的中!?研磨先生⑥







「あ…ありました!!」
「研磨先生の読み…的中です!」

大人気のHQ!!『一番くじ』を求め、黒尾法務事務所の面々及び研磨先生は、
大きなターミナル駅ではなく、更に駅から少し距離のある場所に狙いを固定。
山口お気に入りの路線(月山ライン)から繋がる、BLとGLが交差する駅…
その駅から、徒歩10分弱の場所にある本屋にて、目的物を発見した。


「や…やりましたっ!!師匠最高!」
「まだ引いてねぇのに…嬉しいな。」

諸手を挙げて喜ぶ面々に、研磨先生は集合を掛けた。

「やっと見つけたね。そして、まだ結構くじは残ってる…
   買占める気にならないぐらいには、十分残りがある。」

そして、純粋に『くじ』を楽しめる要素が、もう一点ある。
「ビジュアルクロスのうち、何故か『E』と『H』だけ…もうないんだ。」

『E』の黒尾と『H』の赤葦を、自宅でツーショット…という赤葦の願いは、
ここで潰えたことになるが、赤葦は特に落ち込んでいなかった。
「それはもういいんです。『くじ』が楽しめる…こっちの方が重要です。」

その答えを聞いた研磨先生は、満足気に頷き、指示を出した。

「『くじ』を楽しむ…これが最大の目的だから。各家庭2回までにしよう。」
というわけで、まずは俺…孤爪家は俺一人だから、俺は2回引かせて貰う。


研磨先生が一人でレジへ向かい、くじをひく様子を、
4人は少し離れた所…店外から、固唾を飲んで見守った。

「まず一つめは『J』…悪くない。」



「ビジュアルクロスに続く賞…結構な『アタリ』ですよ。」
「中学生時代の日向VS影山…懐かしいね~」

いきなりのヒットに、全員が「おぉぅっ!」と驚きの声を上げた。
そして2つ目は、ラバーストラップの入った箱だった。
ゆっくり引き出すと、黒髪短髪が…

「まさか…赤葦さんっ!?」
「いや…似てるけど、違う。おしい!」



「青城の、岩泉さんですね。まぁ、ニアピンと言えば…ニアピン?」

黒尾でも赤葦でもなかったが、「何が出るかな~♪」という、
何とも言えないわくわく感…思った以上に楽しいくじである。

次は僕達が行って来ますっ!と、月島と山口がレジへ急行…
研磨先生と同じ、『3年生』のラバーストラップを当ててきた。



「澤村主将と、東峰さんですね。」
「これはこれで、可愛いですね♪っていうか、ツッキーと同じ賞だった!」

何が当たったか、ではなく…月島と『同じ賞』だったことを喜ぶ山口に、
年長組はホッコリ♪と微笑んだ。


「じゃあ、最後は俺らだな。」
「今度こそ、クロ赤狙いで!」

黒尾と赤葦は、遠目にも分かる程デレデレと…同じ袋を抱えて戻って来た。
どうやらこちらも、同じ賞を見事に当てたらしい。
赤葦も山口と同じく、『目的達成♪』といった満面の笑み…安上りである。

「じゃあ、まず俺が開けますね。クリアファイル…これは、牛若です。」
仕事で使える実用品が景品だなんて…結構助かりますね。
赤葦がニッコリ微笑んでいる横で、最後に黒尾が開封…黒髪短髪が見えた。

「おっしゃ!今度こそ…赤葦だ!」
「えっ!?マジですかっ!?凄いっ!」
「無駄に運が良いのは…本当ですね!」
「やるじゃんクロ…びっくりした。」



「黒尾さん…俺を当てて下さり、本当に嬉しいです♪」
「この『一番くじ』…面白ぇなっ!ハマりそうだぜ。」

これは仕事で使わず、俺の机に飾ろう…という黒尾の言葉に、赤葦は感涙。
研磨先生プレゼンツ・『一番くじ』大捜索イベントは、
『赤葦を甘やかす』という任務を見事に黒尾が遂行し、無事に終了した。


