ご注意下さい!

この話は、半分ぐらい『R-18』に該当するような…
すなわち、BLかつ性的な表現を含みます。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、閲覧をお控え下さいませ。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)

とは言え、残り半分(半数)は未だに『R-18』未満ですので、
『ギリギリがんばって止まってる系』の話です。
用心のためのワンクッション…その程度のライトさです。

    それでもOK!な方  →コチラへどうぞ。























































※『逢引初回』直後のクロ赤。



    御泊初回









「あの…コレ、どうします?」
「どうって…そりゃ、なぁ?」



今日はやたら、イイコトばかりが起きる気がする。
いや、俺達はただ寝てただけなのに…起きたらイイコトが起きていた。


ひたすら地味に、コツコツと毎日頑張ってきたご褒美として、
神様から賜った、赤葦との『おデート』のチャンス。
昨夜こっそりとシミュレートしたのとは、かなり違うルートを辿ったが、
結果としては妄想以上に素晴らしい出来事ばかり…

オシャレじゃなくても、気の利いた話題を提供できなくても、
気の赴くままに公園をのんびり散策し、軽めの運動をしただけなのに、
その全てが楽しく、心躍るような時間だった。

まぁ、会話がなくて戸惑ったり、逆に会話しすぎで暴走してしまったが、
特に喋ることがなくても、一緒に居るだけでリラックスできること、
そして、喋りまくり…遠慮のない『かけ引き』も、愉快でたまらないこと、
さらには、度を越して喋り過ぎた場合の対処法が見つかったこと…
これらの『小さいけれど有意義な発見』が、いちいち感動的だった。

特記すべきは、『なかなか逢えない距離に住んで居る』というのが、
ただの思い込み…実は『公園突っ切ったらすぐ』だと判明したことだろう。
間抜けと言えば間抜けだが、俺達にとってはコペルニクス的転換…
大げさに表現すると、『どこでもドア』を手に入れたぐらいの衝撃だった。

そんなこんなで、特に謀ったわけでもないのに(多分)、
偶然の積み重ねから、『おデート』初回にして、赤葦の自室に到達。
誰もが妄想するであろう、『ここまでできれば…イイな♪』という、
交際の第一段階『初キス』も、無事に達成した。
(ムード云々は、この際考慮しないことにする。)

飛びぬけた才能もない。輝くような華もない。
主将(副主将)とは名ばかりの、業務量と責任だけが重い、中間管理職。
そんな地味極まりない俺達にも、ようやく春が来た。
本当に、毎日堅実に生きてきて良かった…心からそう思いつつも、
こんなにイイコトばかりが起こると、逆に恐れ多く感じてしまう。


腹も満たされ、ココロも満たされた俺達は、
昼下がりの柔らかい陽射しに誘われるがまま『ご休憩』…お昼寝。
溜まった疲れと睡眠不足、そして『一緒に居て落ち着く』という三連コンボ。
冗談半分に「気付いたら真夜中でした♪」と言っていたが、
ほぼそれに近い状況…目が覚めたら、部屋は真っ暗になっていた。

眠りこけていた俺達を起こしたのは、赤葦のご両親だった。
今日は一日、二人でどこかへお出掛けされていたようだが、
帰って来たら玄関に見慣れぬ靴と、バドミントンセット…
息子の部屋を何度かノックしても反応がなく(全く気付かなかった)、
仕方なく開けてみると…仲良く爆睡する俺達が居た、とのことだった。

いきなりお邪魔しといて、寝顔を曝すとは…黒尾鉄朗、一生の不覚。
「本当にすみません!」と冷や汗を垂らしながら頭を下げたのだが、
ご両親は全然気にした様子もなく、むしろ「京治のお友達!」と大喜び…
「晩御飯、一緒に食べましょうよ♪」と、大歓待。
そして、「もう遅いから、ウチに泊まればいいよ。」…と、
俺達が何も言えないうちに、あれよあれよと宿泊が決定してしまった。

「黒尾さん、すみません…強引な両親で。」
「いや、歓迎して貰えて…すげぇ嬉しい。」

心の中で、「赤葦父&母、ありがとうっ!!!」とガッツポーズ。
こうして俺は、『初おデート』にして、『初お泊り』権を獲得した。



今日ほど、心の底から「お父さんお母さんありがとう!!」と、
絶叫したいと思ったのは…生まれて初めてだ。

冗談半分で「終電なくなったら泊まって…♪」と言っていたが、
終電がなくなる前に、勇気を振り絞って自分から提案することもなく、
ごくごくアッサリと、黒尾さんの『ご宿泊』が決定した。

