ご注意下さい!


この話は、いきなり放射性猥褻物の『ミニシアター』から始まります。
研磨先生も前傾姿勢な『↓方向』っぷり…BLかつ性的な表現を含みます。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、 閲覧をお控え下さい。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、黒尾法務事務所では責任を負いかねます。)



    それでもOK!な方  →
コチラをどうぞ。



























































    的中!?研磨先生④







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『こんなことお願いできるのは…黒尾さん、あなただけですから。』


女性用の基礎体温管理アプリにある、『次回排卵日は○日後』のお知らせ。
それに似たシステム…体内の特殊フェロモン量を計測できる機器とリンクし、
『次回発情期は○日後』をお知らせしてくれるアプリによると、
あと10日程すると、赤葦京治に次の発情期がやってくるようだった。

このアプリのデータは、パートナー間での共有が可能…
口ではなかなか言えないコトを、こっそり相手に『お知らせ♪』してくれて、
Ω本人とその相手にとって、お手軽かつ便利なアプリとして好評である。
これを目安に、事前に休暇の申請をしたり、予防措置を講じたり。
勿論、妊活するにも大変助かる機能だ。


人生初の発情期…『Ω性徴』を迎えた当日に、たまたま居合わせてしまった、
黒尾と赤葦の二人…奇跡的な合致率を誇るαΩのカップルは、
当事者以外が卒倒する程の純愛を貫き、周囲をヤキモキさせていた。

「お前ら、早くヤっちまえ…いい加減、『つがい』になっちまえよっ!」
「ガマンしてる姿を見てるだけで、こっちがしんどいんだけど。」

あと10日で、第4回発情期。
第2回発情期前にお付き合いを始めてから、そろそろ半年が経とうとしている。
それでもなお、プラトニックなままという二人の状態は、
αΩとかカンケーなく、フツーの恋人同士として…大問題である。

「アンタもそろそろ腹を括って…相手を楽にしてあげなさいよ。」
「ちゃんと『お道具』使えば、そう簡単に『つがい』確定はしないんだから。」
「『つがい』になっても、『お道具』で避妊できるし、別の人と結婚も可能…」
「相手を大事にすればする程、ツラいこともある…それを忘れないように。」

…と、αΩばかりの親族から散々詰め寄られ、説教され続ける黒尾。
親族が来る度に押し付ける『手土産』…『お道具』を大量に押入に抱えながら、
黒尾は来たるべき『10日後』どうすべきか、頭を抱えていた。


そんな中、黒尾の元に赤葦から「折り入ってご相談が…」との電話。
その声には、切羽詰まったような焦燥感と、熱っぽさが含まれており、
黒尾はその声だけで、ドクリと全身が脈打つのがわかった。

女性のPMS(premenstrual syndrome)…月経前症候群と同じように、
ΩにはPHS(preheat syndrome)…発情前症候群があるそうだ。
やたらと人恋しく…α恋しくなり、そわそわと落ち着きがなくなり、
できるだけαに近づき、安定を得ようとする…要は『甘えたさん』の時期だ。

まだデータは少ないものの、赤葦の場合は、いつもよりメールが密になり、
(=´∀`)人(´∀`=) …『仲良し♪』を感じさせる顔文字が増えてくる。
そして、直前3日間は『食い溜め』するかのように電話でダラダラ話し、
発情期の間は、一切の接触を断つ…まるで断食をする修行僧である。

『今週末、お逢いできますか?』

電話が来るタイミングは早いが、声に含まれる熱は、ほぼ『直前』だ。
共有アプリの『お知らせ』がなくとも、この声聞いたら、すぐわかるな…
そう思いながらも、黒尾は赤葦の『オネガイ』を快諾し、赤葦家へと向かった。


赤葦家の玄関に一歩足を入れた瞬間、黒尾はその場に跪いた。
濃厚なΩの空気…赤葦の気配に、グラリと眩暈がし、意識が遠のきそうになる。
いや、意識ではなく…理性という名の鳥が、脳内から飛び立とうと羽ばたき、
バタバタと『求愛ダンス』を踊り始めていた。

