教えて!研磨先生⑧







「残すところは…『カワイイ系』か。」
「もうこれは、殆ど選択肢が残ってないんだよ。」

研磨先生はズズズ…とカルピスを啜ると、眉間に皺を寄せてため息をついた。
この会議では、ずっと迷いなく議論を推し進めてきたのに…珍しい。


「『カワイイ系』の候補は、『日向』『夜久』『西谷』でしたよね?」
「まぁ、普通に考えれば…『日向』かな。」
「『夜久』じゃちょっと単体としては弱いし…」
「『西谷』は、『元気!系』の木兎と被るし…」

第④の要素である『次回作への広がり』、すなわち『サブ』の魅力という点でも、
『原作主人公』というポジションは、若干卑怯なぐらいの『強さ』である。

「『西谷』のサブ…『東峰』は、もしリアルに居たら…幸せになれそうだよね。」
「逆にリアルすぎて、ゲームとしてのストーリー構築が難しいかも。」
「その点、『日向』を本編で出しておけば…」
「状況に応じ、次回作ではどんな『サブ』でも登場可能…幅が広いよな。」

その通り…だから、『日向』は本編…一作目には出さざるを得ない。
『日向』を出しておけば、『影山』を始めとする烏野の面々は登場する。
そして、『烏野ご一同様』が出ることで、他の『メイン』達とのストーリーも、
バリエーション豊かになり、かつスムースにコトが運ぶのだ。

例えば、そう…と、研磨先生は指折りながら例示を始めた。

・本編の隠しキャラとして『影山』(『日向』『及川』双方の真ED後に攻略可能)
・次回作以降の隠しキャラ『孤爪』(全キャラクリア後のみ)
・『菅原』+『夜久』→初回購入特典ドラマCD『ママ友の会』

「これらはほんの一例だけど、『オマケ要素』としても使えるのが嬉しいよね。」
「確かに…『澤村』と『黒尾』の主将コンビのネタも使えそうですし…」
「『西谷』『田中』『山本猛虎』あたりで、ハチャメチャ系も可能。」
「普通に『第三体育館』をするにも、『日向』は欠かせない…か。」

もう、どうやっても『出すしかない』…それが、『原作主人公』という存在なのだ。
(研磨先生の『ため息』は、どうやら『深い考察ができない』ことへの不満らしい。)


「でもでもっ!!『日向』を出せば…『孤爪研磨』が出てくるのが、嬉しいですね!」
「『黒尾』のサブとしても登場可能だけど、『幼馴染』属性だけでは…弱いからね。」
「その分、『日向』『黒尾』のメイン二人と縁が深い面を強調するしかねぇってか。」

ところで、孤爪師匠。気になっていることがあるんですが…と、
赤葦は『お口直し』の醤油煎餅と緑茶を出しながら、発言を求めた。
「この『孤爪』が『隠しキャラ』で、しかも『全キャラ攻略後のみ』の理由は?」

赤葦の質問には、研磨が視線を送った…山口が明確に解答した。
「恐らくそれは、『難易度』の問題だと思います!」

乙女ゲームの本質は、キャラとの『人間関係構築』である。
即ち、攻略には『コミュニケーション』が必須であり、これを楽しむゲームとも言える。
だとすると、攻略難易度は、『コミュニケーション難易度』とほぼイコールだ。

「『及川』『月島』『木兎』が当確なのは、『コミュニケーションのしやすさ』がある。」
「ストレートだか変化球だかはさておき、『分かり易い』反応が返ってきますからね。」
「逆に、『会話が続かない』奴ほど、難易度が高い…」
「『無口』なキャラ…伊達の『青根』や、青城の『国見』あたりは、高難度ですよね。」

『会話成立が難しい』存在としては、『無口』の他に、もう一つの類型がある。
それが…『ド天然系』である。

「最初、攻略人数を5~6人って言ってたでしょ?もし6人の場合が…コレだったんだ。」
その最大の候補は、『牛島若利』だが…『影山』や『孤爪』もこの部類に当てはまる。
ちなみに、この場合の『ド天然』キャラとは、①独特の世界観を持ち、
②『常人』とはちょっと違うコミュニケーション方法が必要な者達を意味する。
それこそ、場合によっては『サトリ』なんて特殊能力コマンドが必須なぐらい、
一般的な属性には入らない、『一筋縄ではいかないキャラ』達である。

「『日向』攻略後でないと『影山』が出せないのも、意思疎通の難しさから…ですね。」
「同じ理由で、コミュ障の『孤爪』は…どう攻略すべきか、俺には見当もつきません。」
「確かに…幼馴染の俺ですら、攻略する自信がねぇよ。」