「いや…想像以上に楽しかったね。」
「何か俺、もうちょっとグッズが欲しくなっちゃったよ~」

とは言え、自分達がこのくじを独占してしまうのは申し訳ない…
4人は研磨先生に連れられ、本屋と雑貨屋がミックスしたような、
様々な面白グッズが並ぶ、カオス的なお店へと足を運んだ。

「あ、ここには別の…一つ前のHQ!!くじが残ってるよ。」
烏野vs白鳥沢編…俺はこれに挑戦してみる。
研磨先生が引いたのは、ラバーストラップ…箱をチラリと開けると…

「メガネ…」
「えっ!?ツッキー!?メガネって、ツッキーですよねっ!」

バンザ~イ!と大喜びする山口。
箱から全て出すと、全員が『???』という表情をした。

「月島君…じゃないですね。」
「他にメガネの奴…いたか?」



「こっ、これは…大王様(偵察中)!?」
「研磨先生、またしてもニアピンでしたね。」

ツッキーじゃないメガネに、意気消沈する山口。
月島は「この『くじ』じゃないものに挑戦しよう。」と、
店外に並ぶガチャへと山口を誘った。

「僕か山口が当たるかもしれない、烏野ガチャ…何が出るか、楽しみだ。」
月島は硬貨を投入し、回転…出て来たのは、影山だった。

「400円とお高めなだけあって、デキはなかなか…悪くないね。」
「いやコレ…かなり可愛いでしょ!」
俺もこのガチャに参戦する!と山口は勇んで硬貨を投入し…立ち上がると、
店内をウロついていた、黒尾の手を引いて戻って来た。

「ここは背に腹を代えられない…黒尾さん、是非『金髪』をお願いします!」
「ツッキー狙いだな。それじゃあ…」

出て来たカプセルを開ける前に、全員唖然…どう見ても『金髪』だった。



「本当に僕を…当てたっ!?」
「黒尾さぁぁぁぁぁんっ!!大好き!」
「え、マジで無駄に凄いんだけど。」

黒尾に抱き着きながら、「一生の宝物にしますっ!」と目を潤ませる山口。
その姿に、嬉しいやら妬ましいやら、複雑な表情を見せる、月島。
ガチャはガチャで、くじとは別のわくわくっぷり…これもまた面白い。
是非とも、音駒や梟谷のバージョンも作って欲しい…心から黒尾はそう思った。


「見て下さいっ!俺は黒尾さんに…こちらをプレゼントします!!」

店内から飛び出して来た赤葦は、大きな袋を抱えていた。
中身は『ふわふわ』が2匹…



「何と、孤爪師匠の『ミニシアター』っぽい抱き枕を…発見しました♪」
「本当に実在したのか!?抱き心地も極上…『愛の巣』に持ち帰ろう!」

思わぬ大発見&プレゼントに、大喜びする黒尾。
ムギュ~~~っとペンギンを抱き締めながら、ポケットから小箱を取り出した。

「じゃあ、俺からお前に…これな?」
コップの縁に乗せて遊ぶフィギュアの、HQ!!バージョンがあったんだ。
面白そうだから買ってみたんだが…



「ーーーっ!!!?」

箱から出て来たのは、まさかの…黒尾。

自分を当てて、それをお前にやるってのは、何か照れ臭いな~と、
黒尾本人は苦笑い…赤葦は感涙して黒尾にしがみついた。

「黒尾さんと結婚して…よかったっ!」
「お前以上の当たりは…ねぇけどな?」


デレッデレを振り撒く、クロ赤の二人。
いつもならゲンナリと呆れ返るところだが、さすがの3人も感嘆した。

「幸運を贅沢に使いすぎでしょ…」
「ちょっと、怖いぐらいだよね…」
「赤葦好きすぎにも、程がある…」


こうして、5人ではじめての『運だめしツアー』は、
黒尾の幸運と、赤葦の幸福、そして二人のラブラブにあてられて…閉幕した。





- 終 -





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※月山ライン →路線記号が『TY』…東急東横線。
※BLとGLが交差 →『拍手小咄③


2017/06/16    (2017/06/11分 MEMO小咄より移設)

 

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