「想像以上…だな。」
「そう…ですよね。」

以前、赤葦が黒尾の部屋に行った時も、『黒尾』を強く感じる空気に、
息が詰まりそうになり…自分の中のΩが強烈に刺激された経験がある。

ただでさえ本能でΩに惹かれるαが、Ωの家…『巣』に足を踏み入れたら?
部屋に入ってから、赤葦と目を合わせないようにしていることが、
黒尾の昂る内情を、これ以上なく表していた。

カラダの全てが。脳内の隅々まで。
『赤葦』の中に浸り、溺れてしまいそうな程…『赤葦一色』に染まる。
何とか正気を保とうと、黒尾は出された冷水をがぶ飲みし、話を振った。


「今日、ご両親は…?」
「外出…念のために。」

赤葦の母はΩで、父はβ…母には確定した『つがい』がいない。
そして、赤葦は母とソックリとのこと…遺伝子的にも、フェロモンの型が近い。
万が一その型が、より黒尾と合致する方向に近かった場合には、
息子ではなく母の方に、黒尾が惹かれてしまう危険性が捨て切れないのだ。

「京治達がさっさと『確定』してくれないと、僕達も危ないんだからね~?」
「私達も、早く黒尾さんにお会いしたいんだから、そろそろ…ねぇ♪」

そう言いながら、両親は『避難』を口実にして『外泊おデート』へ…
息子にアレやらコレやら『過激な激励』を残し、家から出て行ったのだ。

直接言われはしないものの、黒尾も赤葦夫妻の意図を正確に察し、
心配を掛け、気を使わせてしまったことに…心の中で頭を下げた。


「それで、赤葦の用件は…?」
「これを…見て頂けますか?」

赤葦はベッドの中に手を突っ込むと、高級洋菓子の入っているような、
少し大きめ…A3サイズぐらいの箱を取り出し、黒尾にそっと手渡した。

花柄が綺麗な箱だなぁと思いながら、黒尾は蓋を開け…
蓋よりも大きく目と口を開け、代わりに蓋を慌てて閉めた。


「なっ、え、これって…」

見間違いでなければ、中に入っていたのは、見覚えのあるものだった。
お節介な親族が、これにソックリな『お道具』を、何本か寄越した…
まあ、いわゆる、つまり、その…アレを模した『お道具(オモチャ)』である。

黒尾が絶句していると、赤葦は蓋を取り去り、箱を二人の間にドン!と置いた。
そして、無理矢理『無表情』を顔に貼り付けたまま、早口で説明し始めた。

「オモチャ、ではなく…」

こちらは、れっきとした『医療器具』なんですよ。
見た目はモロにアレ…なんですけど、実態は『注射器』です。

「抗Ω剤投与のための…」
「液体タイプの薬…か。」

通常、抗Ω・α剤は、カプセル又は錠剤を経口投与…『飲み薬』であるが、
より即効性が高く、効き目が強いのが、注射や点滴等によって、
成分を血管に直接投与…あまりに激しい症状の時は、この方法を用いている。

そして、第三の方法として利用されているのが、粘膜部への注入である。
そのために使われるのが、この箱の中にズラりと並ぶ…『お道具』なのだ。

赤葦は箱から1つ取り出すと、『根元』の部分を黒尾に見せた。
「この穴に専用カートリッジをはめ込むと…薬液が中に充填されます。」

その状態で、この『注射器』を、ソックリなアレと同じように使いながら、
使用者が『いい頃合い』を見計らい、手元のスイッチで薬液注入…
実益と実益と実益を兼ねまくった、人類史上稀に見る『発明品』である。

「これなら、『リアル』に薬効も満足も同時に得られる…凄ぇ賢いな!」
これ考えた奴は天才(もしくは紙一重)だな…と、黒尾は心から感心し、
『お道具』を手に取り、細部までまじまじと観察した。

「性能もピンキリ…価格もですけど。」
お高いモノですと、『断続的かつ強度の圧迫』を検知すると、
自動的に薬液噴射…『ご一緒に♪』モードが搭載されているものや、
一定時間毎に、薬液とは別の潤滑剤が滲み出てくるものもあります。

「まさに『イったれり尽せり』だな…」
こんな『お道具』があれば、苦しい発情期も、楽しく遊べそうだ。
人類の智慧と技術と…愛に溢れる遊び心に、黒尾は拍手を贈りたくなった。

