ご注意下さい!

この話は、BLかつ性的表現を含みます。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、閲覧をお控え下さいませ。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)

※いつも通りただの『蛇足』ですので、こちらを読まなくとも、物語の完結にはさほど影響はございません。


    それでもOK!な方  →コチラへどうぞ。




























































    奏愛草子⑮ ~ 確かに恋だった ~







   (ん…、朝?)


妙にスッキリ?した、明るい目覚めだった。

まるで、憑物が落ちたような…眩しい朝の光に目を瞬かせるなんて、久しぶりだ。
…あぁ。カーテンの合わせ目が、少し開いているのか。
部屋の隅に落ちた、黒いシャツ…黒尾さんの寝間着?が、カーテンの裾を浮かせ…

   (何で寝間着が、あんなトコに…?)

ぱちり、ぱちり。
ゆっくり瞼を開け閉めし、目を凝らす。
やっぱり、床の上にクシャっとなってる黒は、黒尾さんの寝間着…元・音駒の練習着だ。
ベージュのカーテンと、白い壁紙…よし、今朝は『おかかおにぎり』にしてもらおう。

   (何で、床とカーテンが、見えて…?)


俺が目覚める時の『朝の景色』は、白い天井と黒い…髪の毛の一部。もっと暗いはずなのに。
それに、唇に触れる肌の感触も、鎖骨よりもずっと柔らかくて、でもしっかり弾力が…

   (上半身が…軽すぎるっ!?)

黒尾さんが『上』に居ないことに、ようやく気付いた俺は、慌てて起き上がろうとした。
だが、いつもとは比べ物にならない『重すぎる下半身』に息を詰め…バッチリ覚醒した。

   視界の白は、天井ではなく壁と…シーツ?
   ほっぺの下から前方に伸びる、長い…腕?
   いつもの仰向け寝じゃなくて、横向き寝?
   黒尾さんは『上』じゃなくて…『後ろ』!

そろり、そろり…
自分の腕を下方向へ動かし始めてすぐに、黒尾さんの腕に当たる。
俺の腰に置かれたその腕は、お腹を温めるかのようにしっかりと前方に回されていて、
腕を辿って後ろへ手を伸ばすと、俺の腰にぴったり密着した、黒尾さんの引き締った…お腹。

   (惚れ惚れする、見事な腹筋…感服ですっ♪)

俺達は 同じ方向に横向き寝…相似形に並んで、黒尾さんに後ろから抱き込まれているのか。
つまり、ほっぺの下から前方に伸び、唇でハミハミしているたくましい腕は、黒尾さんの…

   (うぅっ…『腕枕』だっ!!!)


俺自身が『黒尾さんの抱き枕』として目覚めるのが、毎朝のお決まりだったけれど、
俺が『黒尾さんに腕枕』してもらって目覚めるのは、これがはじめて…
まるで、オトナなイミで『共寝』した翌朝みたいじゃないかっ!!

   まるで、じゃなくて…
   みたい、でもなくて…

   (ホントに、はじめて…共寝した、翌朝っ!)

一気に蘇る、昨夜の記憶。
正直に言えば、細部なんてほとんど覚えてないけれど、
寝間着越しじゃなくて、黒尾さんの火照った素肌が、俺の『上』に直接乗っていた感触は、
絶対に忘れられない…しっとり汗ばんだ焼けるような熱さが、俺の素肌に刻み込まれている。

そう、まさに今、背中一面に感じる熱…って、俺達、今もまだ…素肌の、ままっ!!?
よく見ると、黒一色に見えていた寝間着には、俺の元・練習着の紺色も交じっているし、
視界の隅には、所有者を表す黒と赤の下着も、絡み合っているような…

   (俺達、本当に…っ)


おそる、おそる…
今度は腕を前方向に伸ばし、あったかい『俺の枕』にそっと触れ、掌を重ねてみる。
指の間に指を滑らせて挿し込み、キュっと握ると…胸の中がギュ〜!っと音を立てた。

   自分のキモチを自覚した、その日の夜に。
   この手に、カラダ中の隅々を触れられて。
   手を繋ぎ合いながら、深く繋がり合って…
   全身を包まれて、共に朝を迎えるなんて。

   (俺、とんでもなく…幸せ者、だ…っ!!!)

胸からじわじわ込み上げてくるものが、喉と目の奥を熱くさせる。
猛烈な羞恥心よりも、遥かに大きな歓喜に満たされ、ココロが震え出す。
この震えこそが、確かに俺が黒尾さんに恋をしているという、紛れもない証拠だ。

好きで好きで堪らない人と愛し合い、同じ布団で枕を共にし、一緒に朝を迎える喜びは、
ただ単に『添寝』するだけのソフレとは、全く別物…目覚めの景色が、まるっきり別世界だ。

   (添寝と共寝の違い…理解できましたっ!)


