ご注意下さい!


この話は、ワンコ達が喧々囂々…『犬も喰わない』系のBLかつ性的な表現を含んでおります。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、 閲覧をお控え下さい。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、責任を負いかねます。)




    それでもOK!な方  →
コチラをどうぞ。



























































    喧犬強噛







『黒い犬、白い犬、赤い犬、青い犬。
   一番大人しいのは?』


黒尾法務事務所も、ようやくぼちぼち仕事始めしようかなぁ~と、
事務所の片付け(年末の残務)をしたり、確定申告の準備を計画してみたり、
湯呑や急須を漂白しつつ、お菓子を銀色缶にギッチリ詰めてみたり…
一言で言えば、正月気分が抜けない状態で、の~んびりダラダラしていた。

そんな中、机の上にドン!と置いたままだった年賀状を眺めていた山口が、
「あ!これ…なぞなぞです♪」と、とある年賀状を楽しそうに読み上げた。


「はぁ?何だそりゃ。犬の色で大人しさが変わる…信じられねぇな。」
「三毛猫の気性は荒く、黒猫は穏やか…というような話でしょうか?」

黒と白はともかく、赤や青って…あ、赤犬は古来から食用だったか?
赤狗母魚(アカエソ)は蒲鉾の材料で、赤犬は警察用語で放火犯だったよな。

おおいぬ座のシリウスは、全天で太陽に次いで明るい恒星ですけど…
冬の大三角形を構成するこの天狼こそ、『青星』と呼ばれていますよね。


「違いますって!『なぞなぞ』だって言ったじゃないですか~」

ウェルカム考察!!とばかりに、黒尾と赤葦は尻尾を振って『大歓迎』の反応。
おやつを持って応接ソファに向かう山口に、月島も嬉々としてついて行った。

山口がテーブルに乗せたのは、一枚のシンプルな年賀状だった。
犬種の違う4匹の犬のシルエットが、はがきの真ん中に並んでいて、
その犬達の上に先程の『なぞなぞ』が、下にはもう一つ『謎』が書かれていた。

   『ワンコ系』とは?

「差出人は…我らが研磨先生で~す♪」
「つまりこれは、僕達への課題…『ワンコ系』について考察せよ、だね。」

さすがは研磨先生。
年始の『黒尾家大集合』の時に、「お年玉…贈っといた。」と言っていたが、
これがその『お年玉』…戌年のスタートに相応しい考察ネタなんだろう。


あっちこっちの『実家』から、大量に持たされた『おやつ』を開けながら、
4人は早速、研磨先生からの『お年玉』について、わくわく語り始めた。

「そもそもだけど、この『ワンコ系』って言葉…耳慣れないんだけど。」
「多分、『犬っぽい』って意味なんだろうけど…あんま聞かないよね~」

顔を見合わせ、首を傾げる月島と山口。
その仕種がちょっとワンコっぽい…と、黒尾は内心キュン♪となっていたが、
そんな黒尾自身も、この言葉には聞き覚えがなく、赤葦をじ~っと見つめた。

揃いも揃って…と赤葦は頬を緩めて小さく呟くと、手を叩いて3匹を呼んだ。

「『ワンコ系』とは、『○○系男子』的な分類の一つですよ。」


人にはそれぞれ、『好みのタイプ』というものが存在しますけど、
そのタイプを表現する際に、見た目や性格を様々なものに見立てて分類します。

「見た目で言うと、塩顔・ソース顔・醤油顔…みたいな対比だよね〜」
「性格で言えば、理系・文系がド定番…あとは肉食・草食・雑食系かな?」
「今は魚食・絶食・飽食系男子っていう細かい分類まで出てきたらしいな。」
「ちなみに、HQ!!界では『無気力系』という方々が存在するそうですね。」

器用で何でもソツなくこなすけど、テンション低めで口癖が『ふーん。』な、
表情筋を極力使わない省エネ派が、数人いらっしゃるようですよ。

「心当たりが…身近に居ますね~」
「あぁ…俺らの身内に3人程な。」
「2人でしょ?研磨先生と赤葦さん。」
「孤爪師匠と月島君の2人ですよね?」

誰しも『自分のこと』は意外とわからないものだ…と、黒尾と山口は悟り、
無駄な争いを避けるべく、無気力系代表は研磨で決定!と、話を強制転換した。


「おそらくワンコ系ってのは…ニャンコ系と対比される系統なんだろうな。」
「その通りなんですが…これが実は、一筋縄ではいかない分類なんですよ。」

犬と猫の対比は、非常にわかりやすく、安直な分類のように感じるのだが…
赤葦は眉間に皺をごくわずかに寄せただけで、深い困惑を表現してみせた。

「よくBL漫画にも、『ワンコ系部下』なんてのが出てくるんですが…」

作品によって、どういったタイプが『ワンコ系』と定義されているのか、
いまいち判然としない…唯一確定っぽい性質は『体育会系』ぐらいなのだ。


「体育会系…俺ら4人全員が当てはまるじゃねぇか。」
「でも、この4人の中で『ワンコ系』って言えそうなのは…1人ですよね?」
「俺もそう思う!このメンツでワンコって言えば…この人しかいないよね~♪」

せっかくだから、皆で一斉にウチの『ワンコ』を指差してみようよ!
それじゃぁ、イくよ!?せーのっ…はいっ!!!

