▲ご注意下さい!▲
この話は、連休中にGがWな、BLかつ性的表現を含みます(ver.2019)。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、閲覧をお控え下さいませ。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)
それでもOK!な方 →コチラへどうぞ。
このカンケーをコトバで表すと、
つまるところ…何フレ?ナニ友?
梟谷学園合宿所の朝は、とにかく早い。
そして、同じぐらい夜も早いのだが、消灯時間に寝られるかどうかは、別問題。
休日出勤の指導者達や、夜勤以外の合宿所管理人達は、疲れ果てて早々に撃沈。
だが、若さ有り余る現役生達は、余計なことを考えずに、大好きな部活三昧…
合宿なんて、楽しいばっかりのお祭りでしかなく、夜も至って『お元気!』だ。
精も根も尽き果てるぐらいしごかれ、箸も持てないほど抜けきっていたのに、
お風呂で汗を流し、お腹がはじけるまで御飯を食べ終わった頃には、もう復活。
『お元気!』を取り戻すやいなや、性も尽き果てるまで、ヌいてしまおうぜっ!
…というのが、健康優良な体育会系男子高校生というイキモノ(ケダモノ?)だ。
年長者(オトナ)達は、ただただその若さに羨望コミコミで感服するのみ。
ガマンはカラダに良くないし、ソレの管理もアスリートにとって不可欠だし、
何よりも、全部ヌけきってくれた方が、大人しく寝てくれてこれ幸い也…と、
夜の自己管理に関しては、暗黙の了解という名の放置(推奨)が、合宿の通例だ。
「今日の『御提案者』係は…木葉だな!どうせまた、学園制服モノだろ~?」
「うっせぇよ!いっつも金髪巨乳モノ持って来る、木兎に言われたくねぇよ!」
「じゃぁ今回は…リエーフ!お前のお気に入りをヌき打ちだ!スマホ出せっ!」
「えぇぇぇぇぇ~!や、やめて下さいボクトさんっ!夜久さぁん、助けて~っ」
「リエーフのお気に入りは、きゅんカワのちょいロリ系だよな。」
「そういう夜久さんは、貧乳スレンダー美女系じゃないですかっ!」
「夜久…我が(下)心の友よ。」
「鷲尾…お前も同士かっ!!」
今回は、梟谷と音駒が大部屋で相室。
チームメイトの『お気に入り』は互いに知り尽くし、少々飽きていた反面、
他校のモノは未知の領域…はっきり言って、キョーミシンシンだった。
「俺ら梟谷と、お前ら音駒は、トーキョーを代表するナカヨシさんだよな!?
でも、真のイミでわかり合うには、腹を割って腹の下を曝し合うのが一番!」
こうして、夜更けの『合同練習』がスタート…
スマホを手近な相手と交換し、研究の成果(お宝動画集)を披露し始めたのだが、
そんな楽しいばかりの『自主練』には参加できない者達も、中には存在する。
尽き果てたオトナと、これから果てる気満々の現役生との狭間…中間管理職だ。
「ったく、イイ気なもんだぜ。」
「こっちは残業真っ只中です。」
業務遂行能力とお元気!さを買われ、信頼の名の下に残務を押し付けられ、
さらには同僚や部下達の面倒まで負わされる…文字通りの苦労人が、二人。
強制的に消灯された部屋の隅、盛り上がる皆の邪魔をしないようにと、
ライト代わりに照らすスマホの光が漏れないよう、掛布団で覆い隠しながら、
本日のデータ整理やら、明日の行程表作成やら、諸々の書類仕事と打合せ。
「あ、赤葦。ソコ…そう、ソッチだ。」
「はい、黒尾さん…ココ、ですよね。」
布団に腹這いになりながら灯りを点し、書類にアレ(記入)等をイれていく赤葦。
横寝の状態で掛布団を支えて幕を作り、赤葦にソレ(指示)等をダし続ける黒尾。
「俺らにヤらせるなら、別の部屋ぐらい用意しろってな。」
「こんなトコじゃ、ヤりたくても満足にできませんよね。」
布団越しに聴こえてくる、あられもない音声と荒い息、リズミカルな衣擦れ音。
周りの皆が、気持ちヨさそうにアレやらコレやらを発散させる気配を感じる中、
二人はその逆に、イライラとストレスを布団の中にムラムラと籠らせていた。
「ココじゃ…ダメ、ですね。」
「別んとこ…二人でイくか?」
狭い所で不自由な格好を強いられ、カラダのアチコチがじんじん痺れてきた。
そろそろガマンも限界…部屋を抜け出して、非常灯のある場所にでも移ろう。
余計な音を立てぬよう、書類を畳んで灯りを消し、布団を捲ろうとした…瞬間。
向こう側から布団をガバっ!と剥ぎ取られ、驚いた二人は互いにしがみ付いた。
「うわぁっ!?」
「何すんだっ!」
「ナニすんだ…ナニをヤってんだ!は、コッチのセリフだっつーのっ!!!」
二人で布団にくるまってコソコソ…すっげぇアレな会話も、まる聞こえだぞっ!
