ご注意下さい!

この話は、『R-18』すなわち、BLかつ性的な表現を含みます。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、閲覧をお控え下さい。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)

また、当シリーズは前話『予定調和』で完結しております。
こちらはただの『蛇足』で、最終話の雰囲気をぶち壊している恐れもあります。


    それでもOK!な方  →
コチラをどうぞ。























































※『予定調和』直後の月山。




    最中之月







本当に、人生って思い通りにはいかないな。


皆は口々に、「羨ましい」と言うけれど、
お酒がちょっと強くても、そこまで好きなわけでもないし、
大して「良かったな~」と実感することもない。
せいぜい、赤葦さんの練習にとことん付き合えるぐらいだ。

逆に、酒に強いせいで、困っていることは…多い。
むしろ、深刻な状況に置かれている、とも言える。


「俺も…お酒に酔ってみたいな。」

「全くだよ。山口が大蛇並の酒豪だなんて…
   僕のささやかな希望(という名の策略)が、総崩れだよ。」

真後ろから、深刻そうな声と、重いため息。

俺とツッキーは今、敷いた布団に横になりながら、
半分開いたままのカーテンから覗く、薄青い月を眺めている。

二人とも右側を下にして横向きになり、
俺は伸ばされたツッキーの右腕を枕にしている。

同じ格好で、真後ろにツッキーがピッタリと引っ付いている…
そんな密着した体勢で、お月見をしているところだ。


「『完璧な愛』の名を持つパルフェ・タムール。
   それを使ったカクテル『ブルームーン』を飲んだ山口は、
   その媚薬効果で、いつもより大胆かつ淫乱に…」

微酔い気分のツッキーは、普段は絶対に見せない部分…
心の中に『封印』された思いを、雄弁に語り出す。

「ツッキー気をつけて…感情だだ漏れだよ。
   『頭の中』でどんな妄想しても『自由』だけど…
   それを外に出した瞬間に、ただの『猥褻』だからね。」
「別に、第三者に『公開』するわけでもないし、
   愛し合う二人で語るだけなら…他愛ない『淫戯』でしょ。」

    頭の下から目の前に伸ばされた、ツッキーの腕。
    その先で重ね合わせた掌を、キュキュッと握り締める。

『酒屋談義』の後、この部屋に戻って来てから…
いや、戻る途中から、俺とツッキーは、ずっと手を繋いだままだ。
一瞬でも離してなるものか…そんなツッキーの気迫さえ感じる。


「山口は、僕とこうやっていちゃいちゃするの…嫌じゃないよね?
   まぁ、もし万が一、嫌だって言われたら…」
「…言われたら?」
「みっともなく号泣した挙げ句、山口の『しょうがないね…』に、
   シメシメと突け込んで、イチャイチャしまくるね。
   それで翌朝…『酔ってて覚えてないよ』ってシラをきる、かな。」
「…素直すぎるのも、大問題だね。」

