接続不動⑤







「何でお前が、ココにおんねんっ!?」
「それはこっちのセリフじゃボケェ!」

「違ぇよっ!それはどっちも…」
「俺達のセリフですからっ!!」



前回ゲスト『伊達の鉄壁』のお二人とは、スムースかつ実りある対談を楽しめた。
別れを惜しむ玄関先で、俺は本心からアドバイスを求め、彼らに定番の質問をしていた。

   『次のゲスト…誰がいいと思いますか?』

この企画は、今回ゲストが次回ゲストを指名するシステムじゃないし、
彼らのリクエスト(助言)通りの人が、対談に来てくれるとは限らないけれど、
素晴らしく素敵な鉄壁コンビが、一体誰を指名するのか…ものすごく興味があった。


「んー、誰が来ても、この対談記事は面白れぇから、誰でもいいと思うけどさ…」

でも、そろそろ…ズバ抜けた『知名度』と『実力』を兼ね備えた、
読者やバレーファン『待望』の奴を呼んで、記事にインパクトを与えるべきじゃぇねのか?
業界関係者ウケを狙うのも大事だが、バレーをそんなに知らねぇ人でも知ってるような奴…
妖怪世代に知り合いが多いんなら、コネでも何でも使って、スターを呼ぶのもアリだろうな。

…ってのが、オエライさん達を説得しやすい、『模範解答』なんだろ?

「だが、先生方も…楽しむべき。」
「そう、それだよ。アンタらが自然体じゃねぇと、『対談』として成立しないんだ。」

センセーのウチで、マッタリしたダチっぽい空気感で、のんびりダベるのがウリなんだろ?
ゲストの『素』を引き出すには、アンタらがまず『素』じゃなきゃ、何の意味もねぇよ。
漫画も対談も、センセー独りじゃなくて、編集者や協力者も一緒に創ってるもんなんだから…

「貴方達三人共が自然に笑い、楽しんでいる姿を…俺達『読者』は、見たい。」
「だから、『コイツと会ってダベりてぇな~』って感じる『好きな奴』を、自由に選べよ!」


ニカっと笑う二口さんと、ほんのり頬を緩めた青根さんの温かさに、玄関先でじ~~~ん…
黒尾さん&青根さんはガッチリと握手、赤葦さん&二口さんはミッチリと抱擁。
そして俺は、思わずこう叫んでいた。

「それじゃぁ、次回もその次も…マブダチな鉄壁コンビのお二人がいいですっ!」
「っ!!?バッ…カ、泣かす気かコノヤロー!次刊から3冊ずつ買っちまうだろうがっ!」
「俺は1巻から、3冊ずつ購入している。」

そんなこんなで、ここでお二人と別れるのが惜しくなってしまった俺達は、
五人全員で玄関を出て、夜の街へ繰り出し…朝まで楽しく飲み明かしたのだ。


「これからも、俺達三人で力を合わせ…」
「この対談企画…成功させましょうね。」
「えぇ!俺達『三人』が…創作者です!」

ウェ~イ!!!と、肩を組み俺んちに戻ると、酔いにまかせて黒赤コンビは何処ぞへ電話。
二人が『のんびりダベりたい』と思う、各々が『好きな人』を、対談相手として選んだ。

…はず、だったのに。



「おかしいだろ!いくらグデグデでも、俺はお前を呼んだ覚えはねぇ!」
「俺かて、黒尾さんに呼ばれたんやったら、絶対来ぇへん…そんなん、アブない罠やん!」

「テメェは俺を、一体何だと思って…!?」
「詐欺師かペテン師!ちゃうんかいっ!?」
「多分、それで合ってますよね?」
「概ね、大正解だと思われます。」

やかましいわっ!…ったく。
確かに、協会の意向とか、読者&女性ファンのためにも、
お前らのネタがそろそろ必要なことぐらい、二口に言われなくとも、十分わかってた。
でも、お前を直接ココに呼んでも、メンドクサイだけなのも、十二分にわかってたから…

「間接的にお前らのネタを聞けるよう、俺のマブダチを呼んだはずなんだがなぁっ!?」

日本代表メンバーの中で、俺が一番心穏やかに茶飲み話ができる、最高のマブ…
『ラブリー・テイルズ♪』のホワイトこと、尾白アランを招集したんだぞ?
ちなみに、イーグルこと梟谷の鷲尾は、高校時代からの『初期メン』だ。
対談が終わったら、テイルズ♪のメンツで飲みに行く約束だって、したっていうのに…