「…おはよ、赤葦。」
「っ!?おおおっ…」

脳内で『ソフレに関する覚書』の下書きを、照れ隠しに始めていると、
一方的に絡めていた手を、キュキュっと握り返され…耳の後ろに、温かい吐息。

驚きで飛び上がるのを誤魔化しがてら、朝のご挨拶を返すべく、背後を振り向こうとしたら、
それを全部抑え込むように、黒尾さんのカラダ全体で、強く強く抱き締められてしまった。

「悪ぃ。もうちょっと、このまま…」

今、赤葦の顔を見たら、全身から火ぃ吹いて、どっかに飛んでっちまいそうだから…
照れ臭さと幸せのデカさに耐え切れずに、せっかくの『共寝の朝』を、台無しにしかねない。
だから、お互いの顔を見ずに、こうやってピッタリ引っ付いたままで…

「のんびりマッタリ…お喋りしねぇか?」


チュっと、小さな音を立てて、耳朶にキス。
そこから頸筋を舌で這い、鎖骨を優しくカミカミ…今度は大きな音と共に吸い上げられた。

いつも俺が黒尾さんを起こす時と、ほぼ同じルートと仕種だけど、全然違う…はず。
別のナニかまで起こしてしまいそうな感覚に、密着した腰がビクビクと跳ね回り、
その『違い』に気付いた黒尾さんも、「ぅわわっ、悪ぃっ!」と、もう一度ワタワタ謝った。

「なんだか、その…全てが、くすぐったい…」
「ソワソワっつーか…何だろな、この感じ…」

とにかく、もう…
ほっぺの緩みを、止められない。
顔なんか見えなくても、お互いにそれがわかり過ぎるほどわかるから…笑ってしまいそうだ。
とりあえず、少しでも普段のペースを取り戻すために、いつものソフレっぽいことをば…


「んじゃ、ヤるべきことを…しとこうぜ!」
「はい。いつも通りの…会議しましょう!」





*******************




「俺達が話し合うべきことは、もうこれに尽きると言いますか…これしかないですよね。」


声の上滑りを抑えながら、努めて冷静に赤葦は『デキる参謀』モードに切り替えた。
今までの『会議』では、俺が赤葦を下に抱き込み、頬と頬を触れ合わせて話していたから、
お互いの発言や言葉の節々に含まれた感情を、音と振動の両方から自然と感じ取っていた。

だが、今みたいに後ろから俺が赤葦を包み込むスタイルだと、どうしても遠くなってしまい、
何だか物足りないというか…ちゃんと伝え合えているのか、少し不安を覚えていた。

   (俺のキモチ…お前に全部、伝えたい。)

だから、赤葦のお腹を温めていた方の手で、時折トントン…言葉に合わせて相槌を打つと、
赤葦も同じように思っていたのか、繋いだ手をモキュモキュ握り、リズムを合わせてくれた。

たったこれだけのやりとりが、しっかり前向きに話し合おうという姿勢のように思えて…
あ、この格好…顔は見えなくても、ちゃんと二人が『同じ方向』を見てるんだよな。

   (こんな些細なことが、凄ぇ…嬉しい。)

俺は弛みかけた自分に気合を入れるべく、赤葦を一度ギュ~~~っと強く抱き締めてから、
腹の底に力を入れ、『仕事モード』の朗々とした声で説明を始めた。


「端的に言っちまえば、例のソフレ&シェア契約…そこまで気にする必要はねぇんだよ。」

俺達が同居に際して結んだ『ルームシェア等に関する契約書』の大枠は、
   ・家賃の黒赤比率は3:1
   ・食費等その他生活費は黒赤折半
という、赤葦にとって破格の金額設定の代わりに、俺とソフレをする特殊条件が付いていた。

「ソフレとは『添寝フレンド』のこと…添寝には恋愛感情や性交渉は御法度でしたよね?」
「あぁ。だから、恋愛感情を抱き、性交渉も行ってしまった俺達は、もはやソフレ不可…」

つまり、『ソフレする代わりに破格条件でルームシェア』という約束を守れなくなるため、
当然ながら契約解除…一緒に生活することはできなくなると考えるのが、一般的だろう。
そのため、赤葦は『ソフレではない別契約』を結ぶ策を、独り悶々と悩み続けていた…が。


