鮮烈挟入 (延長戦)







HQグッズ入手の度に訪れる、やたらめったら『赤葦甘やかし』のターン。
普段は冷静で隙のない赤葦が曝すスキだらけの姿に、月島と山口は一発KO…
赤葦の伴侶が傍に居るにも関わらず、公然と赤葦に引っ付きまくっている。

更には、普段から赤葦にベタ甘い自分は論外としても、ココにはいない研磨が、
『赤葦甘やかし』の主犯であることに、黒尾は複雑な気持ちを抱いていた。

「全く…毎度ながら、研磨は『爆弾』をぶち込んでくるよな。」

このターンで一番得をするのは、巡り巡って自分だということは解っている。
わかってはいるが、他人に興味がなかった研磨が、事ある毎に弟子達を溺愛し、
お互い以外眼中になかった月島と山口の二人も、ここぞとばかりに赤葦に密着…
どれもこれも、喜ばしい事ではあるが、それでもやっぱり…面白くなかった。

   (俺も…負けられねぇっつーの。)


誰に対して闘いを挑んでいるのか、自分でもよくわからない。
おそらく、最初から闘いにすらなっていないんだろうけども、
妙に焦るというか…何だかそわそわ、落ち着かない気分になってくるのだ。

   (試合をキめるのは…俺だ。)

こんな風に思ってしまうのも、試合観戦のノボセと睡眠不足の成せる業だろう。
腕の中に赤葦を抱き締めているにも関わらず、なおも『まだ足りない』と感じ、
今よりももっともっと、甘やかしてやりたくなってしまうなんて…笑っちまう。


   大切なモノには、とことん尽くす。
   全身全霊をかけ、愛を注ぎ続ける。

そんな俺が登場するミニシアターは…きっとこんな話になるはずだ。
イヤらしい戦術なのは承知の上。それでも俺は、この闘いだけは…勝ちに行く。

目を閉じて、大きく深呼吸。
赤葦をしっかりと抱き直してから、俺は静かに『初戀物語』の続きを紡いだ。



*****



「黒尾。お前は早々に…恋人を作れ。」
「…はぁ?」


今年度最初の合同合宿についてのミーティング。
全ての業務連絡が終わった後で、猫又監督が重々しい口調で俺を名指しした。

その珍しく真剣な雰囲気に、猫背を正して身構えていると、
全く予想だにしなかった指令…思わず疑問形の相槌を返してしまった。

業務連絡は終わったとは言え、あまりにも業務とは無関係な話だし、
部員全員が居る前でするようなモノでもない…普通にプライバシーの侵害だろ。
それでも、苦笑いや怒りが出てくることはなく、何よりも戸惑いが優ったのは、
部員全員が、監督と同じ神妙な表情を見せていたからだ。

名前を呼ばれた時よりも、さらに背筋を緊張…話の続きを黙して待つ。
思春期真っ只中の男子高校生に「恋人を作れ」なんて、余程の理由があるはず…
考えうる『理由』を脳内で列挙し始めた瞬間、監督にポンと肩を叩かれた。


「面倒見が良いのは、お前の最大の長所だが…危険極まりない短所でもある。」

去年一年間、1年生ながら、まとめ役として周りの世話をよく焼いてくれた。
それには本当に感謝しているし…助かっていることも事実だ。

しかしだな、今年に入ってその『世話焼き』っぷりが度を越してきた…
幼馴染の研磨が入ってから、子猫の面倒を見る母猫か!?というレベルだぞ。
研磨だけならまだしも、同じぐらい周りにも過保護に…平等なのは結構だがな。

「見てみろ。今や上も横も下も、皆がお前に甘ったれて…子猫還りしてるぞ。」
「そっ、そう…です…か?」

またしても疑問形で答えたが、これにはちょっと心当たりがあった。
最近、やけに俺の傍に引っ付いて、そのまま昼寝したりゴロゴロする奴が多い。
今も背中や両腕に、誰かしらの体温と体重を感じるような…

