ご注意下さい!


この話は、スルスル~っとしたBLかつ性的な表現を含んでおります。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、 閲覧をお控え下さい。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、責任を負いかねます。)




    それでもOK!な方  →
コチラをどうぞ。



























































    下積厳禁⑤







『えーっと、黒尾さんが電マのプロな理由だよね?
   ま、カンタンに言うと、そういうトコに勤めて…』
「えぇぇぇぇぇぇぇっ!!?
   つ、勤めてたって…どういうこと!?もももっ、もしかして…」


山口がアッサリ暴露しかけた黒尾さんの『前歴』に、僕は大声を上げた。
どんな『前歴』があっても、お互い触れないのがこの街のルールだが、
さすがにプロとして電マを扱っていたとなれば…驚きを隠せない。

アレは本来、『家庭』用医療器具…
それを『プロとして』つまり『業務』で使う職業など、ごくごく限られてくる。
そう、男なら誰もが一度は憧れるであろう、夢の職業…『男優さん』である。

「人間技とはとても思えない、あの『人タラシ』っぷりは…
   人外だからじゃなくて、『夢の世界の王子様』だったからなんだねっ!!」


そう考えれば…全て納得だ。
あの『電マ実践編』だって、事務所のコタツじゃなくてラブホのベッドなら、
(やけにふわ~~~っとした、白っぽい照明に照らされてたりしたら、)
まるっきり映像作品…女優さんインタビュー後の『緊張ほぐしタイム』だった。

この僕ですら、もうちょっとアレを続けられてたら、危なかったかも…
トロンとした『夢見心地』に浸り、溺れる可能性だってあったかもしれない。
だって、ホンモノの『性感マッサージ』を受けた『二丁目のお姫様』が、
一発で堕ちたテクニックだなんて、想像するだけで…『ご馳走様♪』だ。


「『ブラックバット伝説~絶倫吸血鬼に狙われた夜(白雪姫編)〜』とか…
   そもそも『黒尾鉄朗』って芸名が、モロにお強そうな男優さんっぽいよね。」
『24時間ハメっぱなし!とかの、耐久モノのやつに出てきそうだよねっ!
   確かに男優っぽい名前だけど…モロに源氏名の『月島蛍』がそれ言うっ!?』

「期待の大型新人デビュー!『蛍狩り〜こっちの蜜は甘いゾ』好評発売中…?」
『あっははははっ!!もう…笑わせないでよ〜っ!観てみたいじゃんか!』

月島と山口は、『黒尾鉄朗出演作っぽいタイトル』を出し合い、大笑い…
おケイのデビュー作は『アナタにいっぱい~スリッパリーニップル編~』又は、
『酔いどれ湯けむり濡れそぼり~乳頭温泉編~』にしようと決定したところで、
笑い疲れた山口はようやく本題を思い出し、ゼェゼェ呼吸を整えた。


『あ~、楽しっ!!でも、ツッキーのはただの早とちりなんだよね〜
   申し訳ないけど、現実は夢もファンタジー要素もない、ごくフツーの話…』

ツッキーとの出逢いのきっかけになった電マ…その発送元を覚えてる?
江戸末期からウチと懇意にしてる、超優良『お道具』メーカーさん…

「確か…『伊達工業㈱』さんだっけ?」
『そう。そこの技術部長さんとは、歌舞伎町人外青年会の繋がりで…』

無口な『ぬりかべ』さんだけど、と~っても優しくて頼もしい人(妖怪)なんだ。
その人のところで、商品デザイナーとして『付喪神』さんが勤めてるんだよ。
『オモチャ』と名の付くモノなら、ゲームから『お道具』までお任せ!な人外…
黒尾さんとは250年以上の付き合いがある、いわゆる幼馴染なんだよね~

黒尾さんは、付喪神の幼馴染が開発するイロイロな『お道具』をテストプレイ…
プロというよりは制作側だから、詳しくて当然なんだよ。
電マやらローター以外にも、わくわくグッズ(試作品)が入った段ボール箱が、
ウチの納戸には山積み…付喪神ベビーが誕生しそうなぐらい眠ってるよ~♪


「そうか…念が籠った『お道具』も、付喪神になる可能性があるんだね。」
『電マ神とかバイブ神がいたら、ポルターガイスト現象が凄そうだよね〜』

付喪神とは、長い年月を経た道具に神や精霊が宿ったもの…九十九神とも書く。
人を誑かす存在だそうだが、元から誑かす専門の『お道具』だったのなら、
色んなイミで騒がしく、震えの止まらない人外になりそうだ。