良し悪しは別として、そんなカッコ悪くてみっともないツッキー…
俺は、嫌じゃないな。

    クスクスと笑いながら、繋いだ右手の指を、絡ませる。
    俺を抱え込むように、腰から前に回された左腕。
    その腕に左手を添え、手の甲をゆっくりと撫でる。


この格好も、俺は嫌いじゃない。
体の後を、全部ツッキーに包まれ…守られているように感じるから。
ピッタリと同一化して…決して離れないような気分になるから。

ただただ…困る、のだ。


「ねぇ…」
「んっ…」

耳に直接囁き、熱い吐息を吹きかける。
左手をゆっくりシャツの中に入れ、スルスルと肌を擦っていく。

    くすぐったさに身を捩る動き。
    敏感な場所を掠めた刺激に、ピクりと身体が跳ねる動き。
    そして、漏れ出た声に煽られ、徐々に熱量を増してくる脈動…

これらの全てが、互いにダイレクトに伝わってしまうのだ。


「ねぇってば。」
「ん…なぁに?」

肌を撫でる左手が、少しずつ下がってくる。

「昔みたいに…声、ガマンしなくていいんだよ?」
「…知ってる、よ。」

    甘い甘い声が、体内に直接響いてくる。
    耳朶を甘噛みされ、跳ねる腰。

高校時代…まだ実家暮らしだった頃。
幼い頃からの習慣のまま、割と頻繁に…
ほとんど週末ごとに、互いの家に泊まり合っていた。

二人が『こういうカンケー』になってからは、
同じ家に居る家族達にバレないよう、動きも声も全て押し殺し…
互いの『甘い声』を知らないまま、体を合わせていた。

今はそんな必要もない…だが、やはりこれも『習慣』なのか、
湧き上がってくる声を、喉で押し止め…
外に出てこないよう、閉じ込めてしまうのだ。

「二人でこうしている時ぐらいは…何も『封印』しないでよ。」
「肝心な言葉を、何年も何年も『封印』し続けてきた…
   そのツッキーが、それを言っちゃうの?」

俺の厳しいツッコミに、「何も聞こえないね」…と、
『酔っ払い』の振りをしながら、ツッキーは左手を下肢の間…
熱くなり始めた部分を避け、その『下』を、掌で柔らかく包み込んだ。


「山口は、どうしてココを…『golden ball』って言うか、知ってる?
   別に、『金色』をしてるわけじゃないのに…」

突然の質問。
それに答える振りをして、上擦る声を誤魔化す。

「ソコから真っ直ぐ飛び出たモノが…やがて『金』になる、から…っ?」

安産祈願に、将棋の香車を奉納する…日光・輪王寺を思い出す。
香車のように、産道を真っ直ぐ出て…やがて『金』になるのだ。

    指先を軽く滑らせて、その『ルート』を示す。
    飛び出しそうになる声を、俺は何とか食い止める。

「本当は、『金』じゃなくて、『きのたま』なんだ。
   『酒の玉』…命の源が詰まった玉、だね。
   玉だって、『魂』と書くと…さらに『ドンピシャ』だ。」

確かに、そっくりじゃないか。
今日飲んだ甘酒…どぶろくに。


「まさか、今日の『甘酒』のシメが…このネタ、なの?」
「あの場では…とても言える雰囲気じゃなかったけどね。」

苦笑いするツッキー。
そのリズミカルな動きが、ツッキーの熱い部分を動かし…
同じリズムで、繋がる部分を、ごくわずかに刺激する。

指先『だけ』で触れる動きを続けるツッキーの左腕を、
俺はぎゅっと鷲掴みした。

「…どっち?」

    もう止めて、なのか。
    もっとして、なのか。

それを教えろ…と、ツッキーは言うのだ。
後ろから、物凄い熱くなったものを…
ツッキーの『欲』を如実に伝えるものを、さらに押し付けながら。


「ツッキーは…ズルいよ。」




***************






どうして俺は、お酒に強いんだろうか。
強いだけじゃなくて、飲むと頭がはっきりし…周りが良く見える。

『酒屋談義』では、それが『吉』と出るが、
今みたいな状況では…深刻な悩みに直結する。

冷静になりすぎて、熱くなれない…わけじゃない。
ただただ、周りの状況…ツッキーと俺自身のことが、
ものすごく『はっきり』とわかってしまうのだ。

    肌を行き来する、繊細な指の感触。
    高まる鼓動と、首筋に掛かる熱く甘い吐息。
    焦らされ、刺激を求めて揺れ動く下肢。
    煽り立てるように、後孔に当たる熱い塊。