「ほらっ、しゃんとしろ!」と、監督は手をパチパチ叩いて『猫騙し』をし、
少し軽く涼しくなったところで、話を再開させた。


「このままだと研磨だけでなく、全員がだれきった夏場の家猫と化してしまう。
   指導者含む全員にとって…黒尾にとってもこれは良い状況とは言えんのだ。」

年不相応にキャパがデカいとはいえ、お前もまだまだ高2…10代の若猫だ。
そう遠くないうちに、周りの荷物を背負いすぎて潰れるのが、目に見えている…
一気にドカン!と、送料やら何やら、ネをアゲることになってしまうだろう。

自分の器と力を過信するな。行き過ぎたお節介は、誰にとってもマイナスだ。
それに、無関心よりも過保護の方が遥かに悪影響…保護『する側』は特にな。

「親離れができないよりも、子離れできない方が…より深刻な事態を招く。」


監督の言葉に、俺は口を閉ざすしかなかった。
元々がお節介気質で、すぐに世話を焼きたがってしまうという自覚はあった。
「クロ、ウザい。」と言われても構い倒す…長年それを続けてきた。

この春、俺にとって絶対的な庇護対象の研磨が、音駒に入学&入部…
2年に上がって余裕が出てきた分、以前にも増して研磨を甘やかしかけていた。

だが、それはただの身内贔屓だから、後輩は平等に可愛がるべきだと思ったし、
同級生や先輩達にも、同じように誠意を以って接するべきだと思い、
誰に対しても公平に構い、困っているようなら惜しみなく手を貸していた。
でも、まさかそれが、誰にとっても裏目に出ていたなんて…

   (俺が一番…甘ちゃん、だな。)


本心から良かれと思ってやっていた。
だが、誰にとって『良かれ』なのか、先を見据えてまで考えてはいなかった。
これではただの自己満足…自分がカッコつけたかっただけじゃないか。

自分の浅慮と傲慢さに、居たたまれなくなってしまった俺は、
謝罪の言葉すら見つけられず、床を凝視したまま固まっていた。
そんな俺の肩を、監督はもう一度ポンと撫で…今度はニカっと笑顔を見せた。

「というわけで、だ。お前の短所を長所として最大限利用…じゃなかった、
   適度に世話を焼いてもらいつつ、お前もラクになる方法を考えた。」


この世知辛いご時世に、何の見返りも求めず肉球を差し出す滅私奉公猫など、
黒毛が混じったオスの三毛猫ぐらいの、稀少な存在だからな。
お前の器のデカさと優しさは、絶対に失くしちゃいけねぇ…大切なモンだ。
だから、長所を長所として生かしつつ、ヤりすぎを抑えてやるのが一番なんだ。

方法は実に簡単。まずは他に猫の手を貸せねぇぐらい、ウチで使い倒した上で、
それでも残った余剰分を、世話を焼き過ぎてやった方がいい奴へと向かわせる。

「束縛しない程度なら構ってやってもいい子猫ちゃん…つまり『恋人』にな。」

おあつらえ向きな奴がいると、先日、梟谷の闇路監督から話があって…
ぜひお前の手を貸してやって欲しいと、直々に頼まれたんだよ。
まぁ、恋人云々は半分冗談だが、梟谷にとっても音駒にとっても、
お前とそいつの安定は、利が大きい…合同合宿もスムースに進むからな。


成程…確かに、一理ある。
若干、恐ろしいことをサラっと言われた気もするが…って、ちょっと待て!
梟谷の、世話を焼き過ぎた方がいい奴って、まさか…っ!!?