「ちなみにこれは、保険適用内のランクのものです。」
しかも、俺はまだ学生なんで、学割もききますから…かなりおトクです。
Ωの学生が、勉学に集中できるならば…と、『有効な治療法』に対しは、
このような公的補助があるそうだ。


「それで、赤葦の頼み…俺にしかできないことって?」

手にしていた『注射器』を、元の位置に戻しながら、黒尾が尋ねた。
答えは大体予想できてはいるが…念のための確認だ。

「『注射器』に入れる薬液の成分なんですが…
   黒尾さんから頂いた『抗Ω剤』を、使わせて貰っても…宜しいですか?」

赤葦の発情期が、少しでもツラくないように…と、
黒尾は赤葦に『ドンピシャ合致』する、自らの抗体から作った『抗Ω剤』を、
赤葦にプレゼント…赤葦はそれで、特殊フェロモン発生を抑制していた。

『黒尾鉄朗由来』の薬が、赤葦に非常に有効であることは、既に実証済のため、
同じ成分の薬液も作らせて欲しい…というのが、赤葦の頼みだった。

「勿論だ。是非使ってくれ。何なら成分データを、病院から取り寄せるか?」

黒尾は『使用許諾書』にサインし終えると、赤葦に書類を手渡した。
赤葦は「助かります…ありがとうございます。」と頭を下げてそれを受け取り…
顔を上げると、真正面から黒尾の視線とぶつかった。


「…それだけか?」
「え、あ、その…」

赤葦は小さな声でもじもじしながら、視線を虚空に彷徨わせた。
だが、黒尾は赤葦の手を掴んで引き寄せると、静かな声でもう一度尋ねた。

「『オネガイ』は…それだけか?」


逃げられない、と観念した赤葦は、黒尾の視線に捕まらない場所…
肩口にそっと額を乗せ、囁いた。

「『本題』は…別に、あります。」

手探りで箱を手元に寄せると、その内の一つに指を這わせながら、
赤葦は黒尾に『本題』を告げた。

「この中で、一番黒尾さんに『近い』モノを…教えて下さい。」

箱の中には、9本の『お道具』が並んでおり、A~Iの記号が振られていた。
それぞれが、長さや太さ、先の形状が違う…『モデル』が違うのだろう。

添付されている注文用紙を見ると、ある程度のカスタマイズが可能で、
長さはA、太さはB、先はC…という具合に、指定して購入することもできる。
勿論、「このままEで。」という注文の仕方もOKである。
この箱は、それらを注文するための『サンプル』…なかなかのサービスである。

つまり、赤葦の本題…黒尾にしかできない『オネガイ』とは、
『黒尾モデル』の『お道具』を作らせて欲しい、というものだった。


場に訪れる、沈黙。
しばらくすると、黒尾が小刻みに震え、深いため息をついた。

「すっ、すみません!その…」
黒尾さんの優しさにつけ込んで、こんなとんでもない『オネガイ』を…
黒尾さんが怒って当然ですよね。調子に乗って…本当にすみません!

沈黙と震えを、怒りだと捉えた赤葦は、慌てて謝罪し、身を離そうとした。
だが、離しかけた額は、黒尾の胸元に密着…強く抱き締められていた。

「お前は俺を…殺す気かっ?」

ただでさえ、この場の空気に、小鳥のような理性が持って行かれそうなのに…
危うく、意識ごと昇天しそうだったぞ!

「俺の理性は今、蜘蛛よりも細っえ糸で、ようやくぶら下がってる状態だ。」
これ以上、無闇に俺を喜ばせるな…冗談抜きで、萌え死ぬぞ?