「何でお前が来たんだよ…ツム!?」


そう。 今回、黒尾さんが呼ぶゲスト様は、「コイツなら安心して対談できる」と、
安堵の太鼓判をどーん!と自信満々に押した、『マトモな奴』だと…俺達は聞いていた。

でも、どういうわけだか、玄関から飛び込んできたゲストコンビの片割れは、
ネタ的には『ゲスト向き』でも、『マトモな対談相手』とは言い難い…宮侑さんっ!?

予想だにしない『ビックネーム』の登場に、俺と赤葦さんが目を瞬かせていると、
珍しく黒尾さんは声を荒げ、侑さんと『素』でギャンギャン大騒ぎをし始めたのだ。


「何やそのダッサイ名前!売れてへんお笑いトリオかいなっ!」

グデングデンのアンタから、アラン君に電話があった時…俺、横におってん。
アンタが『好き』やっちゅう理由だけで、俺を差し置いてアラン君!?職権乱用甚だしいわ!
んで、センセの編集…梟谷の赤葦の方も、『好き』を理由にゲスト招くつもりやったやろ!?

「赤葦の『好き』…そんなん、バレー関係者ならみ~んな知っとるで!」

聞いたで~?仙台で堂々と、『俺の傍に…来て下さい。』って、コクったんやってなぁ!?
公衆の面前で、ホンマに破廉恥な奴やで…ま、フラれてもうたらしいやんけ。

「東京出店せぇって…アンタ、そういうイミで俺に言うたんか?」
「ご安心下さい。断じて違います。」

ともかく、赤葦も職権使いまくって食券ゲットする気やな!?って、俺は気ぃ付いた…
せやけど、ヘソマガリな梟谷のセッターが、最愛の『おにぎり』を直接招くはずがないやん?
ぜーったい、どこぞの腹黒と同じく、間接的にモノにしようとする…

「あかーしっ!お前がラブコール送ったんは…『おにぎり』の原材料・北さんやなっ!?」
「いえ、全然違います。」

「ココに来たら、北さんに逢える!!
   そう悟った俺は、休暇中のアラン君ちに…ぼっくんを送り込んで来たったわ!」
「ぼっくん…木兎さん!?何と御無体な…っ」

それなのに…それなのにぃぃぃぃぃ~~~っ!
黒尾さんバリに卑怯で腹黒い技まで使ぅて、休日返上で来たっちゅうのに…何でなんっ!?

「『おにぎり』そのまんま呼ぶとか、ありえへんやろっ!泣くでホンマにっ!」
「だから、違いますから。」
「俺は『おにぎり』やない…おにぎり屋や。」


何だかんだ言いつつ、黒尾さんにしがみつきながら泣き喚く侑さんを、
本日のゲストの『片割れ』こと、おにぎり屋・宮治さんは、淡々とあしらった。
侑さんに対しては冷静だった治さんが、一転…コチラには熱の籠った視線を突き刺してきた。

「『黒い』のは、ソッチより…コッチや。」


ソッチの見たまんま腹黒尾さん以上に、コッチで澄ました顔しとる赤葦は…ヤらしい奴やで。
北さんを直接誘うたら、絶対に俺が阻止すると読んで、別ルートから探り入れてきおったわ。
おにぎりのタネやなくて、『ネタ元』…俺らの情報握っとる奴を、既に抱き込んでんねん!

「いつからマブなん…ウチの倫太郎とっ!?」
「高校時代から、ですね。」

「え、そうなん!?聞いとらんで!!?」
「貴方達の方も、倫太郎さんに聞いてないですよね。梟谷の赤葦とマブなんか?…って。」

「アイツに聞いたって、『それ聞いて…何か意味ある?』って、かる~く流されるだけや!」
「俺も全く同文です。」

あーそうかいな。地味でヤらしい策士同士、さぞかし気ぃ合うんやろうなっ!陰険やわ~っ!
んで、アンタらは俺に隠れて…倫太郎経由で北さん誘うたんやろ!?
北さん、ツム(と俺)のことはガン無視するくせに、倫太郎には何でか甘いからな。
アイツが「東京、一緒に行きませんか?」って誘うたら、すなりん…すんなりついて行くで!

