※螺旋を描く↓方向な話です。ご注意下さいませ。



    愛大絶叫







「あっつ~いっ!」
「溶けそうだね…」

暦の上では、確かに『夏』だが、今はまだ5月…
爽やかな『初夏』は、一体どこへ行ったんだろうか?
連日の夏日…どころか、30度超の真夏日に、カラダがついて行かない。

「『勝者』のお前らより、外に出た俺らはもっと暑い!」
「コンビニのアイスコーヒー、全部売り切れでしたよ。」

黒尾法務事務所の面々も、さすがにこの暑さには参っていた。
まだ5月だし…と、何となくエアコンは入れないで仕事をしていたら、
気付いた時には、室温34度超…全員汗だく、熱中症に要注意レベルだった。

あまりの暑さに、アイス食べたい!という話になり…フェアにジャンケン。
一発で敗者二人が確定し、黒尾と赤葦は渋々コンビニへ行ってきたのだ。


帰って来るなり、その場でジーパンを脱ぎ捨て、短パンに履き替える。
高校時代に部活で使っていた、バレー用のもの…引退後も大活躍だ。
というよりも、練習着はそのまま部屋着として愛用…ザ・体育会系である。

短パン&素足が、お互い『見慣れた格好』というのも、非常にありがたいし、
ほとんど下着と変わらない長さしかなくても、抵抗感がないのも…実に助かる。

「えーっと、パピコは…」
「はい!俺です~!」
「月島君は…ハーゲンダッツの苺味でしたよね?」
「ありがとうございます。」

山口は2本セットのアイスを半分に割ると、給湯室の冷凍庫へ持って行き、
長めの銀スプーンを持って戻ってきた。

「はい、ツッキー!」
「ありがと、山口。」

どうやら月島は、コンビニ付属のプラスチックスプーンは使わない主義らしい。

「堂々と高級カップアイスを頼んだり、わざわざスプーン出したり…」
「さすがはツッキー!ってカンジで、いっそ清々しいぐらいだよな…」

それに比べて山口は、2回に分けて大事に食べる派…まさに山口っぽい。
好みのアイスに、性格が反映されているようで、黒尾と赤葦は含み笑いをした。
何となくそれにカチンときた月島は、これは合理性重視の選択です…と言った。


「山口がパピコ、僕がカップアイスっていうのは、むしろ山口の希望です。」
「だって、ほら…はい、ツッキー♪」

口に深々と咥え込んでいたパピコを、山口は月島に差し出し、
月島は何の躊躇いもなく、それにパクリと吸い付いた。

「これ、すっごい『ハイレベル』な間接チュ~♪だから…」
ストローなんかより、めちゃくちゃ『奥まで』なカンジで…最高です!

頬を染めながら、えへへ~っと嬉しそうに笑う山口。
いやいや、これはもう『間接』ってレベルじゃねぇよ…とコメントする前に、
今度は月島の方が、「はい、山口。」とスプーンを差し出した。

山口はスプーンにパクリと食い付き、美味しそうに満面の笑み…
そして、再度口を開いて舌を覗かせ、
視線で「もっと♪」と月島に催促した。

「僕はこの、何とも言えない『餌付け感』が、たまりません…」

僕が山口にあげて、山口はそれを美味しそうに食し、もっと欲しがる…
僕はもっともっと、イロイロ出してあげたくなっちゃいますね。
しかも、パピコを深々と咥える姿を鑑賞しつつ…というのも、実にイイでしょ?

アイスも驚く程の、デレデレな溶けっぷりを披露する、月島と山口…
それに呆れ返るかと思いきや、黒尾はたった一言…「甘ぇな。」と呟いた。


「俺はいつでも宇治金時。絶対に練乳が入ってないやつな。」
最寄のコンビニには、練乳入りしかなかったから、
わざわざ駅前まで買いに行ってきた…そのぐらい、乳っぽいのは苦手だ。

「そして、お馴染みの木の匙…出来るだけ小さめのを使う。」

ガリガリと氷を崩し、そこに餡子もたっぷり乗せて、山盛りになった匙を、
零さないようにゆっくりと、黒尾は赤葦の方に運んでいく。

赤葦はそろそろと近付いてやや大きく口を開くと、
匙を持った黒尾の指先も一緒に、口の中に招き入れた。
匙の上も、それを支える指も、全部綺麗に舐め取り…艶っぽく微笑んだ。