モロにアレのカタチをした道祖神が、日本中の至る所に鎮座しているのだから、
アレそっくりのバイブ型付喪神がいたとしても、何ら不思議はないだろう。
できれば是非とも、お会いしてみたい…ではなくて。


「黒尾さんの、幼馴染…か。」

これ、赤葦さんにはできれば聞かせない方が良い話じゃないだろうか。
ただでさえ、『150年来の部下』にヤキモチ妬きまくってんのに、
その上『250年以上の幼馴染』なんて出てきたら…歌舞伎町が劫火に包まれる。
赤葦さんより先に、僕が探りを入れておいて、本当によかった。

「山口、あのさ…」
『安心して。黒尾さんと赤葦さんが完全にくっつくまで…黙っとくから。』

僕の思考を完全にテレパシーした山口。
内緒話をするように、耳元にコッソリ吐息だけで囁かれたその声に、
気遣って貰えた喜びと共に、ゾクリとしたものが全身を駆け抜けた。

   (うわっ、声が、耳元…っ!)


『もしもし…ツッキー、どうかした?』
「っ!!?あーいや、その…あのさ…」

心配そうに、小声で呟く山口。
頭の中に直接囁かれるような…それぐらいの『至近距離』に居る錯覚に陥る。
これはヘッドフォンをしているせい…そんなことはわかっているけれど、
ふわふわ耳クッションに包まれた温もりと、息遣いまで聞こえる『近さ』に、
否応なく鼓動が早まり…どくどくと脈打つ熱が、下から積み上がって来る。

『ツッキーなぁに?…はい、どうぞ!』
「んっ…あ、えーっと、何と言うか…」

『はい、どうぞ!』と促された僕は、答えないわけにもいかず、
同じようにぼそぼそとした小声で、山口に質問で返した。


「山口ってさ、オトナ用『映像作品』…ヘッドフォンで聴いたことある?」
『っーーーーっ!!!?』



*****



突然小さく、低くなったツッキーの声。
耳元に息を吹きかける…『秘め事』と言うに相応しい囁きだ。

訊ねられた内容も、『内緒話』に相応しいものではあるし、
このまま『ヒソヒソ話』を続けるのはマズいと、高まる心音が訴えていたけど、
大声で堂々と語るのは、さすがに憚られる…やっぱり恥ずかしい。

   (それにしても…リアル、だよ。)

ついさっきまで、散々『そういうネタ』を話していたから、こんな話の展開に…
その分、スルスル~っとカンタンに『そういうモード』にも入りやすいし、
当然ながら、想像(妄想?)がダイレクトに直結しやすくなっている。

   (なんか、アレな気分に…)

俺はできるだけ平静を保つべく、明るく軽くを心がけてツッキーに返した。


「それ、男なら一度は経験あるよね〜
   家族にバレないようにって、イヤフォンとかヘッドフォンで聴いてみたら…」

甲高い喘ぎ声に至る前…低音や息遣い、衣摺れ音といった細かい音の方に、
臨場感と期待感が増幅され、いつもよりずっと…『快速電車』にご乗車だった。
視覚よりも聴覚の方が、目的地まで早~く到着させてくれると痛感…黒歴史だ。

『フツーに鑑賞するより、没入感が桁違いというか…浸っちゃうよね。』
「まるで自分が体験してるみたい…ヤらしさ倍増!な、おトクさだよね〜」

そう言えば、例の付喪神さんも言っていたっけ。
「乙女ゲームをヘッドフォンで聴くと、途中から叫びたくなるよ。」…って。
大してエロいセリフでもないのに、甘い声でぽそぽそ囁かれるだけで、
途轍もなく羞恥心を煽られ…ひゃぁぁぁぁぁ~~~っ!!となるそうだ。
きっとこれは、アニメのドラマCDなどでも、同じ現象が見られるはずだ。


「逆に、ゾンビに襲われる系のゲームをヘッドフォンでヤっちゃって…
   しばらくの間、夜中に黒尾さんを叩き起こしてトイレに行ってたよ~」
『真っ暗な部屋で、音だけを聴く…恐怖の館的なのも、遊園地にあるよね。
   ねぇ山口、試しに今、ちょっとだけ…目を瞑ってみてよ。』

「えぇ~!怖い話…絶対しないでよ?」

その時は、ツッキーが熟睡したところを見計らって、叩き起こすからね!?
それか、耳元でゾンビの呻き声を夢の中までお届けし~ちゃ~う~ゾ~

…と、茶化そうとした瞬間。
視界を閉ざした暗闇の世界に、予想もしなかった声が響いてきた。


『大丈夫…心配しないで。』


ほんの小さな、何でもない囁き。
劣情を煽るような卑猥なセリフでも、恐怖に陥れるような声色でもなく、
むしろ感情もトーンも低く抑えた…普段からよく聞く、ありきたりなセリフ。