「良かった…怒ってないんです、ね?」
「その上目遣いも…しばらく禁止な。」

今度は黒尾の方が、赤葦の視線を遮断するように、再度深く抱き込んだ。


「教えてやるのは構わねぇが…お前も知ってんだろ?」

未だに『最後まで。』はイっていなくとも、その直前までは…
互いのモノを握り合い、共に気持ちヨくなる行為は、何度か経験している。
赤葦も、黒尾のモノがどんなものか…知っているはずなのだ。

「そうだな、お前のは…」

黒尾は目を瞑ったまま、端から一つずつ手に取って、すぐに箱に戻した。
最後から一つ手前のを掴むと、そこで動きを止め…しっかりと手を添え直した。
ニギニギと揉んだり、指先で擦り上げたり…丁寧にカタチを確認した。

「これだな。この『H』が…一番赤葦に近いな。」
「わっ、わかりましたから…もうやめて下さい!」

赤葦は黒尾から『H』を奪い取ると、それを布団の中に隠した。
羞恥心を誤魔化すために、自分も一緒に布団に潜り込み、もごもごと抗議した。

「切羽詰まってたように見えて…意外と冷静、だったんですね。」
俺はいつも、いっぱいいっぱいで…黒尾さんのをじっくり観察したり、
カタチを確かめるなんてこと…そんな余裕、全然ないですよ。
だから、どれが黒尾さんに近いか?なんて、俺にはよくわかんなくて…

すみません、と謝る赤葦。
謝る必要なんか全くないのになぁと、黒尾はコッソリ微笑んでいると、
もにょもにょ動く布団の塊に、ちょっとした悪戯心が湧き上がってきた。

「だったら今…観察すれば良い。」
「はぃ?かっ、観察って、あの…」

ここに『本物』があるんだから、自分で触って、確認してみろよ。
じっくり確かめて…お前が「これだ!」って納得するものを、選べばいい。

そうだな…俺本人の見立てでは、この3本の内のどれかだから、
この中から『近い』のを…赤葦は当てられるか?

「当ててくれると…凄ぇ嬉しい。」

黒尾はそう言うと、布団を引き剥がして赤葦の横に寝転んだ。
なおも布団に篭ろうとする赤葦を、黒尾は腕の中にすっぽりと閉じ込め、
ほら…と促すように、『本物』を赤葦の手に押し当てた。


「こんなんじゃ…わかりません。」
こんな『大人しい』状態じゃあ、どれが近いか…わかりません。
せめて『最終形態』にしてからじゃないと、ハズしてしまいますよ?

赤葦も負けじと対抗…羞恥を抑え込み、茶目っ気たっぷりに微笑むと、
そろりそろり…と掌で包み、黒尾を『最終形態』へと導き始めた。

じっくりじっくり、血管の通り道をくまなく辿る様に、仔々細々に確かめる。
ビクリと『本物』がカタチを硬化させてくる度に、赤葦はパっと手を離し、
『候補』となった3本を順に握り、同じ動きでニギニギ…絞り込んでいく。
煽られて、すぐに放置されて。その繰り返しに、黒尾は息の塊を吐き出した。

「多分あれか、こっち…でしょうか?」
「お前…それ、わざとやってねぇか?」

確かに、自分が「確かめてみろ」とは言った。だがこれは…ヤりすぎだろう。
目の前に『お道具』を掲げながら、穴が開く程じっくり眺め、
今度は息が掛かるぐらい『本物』に顔を近付けて、確認作業を行うのだ。

その吐息が触れる度に、黒尾は背を震わせ、赤葦にしがみ付いた。
いつの間にか、形勢逆転…完全に赤葦のペースに、引き摺り込まれていた。


「おそらく、これ…『E』が一番、黒尾さんのに近いですね。」

よく出来てますし、似てはいますけど…やっぱり所詮は『お道具』です。
こんなに熱くないし、どくどく脈打ったりしないし…
『本物』には、程遠いですけどね。

赤葦は『E』を大事そうに両手で包み込むと、愛おしそうに頬を擦りよせ、
これを注文します…と、上目遣いに黒尾を見つめながら、そっと呟いた。


「ばっ馬鹿!その視線、しばらく禁止だって…言ったよなっ?」

何かが、『ぷつん』という音を立てた。
おそらくそれは、黒尾の理性を繋ぎ止めていた、蜘蛛よりも細い糸…

次の瞬間、解き放たれた黒尾は、赤葦をカラダの下に組み敷いていた。
先程までの『ギリギリ』な表情はどこへやら、ス…と凪いだ視線で見下ろした。

まるで別人のように、落ち着き払った姿…だが決して冷たいわけではなく、
その視線には焼けそうな程の熱…射貫かれた赤葦は、ゾクリと全身を震わせた。

 (これが…『α』の、黒尾さん…っ!)

