教えて!研磨先生⑤







黒尾法務事務所の新規事業・『HQ!乙女ゲーム』開発会議。
乙女ゲーム研究家・研磨先生の全面協力により、着々と構想が出来上がっていた。

攻略人数は5~6人。①容姿、②キャラ立ち、③ストーリー性の観点から、
ユーザ―の心を掴む『属性』を持つ攻略対象を誰にするかについて、熟慮中である。

まずは、『モテ系王子様・及川徹』と、『ツンデレメガネ系・月島蛍』…
この二人は先に上げた①~③の要素を完璧に満たし、かつ、
その『属性』では他との競合もない…唯一無二の存在として『出演確定』である。

「ここからは、①~③以外にも、テクニカルな処理が必要となるんだ。」
研磨先生は、応接テーブルに広げた紙に、一気に3つの『属性』を列記した。

・『頼れる兄貴系』
・『とにかく元気!系』
・『カワイイ(小動物)系』

「どれもこれも、『あ~、いるいる!』っていう『属性』ですね。」
「確かに…この辺りがないと、バリエーションとしては寂しいですからね。」
「それぞれに『…こいつか?』って心当たりがあるのが、『HQ!』の凄ぇとこだな。」
研磨先生が挙げた『属性』に、異論は全く出なかった。
山口が運んできた新たなお茶で口を潤し、先生は会議を再開した。


「じゃあ…月島は『兄貴系』で誰を思い浮かべる?」
「兄貴系=面倒見の良いキャラ…『澤村大地』『黒尾鉄朗』辺りですか?」
少し年齢幅を広げてみるなら、『月島明光』『烏養繋心』も有り得ますが、
①~③の主要素の面で、『澤村』『黒尾』には及びませんよね。

「次に…赤葦の思い描く『元気!』なキャラは?」
「要は、無駄に明るいお馬鹿…『木兎光太郎』『日向翔陽』『灰羽リエーフ』です。」
『兄貴系』とも重複する存在では、『田中龍之介』や、和久谷南の『中島猛』…
こちらもやはり、『属性代表』というには、少々物足りませんね。

「『カワイイ系』と言えば、クロは誰が該当すると考える?」
「つまりは『小さい』奴…『日向翔陽』『夜久衛輔』『西谷夕』が当てはまるか?」
『日向』は『元気!』にも入るだろうし、『西谷』は『兄貴』とも受け取れる…
『夜久』はむしろ、可愛い『お母さん』ってカンジもするよな。

「最後に山口…今の3人の考察から導かれることは?」
「どの『属性』も…『決め手』が足りない気がしますね。」
『及川徹』『月島蛍』の時みたいに、唯一無二の存在はいないですし、
誰を出演させるのかは、①~③以外の新たな基準が必要ですよね。
それこそ、人気投票の上位者だとか、二次創作で素材にされやすいとか…
より『商業的』な視点から判断していくべきかもしれませんね!

山口の明瞭な意見に、「さすが、俺が認めたサブリーダーだね。」と、
研磨は満足気な笑みを見せ、左手の指を4本立てた。

「ここで、俺は第④の要素として…『次回作への広がり』を提案したい。」


ある乙女ゲームが、様々な要因からヒットしたとしよう。
すると、ユーザーから上がってくるのが…『次回作』への期待の声である。
この『次回作』には、以下のようなタイプが考えられる。

・本編(1作目)のアフターを描く『補完型』
・本編のストーリー自体を広げる『拡張型』
・本編とは別のストーリーを描く『派生型』

「『補完型』は、真エンディング後の二人…いわゆる『ファンディスク』です。」
「『拡張型』は、イベント追加等…他機種へ移植する際にみられる傾向ですか。」
「『派生型』は、『学園モノ』を『戦国モノ』にしたりと…スピンオフだよな。」

月島・赤葦・黒尾の3人も、徐々に『乙女ゲームのなんたるか』が解ってきた。
次回作のタイプに共通するであろう『追加項目』を考えていくと…?
研磨先生から視線を受けた山口は、顎に手をあてながら考察を開始した。

「乙女ゲームには、『攻略対象』となる人物だけが登場するわけじゃない…」
攻略対象…『メイン』キャラのストーリーには、他の『メイン』は勿論、
攻略対象『外』のキャラ…『サブ』も、当然出演することになる。

『メイン』を張るキャラのストーリーが、ユーザーの心を掴むためには、
そのストーリーに欠かせない『サブ』との関係性が、重要な位置を占める。
即ち、『魅力的なサブが存在すること』が、ストーリーの良し悪しを左右する。
その結果、魅力的な『サブ』自体にも、自然と人気が集まることになり…

「…本編では攻略対象『外』だった『サブ』が、2作目以降で攻略可能に!」
1作目では、惜しくも『メイン』とはならず、攻略対象『外』だったけど、
やっぱりこの『サブ』も好きだし…むしろ『二次』としてオイシイ!
そういう『広がり』を感じさせることで、次回作への期待を高めつつ、
キャラ同士の掛け合いを『BL要素』として楽しむこともできますね!!

研磨は思わず立ち上がって山口の手を握ると、激しく握手をした。
どうやら、完璧な解答であったようだ。


「これはただの萌え…『妄想語り』じゃなくて、商業的な開発会議。」
とは言え、萌えなくして需要なし。妄想なくして創造なし。
たくさん種(夢)を蒔かなければ、多くの実(利益)は得られないのだ。
ただの趣味…オフ活動のない、オンラインのみの二次創作サイトは別として、
顧客相手のビジネスには、こうした商業的戦略が欠かせないのだ。

「『兄貴』『元気』『カワイイ』の出演者は、次回作を見据えての選択が…得策。」
キラリと光る、先生の鋭い視線。
皆はゴクリと唾を飲み込み、本気度を一段階上昇させた。




- ⑥へGO! -


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<研磨先生開発メモ>
次回作以降の内容(案)
・補完型→CEROを『D』または『Z』のものにする(本編は『C』程度?)
・拡張型→新シナリオとして、『合同合宿編』等?
・派生型→RPG(ファンタジー)編もしくは、社会人編?



2017/02/27    (2017/02/19分 MEMO小咄より移設)

 

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