メンドクせぇ小言ジジィ同士、気やらソレやらの相性がイイんだろうけど、
「残業です。」とか言いつつ、ホントは二人だけでカきあってたんだろっ!?
「はぁ~?何言ってんだ木兎!俺らが一緒にシてたのは…」
「確かにカいてましたけど…ソレじゃありませんからね!」
元々は冷静な黒尾と赤葦も、積もり積もったイライラで言葉を選ぶ余裕もなく、
それが余計に木兎を煽ってしまい、二人がマズイ!と思った時には、ケンカ腰。
…ではなく、話は二人が全く予想しなかった方向へと、ウサギ跳びしていた。
「お前らばっかり、ズリィぞーーー!」
自分でヤるより、他人にヌいてもらった方が、ダンゼン気持ちイイらしいな!?
俺はなぁ、抜きつ抜かれつセッサタクマし合い、ココロを許し合ったお前らと、
引退直前ラスト合宿のイベントに、ヌきつヌかれつの交流戦をヤっちまおう…
そういうゴクヒの計画を、前の時代からずーーーっと考えてたんだぞっ!!
それなのに、お前らは「課外授業だ。」とか言って、ヌケガケしやがった!
「文字通り『ヌけ&ガけ』だよな。」って、ウマいこと言ったつもりだろ!
ブロッカーはおっきくてあったかい手だし、セッターはタマを扱うのが巧いし…
そう言えば、「あつかう」も「しごく」も、『扱』って漢字に変換されるよな?
つまり、俺のカンペキなスイリだと、お前らにヌいてもらうと絶対気持ちイイ!
「黒尾も赤葦も、両方共がめちゃくちゃ羨ましいぞーーーっ!!!」
木兎の絶叫で、部屋が沈黙に包まれる。
だが沈黙以上に、凍てつく空気を察した面々は、狸寝入りで夢の国へ逃亡…
その冷気をものともしない常夏の男に、冷気発生源×2は優しく微笑みかけた。
「木兎さん。『前の時代』って、たった数日前に変わったばかりですよ。
本当は、俺達がイチャついてるのが羨ましくて…今思い付いただけですね。」
「それに、全ブロッカーの手が、包み込まれてあったかい系でもねぇし、
全セッターが器用なわけでもねぇ…燃え滾る願望がもたらす、例え話だな。」
これぞまさに、『例話願燃(れいわがんねん)』…新しい時代の幕開けだな。
つーわけで、俺らはちょいとヤボ用…お前らはいつも通り、先にゆっくり休め。
まさかとは思いますけど、どこイってナニするんだ!?とか…訊きませんよね?