俺達はただ、欲望の赴くままに、惰眠を貪っていただけなのに。
両親は勝手に喜び、黒尾さんは勝手に気に入られ…
「いつでも遊びに来てね~」「京治を宜しく頼むよ。」…と、
両親公認の下、今後も黒尾さんと『仲良く』できることが確定した。
(…という認識で良いものと、勝手に解釈した。)

特にこれといって策を弄したり、罠を張ったりしなくても、
偶然の積み重ねで、物事が上手く運ぶことがある、という例だろう。
『事実は小説よりも奇なり』とはよく言うが、
『現実は妄想よりも喜なり』…こんなことも、実際には起こるのだ。

昨夜、こっそりシミュレートした『おデート』とは、随分違う結果だが、
想像を遥かに凌ぐ『超絶ラッキー』な展開に、恐縮してしまいそうだ。
こう見えて、実は意外と小心者…地味な裏方が、元々の性分だ。


夕食後、「必要なものを、買っておいで。」と、父からお小遣い。
まさか今日、既に下着は一組買っちゃいました…と言えるわけもなく、
(というよりも、俺達の話は聞かず、勝手に両親が盛り上がっている)
深夜まで営業している駅直結スーパーに、黒尾さんと一緒に出向いた。

「買うべきものは、着替えの下着と、歯ブラシセット…」
「ちょっとした『お夜食』に…牛乳と、本みりんです。」
「はぁ?本みりんって…何だ、そりゃ。」
「買い忘れ…要は『おつかい』ですね。」

黒尾さん、それは『本みりん』ではなく『みりん風調味料』です。
本みりんはもち米・米麹・焼酎から作る、純然たる『酒類』…
ガッツリと酒税だって取られている、伝統的なお酒の一種です。
確かに、『みりん風調味料』はお買い得ですが…『本みりん』とは別物。
他にも、『発酵調味料』というみりん似の調味料もありますが、
こちらも化学的に醸造された、全くの別物ですから。

…と、スーパーならではの雑学考察を楽しみつつ、
初めての『お買い物デート』というイベントも、達成してしまった。
まぁ、『本みりん』の方は間違いなく『おつかい達成』だったが、
『牛乳』の方を価格重視…ちゃんとした牛乳ではなく、
第三の牛乳…『加工乳』を間違って購入してしまったのが、痛恨のミス。
帰宅後、母から『牛乳の種類』について、ミッチリ指導を受けた。

「『白い液体』なら、何でもいいワケじゃないのよ。『生乳』重視!」と、
何とも言えない『ありがた~いお言葉』を、父も含め3人で拝聴した。
更に「お母さん、それ…『ナマちち』じゃなくて、『せいにゅう』…」と、
追い打ちをかける、父の『今それを言わなくても…』というツッコミ。
思春期爆走中のムスコにとっては、かなり冷や汗モノの会話だった。


「何かもう、ホントーに、すみません…」
「いや、なかなか…楽しいご両親だな。」

変な家族だと思われなかっただろうか…?
若干不安になりつつも、両親に『おやすみなさい』のご挨拶をし、
黒尾さんと二人で、自室へと戻った。





***************





「当たり前っちゃ当たり前だが…」
「全っ然、眠くありませんよね…」

ベッドの横に、平行になるように来客用の布団を敷き、
それじゃあ、おやすみ…と言ったものの、全く眠気は訪れない。

それもそのはず。昼過ぎから6時頃まで、ガッツリ4時間近く昼寝。
晩御飯に団欒、おつかいそして団欒(ナマちち講義)、入浴を終えて…
現在、夜の10時。いつもなら、やっと帰宅して晩御飯の時間帯である。

同時に起き上がり、とりあえず飲み物取って来ます…と、
台所に降りた時には、既に1階は真っ暗。両親は就寝したようだ。
きっと、今日一日どこかで楽しい時間を過ごし(帰宅後も大はしゃぎ)、
疲れ切って寝てしまったのだろう。昔から、我が家は閉店時間が早い。


(クリックで拡大)

部屋の灯りは燈色の常夜灯のまま。
ベッドに背を預け、来客用布団に横から脚を入れ、並んで座る。
この位置に居れば、もしまた両親が急に入って来たとしても、
入口付近の棚とベッドで死角となるため、開口一番に見られることもない。

