教えて!研磨先生⑨







 「予想はしてたけど…やっぱりこうなっちゃうよね。」

ツッキーと黒尾さんは、一作目から堂々たる『メイン』。
赤葦さんは二作目成功の鍵を握る主要な『サブ』で、
研磨先生はゲームを通してのラスボス…

「全てにおいて『ザ・平均』な『山口忠』は、攻略対象にはなり得ないね。」
自分のキャラはわかってはいるけど、開発メンバーとしては…ちょっと残念かな。

寂しさを湛えた山口の微笑みに、月島達は口々にフォローを入れた。
「ぼっ、僕のルートは、『山口』無しじゃ成立しないから…ほとんど『セット』だよ!」
「でも、『幼馴染』では『岩泉』には敵わないし、『従者』でも『赤葦』に及ばない。」
いろんな属性をちょっとずつ…リアルではバランスが取れてる人間かもしれないけど、
アニメやゲームの『キャラ』としては…『薄い』んだよね~

「つ、『月島』ルートで、『山口忠ED』が、あってもいい…いや、あるべきですよね!」
「きっとそのEDは…『Z』に該当するタイプですよ。例えば、そう…」
『山口』の目の前で、濃密な行為を見せつける『月島』…
「ほら、山口も…こっちに来なよ。」
…みたいな、ドロドロの『3Pエンド』とかになっちゃいますよ。

「おっ、俺は…『山口』みたいな穏やかなキャラと、のんびり昼下がり…理想の『未来像』だ。」
「さすが『人タラシ』…俺にはそんな『殺し文句』は、どうやっても言えませんよ。」
それはあくまでも『リアルな未来像』としての話ですよね?
そんな『身の丈に合った幸せ』なんて…ゲーム性がなさすぎますよ。


皆さん、色々フォローありがとうございます。
特に秀でた所も、特徴になりうる欠点もない…属性無しの『ニュートラル』が、『山口忠』です。
ということで、俺は『開発者』側として…ガッツリ楽しませてもらいますね~

山口がそうおどけると、黙って聞いていた研磨先生が、
「山口も全然…わかってない。」と、大きくため息をついた。

「『山口』こそ、あらゆる乙女ゲームに『出演確定』…唯一の存在じゃないか。」
『及川』や『月島』ですら、モノによっては…二作目以降には出演できないかもしれない。
でも『山口』だけは…属性無しの『ニュートラル』な存在だけは、確実に出演できる。

「『ザ・平均』とは、最も多くの人が共感できる…『分身』として感情移入できる存在だ。」
「それってつまり…ゲームの『プレイヤー』?」
「『山口忠』が…主人公だ!」
どんな人にも、人格の『中心』となる部分があり、それは大抵『ニュートラル』だ。
誰しもが地味で目立たない…『山口』的な『普通の部分』を持っている。

そう…このゲームは、『山口』無しでは成立し得ない。
「『主人公』の人格が、『山口』なんだ。」


実際には、『山口』も『烏野ご一同様』や『月島』の幼馴染として登場する。
でも、それはあくまでも『オマケ』であり、本当の役割は『主人公代理』だ。

「乙女だろうが、BLだろうが、『ザ・平均』という存在は、非常にありがたい。」
要となる『主人公』たるべき存在から、この『乙女ゲーム開発』の話を貰ったから、
俺は研究者としての参加を快諾したんだよ。
『目立たず、我を張らず、嫌われず』…そういう『主人公キャラ』を作るのが、
乙女ゲームで一番の難所…でも幸運なことに、ココに『開発者』として、山口がいる。

「このゲームは、山口のためにあると言っても過言じゃない。」

研磨先生の断言に、山口本人は勿論、全員が虚を突かれた思いだった。
『自己投影可能な主人公キャラ』についてなど、全く考えてなかったからだ。

「間違いなく…山口が一番『オイシイ』ポジションじゃねぇか!」
「まさにハーレム…少々羨ましい気がしますね。」

黒尾と赤葦は異議なし…山口が月島にチラリと視線を送ると、
月島は少し目を閉じて逡巡し、コクリと頷いた。

「僕としても…『山口』が何をどう考えて生活してるのか、凄く興味がある。」
このゲームで、僕も『山口』になれる…
山口から僕がどう見えるのか、分かるってことだよね?

でも、ちょっとした問題があると思うんですが…
「研磨先生、主人公が山口の場合、『月島』ルートに登場する『山口』の扱いは…?」

登場キャラとしての『山口』と、プレイヤーの化身としての山口が競合するケース…
月島が問題視しているのは、この点である。

「主人公『そのもの』じゃなくて、『人格』が『山口』なだけだから。」
月島が心配するような事態…トッペルゲンガー的なことにはならないよ。
でも…主人公の名前を『山口忠』にした場合のみ、
『月島』ルートに『幼馴染・山口』は登場させないって方法もあるよ。

だがこの提案には、赤葦がキッパリと『NO!』を突き付けた。
「いえ、この際ですから、そのまま『幼馴染・山口』は普通に登場させて下さい。」

その上で、山口君はいかに『幼馴染』が特別かを、自覚したらいかがですか?
ただ単に『幼馴染』というだけで優遇され、絶対的なアドバンテージがある。
そして、『外』から見ると、どれだけ邪魔で、徹底排除したくなるか…
ぜひ一度体験してみるのも…『ご一興』だと思うんですけどね。
…あぁ、別に俺は『幼馴染』という存在に敵意を抱いているというわけではなく、
ただただ、『そういうのもアリですよ?』という、一つの提案ですから。

赤葦の(私怨タラタラな)意見に、研磨は眉一つ動かさず、
「じゃ、『幼馴染・山口』も普通に登場ってことで。」と、アッサリ決定してしまった。


「そういう『余裕ぶっかまし』な所が…『外』はイラっするんです。」
赤葦がボソリと(皆に聞こえるように)呟いた。

「じゃあ、『黒尾』ルートで『研磨非登場』にする裏コード…
開発チーム優遇措置として、赤葦のためだけに作ろうか?」
「…さすがは孤爪師匠ですね♪」

さすがは研磨先生…
赤葦には聞こえないように、皆は心の中で呟いた。




- ⑩へGO! -


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<研磨先生・会議中の極秘メモ>
『月島』ルートにおける主人公名『山口忠』の場合のみの特殊ED(案)
→『ツッキーはどっちが好き?』… 山口(攻)×月島×山口(受)

※本人自らの許諾があったものとみなし、『ドロドロ3P』を採用とする。




2017/03/01    (2017/02/27分 MEMO小咄より移設)

 

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