まぁ、強いて言うなら…溜まったコレ等をスッキリさせにイってくるだけです。
「んじゃ…おやすみ。」
「皆様…よい夢をば。」
にこにこにこにこ。
爽やかかつ涼やかな笑顔を振りまき、二人は互いにしがみついたまま…いや、
仲睦まじく寄り添い合って、部屋から出ていこうとした。
「ま…待ってくれ!ひとつだけ、教えてくれよっ!!」
さすがの木兎も、妙に輝かしいスマイルに気圧され、本能的に身を引いたが、
それでもなお、好奇心が危機管理能力に大差で勝利し、二人に待ったをかけた。
「ぶっちゃけ、他人にヤってもらうと、気持ちイイ…のか?」
ごくり…と唾を飲み込む音が、目の前の兎&布団の中の狸達から響いてくる。
黒尾と赤葦は一瞬キョトンとしたが、すぐに意味アリげな視線を交わし…
黒尾は赤葦の肩を抱き、赤葦は黒尾の腕にしな垂れ掛かり、皆に背を向けた。
「それは、俺のクチからは何とも…この姿を見て、どうかお察し下さいませ。」
「俺達に聞かずとも、これから自分達で試してみればいいじゃねぇか…なぁ?」
両チーム合わせて、ちょうど偶数。
先程ソロで処理なさった記憶の鮮明な内に、ペアの感覚を確かめてみては?
習うより慣れ、アレの恥はカきまくり…他人にヤられる前にヤってあげよう。
「それでは、改めまして…」
「おやすみ…素敵な夜を。」
最後まで(絶対零度の)微笑みを絶やすことなく、
黒赤ペアは静かに部屋を出て行った。
********************
「んじゃ、俺らも…スッキリするか。」
「はい。イくべきは…アソコですね。」
部屋を出た黒尾と赤葦は、何事もなかったようにスっと互いから身を離し、
いつも以上に淡々と、静まり返った廊下を奥へ奥へと進んで行った。
消灯後に灯りを得られる場所は、ごく限られてくる。
何時だろうと、電気が点いていてくれないと困るトコ…そう、お手洗いである。
だが最寄りのお手洗いは、もうすぐ文字通りの『お手洗い』で大混雑が確定…
せっかく静かな場所を探して出て来たのに、全くの逆効果になってしまう。
「2つ上の階が、現在工事中…誰も使っていないはずです。」
「なるほど。それで今回、ウチと梟谷が相部屋だったのか…」
廊下の隅、お手洗いの正面にある重い防火扉を開けて、非常階段を昇る。
踊り場には非常灯が点いているものの、少々光量不足…それに、ここは寒い。
さっきまで密着しながら布団にくるまっていた分、余計に冷々と感じてしまう。
この場所も静かで人けがなく、落ち着いて作業ができそうではあるけれども、
今日はもうちょっと狭い場所の方が…やはり、お手洗いが丁度いいだろう。
「これは、少し計算外でした。」
「ま、お蔭で使いやすいだろ。」
2つ上の階へ出ると、廊下一面に青緑色の養生シートが張られていた。
所々に脚立等が整然と置いてあり、同じ建物とは思えない『現場感』を醸し、
それが「ここなら残業してもOK!」という、妙な安心感を与えてくれた。
赤葦が『計算外』だったのは、その改装範囲にお手洗いも含まれていたこと…
当然予見できたはずなのに、何故か『トイレは別』みたいな思い込みがあった。
トイレ内は工事資材が山積み…3つある個室のうち2つは使用できない状態で、
一番奥の個室に、二人で入らざるを得なかった…実に幸いなことに。
(二人で一緒に入る口実…)
(探さなくて済みました…)
書類に記入する係の赤葦が、便座に腰掛けて作業をするのが、最も効率的。
そのためには、指示を出す係の黒尾も、同じ個室に入る必要があったのだが、
それがベターとわかっていても、誰かと一緒に入るには、心理的に抵抗がある。
しかしながら、選択肢がそれしかないのならば、話は別。
資材が邪魔で扉を開けたままにすることもできないため、一緒に入るほかない。
「悪ぃな、ちとお邪魔するぜ~」
「どうぞ、いらっしゃいませ~」
先に個室に入って座った赤葦に、黒尾は軽い調子で挨拶しながら、扉を閉めた。
その扉に黒尾は背を預け、書類を乗せた赤葦の両腿に当たらないように跨いだ…
つもりだったが、いかんせん個室は狭く二人共ムダにデカ…足が長いため、
開いた黒尾の膝で、閉じた赤葦の両膝を挟むという、ちょっぴり接触状態に。
このビミョ~な『ちょっぴり』具合が、何だか余計にソワソワしてしまう。
触れるか触れないか、でもなく、ピッタリ密着でもない、宙に浮いたカンジが、
落ち着かないというか、何かに縋りたくなるというか…ナニかが恋しいような?