だからこそ、余計に錯覚してしまった。
すぐ傍…耳元に直接吹き込むぐらいの至近距離からの、『睦み事』のように。
まるで『これからの二人』の姿を予感させる、スタートを告げるみたいに…

ゾクリ…と、明らかに『期待』を表す震えが、全身を駆け抜ける。
ビクリと同時に、ドクリ…と下から一気に熱も積み上がってしまい、
それを抑えようとしたゴクリ…という喉の音が、ヘッドフォンを伝わり…
たったそれだけで、俺の状況全てをツッキーはテレパシーしてしまった。


『箒に…跨れなくなっちゃった?』
「ツッキーのせい、だからねっ…」

あぁもうっ!無駄に『低音しっかりリアルサウンド』仕様なんだからっ!!
ココがこうなったら、もう…トんどかないと飛べないんだから…

   (ちゃんと、責任取ってよね…?)

息を殺して、『無音』でその意図を伝えると、
ツッキーはスタートを告げる言葉を、俺のナカにだけ零した。


『僕に…任せて。』



*****



危ないから、まずは受水槽から降りて。
それから、裏側に回って…エアコンの室外機との間に立ってくれる?

『そこなら、万が一誰か屋上に来ても…すぐには見つからないからね。』
「こんなとこ、誰も…来ないけどね。」

このビルができた当初から…多分ツッキーが生まれるより前から、
俺の『休憩中』に、誰かがココに上がって来たことは、一度たりともない。
だから、ココでナニをヤっても大丈夫…ココには、いつも俺独りだけ。
そう思いつつも、ツッキーのナビゲート通りの場所へ、俺は素直に移動した。


「着いたよ…はい、どうぞ。」
『それじゃぁ、服の上から山口の…箒の柄に、右手をそっと被せて。』

受水槽に背を預け、言われるがまま右手をそろりそろりと下ろしていく。
魔女衣装の上からでは、まだ大きな変化は見えないけれど、
上から被せた掌は、その下に熱が籠りつつあることを、敏感に感じ取った。

『右手はそのまま。左手でマッサージするように、右腕を撫で上げて…』

   心臓に血液を戻すみたいに。
   肩から鎖骨、お腹から胸へ。

『僕のマッサージ…思い出して。』

裾がずり上がらないよう(という体で)、右手でややしっかり押さえながら、
ツッキーがいつもシてくれるみたいに、全然キかない弱~い力で身体を擦る。

「マッサージ…下手っぴ…っ」
『強いだけが良いマッサージじゃない…そう習ったからね。』

あのマッサージ椅子上司…余計なことをツッキーに教えないでよね。
ツッキーも、教えたことを忠実に守る…デキすぎな下積なのも、ちょっと困る。


「ねぇ、次は?…はい、どうぞ。」

声は間近に聞こえるのに、こんな刺激じゃ…トぶには全然足りない。
それなのに、右手の下には着々と飛行に必要な上昇気流が起こっている。
広い上空へ昇り、風を感じたい…ヘッドフォンの向こうに、吐息で訴えかける。

『そうだね、じゃあ…左手で温泉でも掘削してみよっか?』
「は?温泉って…なっ、ナニしょーもないコト言ってんのっ…!!」

今日の入浴剤は、トロ~リとした白濁液の…『乳頭』温泉だ。
それを、ゴツめのワンピースの上から、左手の指先だけで掘削しろだなんて…

『僕がいつもやってるよね?親指の腹で周りを解してから…』
「わかんな…ん…っ」

源泉湧出用のスイッチ…無事に見つかったみたいだね。
そこを指先とか爪先で優しく掘って、飛び出してきたモノを…抓み上げてみて。

「こんなちっちゃいの、服越しになんてムリっだよ…んんっっ。」
『強くしすぎちゃダメ。服に擦れて、後で痛くなっちゃうから。
   そろそろ右手…源泉湧出ポイントも、地上付近まで上がってきたかな?』


何でそんなことまで…わかっちゃうの。
本当にテレパシーで、俺のカラダのことを隅から隅まで見てるみたいじゃん。

『…どう?』

わかってんなら、聞かないでよ。
ホントに白々しい…でも、左指での掘削作業を止めることもできないし、
それ以上に、右手の方が…ツッキーには絶対わからないキツさを絶叫している。
さすがにコレは、言わないと伝わらないはず…経験がないとわかりようがない。

