ご注意下さい!

この話は、BLかつ性的な表現を含みます。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、閲覧をお控え下さい。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)


結婚から約半年。
公私一双』の頃から、少しは成長した…?
そんな二人の、要するに…単なる情事です。


  
それでもOK!な方  →コチラをどうぞ。


























































    心身一新







ちょっと場所が変わっただけなのに。
でも、この『ちょっと』の違いが、どれだけ重要なのか…
黒尾鉄朗は、今それを全身で実感しているところである。


「さすがに、疲れたな…」
「はい…堪えましたね。」

仕事の元請だったデベロッパーの担当者が、この度晴れて独立開業。
とは言え、元々いた会社の新子会社を任される形のため、円満退社…
本質的には、『独立』かどうかも若干あやしいところだが(ウチと同じだ)、
おめでたい話であることには違いない。

その開業パーティに、付き合いの深い黒尾法務事務所も招待されていた。
所長たる黒尾は当然列席だが、本体業務ではなく、付帯業務の建築…
個人的にちょこちょこ仕事を請けていた赤葦も、揃って招待されていた。

歳が近かったこともあり、担当者から黒尾も赤葦も大変可愛いがられ、
新会社からも継続して仕事を…と、奮発してお渡しした『開業祝』よりも、
黒尾達の方にずっと『実り』のあるパーティとなった。


そうは言うものの、デカい元請のおエラい様方がうじゃうじゃしている中、
明らかに若輩者の黒尾達は、気を揉むばかり…当然、盃も断れない。
黒尾は赤葦の分も飲み続け、赤葦は黒尾の分も気を回し続け、
二人は心身共に疲労困憊…グッタリとベッドにダイブした。

恐らくこうなるだろうと予測していた、超優秀な我らが参謀殿は、
会場となった一流ホテル…の、近くのビジネスホテルに、宿を取っていた。
ギリギリ終電には間に合うし、1時間半程で自宅に着く距離なのだが、
こんな時は無理せず外泊…これが二人の『定番』となっていた。


「黒尾さん…まだ、寝ないで下さい。」

仰向けに寝転んだまま、酔いの回る目で天井を眺めていると、
横から赤葦が手を伸ばし、スルスルとネクタイを抜き取った。
そのまま覆い被さりながら、唇を唇で覆い、ズボンにも手を被せてくる。

カチャカチャと鳴るベルト。ジジジ…と降りるチャック。
息継ぎの合間に腰を浮かせると、ズボンと靴下を器用に引き下ろされた。
プチプチとシャツのボタンを外すのと同じリズムで、軽めのバードキス…
その愛らしい仕種に、酔いが少し醒めてきたところで、赤葦が立ち上がった。

「シャワー…お先にどうぞ。」
「あぁ…色々サンキューな。」

よっっっっこらせと、ふらつきながらユニットバスへ足を向けると、
赤葦は二人分のスーツを綺麗にハンガーに掛けてくれていた。


酒は飲んでいないとはいえ、赤葦だって物凄く疲れているはずなのに。
自分のために甲斐甲斐しく動く姿に、胸の奥をキュっと握られたような音…
その衝動に押され、赤葦を後ろから抱き込み、頸筋に唇を落としていた。

痕は付けない程度に。それでも皮膚を火照らせるには十分な強さで。
柔らかい耳朶に、わざと軽く歯を立てながら、湿った音を直接耳に響かせる。

「一緒に…浴びるか?」
「んっ、駄目…です…」

酔っている中、狭い所で無理矢理…なんて、危ないですし。
それに、そんなんじゃ全然…ですから、早く浴びて来て下さい。

恥かしそうに俯きながら、ツンツンと肘で押し、早く…と促す赤葦。
俺は音を立てて唾を嚥下すると、くるりと振り返り、浴室へと飛び込んだ。


二人で一緒に『外泊』…たとえそれが都内のビジネスホテルであっても、
赤葦にとっては『特別』なものらしく、『普段』とは全く違う顔を見せる。

まだ若く、しかも新婚…生活と仕事を共にしているとはいえ、
マンネリとは無縁…自分でも呆れるぐらいのデレデレぶりである。
だが、毎日同じ寝所で、同じリズムで生活していると、
どうしても時間の経過と共に、新鮮さは褪せてくるのは否めない。
そんな中、『外泊』というイベントは、またとない刺激となるのだ。