「狭いトコで、すっ、すみませんっ。」
「い、いや、冷えなくて良いよなっ。」
「お、お寒いなら、もうちょっと…っ」
「お、おぅ、じゃあエンリョなく…っ」
微妙な距離感に悩むぐらいなら、いっそのこと測定値ゼロにしてしまえばいい。
そう二人は合理的に判断し、今度はゆったりと脚を伸ばし合い、ピッタリ密着。
これだと中途半端な所で脚を突っ張らずにすむし、人肌で何だか…落ち着くし。
お互いに気取られないよう、コッソリと安堵のため息を飲み込んでから、
二人は緩みかけた気を引き締め、残った書類仕事を猛然と片付け始めた。
*****
「ざっとその程度で良さそうだな。」
「はい。これで十分だと思います。」
黒尾さんと一緒に仕事をするのが、俺は嫌いじゃない。
いやむしろ、こんなにヤりやすい人がいるのかっ!と、毎度感嘆のため息だ。
とにかく、指示が的確。こちらが為すべきことの丁度良い『ヒント』を下さる…
決して『こたえ』じゃないあたりが、こちらの『気付く喜び』を絶妙に刺激し、
もっと頑張ろう!というヤる気を、イイ具合に巧く煽ってくれるのだ。
「毎度思うが、赤葦は凄ぇよな。こっちが1言っただけで、本質を完璧に捉え…
2や3どころじゃなく、5手先ぐらいまで見極めちまう…恐れ入るぜ。」
「いえいえ、そんな!全ては黒尾さんが最良かつ最善の『1』を下さるおかげ…
2や3の奥、5まで導くように朗々と照らして下さるから…感服です。」
それに加え、この褒め上手っぷり!
地味な書類仕事なんて、普通はただの雑務扱い…ヤって当たり前だと思われて、
ゴクローサン程度には労われても、褒められることなんて、ほぼ有り得ない。
一応、「この程度は細事です。」風に、表情一つ変えずヤってのけるけど、
ホントはクソ面倒だし、実は細部にまで気を使って完成度を高めた自信作だし、
そういう小さな『隠れた努力』を褒められたら、誰だって嬉しいに決まってる。
(何か頸筋の辺りが…ムズ痒い。)
緩む頬を悟られないように、下だけ向いて腿上で書類を丁寧に丁寧に折り畳む。
その時、指先が赤いジャージに…触れ合う黒尾さんの脚を掠め、僅かにピクリ。
謝罪するほどの衝突でもないし、そもそもさっきからずっと触れ合ってるし、
それ以上に、黒尾さんが不自然な程の無反応で…こっちも何も言えなかった。
その妙な沈黙が、ムズムズ感にモジモジ感?を追加し、カラダが強張ってきた。
そんな俺の小さな変化も、黒尾さんには伝わってしまい…気まずそうな空気感。
そしてすぐに、場を取り繕うような「あ~、そういえば!」という軽い声と…
「ひゃっ!!?」
「んぐっ!!?」
傾いで露わになっていた頸の裏…襟の隙間に、いきなり指を突っ込まれた。
俺は驚きのあまり、声と頭を思いっきり跳ね上げてしまい、直後…衝撃と悲鳴。
「ごっ、ごめんなさいっ!大丈夫ですかっ!!?」
俺に少し覆い被さるように、上体をこちら側へ倒していたらしい黒尾さん。
その曲げた腹部へ、俺の頭が勢いよく直撃…グラリとカラダが傾いた。
これは確実に、全力で謝罪すべきレベルの大クラッシュ…
フラつく黒尾さんをおでこと鼻で支えながら、ぶつかった辺りを慌てて撫でた。
「いいいっ、痛いの、痛いの、と、とんでけーーーっ!!!」
「ぅわあっ!?ば、バカ、やめろっ!!くすぐってぇよ!!」
「!?ほぅほぅ、そうですか~そうですか♪この辺…ですかね~?」
「ぅわははははははっ!!赤葦、はっ離せって…たたっ、頼むっ!」
身を捩って俺から逃げようとするけど、この狭い中では逃げ場なんてないし、
離せと言う割に、俺にしがみ付きながら半分裏返った高い声で懇願する姿に、
俺の中でナニかがムクムクと湧き上がってきて…離してなるものかと、ムギュ!