「あのさ、ストッキングが…」
『…?あぁ、そうか!それは気付かなかったよ…ゴメンね?』

右手で、ワンピースの前を少し捲って。
左手で、露わになったストッキング…

『…の、真ん中の縫い目に沿って、撫でてあげてくれる?』
「えっ?…脱ぐ、じゃなくて?」

ここで『本音ポロリ機能』が発動…つい『ヤりたいこと』を言ってしまった。
ヘッドフォンから、ツッキーが嬉しそうに頬を緩める空気が伝わってきて、
恥かしさと悔しさで、カ~っと頬が真っ赤に…それは全部、あっちに伝わって。

『山口…脱ぎたいの?』
「んっ…そ、れは…っ」


こうなったら、その機能をフルに利用して…開き直るしかない。
どうせココには誰も来ないんだし、トばなきゃ飛んで帰れないんだし、
それに下積のツッキーにばかり操られるのは、パイセンとして面子が立たない。
いや、年上としても、魔女としても…好き勝手されるわけにはいかない。

「ツッキーの仕事は…俺を気持ちヨ~くトばすこと、だよね?」
『っ!!?そっ、そう…だね…っ』

   優しく言い聞かせるように。
   甘くオネダリするみたいに。

漏れる吐息を隠さず、そのままヘッドフォンに伝えてみると、
思った通りの反応…ハっと息を飲み、それをゴクリと飲み込んで、
何かを堪えるように、細く長く…努めてゆったりした呼吸の音が返ってきた。

「ねぇ…コレ、どうしよっか?すっごいツラいんだけど。」
『あ、それなら、えーっと…』
「ストッキング…腿の真ん中まで下ろしてもいい?下着も…いいよね?」
『う、うん…はい、どうぞ…』

身を屈め、わざとマイクにストッキングをずり下ろす音を拾わせる。
頭の中には、カチャカチャとベルトを外し、シャツが滑る音が届いてきた。


「あれ、ツッキーの方にも…源泉噴出口があったんだ?」
『もちろん…むしろ、間欠泉に近いかもしれない。』

「溜まったら一気にドカン!だね。そろそろ危なそうだし…はい、どうぞ。」
『山口も…もう溢れそうでしょ?そっちこそ…はい、どうぞ。』

掛声と同時に左手で握り合い、上下に動かしていく。
示し合わせたわけじゃないけど、利き手じゃない方で…凄く拙い動き。
耳元には、できるだけ冷静に見せようとする大きな深呼吸…の合間に、
グっと詰まる息も、漏れ出す吐息も、全部お互いに伝え合ってしまう。

「ツッキーと、一緒に…シてるっ、みたいだ…ね。」
『ぅ…んっ。怖いぐらい、リアル…』


あ…今、やっとわかったかも。
テレクラ…電話を介して相手と会話等を楽しむ店が、一世を風靡した理由。
何で電話なんかで気持ちヨくなれるんだろう?って、不思議に思っていたけど…
特にセリフや喘ぎ声なんかの会話がなくても、ただヨさそうな呼吸の音だけで、
こんなにも臨場感があって、ドクドクと高まってクるんだから…流行って当然。

繋がってる遠くの相手が『見知らぬ人』でも、ハマる人が続出し繁盛していた。
じゃあ、相手がよく見知った人で、なおかつ『そういうカンケー』だったら…?
これはかなり、ステキな時間を共有できるプレイになるんじゃないだろうか。

『遠恋中の恋人同士が、電話とかボイチャで、擬似的にヤる時は…』
「両手の自由がキいて、包まれてる感バツグンの…ヘッドフォン推奨、だね。」

本当に触れ合っているわけじゃない…お互いの体温を感じることはできない。
それでも、アタマに響く愛しい人の声や息遣いは、ココロもカラダも震わせる。
独りきりの妄想でヌくのとは、ケタ違いの快感を呼び起こしてくれるはずだ。


はぁ…はぁ…と、ツッキーの呼吸が徐々に上がってきた。
それにつられるように、ドンドンと下から突き上がってくる、鼓動と情動。
まるで最中みたいな荒い息を聞いてはいても、やっぱり左手の刺激だけじゃ…

『物足りない…?』
「っ…ん、そっち、こそ…」

『右手の中指…いい?』

意図を察した俺は、猛烈な羞恥心で動きが止まったが、それも一瞬だけ。
すぐに聞こえてきた「じゅるり…」と、何かを濡らし吸い上げる水音に導かれ、
俺も右手の中指に吸い付き舌を絡め、全く同じ音を響かせた。

   『…はい、どうぞ。』


ようやく聞こえてきた指令。
受水槽から背を離して、くるりと方向転換…今度は額と左手を受水槽に付ける。
立ったままその2点でカラダを支えながら、ワンピースの後ろを捲り上げ…

