安そうな瞳に、逆に自分の心臓をむぎゅ~~~っとされた山口は、
綺麗な毛並みをわしゃわしゃ掻き乱し、月島にピッタリと密着した。

「俺の可愛いワンコは、ツッキーだけ…離れたりしないよ~♪」

ずっとツッキーの傍に引っ付いて、ずっとず~~~っとかまってあげるから…
ツッキーをやたら甘やかして、優しく褒めてくれる黒尾さんとか赤葦さんに、
カンタンに尻尾を振って、ホイホイついて行ったりしちゃ…ダメだからね?


月島にしがみ付きながら頬を膨らませ、珍しく山口が嫉妬心を露わにした。
震える声で「独占したい!」と…傍に居て欲しいと自分から『オネダリ』した。

「っ!!?絶対行かない!約束する!」

少し前までは、黙って月島の後ろに付いてくるだけの『忠犬』だった山口が、
結婚から半年で、ここまで月島をストレートに求められるようになったのだ。
もじもじと赤面しながらも、勇気を振り絞った健気な山口に、月島は大感激…
下から腕を伸ばして山口を捕まえると、そのままグルリと反転して組み敷き、
全身を使って力いっぱい山口を抱き締めて、噛み付くように激しいキスをした。


「僕はハチ公の主人みたいに、もう二度と山口を待たせたりしないから…」

山口が大好きだってことも、これからは一切出し惜しみせずにちゃんと言うし、
そのキモチはワンコっぽく、全身で愛情表現…スキンシップしまくるからね!

「というわけで…今日は僕が、御主人様に誠心誠意尽くさせて貰うね。」




********************




「ゃっツッキー、くすぐったいよ…」
「喜んで頂けて、光栄の至りだね…」


今日は俺がツッキーを、ベタベタに甘やかしてあげたいな〜と思ってたのに。
途中までは俺のペースで、上手いこと手懐けてたはずなんだけど…
いつの間にか、俺の方がツッキーワンコに、ペロペロと甘えられていた。

ふわふわの小型犬の、更に小さい生まれたての子犬を愛でるみたいに、
指の腹で触れるか触れないかという、ごく繊細なソフトタッチで撫でられる。
一房ずつ髪の毛を指に巻き付け、毛並みを綺麗に整えながら、
指と同じかそれ以上に微かな動きで、おでこ、眉毛、瞼、目尻、鼻にほっぺ…
細かいパーツごとに唇を落とし、キスで俺にマーキングしていくのだ。

   (このワンコ…チューしすぎでしょ。)


いや…『チュー』までもいかない。
柔らかい唇で、そっと触れてふっと離れるだけ…それを延々繰り返していく。
そのくせ、いつもチューしまくる部分には、全く触れてこないのだ。

ほっぺから耳へ。耳から顎、喉、頸筋…
チューしてほしい部分を素通りし、ツッキーはカラダの方へと降りて行く。

「あははっ…くすぐったいってば!」

半ば本気で、半ば意図的に身を捩り、ツッキーを抑える振りをして捕まえる。
唇を上に少し引き戻し、触れて欲しい部分へ導こうとしたけれど、
ツッキーは蕩けそうな笑顔で「ヨシヨ~シ♪」と髪を撫で回しながら、
鎖骨、肩、二の腕…更に下の方へとマーキングを再開させた。


   まずは指で掠めるように撫でてから。
   同じ場所に唇で触れ、キスで再確認。

唯一無二の御主人様に、全身で忠誠を誓うような…丁寧な愛情表現。
くすぐったさだけじゃなく、宝物のように大切にしてもらえる嬉しさに、
ココロにもカラダにも、じんじんした甘い痺れを感じ…身悶えしてしまう。

「可愛い僕の山口…全部大好きだよ。」
「っっっ!!?ぁ…あり、がと…ぅっ」

   (ちょっと…出し惜しみ、してっ!)

何年も『好き』と言ってくれず、延々俺を待たせ続けたあのツッキーが、
結婚半年で、ここまで堂々と『リップサービス』するようになるなんて…
ツッキーの毒に耐える自信はあるけど、甘々にはまだほとんど免疫がない俺は、
その衝撃に耐えられずアタマもココロも愕然…カラダはガクガクと震えてきた。


「…寒かった?ゴメンね。」

俺の震えを純真な目で曲解してみせたツッキーは、更にカラダを密着させ、
俺を唇であっためるように、さっきよりは少し強めに『チュっ』と音を立て、
スピードを上げて鳩尾へジャンプし、お腹、脇腹、おへそ、腰に…キス。

   (大事なトコ…忘れてる、よっ!)

