他言無用







梟谷グループ合宿最終日。
今回も大変有意義な日々を送ることができましたね。
それでは、そろそろ帰還準備を…

顧問の武田が総括的な講評を述べていると、
少し離れた所で電話をしていた烏養が、
「はぁっ?」と怪訝な声をあげた。

皆が不思議そうに注目していると、電話を切った烏養は、
ため息をつきながら言った。

「迎えのバス…夕方になるってよ。」


今回も、滝ノ上電器店が送迎を買って出てくれていた。
昨夜のうちに学校でバスを借り、今朝こちらに到着予定だったのだが、
前日バスを使用した部活との引き継ぎがうまくいかず、
結局昼過ぎに出発になりそうだ…ということらしい。

現在、朝の9時。
烏野高校排球部の面々は、ぽっかり半日ばかり、
スケジュールが空いてしまった。

「仕方ありません。今日は…『自由行動』にしましょう。」

武田の言葉に、部員達は一斉に歓声を上げた。



「さてと…僕らはどうしようか。」
「集合は18時…微妙な時間なんだよね。」

何度も東京遠征には来ているが、
こうした自由時間が設けられたのは、今回が初めてだった。
やっと訪れた『東京観光』のチャンス…
部員達は嬉々として、思い思いの場所へと散って行った。

残された月島と山口は、梟谷高校の校門脇に座り込み、
スマホで観光案内を検索していた。

「行きたい所の『ジャンル』は決まってるんだけど…」
「到底、時間が足りないんだよね。」

移動時間を考慮すると、実質的な行動時間は6時間程度。
そんな微々たる時間では、二人(特に月島)が『行きたい場所』では、
ほとんど『自由』に楽しむ余裕など、ありはしない。

「かといって、その辺でぷらぷらするには長すぎる時間だよね。
   土地勘がないから、『適当な場所』もわかんないし…」
「中途半端な『自由』は、逆に不自由さしか感じないね。」

結局、二人が選んだのは…
『土地勘がある人に選んでもらう』という選択肢だった。




「…で?お二人さんの希望は?自由に言っていいぜ。」
「大体予想はできますが…念のため聞かせて下さい。」

いつもとは逆に、月島と山口がそれぞれ召喚した黒尾と赤葦。
「適当な場所を教えてほしい」という二人の申し出に、
「それなら俺達が…」と、快く現地案内を引き受けてくれた。


希望を聞かれた月島は、候補となる条件を『自由に』述べた。

「最低限の条件は…
    ①人の多い観光地・商業施設は除外。
    ②博物館・美術館・水族館・動物園等、学芸員が居るような場所。
    ③上記の場合は、常人ならば2時間程度で見終わる小規模なもの。
    ④上記以外では、緑地・水辺または社寺仏閣・石碑等のある場所。
    ⑤目的地は最寄り駅から徒歩圏内など、交通の便が良い場所。」

月島が出した『最低限の条件』に、黒尾と赤葦は面食らった。

「確かに俺は『自由に言って良し』とは言ったが…」
「予想以上の『自由っぷり』でしたね。」

ごく真っ当な感想に、山口は申し訳なさそうに言い添えた。

「本当は、科学博物館とかに行きたいんですが…
   俺達、解説文は片っ端から読破して考察し始めたり、
   気に入った所では、何時間も張り付いちゃうんで…」
「科博行くなら、『3日間泊まりがけコース』が必須ですね。」

たった6時間程度の自由時間では、観たいものをほとんど観られない…
むしろ『大いなる我慢』を強いられることになる。

「そんな『自由』、僕にとっては『刑罰』でしかありません。」

『ちょっとだけ』…これが一番、心身に堪えるのだ。
それならば、『全くナシ』の方がどんなに気が楽か…

『中途半端なオアズケ』に対する、月島の慟哭混じりの恨み節に、
山口はアサッテの方向へと視線を泳がせた。


「ツッキーの条件を完璧に満たすのは、難易度が高いよな…」
困ったような口調とは裏腹に、黒尾は不敵な微笑みを見せた。

「でも、『超優秀なガイド』さんの俺らは…
   そのワガママも叶えてやれそうなんだな、コレが。」
「美術館も水族館も動物園もあって、その上さらに、
   水辺も社寺も石碑もある、駅近の緑地公園…ご案内しましょう。」