ようやく姿を現した、黒尾の中の『α』に、自分の中の『Ω』が、
沸騰するほど滾るのを、赤葦ははっきりと自覚した。


「コレは医療器具…『注射器』だってわかってても、面白くねぇな。」
お前には必要なモノだってことも、十分承知の上だし、
できるだけ俺に近いものを選んでくれたことも、滅茶苦茶嬉しい。
それでも…『お道具』にお前を持ってかれるみたいで、面白くねぇよ。

黒尾は『お道具』に対する嫉妬を隠そうともせず、淡々と語った。
口調や行動は至って冷静なのに、瞳の中だけは色に漲っている…

その強い瞳に曝された赤葦は、堪らず腕を伸ばし、黒尾を抱き締めた。
下から全身でしがみ付き、『本物』同士を触れ合わせ、昂る熱を伝え合う。

 (あぁ…この『熱』が…欲しいっ)

黒尾を欲する衝動が、『ぽちり』と何かのスイッチを押す音がした。
次の瞬間、恥かしいとか照れ臭いとか、そういった余計な感情が消え失せ、
ただただ、『欲しい』という渇望に、全てが占拠されてしまった。


「明日注文したら、一週間後…次の発情期には、間に合うはずです。」

『黒尾モデル』が届いたら、俺はソレを使って、黒尾さんの薬を注入します。
きっと飲み薬以上の効果がある…でも、これで本当に、いいんでしょうか。

「『本物』を知らないまま、『お道具』を先に使って…いいんですか?」

できれば俺は、自分の指を除けば、
『一番最初』にココへお招きするのは、『本物』の黒尾さんが…っん!

最後まで、赤葦はセリフを言わせて貰えなかった。
もう甘い吐息しか出てこなくなった黒尾の唇に、全て塞がれてしまったから。
激しく口付けられ、舌を吸われ、呼吸すら飲み込まれ…
熱烈に自分を求める黒尾の姿に、赤葦はカラダもココロも歓喜に包まれた。


「俺が『一番』で…いいんだな?」

ココにご招待された…俺は喜んで馳せ参じて、いいんだな?
「お邪魔します。」とでも言うように、黒尾は『入口』を軽くノック…
赤葦はトロンとした表情で頷き、両脚を黒尾の腰に絡めた。

「ずっと…お待ちしていました。」


天へ昇りつめようとしていた黒尾の意識が、最後に耳にしたのは、
涙に震える赤葦の声だった。

「やっと…捕まえ、ました。」


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「…というわけで、俺が思う『巣』は、『捕食装置』としての『巣』です。」

特殊フェロモンでαを惹き寄せ、徐々に身動きが取れなくなるように、
緻密かつ蠱惑的な罠を仕掛け…自分の『巣』の中に、αを引き摺り込みます。

「『オメガバースの巣作り』とは、即ち…『Ωの罠作り』ですね。」
気に入った獲物は、絶対に逃がしませんから。
αをどっぷりΩに溺れさせて…美味しく頂きたいと思っています。


滔々と語る赤葦に、全員が背を向けて、小さく縮こまっていた。
まるで、何かを隠すか…それとも、喰われるのを恐れているかのように。

弟子を甘やかしすぎたのは、師匠である俺の不手際…とばかりに、
研磨先生は震える声で、全員にゴメン…と謝り、続けて指示を出した。

「あ、赤葦のは…全然『ミニ』じゃなかったから、皆、疲れたよね?」

ここで、ちょっと…『トイレ休憩』をイれとこうよ。
1階事務所は、俺が使わせて貰うから…君らは自宅へ一旦戻ること。
30分後に、またここに集合…いいね?それじゃあ、一時解散っ!!


研磨先生の号令に、月島と山口は無言のまま2階へと駆け上がり、
黒尾は「俺は疲れてませんが…」という赤葦を抱え、3階へと猛ダッシュした。





- ⑤へGO! -




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※PHS →造語


2017/06/07    (2017/06/05分 MEMO小咄より移設)

 

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