いつもと違う部屋。布団じゃなくてベッド。そして、お揃いの浴衣…
たったこれだけでも、気分が高揚するのを抑えきれなくなる。
普段とちょっと違うだけ。その小さな違いが、赤葦に大きな変化を起こすのだ。

放射性猥褻物だの、天然Ωだの、すっかりドEROキャラが板に付いてきたが、
それは単なるネタ…普段の赤葦は、堅実な常識人で、実に慎ましく大人しい。
口では散々↓方向の話題を乱発する一方で、初々しい恥じらいを魅せる…
その密かなギャップが、堪らないのだ。

今となってはギャグにしか聞こえない、『廉正な赤葦』が、
ごく稀に『卑猥な京治』に変貌する場…それが『外泊』である。


入れ違いにシャワーを浴びた赤葦は、出てくるなりベッドに飛び込み、
寝転がる黒尾の腰に腕を回して、ギュっとしがみ付いていた。
肌蹴た浴衣から伸びた脚を絡ませ、滑らかな素肌の感触を確かめるかのように、
ゆっくりと掌を黒尾の腿に這わせ、擦り上げていく。

「黒尾さん、お肌…スベスベですね。」
「赤葦だって、シットリ…餅肌だろ。」

お互いに『ちょっと』違うが、どちらも気持ちイイ…極上の肌触り。
違いがあるからこそ、『どっちも♪』な贅沢感を演出している気がする。

汗を流し、湯で温まった身体は、ため息の出るような触り心地…
実際に赤葦は熱い呼気を漏らし、それが黒尾の敏感な部分を掠め、
煽られるように、黒尾も熱い息を吐き出していく。

気持ちイイものに触れ続けていると、当然ながら気持ちヨくなってくる。
スベスベとシットリの素肌の先…気持ちイイを声高に主張する場所に、
吸い寄せられていくのは、自然なこと…もっと触れたくなってしまう。


「こっち…見ないで下さい、ね?」

そう言いながらも、掛布団やタオルに隠れることもせず、
赤葦は黒尾の下着を下ろし、露わになった熱い部分を、おもむろに口に含んだ。
両手は肌を上下に弄り、脚で脚を擦り上げながら、口と舌だけは離さない…
ただひたすらに、全身で黒尾を求める姿は、心身共に震えを走らせる。

見るなと言われなくとも、見て居られない程の艶…だが、目を離せない。
赤葦が顔を動かす度に、ひたひたと腹に当たる、濡れた前髪の雫が、
黒尾の酔いを醒ますと共に、飛びそうな理性を繋ぎ止めていた。


「ん…ふ…っ」

先端部分だけを咥え、舌で形をなぞりながら、赤葦は自分の昂りに手を添える。
そして、黒尾を刺激する口腔と同じ動きで、自身も刺激し始めた。
湧き上がる嬌声を、喉の奥で堪えても、いつもは外に出ないその情動が、
咥えた敏感な部分を通じて、黒尾にも直接伝わってしまう。

普段は赤葦の中に隠された快楽が、普段と『ちょっと』だけ違う『外泊』時に、
ようやく『外』に出てくる…家では出せない本性が、解放されるのだ。

腰付近を彷徨っていた赤葦の手を、黒尾はそっと引き寄せると、
赤葦が黒尾自身にしているように、人差し指と中指に舌を絡め、吸い上げた。
滴るほどに濡らしている途中で、赤葦は焦れたように黒尾の口から指を抜き、
そのまま背後に手を回し…自分で後孔を解し始めた。


「…っ」

これは本当に…見ていられない。
強引に目を閉じ、漏れそうな声を必死に抑えるが、
中に封じた声は体内を震わせ、赤葦の口に包まれた部分に、伝わってしまう。
その動きがまた、赤葦を煽り、耐えた声が黒尾に戻り…共鳴し合うのだ。

くちゅくちゅと湿った音を響かせる、赤葦の口と、自身の昂り。
後ろのクチの音も、堪えた喉の動きを通じて、黒尾の中心を熱くさせていく。

「赤葦、もうそろそろ、止め…」
「もう、入れて…いいですか?」

普段は絶対に口にしないような、大胆なセリフに、ゾクリと動揺が走る。
ちょっと待て…と言う間もなく、赤葦は黒尾の体に乗り上げて、
見せつける様にゆっくりと、黒尾の上に沈み始めた。