「法律家の俺が言うのも何だが、あんなクソ契約書に縛られてたまるかっての。」

そもそもあれは、俺が担当していた「ソフレが拗れてお互いに賠償請求」って事件に絡み、
当事者達が口約束していた内容を、試しにヤって来いという…パワハラ的実証実験だった。
まぁ、業務上仕方なく(上司命令)って建前で、家賃補助を経費に上げるのが本音なんだがな。

だから、法律家なら絶対に入れるはずの必須条項…契約を解除する時のルールや、
約束違反があった時のペナルティ、モメた時の賠償や対処法が、スッポリ抜けているんだ。
契約書だなんて大層な名前を付けてても、その実態は『おやくそくメモ』レベルのもの…
仮にお前とモメて裁判になっても、ほとんど使い物にはならねぇような紙キレなんだよ。

「その最たるものが、『ソフレ条項』だ。」

   乙(赤葦京治)は、甲(黒尾鉄朗)の求めに応じ
   ソフレ(共寝)しなければならない。

これをそのまま読むと、赤葦は『俺が求めた時には』ソフレをしなきゃいけねぇが、
逆に言えば、俺が「ソフレしようぜ!」と求めなかったら、別にヤらなくてもいいんだよ。
しかも、俺の求めに対し「今日はヤです。」って拒否っても、ペナルティも決まってねぇし、
拒否を理由に契約解除できるか?っていうと、それに関する規定もない…自由なんだよ。


きっと真面目なお前は、どんなにしょーもない内容だったとしても、
一度約束したモノを破っちまうことに、罪悪感を覚えているんだろうが、それも無用だ。
赤葦はこの契約書の最も重要な部分…俺が一番欲しかったモノを、ちゃんと守ってくれた。

   『どんな手を使っても、俺を起こすこと』

「お前は俺に、最高の目覚めだけじゃなく、最良の睡眠もくれた…心からありがとうな。」
「っ!!?て、てつろう君も、起こしちゃいましたけど…それを聞いて、安心しました。」


急に俺から褒められた動揺を、笑いに変えて返してきた赤葦に、頬が緩む。
赤葦となら、どんなクソ真面目なネタも、こうやって楽しみに変えることができる。

おカタい『仕事モード』から、ふわっと二人の間の空気を入れ替えてくれた機転に感謝し、
俺は赤葦の髪をぐしゃぐしゃと掻き回す代わりに、ほっぺでほっぺを揉みくちゃにしてから、
さっきまでよりも軽い口調で、残り少ない議題について話し始めた。


「そもそも論として、この条項の中で根本的におかしい点…赤葦にはもうわかってるだろ?」
「はい。改めて内容を聞き愕然…『ソフレ(共寝)』という表現は、明らかに矛盾してます。」

   ソフレとは、『添寝』フレンドのこと。
   性交渉を伴う『共寝』とは、全く別物。

つまり『ソフレ(共寝)』という表現は、両者の根本的な違いを全然理解していない点で、
『ソフレ』契約書としての体を成していない…用語の定義も、契約書のどこにも記載がない。

「せめて『ソフレ(もしくは共寝)』なら、文言的にギリギリ『○』かもしれませんけど…」
「それだと、今度はモロに『愛人契約』になっちまう…完全『×』の、無効な契約だな。」

「おやおや。結論としては、黒尾さんは最初から…俺のパパだったってオチですね。」
「そうなんだよ。だから今更『パパ契約』を結ぶ必要はねぇ…って話じゃねぇだろ。」

「クソ契約書のせいで、俺の完璧な『黒尾鉄朗陥落作戦』が…失敗に終わりました!」
「待て。その作戦も最初から不成立…って、お前はただ寝落ちしてただけだろうが!」

「ほほぅ。黒尾さんは今、俺の寝込みを襲ったと…据え膳喰ったと、暴露なさいましたね?」
「据え膳オアズケ条項はない…が、契約とは関係なく人として『×』だな。すまなかった。」

「えっ、いや、その…別に、謝る必要は…っ」
「ほほぅ…そうかそうか。じゃ、遠慮なく…」


では、いただきます♪と、大きな声で堂々と宣言し、ずるりと盛大に舌なめずり。
ビクっ!!!と大きく背を震わせ、身を縮こまらせて構える赤葦の鎖骨に…触れないまま、
耳朶に唇の端をわずかに当てて、吐息だけでそっと囁いた。