「お、俺に、アイツの…木兎の面倒を押し付ける気なんじゃ…っ」

木兎のことは嫌いじゃねぇし、アイツの澄み切った明るさは大好きだ。
真っ直ぐで、努力家で…嫉妬する気にもならない程、俺には眩しい存在だ。
あまりに自由すぎな面はあるが、コツさえ掴めば操縦するのは案外カンタン…
むしろ裏表が全くない分、付き合うには気楽な相手である。

だが、あくまでもこれは、月1ぐらいでたまに会う…『友人』としての話だ。
よく聞くじゃないか。孫は可愛いが、たまに来るぐらいが丁度いい、と。
毎日延々木兎と遊び、構ってやれるかどうか…さすがの俺も、全く自信がない。


もし仮に、木兎の面倒を見る係として、アイツの『恋人』になれと言うのなら、
冷徹だと謗られようとも、今すぐに『お節介』という称号を地底深くに封印し、
公正公平に、誰の面倒も全く見ないようにすると、ここに誓うぞ。

底抜けに明るい木兎の傍にいると、自分自身の底に溜まる闇を意識してしまう…
嫉妬とまではいかずとも、強烈にコンプレックスを刺激されてしまい、
一方的に負い目を感じ…とてもじゃないが、恋人として甘い時間を楽しめない。

   (木兎は、俺には…眩しすぎる。)

ま、正直に言えば…疲れる。
四六時中アイツの傍にいて構ってやれる程、俺は化物じゃないし、
いくら体育会系の組織でも、俺好みの恋人を選ぶ権利ぐらいあるはずだ。


「あー、すんません。木兎はそういうイミでは俺の好みに合わないっつーか…
   アイツ相手じゃあ、腹以外のモノはタちそうにないです、いやマジで。」
「ほほぅ。黒尾の好み…どんな奴だ?」
「黒髪&キレ長の瞳…な~んか淫猥な陰のある、人妻系和風美人。
   従順貞淑そうに見えて、その内側に灼熱の情を隠し持つような…キワモノ。」
「馬鹿っ!研磨…バラすなよっ!!」

おっ、俺だって、わかってるよっ!
そんな古風で慎ましい無表情無感動なカタブツが、激レアな絶滅危惧種だって…

ついでに言えば、俺と一緒の時だけガッチガチな壁をほんの少し緩めてくれて、
その狭っっっい隙間から、じんわ~りと好意やらが滲み出してくるような…
できればその隙を、俺がやんわ~りと広げてイければ最高だなぁとは思うけど、
それがとんでもない高望み(AVという名のファンタジー)だと、自覚している。

でも、俺だってまだ高校生…淡い夢ぐらい見させてくれよ。
理想の相手との、鮮烈かつ運命的な出逢いを妄想するぐらいは…自由だろ。
(あと、俺のツボは…スルーして下さいお願いします。)


「ま、そういうわけなんで…俺のツボにドンピシャじゃないとムリです。
   そんなキワモノが現れる日まで、過剰な『甘やかし』は…取っときます。」

むしろ、そんな人がいるなら、監督のコネでも何でも使って、紹介して下さい。
ヒゲの先ほども期待せず待ってるんで…じゃ、もう解散でいいですよね?

そう言って早々に場を閉め、立ち上がろうとしたら、
猫又監督はごくごく真剣な表情で俺をじっと見つめ…ボソリと呟いた。


「入部直後から、木兎の『飼育委員』を延々こなしている1年が居るらしい。」
「はぁっ!?だっ、大丈夫なんですか、そいつ…壊れちまいますよっ!?」

確か昨年新設されたらしいそのトンデモ役職は、日替わりの輪番制だったはず…
(俺はエースだから『お当番』はメンジョだぜ〜と、木兎は喜んでいたが。)
それを、たった一人の1年生に専属させるなんて、ほとんど虐待じゃねぇか!
どんなキワモノだかドMだかは知らないが、そいつの今後が…滅茶苦茶心配だ。

未だ見ぬ『飼育委員』…他所様の1年生のことを心底案じている俺に、
猫又監督は重々しい声で、梟谷からの依頼を俺に告げた。


「今はまだ大丈夫…それもどうかと思うが、そう遠くない内に限界が来る。」

音駒としても、梟谷の内部で木兎を制御してくれる奴がいる方が助かるから、
その1年生の子猫ちゃんには、何とか頑張って貰いたい…何としてでも、だ。

そこで、木兎操縦に長けたお前から、その卓越した技術を…
自由気儘にさせつつも、巧~くあしらう『猛獣(猫)使い』としてのノウハウや、
その他の様々なコトを…特に適度なヌき方や、スッキリ発散する方法なんかを、
合宿等の機会を使って、子猫ちゃんに教えてやって欲しい、とのことだ。