「だから、先程から違うと言ってますが。」

んで、賢い俺は、倫太郎をコッソリ尾行して、北さんとの待ち合わせ場所らしいトコに到着…
どう見ても『隠れ家』っぽいマンションやん?ここで逢瀬とか、昼下がりの情事かいなっ!?
せやから、倫太郎のアレ握って気ぃ失わせて…ツムんちにタクシーでデリバリーしたったわ!

「なのに、ツムがココにおるとか…ひとつも笑えへんネタや!握り損やんけ。」
「ちょっ、お前…角名のナニ握って…っ!?」

「ナニって…俺は『握り』のプロやで。」
「サム…北さん以外には、手厳しすぎや。」


話をまとめると…
黒尾さんも赤葦さんも、二口さん達の『模範解答』にも沿う形で、
バレー界でピカイチのネームバリューを持つ、宮兄弟のネタにしようと目論んだ。

だけど、直接呼ぶとアレだから、自分達の『好き』も満たす形で、
穏やかかつ安全に対談(&飲み会)を楽しみ、間接的に目的達成しようとしたが、
誰も彼もが、『好き』を追求しまくった結果、目的たる宮兄弟が直接来てしまった…らしい。

   (何たる偶然…いや、当然か。。。)

頭を抱える黒尾さんを、左右から挟んで大喧嘩を始めたツムサム…日向影山以上のカオスだ。
生まれてこの方…違う。生まれる前から遺伝子レベルで『ライバル』だったツインズは、
どうやら『北さん』とやらをめぐっても、熾烈なライバル関係にあるようだ。


「アッチコッチに遠征で、なかなか北さんに逢えへんから…有給取った俺の愛、凄いやろ!」
「はぁ?俺かて、臨時休業にして上京やし。北さんへの愛だけは、ツムには絶対負けんし!」
「あーもうっ!ステレオでうるせぇっ!!だからお前らを呼びたくなかったんだよ…っ!!」

「俺らをおりこうさんにしたかったら、黒尾さんが手品か何かで、北さんココに出してや!」
「せやせや。俺ら、北さん以外の言うことは、聞かへんからなー!北さんカモン!早ぅっ!」
「俺は詐欺師かもしれねぇが、手品師じゃねぇんだよっ!北さんとやら…俺を助けてくれ!」

黒尾さんは虚空に手を伸ばし、まだ見ぬ『北さん』に救いを求めた。
(目の前の俺に救助要請しないとこが、黒尾さんのめちゃくちゃ優しいとこだと思います!)
そんな黒尾さんを、神は見捨てなかった…組んず解れずの『宮黒宮』の眼前に、
いつの間にか何処ぞへ避難?していた赤葦さんが、ズズイ!!とスマホを突き付けた。


   『対談…ちゃんとせぇや?』


まさに…天の声。
穏やかだが有無を言わせぬ『一言』に、宮兄弟はビシィィィィッ!!!と背筋を正すと、
ソファに並んで座り、赤葦さん…の持つスマホに向かって、深々と頭を下げた。

「招かれざる客・宮侑…お邪魔致しますっ!」
「同じく、宮治…宜しくお願い致しますっ!」



*****




「それにしても、世間は狭いっちゅーか…」
「ダチのダチは、別のダチに繋がるんやな。」


スマホ越しに落ちた雷…『天の声』により、宮兄弟の態度は激変。
気持ち悪いぐらいの『おりこうさん』っぷりを発揮し、対談はつつがなく進行した。

一体、『北さん』とやらは、どれほど恐ろしい方なんだろうか?
ありがたや~と、何となく北を向いて拝みたくなる反面、
俺達三人も北さんを畏怖…怖いモノ見たさで、彼に会いたくなってしまった。

「左右に狐兄弟を従える…お稲荷さん?」
「狐がお稲荷さん本体ではなく、お稲荷さんの部下…『神使』が、狐ですね。」
「ってことは、北さんこそがお稲荷さん…穀物の神・宇迦之御魂神(倉稲魂神)か。」


赤葦さん(本当は文芸志望なのに…)が、サラっと『大好き♪』な分野の解説を入れると、
さも当然のように、黒尾さんがマニアックなワードで受け答えをした。
俺と赤葦さんが驚いた顔をしていると、お狐ツインズがその流れをぶった切った。