   (夜風…冷たっ)

ひんやりとした歌舞伎町の空気が、露わになった素肌に触れたことで、
自分以外にはココに誰もいないこと…自分が『独りきり』だと思い出させた。
寒さと空虚感とモノ欲しさと…イロイロな感情を覆い隠すように、
俺は掌で包み込みながら、濡らした指をそっとあてがった。


「---っん!!」
『ゆっくり…ね。優しく解して。』

入口付近のこわばりを、散らすように。
柔らかくなってきたら、徐々に中心へ。
血が流れるように、温めるイメージで。

   (これ…さっき、習った、こと…!)

上司の教えをキッチリ守り、応用し、賢く実践するなんて…有能すぎでしょ。
本当に、ツッキーはデキる部下…俺の自慢の『下積君』だ。

『山口…気持ちイイ?』
「うん…気持ち、イイ…よ…っ」

『そのまま、力抜いてて…』
「ぅ…ん、ぁぁっ!!」

『ダメだよ、勝手に指を増やしちゃ…』
「っ!!?だ、って…」

何で、そんなことまでバレちゃうの…?
ココにいないのに…傍にいないくせに、ズルすぎるじゃん。
もう1本指を増やしたって、全然足りないことだって…わかってるんでしょ!?


「今すぐココに…飛んで来て!」

完全にヤケクソで、俺は本心を思いっきりポロリしてやった。
魔女じゃないツッキーが、ココに飛んで来るなんて、絶対に無理な話。
それがわかっていたから、八つ当たりと絶望を込め…俺は吐き出した。

   (どうせ、さいごは…独り、だよっ!)

どんなに近くに居ても、どんなに想っていても、結局俺は独りになってしまう…
傍に居るように錯覚しているだけで、俺とツッキーは…人と人外は、遠い。

   (ずっと傍に、だなんて…無理だ。)


あぁ…何だか、虚しくなってきた。
あと少しでトべそうだったけど、もう…どうでもイイ、かな。

ツッキーに悟られないように、ワンピースの襟元を噛み締め、指を抜く。
漏れそうになった声も、想いも…出ていかないように、グっと下へ積み重ねる。

右手を後ろから離し、冷たい夜風にブルリと全身を震わせながら、
冷気を遮断するように、捲り上げていた魔女服を左手で下ろした…瞬間。
ワンピースよりももっと熱いものに、背後からすっぽり覆われた。


「ぅわぁっ!!!?」

自分の叫び声が、ヘッドフォンに包まれた自分のアタマをガンガン打ち鳴らす…

…ということはなく、ヘッドフォンは後ろから抜かれ、耳元に夜風が当たった。
驚いて目を開けると、真っ暗闇だった世界が、パァっと開け…


「山口…お待たせ。」

   耳元から直接入ってきた、熱い吐息。
   しっかりと俺を抱き締める、熱い腕。
   叶わないはずの願いが、目の前に…

「つ、っきー?どう、して…」
「ココに来て!っていう、テレパシーに導かれたんだけど…違った、かなっ?」


ぜぇぜぇ…俺に圧し掛かりながら、ツッキーは荒い呼吸を繰り返す。
どうやら、俺にはバレないように…かなり早い段階から事務所を飛び出し、
10階分の非常階段を、足音を忍ばせながら、延々昇って来てくれたんだろう。

ヘッドフォンの音量もMAXにしていたし、エアコン室外機の音もうるさくて、
ツッキーが屋上の扉を開ける音にも、近づく足音にも気付かなかったのだ。
全く…1ケタも年下の相手に、完全にしてやられた。


「この魔女を嵌めるとは…なかなかやるじゃん。さすがは、俺の…」
「下積君としては当然…でしょ。パイセンに尽くすのが、僕の仕事だから…」

またしても、ツッキーは俺のセリフを遮って、勝手に『早とちり』した。
でも今度はそれを放置せず…俺はすぐさま訂正を入れていた。

   ツッキーの腕の中で、方向転換。
   両耳に両手を当て、引き寄せる。
   その耳元にそっと…ポロリする。


「さすがは、俺の…」




- ⑥へGO! -




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※スリッパリーニップル(Slippery nipple) →和訳:滑らかな乳首
   なんとも滑らかで甘美な感触と、バラのような芳香…の、白濁系カクテル。
※ポルターガイスト →誰も手を触れていないのに、物が震えたり動いたりする現象。
   『騒がしい霊』という意味で、心霊現象の一種だと言われています。


2018/02/23    (2018/02/19分 MEMO小咄より移設)  

 

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