「そういうこと、ですか。それなら、俺で役に立てるなら、いくらでも…」
「油断するなよ、黒尾。とんでもない安請け合いかもしれねぇ依頼だぞ?」

入部初日から、あの木兎に負けてねぇというレアモノ…逸材だ。
闇路監督すら手に負えないのは、はたして本当に猛獣・木兎なのか…?
ともかく、梟谷の『脳』かつ『心臓』になるのは、間違いなく子猫ちゃんだ。
そいつをお前に懐かせ、友好関係を築くことは、ウチにとって利がデカい。


「ホントに恋人になって、ハニートラップを仕掛けろ…って意味じゃない。」

気の毒なほど苦労が多く暴発の危険性が高い、梟谷のキワモノ1年生を、
有り余るお前のお節介で、恋人のように甘やかし…可愛い『子猫』にするんだ。

これは梟谷と音駒2校の、2年分の命運がかかった、巨大プロジェクトだ。
音駒部員も全員でバックアップし、お前を後ろからグイグイ圧してやるから…

「子猫ちゃんを…助けてやってくれ。」



…という『極秘指令』を受けた俺は、キワモノ1年生に興味はあったものの、
ここまでオオゴトになるなんて、全く思っていなかった。
ウチの1年生と同じように、先輩として後輩の面倒をみてやればいいんだろ…
そのくらいの軽い気持ちで、頭の片隅に挟んでおく程度だった。

だがそいつと出逢った瞬間、ピピーーーッ!!と天高くホイッスルが鳴り響き…
俺の『甘やかし』スイッチが、フルスロットルで発動してしまった。

   こいつのどこが…キワモノだよっ!?
   可愛いばっかりの…『子猫』だろっ!
   俺の理想…そのまんまじゃねぇかっ!


それからというもの、俺のアタマん中は子猫ちゃん…赤葦のことで占拠された。
虚勢を張って、精一杯背中を逆毛立てているのも、ただ可愛いの一言に尽きる。

赤葦のためなら、リズム感皆無でもフォークダンスを教えてやるし、
適度なヌき…サボりのコツや、イライラ解消法だって、手取り足取り伝授した。
これでもかっ!というぐらい構い続けた結果…ガチガチのガードが少し緩み、
今では二人きりの時(休憩中やサボり中)に、親猫に甘えてくるようになった。

俺がこれだけ構い倒しても、まだ足りないぐらい、赤葦のガードは強固だ。
自分では緩めることができない不器用さが、切なくもあり…やっぱ可愛いな。
赤葦が安心しきって心身を緩め、お腹を出してゴロゴロ寝られるように…

   (俺に、甘えてくれればいいのに。)

いつかそんな日が来ればなぁ~と、俺は今日も『赤葦甘やかし』に精を出し…
就寝前の余暇として、折畳式のマグネット碁盤セットを挟んで向かい合い、
一緒に囲碁のルールを覚えながら、癒しの時間を過ごしているところだ。

皆からは「ジジ臭ぇっ!」と、ドン引きされているが…邪魔が入らなくて良い。
静かに頭を使っている方が、リラックスできるタイプもいる…俺達がそうだ。


「うーん…戦略的で凄ぇ面白ぇな。」
「はい…あ、黒尾さんの番ですよ。」

「くそ…今のところ、赤優勢だな。」
「そうですか?黒も…手強いです。」

こっちの方が、見た目が鮮烈で面白い…と、赤葦は白の碁石を赤に塗り替えた。
(『たのしい囲碁』という教科書の中の白石まで、徹底して赤に塗り潰した。)
黒と赤が、知略を尽くして陣取り合戦…この知的遊戯に、二人でハマっている。