『牛島』も『影山』も、こちらの出方には割と分かり易い反応を示す分、
まだ攻略の手がかりは掴めそうだが…『孤爪』は感情を読むことすら困難だ。
そうなると、『6人目のメイン』として『孤爪』を出すには、難易度が高すぎる。
一体どうすべきか…皆が頭を悩ませていると、研磨先生が考えを示した。

「一作目の攻略人数は『5人』にして、あえて『ド天然系』は表に出さない。」
その代わりが、『日向』後の隠しキャラ…『影山』であり、
二作目以降の最難関攻略対象…ラスボス的存在としての『孤爪』なんだ。

「なるほど…難易度の問題だけじゃなくて、次回作や隠し要素を含めて考えるんですね。」
「隠しキャラの真EDこそが、ゲーム全体の真ED…『シメ』としても使えます。」
商業的見地も大事だけど、やっぱりそこは『ゲーム』だからね。
ゲーマー的見地からも、『ゲーム』としての完成度や奥深さ…手を抜きたくないんだ。
そういった役割をこなすに相応しいのが、『孤爪』っていう存在だと…俺は思う。

研磨先生は、やはりただのゲーマーではない。
ゲームの完成度のためには、自らをネタにすることも厭わない…
『乙女ゲーム』に対する先生の『本気』を、4人はひしひしと感じ取った。


「先生、それでは『牛島』という実に美味しいキャラは…?」
彼を出さないと、『白鳥沢関連』のネタが使えない気がしますが…と、
月島が心配そうに尋ねると、研磨先生は「それでいいんだ。」と静かに答えた。

「あえて『一切触れない』こと…これも、次回作への『期待』に繋がるんだ。」

・なぜ一作目では、白鳥沢や牛若について、スルーされてしまったのか…?
・もしや次回作では、ココがメインとなるストーリー構成なのでは…?

「原作でもボリュームのある部分をごっそり残す…『次回作確定』フラグです!」
「そう言えば、アニメだって…『第3期』というカタチで、ごっそり白鳥沢編!」
「ということは、三作目以降で、『牛島』と…『全国レベルの面々』か!」

これは原作やアニメと全く同じ手法ではあるけど、その分有効…
コンテンツを長く楽しむには、『出さない勇気』も必要なのだ。


「たかが乙女ゲーム。されど乙女ゲーム…出演キャラ確定だけでも、奥が深いですね。」
「キャラそれぞれのストーリーを想像するだけでも、かなり楽しいのに…」
「じっくり出演者について考察…『HQ!』って作品自体を別視点から楽しめるな!」
「これをきっかけに、キャラの新たな可能性も見えてきましたしね。」

4人がこの会議を楽しんでくれて…俺も研究者として本望だよ。
そんな4人に、俺の『開発メモ』を…ちょっとだけ見せてあげる。

「研磨が珍しく…上機嫌だっ!!」と黒尾が驚く中、
研磨先生はポケットから小さなメモを一枚取り出し、テーブルに乗せた。


<その他のオイシイ属性について>

・『ヤンキー系』→『京谷賢太郎(青城)』『二口堅治(伊達)』『照島遊児(条善寺)』
・当確は『京谷』→二作目以降かつ、『及川』のバッドエンド経由でルート開放
・『ヤンキー』こそデレ甘系の真EDが際立ち、『受』ルートが超美味(『Z』確定)


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「ば…ばかっ、テメェ…どこ、触って…」

さっきまでのドスと粋の良さは、一体どこへ行ってしまったのだろうか。
口では怒号を飛ばしながらも、その瞳は戸惑いで揺れ、声も震えている。

「や…やめろ、このやろう…あっ!!」

メンチを切ろうと伸ばした腕で、そのままギュっとしがみ付いてきた。
普段の罵声には、肝が冷えるが…今の嬌声は、もっと奥に熱が走った。

「覚えてろ…あとで絶対、お前を、コロ、ス…っ!」

その前に、僕が君を…『極楽』に連れてイくけどね。
言葉にはしなかったのに、僕の視線からその意図を読み取ったのか、
彼は噛み付くように僕にキス…自分から腰へ脚を絡めてきた。


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「『黒尾』『赤葦』に続く、第三の『ERO要員』…美味しくない?」

これが、研磨先生の『本気』…っ!!
4人は声を揃えて「超絶…美味です!!」とひれ伏した。




- ⑨へGO! -


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<研磨先生極秘メモ>
『孤爪研磨』攻略について

・難易度→★★★★★(初回プレイでの真ED到達率・5%)
・あるパスワードを入力すると、『ピンクのしおり』ルート出現(『Z』のみ)
・上記ルートは、『暗転』してもフルボイス対応(ヘッドホン推奨)
・初回限定版封入のコードを入れると、『孤爪(猫耳付)』に変化




2017/02/27    (2017/02/25分 MEMO小咄より移設)

 

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