「うっ…あ、かあ、しっ」
「くっ…ろおっ、さんっ」

止められない喘ぎ声を、互いの名を呼ぶことで誤魔化す。
誤魔化したつもりでも、名前を呼ばれることが、逆に熱を高める結果になる。
潤った中を硬いモノが進む音…それを掻き消すように、何度も名を呼び合う。

少しずつ赤葦の中に飲み込まれ、繋がっていく自身を見ているうちに、
中に閉じ込め、繋ぎ止めていた自身…理性が、外へと解き放たれて行く。

最奥まで腰を下ろし、荒い呼吸を続ける赤葦…じわじわと昇る熱に浮かされ、
再び腰を上げようとした瞬間、黒尾はその腰をガッチリ掴み、動きを止めた。

「やっ…な、んで?」
「何で…黙ってた?」




***************




やっと、黒尾さんの目が…変わった。

『外』という免罪符…『非日常』を利用しないと、本性を出せない自分。
それは黒尾さんも全く同じ…家ではなかなか見せない本心を、
『外泊』の時にだけは外へ解放し、自身を曝け出してくれるのだ。

俺への配慮や労りといった『優しさ』を取り払い、素直な自分を覗かせる…
普段よりちょっとだけワガママに。そのギャップが、堪らなく可愛いのだ。

それを見たいばかりに、俺は恥じらいを封印し、黒尾さんの封印を解く。
いつもと『ちょっと』違うだけで、それが可能に…だから、外泊したくなるし、
『半歩後ろ』の参謀ではなく、『半身上め』の位置から、主導したくなるのだ。


「黙ってた、とは…何の話です?」
「わかってんだろ…言わせるな。」

開業祝パーティで、赤葦に掛けられた言葉に、黒尾はグラスを落としかけた。

『この開業…赤葦君を引き抜けなかったのが、唯一の痛手かな。』
『気が変わったら、いつでもウチに転職してくれよ?』

随分前から…それこそ、年度末の修羅場を彷徨っている頃から、
法務の裏方ではなく、建築専門にならないかと、赤葦を勧誘していたそうだ。
その才能を、ただの『参謀』として使うなんて勿体無い。
もっと能力と適性を生かせる仕事に就かないか…と。

「言う必要…ありませんから。」
感情の欠如した、赤葦の答え。
冷ややかな視線に、黒尾は思わず目を逸らし、息を飲み込んだ。
これは、赤葦激怒の前触れ…対応を間違えると痛い目を見る。

「確かに、お前の人生、俺が…」
赤葦から目を逸らしたまま、ボソボソと呟き始めた黒尾。
その頬を赤葦はむんずと掴み、正面を向かせて視線で捕縛した。
黙って瞳を射抜き、『建前』は許さない…と、全身で黒尾を締め上げる。

これまでも何度か、黒尾は赤葦を、自分という檻から飛び立たせようとした。
それは、黒尾の誠実さと優しさの表れであることは、赤葦も十分承知の上だが、
そんな優しさはいらないと、拒絶し続けてきた…もっと俺を欲せ、と。

結婚して、そろそろ半年になる。
ここに至ってもなお、そんな見当違いの優しさを見せるようなら、
絶対に容赦はしない…赤葦は全身で、それを黒尾に伝えていたのだ。


「俺に…言うべきことは?」
「っ!?それは、その…っ」

ここで『理性的』な解答をすることは、逆に赤葦を傷付ける。
抑えている自分を解放…『感情的』になれと、揺さ振られているのだ。

身も心も、赤葦に捕まってしまった黒尾は、観念したかのように両手を上げ…
その腕で、下から赤葦を引き寄せ、恐る恐る抱擁した。


「い…行かない、よな?」
「もう一度…やり直し。」

「行かないで…貰えるか?」
「あと一歩…でしょうか。」

「行くな。絶対…行かせない。」
「っ!大変良く…できました。」

きちんと(望み通りの)答えをくれた黒尾をギュっと抱き返し、ご褒美のキス。
ほとんど自分が言わせたようなものなのに、それでもやはり…歓喜に震える。

さっきまでは、包んだ口から想いを伝えたが、今度は繋がった部分から…直接。
言葉でしか伝わらないこともあるけど、こうして言葉以外で伝える方法もある。
そのどちらも欲す俺は、本当に強欲。両方くれる黒尾さんは、本当に…優しい。