   盤面をじっくりと見合いながら、
   お互いの『腹の内』を読み合う。
   極めて小さな変化も見逃さない…


「嫌なことでも…あったのか?」
「っ!?別に…特には、何も。」

無表情でガチガチにしか見えなくても、よく観察していれば僅かな隙間があり、
そこに挟まった小さな何かが、おぼろげながら透けて見えてくることがある…
まるで、全面にイラストが描かれたクリアファイルに挟んだ、文書のように。

「そうか。なら…言わなくていい。」
「黒尾さんには…見えているのに?」


たとえどんなに硬くて、濃いモノの隙間に挟み入れていたとしても、
黒尾さんには鮮明に見えてしまう…何もかもバレてしまうんですよね。
きっと、俺の腹の内が真っ黒で、口から出る言葉が真っ赤だったとしても、
それらを全て透かして、俺のナカが…全部クリアに見られている気がします。

「俺のこと…怖いか?」
「いえ、逆…ですね。」

この囲碁の盤面のように、クリアな部分が少しずつ黒に侵食されていく様子が…
周りを『黒』で包み、『赤』を挟んで落としていくのが、むしろ心地良いです。

「何ならいっそ、このまま…っ!!?」


碁盤を見つめたまま、淡々と喋り続ける赤葦の手を、こちら側へ引き寄せる。
驚く赤葦を俺の真横に座らせると、頭をグイっと俺の方へ近付けて肩に乗せ…
頬と掌で挟むようにして、静かに赤葦の髪をゆっくりと撫でた。

「黒と赤の石が…交じっちまったな。」

マグネットのおかげでバラバラには落ちなかったが、動いた勢いで盤面は崩れ、
黒と赤がぐちゃぐちゃに交ざり合い、互いに引っ付いて固まってしまった。

その塊を指先でつつきながら、赤葦は徐々に力を抜き…
気持ち良さそうにふんわり瞳を閉じて、黒尾に全身を預けた。


「赤葦は、そのままで…いいんだ。」

   独りで無理しなくてもいい。
   嫌な事は嫌だと言っていい。
   誰かに甘えたっていいんだ。

言葉にはしなくても、触れる頬と手の温もりが、そう教えてくれる。
隙間なく重なる『黒と赤』と共に、空いていた黒尾の手を握り締め…
赤葦はごくごく小さな声と想いを、隙間からそっと零した。


「俺は、このままじゃ…いやです。」



*****



「クリアファイルに描かれた俺が、頬と肩で挟んでいるボール…
   それを『別の何か』に置き換えただけの、他愛ない『ミニシアター』だよ。」

ツッキーのVTRは、2枚のファイル全体を使った、マクロ的視点のストーリー…
俺の方は、ファイル内のごく一部にフォーカスした、ミクロ的視点の話だ。

同じクリアファイルでも、視点を変えるだけでこんなにも楽しめる…
俺と赤葦がセットで描かれてなくても、十分オイシイ素材だと思わねぇか?

「以上、黒尾鉄朗が心を込めて…お送り致しました。」


「あ…ありがとう、ございます…っ」
「す…ステキな、VTR…でしたね。」

月島と山口は、色々言いたいことはあったのだが、あえてそれを口には出さず、
当たり障りのない無難なコメントだけに止めて、判定を『VAR』に託した。

『VAR』こと赤葦は、何やらもそもそと布団の中で動き回り…
敷布団と掛布団の隙間から、真っ赤なハンカチ?布?をチラリと出して掲げた。


「レッドカード…こんな状態では、試合は終われません。」

黒尾さんの視点には、決定的に欠けているモノがあります。
いえ、わざと決定機を外して、試合を決めなかった…そうですよね?

判定に驚き戸惑う黒尾の手の中に、赤葦は『レッドカード』を握らせると、
その上から自分の手を重ね、勝利を天に祈るかのように、掠れた声で懇願した。


「PK戦で…キめて下さい。」




- PK戦へGO! -




**************************************************



2018/06/30    (2018/06/27分 MEMO小咄より移設)

 

NOVELS