頭(顔)と左腕で黒尾さんをしっかり捕まえたまま、右手でサワサワしまくった。
「もっ、もう、これ以上は…っ、ホントに、カンベンしてくれよ~っ!」
「黒尾さんのお腹…温かくて気持ちイイですね~え?何か言いました?」
(ふふっ♪可愛いトコあるんですね~)
今まで知らなかった黒尾さんの一面に触れ、なんだか無性に嬉しくなった俺は、
調子に乗って身悶えする黒尾さんを弄りまくり…数秒後、動きを急停止した。
「…ごっ、ごめん、なさい。。。」
「いや、こっちこそ…悪ぃ。。。」
サワサワしていた部分に、温かいナニかがムクムクと…
合宿に溜まった疲れや、密着して触れ合う人肌、ギリギリを掠め続けたこと等、
モロモロの条件が重なった末の…おバカかつ当然の『ムクムク』な結果だ。
手のひらの下で脈打つ、黒尾さんの熱。
自分から引っ付いている以上、ササっと身と手を退けるのも、失礼極まりない。
どうすべきか考えようにも、対応策なんて全く出ず、結局そのまま凝固…
すると、無理矢理落ち着かせた声で、場を取り繕う『イイワケ』が降って来た。
「お前の、襟んとこ。シャツのタグが飛び出てて、頸にずっと当たってて…
ムズムズしてくすぐったそうだなぁ~って、ずっと思ってたから、その…っ」
「ど、道理で!だから黒尾さんは、それを直そうとして、指を突っ込んで…
てっきり俺は、物理的ではなく、心理的なこそばゆさかと思って、あの…っ」
「そ…そう、だったのか。」
「あ、はい…そう、です。」
「………。。。」
「………。。。」
(どっ、どうすりゃいいんだ、コレ…)
重い沈黙に、唾も上手く飲み込めない。黒尾さん、もしや大激怒中か?
とりあえず、もう一度きちんとゴメンナサイした方が良さそうだけど…
(ち、沈黙が、怖い…っ)
恐る恐る頭を上げ、下からこっそり御機嫌窺いするように、チラリと見上げ…
目が合った瞬間、黒尾さんがグっと喉を詰まらせて、眉間に深い皺を寄せた。
その厳しい表情に、今度は俺の口から俺のものとは思えない完全に裏返った声…
『イイワケ』にしても酷すぎる、聞き覚えのあるセリフが飛び跳ねた。
「他人に触ってもらうと、気持ちイイ…でしょうか?」
んなっ!?ナニ言ってんだ、俺はっ!?
…と、セルフツッコミする間もなく、左腕一本で引き上げられたかと思うと、
すぐに右手が俺の下腹部をサワサワ…掌でソコを包み込まれてしまった。
「俺に聞かずとも、自分で試してみればイイ…だろ?」
ナニ言ってんですか、アンタまでっ!?それに、ど、どこ、触って…っ
…という至極真っ当なリアクションを返したりする間なんて、全くなかった。
より正確に言えば、NO!や待った!ではなく、カラダが先にYES!と即答…
右手の下の温もりを、モキュっモキュっと包み返していた。
********************
抱き合う、というような色っぽいものには程遠い、ただしがみ付いているだけ。
それでも、ついさっきまで、同じ布団の中にいた時よりもずっと…近い。
自分達の意思で、カラダの大部分を誰かと触れ合わせたのは、これが初めてだ。
(凄い、ドキドキするのに…)
(何か、ホッと落ち着く…?)