「何ワケわからんことを…そう言やぁ、黒赤は宇宙語喋るって、ぼっくんが言いよったな。」
「要するに、北さんは米作りに最適な人っちゅうことやないか?そんなん、当たり前やん。」

俺はな、北さんが美味しいお米を作る元気が出るように、凄いプレーを全力で頑張っとる!
んで、北さんが「俺の侑は凄いやろ?」って、褒めてくれる(のが、聞こえる)…もう最高や!
ヒナタの得点も、ぼっくんの得点も、ぜ~んぶ俺が上げたったトス経由。即ち、俺の得点!
誰がどないなプレーで得点しようとも、それは全て、俺から北さんへの…愛やねん♪

「宮侑のバレー=北さん大好き!以上!!」


「待てツム。誰が『俺の侑』やねん。」

ツム含め、日本代表の『元気の源』になっとんのは、俺のおにぎりやろ。
ツムどころか、影山がトス上げて牛若がキメた得点も、元を辿れば俺のおかげやんか。
当たり前のことやけど、俺のおにぎりは俺の北さんが作った、世界一美味い米100%…
俺は作り手たる北さんへの感謝と愛をギュギュっと込めて、おにぎりを握っとる。

「俺の治が握ったおにぎりは、世界一や…北さんはそう褒めてくれる(に、違いないやろ)。」

俺自身はバレー辞めてもうたけど、ここにおる対談三人衆と同じか、それよりもっともっと、
北さんと俺が、日本バレー界を胃袋から握っ…支えとるんや。

「日本バレー界=北さん大好き!以上!!」


休憩時間に入り、それとなく『雑談』してみた結果が、コレだ。
対談も大方終わり、『おりこうさんモード』が解除された途端、
どうしようもない『結論』を、宮兄弟が堂々と宣言してしまった。

キレイなオチが付いたで!と、ハイタッチをかますツインズに、
黒尾さんと赤葦さんは天を仰ぎ…自戒の籠もった苦笑いを溢した。

「言い忘れてたが、俺は『貴方にとって○○とは?』っていう定番の質問…大嫌いなんだ。」
「同感です。定番の質問に、用意した答えを暗唱する…コント以下の茶番だと思いますね。」
「申し訳ないですけど、お二人のキメ台詞…記事にはちょっと、使い難いかもしれません。」


『自分にとって○○とは?』を考えることは、長い人生で時折必要となる『プロセス』だ。
でもそれは、じっくり自らを振り返って、内側から染み出した答えに、自分で沁み入るもの…
二口さんと青根さんが出したような『じんわり感』が、本来あるべき姿なんだと思う。

だから、対談やインタビューの『美しいシメ』として定番化しているのは、何だか滑稽で…
(イヤらしさすら感じてしまうのは、俺達が天邪鬼だから?)
それは『用意された定番のシメ』じゃなくて、本来は対談を通して導く『結果』であり、
インタビュアー側の努力と工夫で、ゲストから引き出すべきものだと、俺達は思っている。

「まぁ、お前らの『北さん大好き!』は…」
「使えはしませんけど、本来的な意味で…」
「嘘偽りのない、『素』…なんですよね。」

   嗚呼、インタビューって…
   ホンットーに、難しいな。


俺達の『心の叫び(ため息?)』に、宮兄弟は顔を見合わせ、
今まで見たことのない『素』の表情で、静かに言葉を紡ぎ始めた。

「俺らかて、そういう『おりこうさん』な質問には、答える気なんか1粒もあらへんわ。」
「俺らが『北さん大好き!』なんは、考えた末の答えとは全然違う…心の叫びやからな。」

どんなに考えても、考えようとしても、考えなんかまとまらんし。
な〜んも考えられへんぐらい、その人のことばっかり考えてまう。

カッコエェ言葉とかで、心の中で絶叫しとるキモチを、なんとか伝えたい!って思うても、
結局出てくるのは、飾りっ気のない、素っぴんの言葉だけ。

「『好き』って、元々…」
「そういうもん、やろ?」

   どんくらいバレーが好きで。
   どんだけおにぎりが好きで。
   どうにもならんほど好きな…

「俺らにとって、北さんっちゅうのは…」
「言葉にならん、『大好き』…やろな。」


つーわけで、こないな恥ずかしい『素のコクハク』なんか、記事にされたらかなわんわ!
北さんに読まれてもうたら、ドヤされる…やなくて、最低三日間は顔合わされへんやろ!
それでも、こうやって恥を忍んで言うたんは、『大いなる目的』のため…それはっ!?