密着度が一番高いこの体勢のせいもあり、
これらの動きや感触を、敏感に感じ取ってしまうのだ。


「僕は山口と…もっと引っ付きたい。山口は…どうなの?」
「あ…っ」

それに加え、『素直なツッキー』なのだ。

甘い声で、感情をストレートに示す『最中のツッキー』は、
文字通りの『猥褻物』…危険極まりない存在になってしまう。

普段決して聞けないセリフを、堂々と口にし、
シラフでは決して言えないような言葉を、俺にも求めてくる。

どうしても冷静にならざるを得ない俺にとって、
この状況は…極限まで『羞恥心』を煽られることを意味する。

「ねぇ…答えてよ。言ってくれなきゃ…わからない。」
「い…言えるわけ…な…あぁっ…!」

答えを求めるように、起立する中心を擦り上げる。
その刺激に悶える自分の体と、抑えきれなかった嬌声に、
さらに遣る瀬無い羞恥心が募っていく。


強情なんだから…ま、いいけどね。
ツッキーはそう言うと、固く閉じられていた俺の脚の間に、
自分の片脚を捩じ込み、俺の下肢を開かせた。

最初は撫でるだけ、それから徐々に解すように、
これから繋がる部分に、ゆっくりと指を埋めてくる。

「く…ぅん…っ」

利き腕ではない方の指の、拙い動き。
そのじれったさが余計に、ツッキーの『動き』を意識させる。


自分の痴態から目を逸らせようと、前を向く。
目の前には、繋がれたまま…絡み合ったままの、右手。
この指と同じ指が、今、俺の中を…

そう思った瞬間、無意識のうちに…ツッキーの指を締め付ける。
それも、自分で…本当に、よく…わかってしまうのだ。

「そんなに強烈に誘われたら…耐えられないよ。
   もう…山口と、繋がりたい…」

言うやいなや、ツッキーは内壁を擦りながら指を抜き、
熱く漲ったものを、俺に押し当てた。

「あ…ああぁ…」

ゆっくりと、ゆっくりと。
一歩一歩慎重に、橋を渡って帰ってきたように。
少しずつ、ほんの少しずつ…繋がっていく。
…わざと、『入っいく様子』を実感させるかのように。

「やっと…繋がったよ。」
「わ…わか、ってる、から…」

お願いだから、それ以上…甘い声で、囁かないで。


繋がりはしたものの、ツッキーは一向に…動こうとしない。
時折、キュっと力を入れ、その『存在』を主張する。
内側から押し広げるその動きに、腰がビクビクと反応し…締め付ける。
それがまた、自分の『中』にあるモノを、熱く熱く感じさせる。

激しい動きよりも、じっと動かないことで、
自分の中のツッキーと、二人が繋がっていることを…強烈に意識させられる。
ほんの少しの反応すら、直接お互いのカラダに響いてしまう…
自分の『欲』を、隠しようもなく…曝け出してしまうのだ。

どうして…どうして俺は、お酒に強いんだろう。
どうしてお酒は、俺にとって『媚薬』になってくれないんだろう。

「もし、存在するなら…俺、媚薬を…飲みたい、よ。」

「いつもより『敏感』に感じる、という意味では…
   お酒には『媚薬』としての効果が、十二分にあると思うけど?」

酔えない…『我を忘れられない』ような媚薬なんて、
ただの『毒物』でしかない。
強制的に、猛烈に羞恥心を煽り立てる…劇薬だ。


煽るだけ煽られ、それなのに快楽に堕ちることを許されず。
耐え難い羞恥と快感に、生理的な涙が零れ落ちる。

    滲んだ視界。遥か遠くに見える、窓の外の月。
    助けを求めるように、俺はその月に願った。


「お願いっ、だから…俺の、意識を、飛ばして…っ!」


その願い、しっかり聞こえたよ。

夜空の月に祈ったはずなのに、真後ろから返事があった。


我を忘れさせてくれるのなら…
もう、どっちでもいいや。



- 完 -



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※『窓の月』 →作中の二人の体勢を、『風流な』名前で表したもの。
   (分類学?で言いますと、『48種類のうちの一つ』です。)

※最終話の『しっとり』した雰囲気をぶち壊してしまい、本当にすみません。


2016/04/18(P)  :  2016/09/13 加筆修正

 

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