俺が黒尾さんを置いて、どこかに行くわけない…離れるわけないのに。
どんな好条件で誘われようとも、俺の答えは決まっている。
だから、わざわざ黒尾さんに知らせる必要などない…それだけの話だ。

でも、この話には別の使い道があった。それが、黒尾さんを『揺する』こと…
(間違っても『強請る』じゃない。)
以前よりかなりマシになったが、まだ上手く自分を『外』に出せない黒尾さん。
その封じられた本心を揺すり、引き摺り出すネタとして、利用したのだ。


腰をくゆらせ、更に揺さぶりをかける。
漏れ出る甘い吐息の隙間から、僅かずつ『本音』が滲み出してくる。

「実は、すっげぇ焦ってた。」

お前が俺から離れるはずはない…そう信じてはいる。でも…少し不安だった。
いや、不安は…ちょっと違うか?とにかく、何だか頭がぐちゃぐちゃしてた。

赤葦が、色んな人から認められるのが、自分のことみたいに誇らしい気持ち。
そんな赤葦が、この俺を選んでくれたんだぞ!っていう、小っせぇ優越感。

これは、心底嬉しかった。それは間違いないんだが…

っつーかお前、いつの間にウチの…俺の大事な赤葦と、仲良くなってんだよ!?
コラァッ!勝手に肩ポン♪とか…気安く触ってんじゃねぇよ!

「何か、そういうのも一緒に、色々グルグル回って…結果、飲み過ぎた。」

まぁ、つまり、その、何だ…
多分これは、いわゆる…アレだな。

気まずそうに頬を染め、もごもごと言い淀む姿に、顔の緩みが止められない。
図らずも『キュ~ン♪』とした心の動きが、同じ音を立てて黒尾さんを締め、
それを『ゆすり』と勘違いしたのか、黒尾さんはヤケクソ気味に白状した。

「ヤキモチ…だよっ」
「ーーーっ!!!!」


あぁ、もう…どうしてくれよう。
この不器用で優しい人が、愛おしくて堪らない。
歓びのあまり、あられもない声が出そうになってしまい、慌てて唇を塞ぐ。
絶対行かせない…その言葉通りに、息が詰まる程の抱擁と、激しいキス。
そして、1ミリでも深く繋がろうと、腰を突き上げ…腰を落とし込む。

「あっ、やっ…も、っと…」
「凄ぇ、キモチ…イイ…っ」

稀にしか出てこない、互いの本性。
求め、求められるという快感が、更なる快感を求め…互いを激しく揺さぶる。
いつもより『ちょっと』大胆で、過激…この違いが、大きな歓びを生むのだ。


完全に本性を現した、熱の籠る視線に、焼かれそうになってしまう。
身を焦がす熱に、息を飲んでいると、真っ直ぐな眼差しと、静かな声…

「お前が俺から離れるなんて…耐えられねぇよ。」
頼むから、どこにも…行かないでくれ。

1ミリたりとも離れない…とばかりに、『出し入れ』すら止められてしまう。
ストレートな熱情が、心と身体を一気に貫いていく。
歓喜のあまり、それだけで達してしまいそうになる…困る程の幸福感だ。

だが、黒尾さんは『離れない』まま凝固…別の意味で困ってしまった。
絶対に、俺を離して欲しくはない。それはそうだけど…

「絶対に、離れません、から…もうっ、早く…っ」
離れなくても、俺をイかせる方法…黒尾さんなら、ご存知でしょう?

堪らず自身の昂りに手を伸ばすと、黒尾さんにその手を掴まれてしまった。
肉欲に漲る強い瞳…それだけで、ゾクリとしたものが背を駆け上る。


「お前も…魅せてくれるんだよな?」
欲望に忠実っていう、俺の本性を満たすのは…お前の本性だけだろ?

中途半端に突き上げながら、じわじわと煽るだけ…
もっと強い刺激を求める声も、動きも、もう抑えきれなかった。
遂に俺も理性を解放し、自ら激しく腰を上下させた。


「卑猥な京治…存分に御覧下さい。」




- 完 -




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※赤葦を飛び立たせようと… →『全員留守


2017/06/20

 

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