   会議はこれにて終了…おつかれさん。
   この会議が、有意義だったかどうか…
   『○』か『×』かを、判定しようぜ。

   もし『×』でも、『バツ』じゃない。
   数学的な『×』の方…『かける』だ。


「『黒×赤』について…語り合おうか。」



*******************



『寝る直前』に紡ぎ合い、ウットリしたまま寝落ちできる…美しい数学ネタ。
きっと愛を囁かれるよりも、俺はそっちの方がより快楽を感じるだろうと、推測していた。

でも、字面的には『×』という数学ネタに見せかけていても、実質的には愛のある話…
かけたらマイナスになる虚ろなアイではなく、かけ合えば答えが『0』…ラブになるネタは、
当初の予想に反し、黒尾さんの言葉のひとつひとつが、じわじわと俺の熱を上げていった。


「×…英語圏ではキスを表す表記らしいな。」

俺のお腹に指先で『×』をひとつ描き、唇にもひとつ『×』を落とす。
手紙の最後によく書いてある『×××』は、キス3つ…御挨拶の定型だとか。

「×(エクス)のクスが、キスの音に似て…っ」

語り合おうと言っていたはずなのに、俺の言葉を遮る、××××…ちょっとかけすぎでは?
ちなみに、『xoxo』は『kiss and hug』らしいですよ…という台詞の途中でも、xoxo。
まるで『×』のカタチを作って会話を封じるかのように、俺の口の中で舌を絡ませてくる。

   (黒×赤…『×』はいっぱい、あってイイ…)


深い×××の嵐で、徐々に×××になってきた俺の×××を…『×』は伏字の意味もあったっけ。
お腹に『×』を描き続けていた指を黒尾さんは下へ滑らせ、俺の×××の裏スジを擦り上げた。

「スジ違いだが…『×』は『筋違紋』だな。」

筋違紋は二本松藩(福島)・丹羽氏の家紋。建物を補強するため柱と柱の間に斜めに入れる、
筋違(筋交・すじかい)という部材に似ており、神社の神紋としてもよく見かけるものだ。

「別名・違い棒紋。『×』を交わして…んっ」

背後に手を伸ばし、俺の裏側に当たる黒尾さんの熱い×××を、俺も同時に刺激する。
なるほど。『黒尾×赤葦』という表記は、二本の違う棒を交わし合うカンケーということか。
確かに、硬くなった×で、堅く繋がった結果、二人の仲も固くなる…まさに『筋交』だ。

今の体勢…背後からピッタリ相似形で密着のままだと、×××するにも頸筋を違えそうだし、
そろそろお互いに向き合って、そのたくましい胸に顔を埋めて(恥かしさを封じつつ)、
黒赤の二本松…待ちぼうけの『違い棒』を、筋交いしませんか…?と、御提案する代わりに、
棒の下の鈴に指を伸ばし、○と○の間に爪で×を描きながら、別の『×』について語った。


「古墳時代の埴輪や土器…『剣』や『鐸(鈴)』にも、『×』印が記されているそうですね。」
「出雲の荒神谷遺跡が有名。弥生時代の『〆』印と同じ…『×』は『封印』の意味だよな。」

平安時代に入ると、『×』印は『阿也都古(アヤツコ)』と呼ばれるようになり、
赤ちゃんが初めて外出する際等、額に赤または黒(竃の墨)で『×』を描き、魔除けとしていた。

「竃神…『荒神』の加護にある子、つまり赤の王・素戔嗚尊の仲間っていう印だな。」
「アヤツコは『綾つ子』…紋様のある子。紋様とは即ち縄目の紋、蛇の鱗ですよね。」

古くからの風習に残る『黒と赤』は、蛇に繋がっている…『×』印と共に。
『黒×赤』は歴史的に深い意味を持つ表記で、その内に強大な何かを眠らせているようだ。

「俺ら…日本史公認蛇カップルだったのか。」
「繋がる運命だったとしか…思えませんね。」


   あぁ、なんて…ロマンチックなんだろうか。
   『黒×赤』は、数学的な美しさを持つ理論…
   甘美に痺れる快感を、黒赤間に惹き起こす。

「数学だろうが、何だろうが、共寝の最中に耳元で囁かれる言葉の全てに…蕩けそうです。」
「枕を語り合うピロートークは、何をどう語りかけても…ラブが増えるだけってことだな。」

「こじつけだとは、わかっていますけど…」
「愛を論じ合うのは、最高にキモチ良い…」


激しく滴る音を立てて舌を絡め、互いの蛇に指を這わせて熱を高め合う。
もっとしっかり、黒尾さんの蛇…てつろう君を可愛がってあげたいのは山々だけど、
背後からこれだけピッタリと引っ付かれていると、なかなか上手く扱けない。