「俺らの北さんは…永久不可侵。」
「それをアンタらに、叩き込むためや。」

あ~、疲れた!ピュアな心が乱されたわ。
俺らばっかり一方的に質問されて、恥かしい思いしまくったやん。そろそろ交代な!
こっからは俺らが聞きたいことを、アンタらにインタビューさせてもらうで。

「は?俺らに、インタビューする…だと?」
「せや。知りたいことは、こっちから聞かな…教えてくれへんのやろ?」

「いや、俺達の話を聞いても、記事には…」
「対談はもう終わったやん。ただ単に、アンタらと他愛ないおしゃべりをしたいだけや。」

突然の攻守交替に、俺達三人は唖然。
ちょっとタンマ!と、姿勢を正す間もなく、侑さんが黒尾さんに詰め寄った。


「なぁ、いつの間に『ラブリー・テイルズ♪』に、ホワイトを加入させたん?」

イーグルって、倫太郎のチームメイトやろ?でもって、ぼっくんと同じ梟谷…世間狭すぎっ!
ぼっくんが喧しい分、余計にイーグル鷲尾は大人しい印象やけど…お笑いもやるんやな~
それより、ウチの貴重なツッコミ要員・アラン君を引き抜いとったんは、正直ビビったで~!

「俺らがいくら誘うても、トリオ組んでくれへんかったのに…どうやって口説いたん!?
   やっぱ黒尾さん、アンタ…結婚詐欺師もやっとったんやな~!」
「俺らはお笑いトリオじゃねぇよっ!」

「あ、赤葦も梟谷か!なぁ、イーグル…実はおもろい奴なんか?」
「どちらかと言うと、珍しくマトモで、尊敬できる優しい先輩、なんですけど…っ」

「何や赤葦。お前、ブラックとイーグルが元々コンビやったこと、知らんかったんか?」
「は、はい…」


黒尾さん。結婚詐欺師の方は、否定しなくていいんですか?
赤葦さんっ!ブラックに聞きたいことがあるなら、このチャンスに便乗質問…早くっ!

…と、妖怪世代のやりとりに脳内ツッコミを入れつつ、赤葦さんに念を送っていたら、
赤葦さんがそれに気付くより先に、今度は治さんが赤葦さんに質問を放った。


「木兎&鷲尾の元後輩が、木兎の現チームメイトのツムとダチになるなら、まだわかるけど、
   何でアラン君の元後輩とダチに?梟谷と稲荷崎って、そんな深い繋がり…なかったやろ。」
「俺は、すなリン…角名さんの、フォロワーなんです。元々は『情報源』として…です。」

倫太郎のSNSに惜しげもなくUPされる、俺らの情報…イケとる画像を愛でるため、やな。
それが『なんやかんや』を経て、ガードの固い倫太郎とマブになったってわけかいな。

「ガッチガチにおカタそうに見えるけど、実はアンタ…ナンパ師か?」
「そんなわけないでしょ!」

「でも、サムは公開ナンパしたやんけ。」
「だーかーらーっ、違いますって…っ!」


はは~ん、ど~りで。
クッソ忙しいはずのギョーカイ人が、アッサリこの対談を受けるんは、
結婚詐欺師&ナンパ師っちゅう、冗談ヌキで『昼下がりの情事』ペアが絡んどるからや!

「ダチのダチは、別のダチ同士に繋がる…さすが黒赤、『交遊カンケー』が広いな~!」
「ホンマ、お色味からしてヤらしいオーラがプンプンしとる…色っぽいコンビやな~!」

「妙な言いがかりはよせ!俺と赤葦は、昼下がりの…なカンケーじゃあ、ねぇからな!?」
「強いて言うなら、『昼間ヤれないことヤろーぜ!』なカンケー…ってだけ、ですから!」

「何やそのセリフ!?もっと詳しゅう!!」
「事細かく、俺らに教えんかいっ!」
「せやせや!俺も聞きたいです…やんけ?」


宮兄弟の口車に乗せられ、珍しくポロリしてしまった、我らが黒赤組。
その『らしからぬ』わたわたっぷりが新鮮で、俺もツインズと一緒に初ツッコミ(もどき)…

だが、不慣れゆえに完全にスベってしまい、四人はキョトン…
痛々しい沈黙が、場を支配してしまった。

   (穴があったら、入りたい…っ!!)