布団をしっかり掛ける振りをしながら、お互いに少しずつ距離を詰める。
布団の中で、指先が微かに触れたのをきっかけに、
手繰り寄せるように、そっと隠れて手を繋いだ。

言葉は、交わさない。
何を喋っていいのかわからない…というわけではなく、
この静かな沈黙にこそ、今は心地よさ感じるから、それに浸りたかった。
暗く静かな部屋は、まるで世界に二人しか居ないような錯覚…
二人だけの空間に、守られているようにすら感じた。

布団の中で、こっそり手を繋いでいるだけでも、
もっと深い所から、しっかり繋がっているような気がする。
それなのに、しばらくすると「まだ、もっと…」という焦燥に駆られ、
繋ぐ手に力が入り、掌全体を包み、今度は指を一本一本絡め、繋ぎ合う。

    (あ…これ、『恋人繋ぎ』です…)

それに気付いて、少し気恥ずかしくなった。
身を竦めると、思いがけずおでこが黒尾さんの二の腕に触れた。
その動きを幸いにと、黒尾さんは腕ごと全部絡め、
俺はしっかりと黒尾さんの肩に、頭を乗せた。


「なんか…すげぇ、幸せだ。」
飾り気はないが、その分ストレートな感歎。
間違いなく本心から溢れた言葉に、じんわりと心が熱くなる。

「俺も…物凄く、幸せです。」
これ以外に、言い様がないのだ。
特に何もしなくても、何も語り合わなくても、
傍にいるだけで…こんなにも充たされるなんて。

    (俺、本当に、黒尾さんのことが…)

    好きで好きで、堪らない。
    この人のことが…大好きだ。

胸を突き上げる想いに導かれ、顔を上げると、
同時に黒尾さんもこちらを向き、俺の頬に手を添えた。

静かに触れ合う、柔らかい唇。
慎ましいキスでは伝えきれない想いが、
熱い吐息となって漏れ、互いの唇を震わせる。

今日始めたばかりの、たどたどしいキス。
どうすればこの想いを伝えられるのかわからないまま、
ただ一途に、唇を合わせ続ける。

    (これから、どうしたら、いいのか…)

わからない、けれど。
どうしたいのかは、わかる。
そんな不思議な感覚に従い、ズルズルと背を滑らせ…
二人で来客用布団に潜り込んだ。

向かい合わせで密着し、恋人繋ぎをしたまま、頭から布団の中に隠れる。
更に小さくなった『二人だけの世界』の中、無我夢中で口付けを交わす。

    (あぁ…ホントに幸せで…気持ち、イイ。)

お互いにそう感じているのは、言葉にしなくてもはっきりわかる。
高まる鼓動と同じペースで、硬く拍動する部分も、
唇と同じぐらい…ずっと触れ合っているのだから。

「どう、しましょう…」
「どうって、そりゃ…」
内緒話をするように、コソコソと囁く。
答えなんて、聞かなくてもわかっているのに。

黒尾さんは繋いだままの手の甲で、熱くなった部分に触れながら、
公園で言った『二人でヤりたいこと』を、小声で耳打ちしてきた。
「赤葦…『おまえと…きもちイイことしたい』」
「い…『いい、ですけど、ぐたいてきに…?』」
「に?難しいな…『にくたい、かんけい?』」
「また『い』ですか…『イロゴトですね。』」

今日1日で、イロイロな『初めて』を経験した。
この流れのまま、『ねんごろに』『にくよくにまかせて』…
『初体験』も達成してしまう…のだろうか?

この可能性について、昨夜全く妄想しなかったと言えば、嘘になる。
だが、これ以上は駄目だ…と、『自主規制』したのも、また事実。
いくら今が絶好のチャンスと言えども、さすがに早すぎ…準備不足だ。


少し不安の混じった目で黒尾さんを見遣ると、同じ目で頷いてくれた。
「この状況は、間違いなく神様からの『ご褒美』だ。」
だからこそ、調子に乗りすぎず…分をわきまえるべきではなかろうか。
今日の幸運続きは、極めて例外的な事例。
地味で堅実な俺達には、不似合…受け止めきれない大きさなのだ。

「全てのチャンスをモノにする必要は…ないと思う。」

最後まで勢いで『体験』してしまうのは、明らかにリスクが大きすぎる。
カラダへの負担を考えると、特に赤葦が『現役』のうちは、
そう軽々しくできるものではないだろう。
たとえ運よく巧くできたとしても、一度『蜜の味』を知ってしまえば、
オアズケに耐えられるだけの精神力は…持ち合わせていない。