「…な?こっちの方が、スプーンよりずっと…レベル高ぇだろ?」
「べ…勉強になりますっ!」

月島はいつも、「結構です。」と付属の木匙を断わっていたが、
次からは絶対に頂こうと固く決意した。


「そして俺は、アイスに齧りつくのが、少し苦手なので…」
歯を使わないで食べる系のものばかりを、いつも選んでいます。
一番好きなのは、ソフトクリームです。
最近では、コンビニのソフトクリーム型アイスもなかなか美味しくて…

赤葦はそう言うと、手にしていたソフトクリームに向かって舌を出した。
舐める…というよりは、筋に沿って辿るように、舌を絡めていく。
しかも、ソフトクリームを持った手は固定したまま、舌や顔の方を動かすのだ。

くるくると螺旋を描くクリームの流れに従って、丁寧に丁寧に…
まるで、舌先で『窪み』や『溝』のカタチを、確認するかのように。

あからさまにソレっぽく咥えたり、しゃぶったりはしないのに、
チロチロと静かに蠢く、紅い舌の動きに…呼吸を忘れてしまう。
3人は結局、赤葦が食べ終わるまで、その仕種に釘付けになってしまった。



「上を美味しく頂いた後は、少しふにゃっとした根元の方も…」
勿論最後まで…下までしっかり、食い尽くしますから。

歯を出来るだけ立てないように、かぷり、とコーンを丸々咥え込む。
途中途中、「んっ…」と呼気を上げ、眉間に僅かな皺を寄せながら、
舌と上顎でそっと咀嚼し、ゆっくりゆっくり…口の中に埋めていった。

息の詰まるような、濃密ささえ漂わせる食べ方に、3人はまたしても絶句…
時折こちらに流してくる視線に、ゾクリと背を震わせた。


「アイスでこういう『オタノシミ』をするなら、徹底的に…ですよ?」

   どんな仕事もパーフェクトに。
   これが俺のモットーですから。


あぁ…そう言えば赤葦は、「新規事業のため」と言いながら、
約50冊(増加中)のBLコミックを読破・研究に勤しんでいるし(鋭意継続中)、
オメガバース研究の際も、研磨先生が怯む程の『仕事ぶり』を見せていた。

(さすがはセッター…お膳立てのプロ!)
(『ヤる気』にさせるのは…お手の物!)
(これが『天然Ω』の…本気なのかっ!)

ただでさえ、無意識のうちに色気を撒き散らす、放射性猥褻物。
それに加え、弛まぬ努力の末に獲得した技術を、意識して練り込んでくるのだ。
1プレイで周りを『奮い起たせる』…やはり赤葦は、類稀な参謀である。

赤葦の仕事(?)への情熱(?)に、3人は思わず前傾…ではなく、ひれ伏した。


「こっ、今年の夏は…アイスを食べる機会が、激増しそうですよ。」
「月島君、気をつけて下さいよ?アイスはかなり…『糖分高め』ですからね。」
「アイスの後は『過激な運動』で、消費しないといけない…かなぁ~?」

赤葦から視線を逸らしながら、ギリギリの会話を続ける、月島と山口。
薄い短パンから出た長い脚が、ナニかを隠すように、やや内股になって…
っつーか、短パンなんて『バレバレ』な危険物…履くんじゃなかった。

これ以上、赤葦に『完璧な仕事』をさせてはマズいと判断した黒尾は、
濡れた指先を艶っぽく舐める赤葦の手を引き、立ち上がって後ろを向いた。

「今日はこれで…終業だっ!」


いつもより1オクターブ高い「お疲れ様でしたっ!」の挨拶で、
黒尾法務事務所は本日の業務を終えた。




- 終 -




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※研磨先生も怯む仕事ぶり →『αβΩ!研磨先生⑤


ギャグちっく20題
『02.アイス食べる?』
お題は『確かに恋だった』様よりお借り致しました。


2017/05/27    (2017/05/23分 MEMO小咄より移設)

 

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