本気半分、嫌がらせ半分で『自由に』提示した条件だったのに…
月島は半信半疑で、自称『優秀なガイド』に付いていくことにした。



電車で数駅。そこから徒歩10分程。
予想よりもはるかに近い場所に、それはあった。

「井の頭恩賜公園…」
「本当に…動物園も水族館も、大きな池もある…!」

ついでに言えば、野球場や競技場もある、広大な公園だ。
都心からも好アクセス、駅直近の立地ながら、
イベントもない平日の昼間は、人出もさほどではない。

「…参りました。」

まさに『願ったり叶ったり』の場所である。
月島は素直に負けを認め、謝意を述べた。


「どう回ろうか…」
公園案内図を見ながら、早速『一筆書き』ルートを探し始めた月島。
その背に、赤葦が「こちらも念のため伺いますが…」と投げかけた。

「まさかとは思いますが、『ここまで来たらもう大丈夫です。』って、
   俺達に『ガイドお役御免』…しようなんて思ってないですよね?」
「………。」

鋭いツッコミに、押し黙る月島。
そんな恩知らずな月島をおいて、黒尾は勝手に宣言した。

「さっき出て来た『自由刑』にちなんで、二つのコースにしようぜ。
   現行法の『禁固刑コース』に、赤葦とツッキー。
   廃止された『流刑コース』に、俺と山口が行く…これでいいか?」

「面白そう!!あ…一応、それぞれどんなコースなのか、
  教えてもらってもいいですか?」

山口の問いに、黒尾は丁寧に説明した。
「まず『禁固刑』は、その名の通り、『檻の中』に入る…
   動物園と水生物園を中心にめぐるコースだ。
   そして『流刑』は、池で『島流し気分』を味わうコースだな。」
「それはそれで、どちらも大変興味深いのですが…
   なぜ僕が赤葦さんとペアで、『禁固刑』だと確定なんですか?」

月島の問いには、今度は赤葦が答えた。
「おや、月島君は宜しいのですか?
   俺と山口君が『監禁状態』の場所で、一体ナニを語り合うか…
   その間、月島君は黒尾さんと二人でラブラブ『スワンボート』ですが。」
「赤葦さん、今日は一日よろしく願いします!!」

それじゃあ、昼食は各ペアで取って、17時頃にまたここに集合な。


こうして、やや奇妙な組み合わせでの『自由刑ツアー』…
いわゆる『Wデートもどき』がスタートした。




***************





「俺…一度でいいから乗ってみたかったんです!!」
「そりゃ良かった。足元…気を付けろよ?」

黒尾と山口は、公園の中心部とも言える井の頭池へ向かい、
ボート乗り場から、山口念願のスワンボートへと乗り込んだ。

桜の時期には池中が白鳥で溢れ返るそうだが、今日は人影もまばらで、
二人が乗った白鳥は、すぐに広々とした池へ、悠々と泳ぎだした。


「『井の頭』っていうぐらいですから…
   この池は、かつてはどこかの『水源』だったんですか?」
「あぁ。明治維新頃までは、江戸の上水道だったらしいな。
   井の頭池は、フォークソングで有名な『神田川』の起点だ。」
「カップルで銭湯に行って…なぜか女性側が待たされる歌ですね。」
「作詞家の『ほろ苦い思ひ出』を綴った歌詞らしいんだけど、
   その作詞家、銭湯の鯉を眺めてて…彼女を待たせてたらしいぜ。」

本当は、男性側が早く風呂から上がり、暇潰しに鯉を眺めていたのか、
それとも、赤い手ぬぐいを振り回しつつ、野球の鯉軍中継に夢中か。
どちらにしても、『お風呂デート』の彼女は大事にして欲しいと思う。