「意外かもしれねぇが、俺…結構、『堪え性』がないんだよな。」
「それはそれは、驚く程『見たまんま』…実は俺も、同じです。」

少なくとも、身を焦がすような渇望に、囚われてはマズい間は…
赤葦の受験が終わるまでは、『知らぬが仏』作戦が最適解だろう。
「二人ともが『R-18』を無事越えるまでは、『未知の領域』として…」
「一番大切な『初めて』は…大事にお取り置きしておきましょうか。」

二人で出したこの結論に、俺は本当に嬉しくなった。
今日の『幸運続き』の勢いと流れ、そしてこの完璧なシチュエーション。
このまま最後までしてしまったとしても、「まぁ、そうなるよな。」と、
誰もが納得してしまうレベルの、舞台設定である。
実際、自分自身も…「それもまた、良し。」と思っていた。

でも黒尾さんは、もっと長期的視野に立ち、俺のことを真剣に考え、
『絶好のチャンス』を使わないという、勇気ある選択をしてくれた。
今日は本当にたくさんの『幸せ』が盛りだくさんだったけれど、
この結論を出してくれたことが、何よりも嬉しかった。

    (こんなに優しい人が、俺の恋人…!)


俺は繋いだままだった手を静かに離し、
熱を放つ黒尾さんの部分を、そっと撫でた。
そして、今度は俺から黒尾さんの耳元に、こっそり囁いた。

「そうと決まれば、…『きもちイイことだけ、しましょう?』」
「うっ…『うれしいこといってくれるぜ。きすしていいか?』」
「『かんげいします。きすだけで…まんぞくなんです?』」
「『すみません。それだけじゃ…ぜんぜんたりません。』」

別に最後までしなくても、その一歩手前…
リスクのない範囲でお互い『気持ちヨくなる』ことだって、十分可能。
ここまでなら『R-18』未満でも、おそらく許されるはずだし、
これすらダメと言われて、甘受できる程…紳士でも聖人でもない。

触れるというよりは、押し付け合うようなキスをしながら、
お互いのものを、お互いの手で撫で、ゆるゆると刺激し合う。
キスも手の動きも、まだぎこちなくて焦れったいばかり。
それでも、自分一人でするのとは、気持ちヨさの種類が全然違う。

    布団の中でこだまする、艶の籠った吐息の音。
    手の動きに合わせて震える、布団の衣擦れ音。

二人だけの世界に響き渡る音が、感じたことのない悦びを呼び起こす。


「赤葦、今日はっ、最高に…楽しかった。」
「はい、こちらこそっ…おかげさま、でっ」

面と向かって言えず、留守電に入れたメッセージを、黒尾は直接伝える。
電話に出られず、心の中で呟いた返事を、赤葦も直接黒尾にお返しする。

「地味で不器用で…口も悪ぃし、気も利かねぇし…っ」
「全部、お互い様…本当にっ、似た者同士、です…っ」

途切れ途切れになりながらも、キスの合間に、伝え合う。
その言葉に煽られるように、熱を上げようと、丁寧に手も動かし続ける。

「じょ、冗談抜きで、『ナニ専用』…みてぇ、だな…」
「留守電に、コレが入ってたら…マズすぎ、でしょ…」

録音されていなくても、この状況とセリフ…今日の楽しい思い出は、
きっと脳内で『永久保存版』になってしまうだろう。いやもう、確実に。
…やっぱり、死ぬほど逢いたくなってしまうじゃないか。

「こんな俺と…付き合って、くれて…ありがとう、な。」
「あっ…!黒尾さん、がっ、恋人で…よかった、ですっ」

逢いたくなったら、逢えばいい。それが可能な距離に居るのだ。
死ぬほど恋しくなったら、悶々と悩む前に、走って来て…
こうして、触れ合えばいいだけのことだ。


もうこれ以上は…と訴えるように、赤葦は艶に瞳を潤ませながら、
首をふるふると横に振った。
黒尾も快楽を必死に耐えつつ、わかってる…と応えるように、
首をこくこくと縦に振った。

熱い吐息を飲み込み、黒尾は心からの言葉を、今度こそはっきり言った。

「あかあし、だいすきだ。」
「おれも、だいすきです。」

赤葦もすぐにそれにしっかりと答え…
二人はそこで、『お喋り』を封じた。



- 完 -



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※加工乳 →生乳にバターやクリーム、脱脂粉乳等の乳製品を加えた、
   『還元牛乳』が成分の約8割を占めるもの。(牛乳は生乳100%)


2016/12/10

 

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