この歳になると、家族ともこんなに近い距離まで接近することなんてないし、
親しい友人や幼馴染、チームメイトや先輩後輩の距離感では、絶対有り得ない。
でも、二人の『ピッタリ』具合に感じるのは、何よりもまず…居心地の良さ。
「これだけで、気持ちイイ…ですね。」
「あぁ。寝たく…眠くなりそうだな。」
たった一文字違うだけで、随分とニュアンスが変わってくる。
黒尾はあくびをするフリをしながら発言を修正し、赤葦は聞こえなかったフリ。
そのまま『眠気』を誘うように、起きつつある部分を、ゆるゆると撫で始めた。
「「ん…っ」」
こんなトコを、他人に触られたことなんて、もちろんこれが初めてだ。
おそるおそる遠慮がちに、ジャージの上から撫で合っているにすぎないのに、
自分でする時とまるで違った感覚…奥底から何かがじわじわ湧き上がってきて、
手や触れられた部分だけじゃなく、炙られるような熱を、全身に感じるのだ。
大きな掌で、全体を包み込むように。
繊細な指先で、敏感な部分を擽って。
いつも通り、自分の動きを続ける手。
それなのに、未知の感触に煽られる。
「こんな、ヤり方…あったんですね…」
「お前の、ヤり方…凄ぇ気持ちイイ…」
「黒尾さ、ん…っ、お上手です…ねっ」
「赤葦も…っ、巧い、じゃねぇか…っ」
先程、カラダの中から裏返った声を、思い切り出し合っていたせいか、
カラダが放つホンネが、隠れるそぶりすら見せず、スルスルと漏れ出てしまう。
普段褒められる機会に乏しい二人は、素直な称賛を貰えるだけで嬉しくて、
もっともっと褒めて欲しい!という、強い承認欲求に突き動かされるように、
互いの下着の中へと右手を滑らせ、直接熱に触れ…同時に腰を跳ね上げた。
「俺もお前も、褒めて伸ばすタイプ…だったんだな?」
「実力以上のモノも、ソコから出て…きそうですね?」
いつも通りのしょーもないヤりとりも、いつもと異なる声と吐息が混じると、
くすぐったさを含んだ甘ったるい雰囲気へ…激変した互いの姿に、震えが走る。
「今日の、黒尾さん…んんっ!なんか、ヤらしいですっ、よね…っ」
「それを言うなら、官能的…ぐらいに、しといて、くれ…よ、なっ」
無理矢理にでも軽口を叩き続けておかないと、甘く掠れる声を誤魔化せない。
だがその何かを必死に耐える表情や、唇を噛み締める仕種が、余計に熱を煽り、
『気持ちイイ』を高める結果にしかならないことを、二人は身を以って実感。
『無駄な我慢は逆効果』と早々に悟り、作戦変更…勤勉モードに切り替えた。
(もっと、二人で一緒に…)
(気持ちヨく、なりたい…)
「なぁ、俺がシてるみたいに…下からグっと、同時に擦り上げて貰えるか?」
「俺の方も、先端のトコを…小刻みに動かすのも、追加して頂けませんか?」
今までカンジたことのなかった、新鮮な相手の動きも、このままずっと欲しい。
けれども、今まで通りの身に馴染んだ刺激も、やっぱり欲しくなってくる。
右手だけでは両立不可能だとわかっていても、カラダはワガママに求める…
今なら、この人になら、それを願っていいはずだと、何故か強く確信していた。
「右手のみで両立可能な策は…?」
「もう半歩ずつ接近…以上です。」
赤葦が即時に出した回答に、黒尾は「さすがだな。」と手を離さずに誉めると、
ヨシヨシ…と左手で頭を撫でてから、合わせて一歩分、赤葦の背を引き寄せた。
まるで試合前のご挨拶の如く、背をポンポンし合い、今度はしっかり抱き合う。
そして、握り締めていた熱を右手で引き出し、そっと重ね合わせた。
「「……っっ!?」」
今まで自分の右手で触っていたのに、自身の熱で相手の熱に直接触れた瞬間、
その熱量?熱力?とにかく高エネルギーと高温に焼かれ、全身が跳ね上がった。
息を飲む「ゴクリ」という音にも、熱がドクリと共鳴し、更に昂まっていく…
「なぁ、ちょっとだけ…離れねぇか?」
「え?あっ、その方が良い…ですね。」
抱き合う程に密着していたら、手を上手く動かせないことに気付いた二人は、
熱は合わせたまま上体だけを少し離し…互いの顔を見た瞬間、再度抱き合った。
「す、すみません。顔、恥ずかし…っ」
「だな。俺の肩に、おでこを乗せて…」
こうすると顔も見えねぇし、二人のカラダの間に空間もできるから…と、
黒尾は赤葦の頭を撫でながら肩口に導いたが、赤葦はすぐにNGを出した。
「これだと、俺はソコを…ずーっとガン見し続けちゃうポジション、です。」
「それもまた、結構アレな絶景だな。だとすると、これも真ん中をとって…」
おでこではなく顎を黒尾の肩に乗せて身を預け、大人しく待機していた赤葦は、
頬を指先でツンツンされる合図に従い、ゆっくりと顔を上げ…おでこにコツン。
汗ばむ額と長めの前髪がぶつかり、上気した呼気と吸気は混ざり合うのに、
視線と視線はぶつかっても、焦点は結び合わない、ごくごく至近距離…
「意外と言っちゃ失礼だが、赤葦、お前結構…睫毛、長ぇんだな。」
「前髪、目に入って痛いです…黒尾さんも、おでこ出して下さい。」
吐息どころか、言葉を発する唇の振動までも伝わってきそうな…
いやむしろ、言葉ではなく吐息で囁き合うのが、最適な距離感かもしれない。
ここまで近ければ、恥ずかしさを感じる隙も、もうそんなに残ってない…はず?