背に当てていたクッションを抱き、顔を埋めて『ゴメンナサイ。。。』を小声で呟いた瞬間、
突如、体が宙に浮き上がり…黒と赤の間から、ツムとサムの間に移動していた。

「う、わぁぁぁっ!!?」

「黒赤組がウチのアラン君と倫太郎を取ったなら、俺らはソッチの…宇内センセ、貰うで。」
「え!?は?な、なに…っ!?」

両サイドから抱き締められ、髪を掴まれたり、服を引っ張られたり。
わけもわからないまま、俺はもみくちゃにされてしまった。


「宇内センセ。俺らとコンビ、組も?」
「字面的に、絶対その方がエェって。」

さっきから気になっとったけど、何やこの…わやくそな髪と、センスないジャージは。
シャレオツなイケメンツインズがゲストやっちゅうのに、気ぃ抜きすぎやろ。
コレをセレクトした赤は論外、コレにダメ出しせぇへん黒も、同罪やで。

「せっかくの美少女顔が、台無しやんか。」
「俺らがセンセを、べっぴんにしたるで!」

俺らがトリオ組んだら、めっちゃ見目麗しく、見た目がバエるだけやないで?
もしセンセがウチに…宮んちの子になったら、ネーミングが神がかり的ブラザーズ、爆誕や!

「宇内天満改め…宮天満!」
「英語表記したら、天満宮…天神さんキタ!」

「お稲荷さんは、どこへ行ったんやっ!?」
「天満宮のどこが、英語表記やねんっ!?」


学問の神・天神さんだけに、オチないネタ…
ついついつられてツッコミを入れてしまった黒赤組は、自己嫌悪でグッタリ撃沈。
俺と同じように、クッションに顔を埋めて、重いため息を吐いていると、
ブラザー達は「慣れへんうちは、そんなもんや。」と、トドメのナグサメを放り投げ、
勝手に『今回のオチ』をつけるべく、対談のシメを仕切り始めた。

「ツムは次のゲスト、誰を指名するんや?」
「それな!実はもう、約束してきたで~!」

今回、俺のために全力で協力してくれた、『最高のマブ』に、
アラン君と今日一日遊んでくれたら、次回のヒーローインタビューに指名したる!…ってな。

「はぁ~!?待て!それって、まさか…っ」
「誰もが知ってる、みんなのスター…『世界のエース』こと、ぼっくんや!!」

   ではでは、もう一人のゲストは?
   サムが誰を指名するか、気になるなぁ~♪
   どろどろどろどろ…ドン!はい、発表!!


「俺もさっき、そいつに約束してきたで。」

北さんに逢うためだけに、臨時休業して上京してきたわけやない。
ちゃんと『ビジネス』も、ついでにこなしてきたとこや。

   eスポーツの大会に、出店してくれない?
   おにぎりって、ゲーム中に食べやすいし。
   俺が…㈱Bouncing Ballが、出資するよ。

「次回ゲストは、おにぎり宮のスポンサー様…『世界のKODZUKEN』や。」
「ごっ、御冗談、を…っ!!?」


   (グッジョブ!我がブラザーズ!!!)

真っ青な顔で愕然とする黒赤組に見えないように、俺はこっそりガッツポーズ。
黒尾さんと赤葦さんが、できれば会いたくないと極力回避している…木兎さん&孤爪さん。
黒赤の『この先』にとって、避けては通れないはずなのに、目を逸らし続けているお二人を、
『ダチのダチはマブダチ繋がり』と、お稲荷さん御一行が『縁結び』してくれたのだ。

   (このチャンス…逃さない。)


「ホンマ、世間って狭いな♪」
「人類皆ブラザーズ、やな♪」
「せやせやな~、ですよね♪」




- 番外・接続未満へGO! -




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※昼間やれないことを…


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2021/02/11 

 

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