同床!?研磨先生①







「昨夜は蒸し暑かったよね~」
「寝苦しくて、なかなか寝付けなかったよ。」

気怠そうに大あくびしながら、月島と山口は同時に伸びをした。
そのあくびが見事に伝染…黒尾と赤葦も椅子の背もたれをグググと逸らせた。

事務所内を、『かったりぃ~』という空気が包み込み、緊張感が抜ける。
筆記用具やマウスから手を離し、4人はだらしなく脚を投げ出した。


「エアコンつけるって程じゃねぇけど、扇風機じゃあ物足りねぇし…」
「しかも、寝落ち寸前に蚊が…殺意の芽生えと共に、目覚めました。」

血が欲しいのなら、こっそり吸って下さればいいんですよ。
傷口に『かゆみ』なんて、ご丁寧な置き土産…そんなお気遣いは不要ですし、
『頂いても宜しいでしょうか?』とばかりに、耳元に事前申請される…
あの囁きこそ、『ありがた迷惑』の極み…実は一番、神経に障ります。

「殺意って、割とカンタンに出てくるものなんですね。」
「ありあまる殺意のオコボレ直撃で、俺は目が覚めた。」

やっとうつらうつら…し始めた瞬間に、いきなり足を『バチンっ!』だぞ?
ひぃっ!?って飛び起きたら、満足気に微笑んで…コテン、と寝ちまった。

半分寝ぼけつつも、見事に蚊を仕留めたのはさすがだが、
文字通り叩き起こされた俺は、ヤり場のない悶々を抱え…寝不足だよ。


「もし僕がソレをされたら…『ヤっちまうか?』って気持ちが芽生えますね。」
「叩き起こし返して、『一緒にイっとくか?』ってオチだよね?」

一匹の蚊をきっかけに、夫婦の間にギスギスした空気が生じる恐れがある。
寝呆けのイライラもあり、ギリギリと殺っちまって地獄逝き…かもしれないし、
寝惚けのイロイロにより、ギシギシとヤっちまって極楽イき…新婚限定だ。

「とにかく、これからの季節…いかに良質な睡眠を取るかが、重要課題だな。」
「上手に寝られないと、仕事にも支障が出て…夏バテの危険性も高まります。」

睡眠不足のイライラは喧嘩の素…
たとえラブラブな新婚家庭でも、行先がいつも極楽とは限らない。
良好な人間関係の維持には、安定した精神状態が必須であり、
そのためには、良質な睡眠は必要不可欠なものとなる。


「良質な睡眠と言えば…昨日、研磨先生から素敵な『枕』を頂きました。」
「俺達の結婚祝にって…何と、あの憧れの『YES/NO』枕なんですよ~♪」
「伝統と古典と笑いを重んじる…さすがは孤爪師匠です。」
「その枕、実在したのか…後でちょっと見せてくれよな。」

今晩いかがですか?という、新婚でもなかなか口では言い辛い意思表示を、
枕というアイテムを使って行う…実に賢い方法だと、黒尾は高く評価していた。

世の中には『YES/YES』枕というものも存在するらしいが、こちらは論外…
拒否権がない関係など、とても対等な夫婦とは言えないし、
『NO』を出すこともできるのに、それを使わず『YES』を出して貰える方が、
『YES』以外の選択肢がない場合より、歓びもずっと大きいと思うのだが。

ウチにも贈ってくれるように、今度研磨に頼んでみるか…
黒尾がこっそり画策していると、月島が「それでですね…」と、話を続けた。


「昨夜、研磨先生に枕等のお礼の電話をしてたら、『安眠繋がり』の話に…
  『ねぇ、ソフレって…知ってる?』って聞かれました。」

耳慣れているようで、聞き覚えのない言葉の登場に、黒尾と赤葦は首を傾げ…
瞬時にヒネリを加えた解答を、月島達に投げ返した。

「ソフレ…?トロリと白濁した、心地良い系にカンケーしてそうですね。」
「セフレと同じく、心地良いカンケー…トロリと白濁系の入浴剤だよな。」

…という冗談はさておき。
おそらく、セフレと同ルールの命名法による、『ソ』が付くフレンドだろう。
わざわざセフレと区別されている点で、白濁系のカンケーではなさそうだ。

「一緒にソフレ…お風呂の方は、『オフレ』って言うらしいですよ~
   ソフレのソは…雰囲気的にはこんなカンジのシリーズですね。」
そういうと山口は、楽しそうに手拍子しながら、耳懐かしい歌を歌い始めた。

ドは童貞のド~♪、レは練習のレ~♪、
ミは未遂のミ~♪、ファはファインプレーのファ~♪

「ソは添寝のソ~♪…でした!」

どうやら、セフレのような性交渉は伴わない、ピュアな純白系のカンケー…
それが添寝フレンドという、ツッコミ所満載なのに、突っ込めないモノらしい。


「一言で言うと…寝言?でしょうか。」
「新婚枕以上に…実在が疑わしいな。」

言葉の意味はわかったが、イミするところが全くわかんねぇ…
黒尾と赤葦の表情に、月島と山口も「ですよね~」と、苦笑いで返した。

「同床するだけでシないなんて、どうしょうもないですね。」…と、
月島も研磨先生に対し、ヒネリもなくストレートに返答したのだが、
困惑以上に、ソフレに対して純粋に好奇心が沸いてしまった。

「こういうネタ…考察せずにはいられませんよね~?」
というわけで、今回も毎度お馴染み…この方をお呼びいたしました!!

ラはラブラブのラ~♪、シは幸せよ~♪
山口はスキップしながら扉を開け、予想通りの人と共に肩を組んで入って来た。


「ラブラブな幸せを追求する…同衾ing(ドッキング)伝道師・孤爪研磨です。」




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2017/07/04    (2017/07/02分 MEMO小咄より移設)

 

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