「あの、やっぱりこれでも、ソコらへんが…丸見え、ですよね?」
「赤葦だけじゃなくて、俺にも…な。恥ずかしさも、半分こだ。」
それに、もしソコから目を逸らし、顔を上げてしまうと、
鼻と鼻がぶつかり、
勢い余って…唇と唇が触れ合ってしまいかねない。
「溜まったアレやコレを発散してただけなのに、俺なんかに唇を奪われたら…」
「鉄朗、もうおヨメにイけない…せめてゴクラクにはイかせて貰わねぇとな?」
(あのっ、嫌、とかじゃなくて…)
(まだっ、時期尚早、というか…)
囁き合う温かい吐息が頬を掠め、その優しい柔らかさに口元が緩んでしまう。
微笑みを湛えながら、まったり微睡むような酩酊感に、ゆったりと身を浸す。
いつもより近付いて、お互いの熱を包み合い、他愛ないお喋りをしているだけ…
それなのに、何とも言えない『満たされた』気分を、二人は確かに感じていた。
「これだけで、何か、凄ぇ…」
「俺も…気持ちイイ、です。」
(もうちょっと、近付けたら…?)
(そう遠くない未来、きっと…?)
消えたはずのくすぐったさ…恥ずかしさに似た感覚が再燃しそうになり、
別の熱でそれを覆い隠すように、黒尾と赤葦は右手にキュっと力を入れ直した。
「で、では、今後の研鑽のために…二人でジックリ観察しときましょうか。」
「あ、あぁ。そのくらいの心意気で…ガッツリ鍛錬を積み重ねてイこうぜ。」
(え?今後、って…)
(ん?積み重ね…?)
自分達の何気ない発言に、僅かに残った理性が『???』を感知しつつも、
『研鑽』『鍛錬』という身にも耳にも馴染んだ言葉に、ヤる気スイッチON。
二人は真面目に実直に、自分の成すべきことに…全精力を注ぎ始めた。
大きな掌で、二人分の熱を包み込む。
繊細な指先で、二人の隙間を擽って。
いつもより少しだけ、大胆な動きで。
未知の頂きへと、互いを煽りたてる。
自分独りの時とは、比べ物にならない。相手にして貰うだけとも、きっと違う。
脳内全てが『気持ちイイ』に占拠され、うわ言のようにその言葉を零し続ける。
「1+1の、気持ちヨさは…」
「2じゃなくて、3以上だ…」
(例えばこれが、1×1だったら…?)
(3よりずっと奥、5まで燃える…?)
互いの荒く甘い呼吸と、眼下で重なり合い快感を絶叫する二つの熱に浮かされ、
二人は我を忘れて手を動かし続け…『気持ちイイ』に身も心も委ねた。
「コレは、ハマっちまいそう…だな。」
「抜け出せないかも…しれませんね。」
-
後編へGO! -
**************************************************
2019/06/09 (2019/05/03分 大幅加筆修正)