山口の掛け声で、4人は迷わず黒尾法務事務所の『ワンコ系』を指差し…
その結果に、4人共が唖然とした。

「なっ!!?全員…違うっ!!?」
「そんなっ…ウソでしょっ!!?」

   黒尾は山口、山口は月島を。
   月島は赤葦で、赤葦は黒尾…

誰一人自分が『ワンコ系』だと思わず、指名されたことに動揺しまくった。
誰しも『自分のこと』は意外とわからない…という前言を無理矢理封印し、
4人は牙を剥き出し唸り声を上げて、『自分の説が正しい』と吼え始めた。


「おいおい!どう考えても犬と言えば山口だろうがっ!!」

日本の犬代表と言えば、柴犬か秋田犬…あの忠犬ハチ公も秋田犬だったし、
山口は『忠』犬ハチ公と同じ誕生日だって話じゃねぇか。
ツッキーという『御主人様』の後ろに、ずーっとベッタリ引っ付いて離れない…
『虎の威を借りる狐(狗)』みてぇなトコも、すっげぇ山口っぽいよな!

「酷いっ!何年も主人の死に気付かず、待ち続けた…俺は駄犬ですかっ!?」

「『猫の手』より役立たずなのが犬…『犬死』って言葉もありましたね。」
「主人への愛情表現は全身で。犬は子孫繁栄の象徴…『お盛ん♪』ですよね。」

指名した黒尾だけでなく、月島と赤葦からも「犬っぽい!」と笑われた山口は、
ビシ!!と人差し指を月島に突き返し、反撃に転じた。


「俺なんかより、ツッキーの方がず~っと犬っぽいじゃん!!」

見た目はキレイな毛並みだけど、警戒心が強くてキャンキャン吠えるとことか、
褒められるとすっごい喜んじゃって、カンタンに尻尾振って付いて行ったり、
そのくせ嫉妬深くて寂しがりや…独占欲ハンパないとこが、ツッキーっぽい!

「なっ!?まるで僕が、とんでもない『かまってちゃん』みたいな…!?」

「『羊頭狗肉』って言葉があるよな。見た目は御立派だが、中身は…なぁ?」
「唯一無二の御主人様に、すぐチューしたがる…スキンシップ過多ですね。」

ぐうの音も出ない代わりに、グルル…と怒りの呻きを轟かせる月島。
甘えたさん~♪と囃し立てる3人の内の1人に対し、ビビりつつも吠え立てた。


「スキンシップ過多…それを言うなら、赤葦さんこそ犬だと思いますけどね!」

正確に言えば、同じイヌ科の狐…狐と言えばお稲荷さんですよね。
お稲荷さん即ち荼枳尼天(ダキニ)は、性愛を司る神…如意宝珠もセットです。
そして、狐は『来つ寝』…古来から遊女のことをそう呼んでいましたからね。

「ほほぅ…俺はエロ神の化身だとでも言いたいわけですか?」

「狡兎死して走狗煮らる…『兎』を狩った後は猟犬も『用済み』なんだよな。」
「狐、つまり狛犬…『ぁん♪ぅん♪』って喘ぎまくってるんだよね~?」

罰当たりなレベルで、ドERO扱い…それでも反論材料が全くなかった赤葦は、
落とすべきターゲットを絞り、怪しく光る眼光で射抜いた。


「こちらも同じイヌ科ですけど、黒尾さんこそ狼に近い犬ですね。」

どこに行っても群れを統率し、仲間には情が厚い狼…かと思いきや、
狼に似ているだけで、所詮は犬。似ているけど違うものをイヌと言います。
送り狼にすらなれないワンコ…据え膳を前に『イイ子』して待つんですよね?

「『デカい』だけで大人しい…要するにヘタレって意味だよな、それはっ!?」

「犬馬の労を尽くしても、飼い犬に手を噛まれる…貧乏くじ人生ですね。」
「『盛らない犬』の行く末が、一匹狼…だったりして~?」


あぁ…すっかり忘れていた。
ウチの犬共は実に聡く、やたらめったら弁が立つのが長所なのだが、
裏を返せば『口ぐせ』がひたすら悪い…一たび噛み付けば、被害は甚大だ。

   (これ以上喋ったら…マズいっ!)

赤葦が言っていた通り、『犬』に対するイメージが人によってこれだけ違うと、
『ワンコ系』の定義を確定するのは、どだい無理な話…考察中止が最適解だ。

それに、本当はずっと傍にいるトコや、チューしまくってくれるトコ、
阿吽の呼吸で盛るトコとか、がっつかない大物なトコが大〜好き♪で堪らず、
さっきのは全部裏返し…『長所♪』としか思っていなかったりするのだが、
今頃そんなフォローをしても、当たった棒に墓穴を掘られかねない…
ただの『犬も食わない』系の話になってしまうのがオチである。

…そうか!これこそ研磨先生からの『お年玉』だ。
大人しく黙って、ワンコ同士で仲良く盛っとけという、無言の愛なのだ…多分。
さすがは研磨先生…御歳暮に引き続き、年始も無気力に送り付けるのみである。


   (今年は戌年だけど…)
   (最低限お口には猫を被せとこう。)
   (静かに黙ったまま…)
   (大好き♪は態度で表しましょう。)

誠実で賢い犬達は、これ以上大切な仲間を傷付けないよう、自ら口を閉ざした。


「…あっ!!」
「わかった…!!」
「一番おとなしい犬は…」
「『黒い犬』…これが正解だな!」





    → 『王子消滅』(クロ赤編)へ

    → 『甘々愕々』(月山編)へ





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※『黒』+『犬』=『黙』

※研磨先生からお歳暮 →『後背好配



2018/01/11
(2018/01/09分 MEMO小咄より移設)

 

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