大失策!研磨先生④







「9月に入り、急に涼しくなってきましたが…実りの秋が来ましたね。」

美味しいお米に、お野菜に…勿論お魚もお肉もお酒も、ガッツリ頂く季節です。
例年通り、収穫祭…例大祭ネタで『酒屋談義』という楽しみもありますが、
それよりもやはり、まずは収穫を心ゆくまで味わいたいものです。


突然『秋の味覚』について、滔々と語り出した赤葦。
焼肉を食べに行く気満々だった面々は、ゴクリと喉を鳴らして注目した。

「実りに感謝する祭が、今月末に開催されるそうなんですよ。」

『米を食べろ! 肉を食べろ! 野菜も食べろ!!』と銘打った、秋の大収穫祭…
我らがHQ!!『一番くじ』の新シリーズが、発売されるそうですよ!!

「マジでっ…!?赤葦、それは…超ナイスな情報だよ。」

前回の騒動で、『一番くじ』の大ファンになった研磨先生…
実りある情報に喰い付き、月島と山口の腕を引きながら、応接ソファに戻った。


「ジャンプショップに告知があったんだが…今回も面白そうだったぞ。」
「キャラがそれぞれ『秋の味覚』を頬張る姿…実に美味しそうでした。」

目玉商品は、『ウインドアートボード』という、窓付のボード(パネル?)…
縁側らしき場所に座り、美味しそうに食すキャラが描かれています。

何と、縦サイズが約58cm…テーブルのお向かいに置くと、
キャラと一緒にご飯を食べてる気分が味わえる、特大ボードなんですよ。

「食事中とあって、普段とは全然違う表情…実に『オイシイ』絵だった。」

赤葦に関して言えば、何の力みもないぽわ~っとした顔で、梨をシャリシャリ…
誰がウチの食卓を盗撮したんだ!?ってぐらいの、自然体なんだよ。
まぁ、この『自然体赤葦』から、大判タオルのが『イヤラシ系』だと…
逆説的にズッポリ証明されちまってるあたりも、最高にオイシイんだがな。

「いえいえ、特筆すべきは黒尾さんですよ…ホントに超~可愛いんです!」

大好物の秋刀魚の串焼を、はむっとかぶり付く表情…実年齢以下の可愛さです。
いつもグッズでは、腹黒そうなニヒルな笑顔とか、無駄にシリアスなキメ顔で、
それはそれでギュン!とクるんですが…これはキュ~~~ン♪なんですよ!!
別の意味で『食欲』をそそる…最高にオイシソウなイラストです。

「あ、そうそう。孤爪師匠も大好物の林檎をシャリシャリ…
   パーカーのフードを被ってて、これも可愛かったですよ。」
「びっくりするぐらい『取って付けた』ような言い方…ここまでくると潔いね。
   アンタらは勝手に、お互いのボード見てデレデレしてればいいよ。」


なんだ…結局はクロ赤コンビがオイシイだけの、惚気大会じゃん。
人気キャラの皆さんは、せいぜい秋を満喫して下さいね~

…と、月島と山口の二人が、天高い秋の空の彼方へ視線を投げていると、
「本題はここからです。」と赤葦が月島達の鼻先をちょんちょんと突いた。

「この『大収穫祭』は、前回のと大きく違う点があります。」
「ボードになってるメインキャラが、追加されてたんだよ。」


前回の『全国への軌跡』シリーズのメインキャラは、
日向・影山・及川・岩泉・黒尾・孤爪・木兎・赤葦・牛島…A~I賞の、計9名。
黒尾が『E』で赤葦が『H』という、ありがたいドEROでHなネタだった。

「残念ながら、今回黒尾さんは『G』で俺が『J』…孤爪師匠が『H』です。」
「ってことは、クロより前に、2名追加されたってことだね。」
「日向・影山の次に、新メンバーとして『C』と『D』…満を持して登場だ。」

おめでとうっ!!と黒尾が拍手し、赤葦が『新メンバー』達の頭を撫でた。

「えっ…僕と、山口…ですかっ!?」
「や…やったぁぁぁぁぁぁーーっ!」

ちなみに、月島君はかぼちゃスープをふ~ふ~してる、妙にしおらしい姿で、
山口君は美しい箸の持ち方で、ナスをもぐもぐ…慎ましい口元がそそります。


「その絵だけで…めちゃくちゃオイシイ『ミニシアター』が作れそうじゃん。」
「棒状のモノをおクチにイれて…とか、熱いアレにふ~ふ~と息をかけ…」
「赤葦…ソレを出すのは早すぎるぞ。間違いなく『食欲の秋』だけどな…」