いつもはしつこいぐらい、チューチューと吸い上げてくるトコ×2を通り越し、
キスを少しずつ強く深くしながら、どんどん下へと唇を滑らせていく。

   スルーした上に、戻ってきて欲しい。
   でも、その下にも早く降りて欲しい。


肝心なトコには一切触れないまま、ただただ全身に優しくマーキングするだけ。
それなのに、いつもよりカラダの芯から熱と快感がせり上がってクる…

   (チューしすぎで、ふやけそう…)

   骨盤の縁を、緩やかに辿りながら。
   熱を発する部分へ、近づいて来る。

「ねぇっ、もう、いい、から…」
「そう?それじゃあ…こっち。」

ここにキスして!と誘うように、蜜を滲ませ始めた部分…にも触れないで、
ツッキーは毛先だけをわずかにソコに掠め、鼠蹊部から太腿へと舌を乗せた。

「ち、がう、そっちじゃ、ない…」
「あぁゴメン。こっち…だよね?」

さっきまでのそわそわしたフェザータッチとは打って変わって、
掌全体で足首を包み込み、脛を滑らせながら、上へ上へ。
膝から腿をググっと強く大きく撫で上げると、腰を掴み…一気に俺を裏返した。

「後ろにも…チューしなきゃね。」
「えっ…ぁっ!!?」


違うとも、待ってとも言えないまま、お腹の下に枕をあてがわれると、
既に力が入らなくなった腰を高く引き上げられ…背後からすっぽりと覆われた。

   (この格好…やっぱ、恥ずかしい…っ)

『後ろ』の全てを曝け出し、間近に見られてしまうこの体勢は、
相手の顔が見えないこともあって、羞恥心と共に恐怖心を抱きやすい。
動物が『繋がる体位』としては、最も基本的なスタイルかもしれないけれど、
余程気を許し、心から信頼できる相手じゃないと、俺にはちょっと…難しい。

   (ツッキーだから…大丈夫。)

頸椎をひとつひとつ数えるように、音を立ててキスを下ろしていきながら、
手はふくらはぎを強めに揉みしだき、腿裏を何度も何度も行き来する。
触れた部分を解すマッサージ…気持ちヨさに、全身がピクピク揺れてしまう。


   腰を越え、仙骨を降りてくるキス。
   下から上へ、双丘を揉み解す両掌。

上からと下からの動きが丁度ぶつかる『合流地点』に、熱い吐息が掛かる。
今までと同じように、『肝心なトコ』はスルーするはず…と思っていたら、
自然と揺れる俺の腰を、ツッキーは両手でガッチリと掴んで固定し…

   (え…う、ウソ…っ!!?)


「つ、っきー、っソコ、はっ、チュー…いら、ない、からっ…!」

ツッキーからの返事は、ない。
その代わりに、俺とツッキーの『合流地点』を、激しくチューする音が響く。

指ともツッキー自身とも全然違う、唇と舌の甘い感触に、全身が諤々絶叫する。
火を吹きそうなほど、恥かしくて堪らない…のに、口からは歓喜の嬌声が溢れ、
ツッキーからの熱烈なキスに応えるように、キツく絡んで吸い上げてしまう。

   (恥かしい、けど…気持ち、イイっ)


「も、ヤだ…待っ、て、ツッ、キー…」

このままだと、俺だけ先に『チュー』のみで達してしまいそう…
無意識の内に『ヤだ』と『待て』の言葉を、吐息と一緒に漏らすと、
ツッキーワンコは主人の命令…『待て』に従い、ピタリと動きを止めた。

「な、んで…っ?」
「山口がイヤがることはしないし…イイよって言うまで、僕は待つつもり…」

…ではあるんだけど。
僕も山口みたいに、ちゃんと『待て』ができる賢いワンコになりたいんだけど、
御主人様がゴクラクにイっちゃいそうなのがわかるから、もう待てないかも…

「『待て』のできない、おバカでダメなワンコになっても…いい?」


ツッキーがキスしていた部分に、ピトピトと熱の先端が当てられる。
僕もかまって欲しい…と、プルプル震えながら、まだ?…と訴えかけてくる。

   (おバカな子ほど…可愛い、よっ)


可愛くて仕方ない、ウチの甘ったれワンコの頭に手を伸ばし…
俺は思いっきり『イイ子イイ子♪』と撫でてから、ワンコに『オネダリ』した。


「イイ、よ。ここに…おいで♪」




- 完 -




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※婚約時(同棲開始時)の躾 →『無限之識
※結婚後の躾 →『夜想愛夢~愛玩之月
※左右交代のご提案 →『苦楽落落



2018/01/14

 

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