かといって、スペースを作るべく、(なけなしの)力を入れて前方へ腰を動かそうとすると、
今度は俺の蛇…けいじ君を黒尾さんの手の中に、強く擦り付けてしまうのだ。

「凄ぇ、ヤらしい…動き、だな…っ」
「だっ、て…仕方ない、でしょ…っ」

「確かに、考えた故の、行動なんて…」
「もはや、できっこない…あ、もうっ」

   本日の会議、これにて…強制終了。
   ここからは、『×××』の…時間。



*****



最初は仕方なく…と、無意識を言い訳できた。
けれども、この格好で、この場所で、コレを握り締めて動かし続けていたら、
ごくごく自然と、ココに触れてしまう…自ら意識して、黒尾さんの先端を擦り付けていた。

「ついさっきまで、ココに、コレが入ってたから…このまますぐ、イけちまいそう、だな?」
「ご冗談をっ。ついさっきまで、俺が『生娘』だったこと…コレが覚えています、でしょ?」

「それ、は…カッコつけ不要な情報だって、言ったよな?」
「むしろ、黒尾さんの方が…カッコつかなかったですし?」

「『はじめて』の時に、カッコなんて、気にしてらんねぇ…だろっ」
「本能と欲望に、忠実…清々しくて、逆にカッコいいかも、ですっ」

あぁ、もう…×××を、止められない。
ありとあらゆる『恥かしい』を、カッコつけて喋り倒し、何とか誤魔化そうとしている。
そんなカッコ悪いとこさえも『似た者同士』…相性の良さに無上の悦びを感じてしまい、
お互いの一番カッコ悪くて、一番カッコ良いトコを、思いっきり甘やかして煽てていく。

   (コレだけじゃ、止められねぇよ…っ)
   (ココの感覚、クセに、なりそう…っ)


「お前のココも、俺のコレの感触を、しっかり覚えた…味をしめた、みてぇだな。」
「いえいえ、まだっ、全然っ。もっと、じっくり、味わい尽くしたい…ですからっ」

さっきようやく『はじめて』を終えたくせに、ナニをカッコつけてんだか。
クチでは威勢の良い台詞を言い放っているが、それが本意ではないことなど、バレバレ…
×××で触れ合う唇が、期待と躊躇が交じり合って震えているのに、お互い気付いていた。

   (大丈夫そうか?この辺で、やめとく…か?)
   (ここでやめても、大丈夫じゃ…ないですっ)


赤葦はグッと唇を噛み締め、黒尾の熱の先端を繋がる入口に押し当てた。
だが黒尾は、赤葦を煽り続けていた手を一旦止め、腰を少しだけ赤葦から離すと、
まずは赤葦の緊張を吸い上げるべく、力の籠もる唇を×××で解すことに集中した。

「焦らず…ゆっくり、な?」

下唇の端に舌で『×』を描き、その隣に次の×、×、×…ぐるりと一周、×で埋め尽くす。
赤葦から徐々に強張りが抜け、視点の定まらない瞳に糖度が増してくるのを確認してから、
黒尾は赤葦の熱の先端から零れ落ちていた甘い甘い蜜を、指先にたっぷりと絡め取ると、
舌で唇をなぞり、ナカに割り込んでいくのと同じペースで、繋がる部分も解しはじめた。

「んっ…んんっ、んーっっ」

くちゅり、くちゅり。
潤いで滑る音を、二人で奏で合う。
×××で封じられた嬌声が、甘い吐息となって和し、互いを更に魅き寄せていく。
黒尾の指が、ナカで『上』から『横』へと、わずかに解す位相を変えた瞬間、
赤葦は緊張とは全く違う強烈な圧迫を指に、躊躇を吹き飛ばす高い艶声を舌に伝えてきた。

「「---っっっ!!!」」

声にならない声を、肌で直接感じる。
その衝撃的な感覚に、ココロもカラダも…自分を構成する全てが悦びに満たされていく。

   (あぁ、わかった。これが…)

自分のナカから溢れ出す、柔らかくあったかいもので包み込むように、
黒尾は全身で赤葦を強く抱き締め、唇で耳朶を擽り、吐息だけでそっと囁いた。


   本当に大切で、愛しくてたまらない…
   お前以外の相手なんて、存在しない。

「俺にとって、最高の…パートナーだ。」




- クロ赤編・完 -




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※魔除けの赤について →『夏越鳥和(後編)


ドリーマーへ30題 『蛇足.確かに恋だった』

お題は『確かに恋だった』様よりお借り致しました。



2020/07/11

 

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