米も肉も…アレも食え♪とばかりに、早速暴走を始めるクロ赤コンビ。
研磨先生は「アンタらは黙ってて。」と視線で示し、月島達に向き直った。

「二人とも…オメデト。」
「せっ、先生~~~っ!!」
「ありがとう、ござい…ますっ!」

研磨先生が笑顔で祝福すると、月島と山口は感涙…先生に抱き着いた。


「おめでたいのは…それだけじゃ、ないんですよね。」
「このメインキャラのラインナップ…見覚えねぇか?」

個性豊かで魅力溢れるキャラが、わらわらと勢ぞろいするHQ!!の中でも、
特にアクが強く我が強く、自己主張の激しい『キャラが立った』面々…

「く、黒尾法務事務所の、新規事業…」
「『HQ!!乙女ゲーム』の、出演確定メンバー…100%の一致率ですっ!!」
「孤爪師匠…お見事ですっ!!」

ただの思い付きで始め、ヒマ潰し程度のつもりで語り合い、
いつしか本気かつクソ真面目に考察していた…『乙女ゲーム』開発会議。
5人での考察の結果、出演を決めた面々と完全に一致したことで、
自分達の緻密な考察が商業的価値のあるものだと、証明されたことになる。

「無駄に贅沢な考察だと思ってたが…」
「間違ってなかった…驚きましたね。」

全員…研磨に拍手!と黒尾が号令し、全員が感謝を込めて盛大に打ち鳴らした。
研磨先生は「やめてよ…」と呟いたが、照れ臭そうに頬を染めていた。


「というわけで、先程俺が言っていたことの意味…わかりますね?」

とりあえず今月末までは、俺のスパダリこと、黒尾さんを大事に扱い、
その財布の中身を、『無駄打ち』にならないアレのために、取っておくべし…

「贅沢に幸運を無駄遣いし、しかもその財源になる黒尾さんに…最敬礼!」

赤葦は号令を掛けると同時に、他の3人と一緒に黒尾の前にひれ伏した。

「クロ…月末、期待してるからね。」
「どうか…僕に『D』賞の山口をっ!」
「ツッキーのアレを…お願いします!」
「月末まで、どうか幸運の『無駄打ち』をなさらぬよう…」


いつも散々、俺をイジり倒して遊び、ディスり寸前なぐらい辛口なのに、
こんな時だけ俺をチヤホヤして頼る…あまりにも調子良すぎねぇか?

それに、『運』なんて自分じゃどうにもできねぇのに、物凄ぇプレッシャーで、
しかも、もしも当ててやらなかったら、「使えねぇな。」と罵詈雑言の嵐…
俺にとっては、厳しいばかりの『大収穫祭』にしか、なりようがない。

だが、「お前ら、ふざけんなよっ!!」と叫びたい気持ちがある反面、
キラキラとした瞳で、じっと俺を見上げてくる姿…庇護欲が掻き立てられる。
コイツらを喜ばせてやりたい…笑顔が見たいなぁと、思ってしまうのだ。


「『くじ』なんだから、そこまで期待すんなよ。一番の目的は…違うだろ?」

もし希望の商品が当たらなくても、俺を恨まないって…約束してくれ。
『一番くじ』最大の目的は、全員で一緒に『大収穫祭』を楽しむこと…

「これから皆で、発売日の行動計画を立てるぞ。焼肉食いながら…な?」


グッズショップで買った『クリアファイル』をそっくり真似るように、
グっ!と親指を立て、ニカっ♪と笑った黒尾…その姿に、全員が一瞬絶句した。

「黒尾さんは…やっぱりスパダリです♪ささっ、早くお店へ…イきましょう!」

赤葦は素直に頬をポっと染め、潤んだ瞳で黒尾の腕に抱き着くと、
黒尾を皆の目から隠すように、応接室から引っ張って出た。


「く…クロのくせに…っ!」
「今の顔は…ズルすぎるでしょ。」
「ちょっと赤葦さんが…羨ましいね。」

残った3人は、お互いに赤い顔を見られないように下を向きながら、
無駄話…クロ赤の惚気っぷりを前菜にしつつ、焼肉屋へと仲良く歩いて行った。




- 終 -





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※『大収穫祭』結果 →『大収穫!研磨先生

※HQ!!乙女ゲーム →『教えて!研磨先生


2017/09/07    (2017/09/06分 MEMO小咄より移設)

 

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