「ちなみに、その作詞家さん…『忠』って書く名前だったな。
   読み方は『まこと』だったけど。」
「俺、関係ないけど…まことに申し訳なく思っちゃいます。」

手を合わせて、誰かに謝罪する山口に、
お前さんに『関係ある』話もあるぜ?と、黒尾は笑いながら説明を始めた。

「江戸時代に、神田川の流路変更工事があったんだが、
   現在の飯田橋付近から秋葉原駅付近までを担当したのが、
   仙台藩祖・伊達政宗だ。だからこの区間は『仙台堀』とか、
   『伊達堀』って言われてるらしいぜ。」
「この井の頭池が…俺らの『仙台』に繋がってたんだ!
   そういう『ちょっとした繋がり』を発見すると、嬉しいですよね。」

こういった『ちょっとした繋がり』を見つけたいがために、
いろいろと雑学研究してみたり、誰かと雑談…意見交換したいのだ。

恋愛だって…そうじゃないかな。
お互いの中に、ちょっとした共通点を発見した時の歓び。
それを共感したくて、二人で会話を楽しむのだろう。

「仙台堀区間の本郷台地を、湯島台と駿河台に分けた…
   御茶ノ水っていう人工の谷を開削したのも、この時だ。
   駿河台と言えば、日本を代表する法律4校が集まっていた場所だ。」
「あ…さっきの『自由刑』の…法学ですね。」
「流刑地で発見すると、なぜか赦免状が届くという花が…竜舌蘭。」
「お酒の…『テキーラ』の原料ですよね。酒屋談義にもってこい!」
「神田川カップルが棲んでたのが、『三畳一間』の小さな下宿だ。」
「こないだ4人で行った『いちゃいちゃ居酒屋』が、三畳でした!」

黒尾の出す、ほんのわずかな『繋がり』…
その一つ一つに、山口は大喜びで反応した。

「…なんか俺、ちょっとばかりツッキーが羨ましいわ。」
「…え?」

「いや、こっちの話だ。それよりも、喉が渇いたな…」
黒尾はそう言うと、鞄からペットボトルのお茶を2本取り出した。

「井の頭公園には、徳川家康がお茶を点てた茶臼もあるし、
   そのお茶用の水を取った場所…『お茶の水』も残ってるぜ。」
「『お茶の水』も、『御茶ノ水』に繋がってるんですね…
   ちょうど俺も喉が渇いてたんです。ありがとうございます!!」


足でゆっくりとボートを漕ぎ、ゆったりと水上散歩を楽しむ。
ゆらゆらとした揺れ具合が、心地よい。
スワンボートも、公開の場所で『二人きり』になれる…密室だ。
カップルがデートに利用する理由が、よくわかった。

「黒尾さんって、話も面白いし、エスコートも完璧だし…
   こんなに『至れり尽くせり』で優しくして貰えると…」
「…惚れちゃいそう?」
「ボートの『ゆらゆら』が、『吊り橋効果』を誘って、
   恋愛成功率は上がりそうですよね…というのは置いといて。
   その答えは…幼馴染さんが『ちょっと羨ましい』…ですね。」

あ、別に俺、ツッキーは気が利かないとか、
ほとんど放置…じゃなかった、自由放任主義だとか、
ツッキーに不満があるわけじゃないんですけど…と、
山口は慌てて付け加えつつ、言葉を綴った。

「こんなに細やかな気遣いをして頂けると、
   『大事にされてる』なぁって…すごく幸せな気分になっちゃいます。」

山口のセリフに、黒尾はポカンと口を開けた。
そして、思いっきり山口の頭をくしゃくしゃと撫で回した。

「研磨曰く、俺は『構い過ぎで時々ウザイ』…なんだけどな。」
「そ…そうなんですか…?」
「俺は普段通り『アレコレちょっかいかけて振り回し』てんのに、
   それをストレートに感謝されると、すっげぇ新鮮で…照れ臭い。」

気まずそうに赤面し、照れ笑いする黒尾。
初めて見るその表情に、山口も何だか恥ずかしくなってきた。


「す、スワンボート…な、なんだか、ドキドキします、ね。」
「このボートにカップルで乗ると、破局するって噂があるんだよ。
   あそこ…弁天堂ににいらっしゃる弁財天が嫉妬するから…だってさ。
   そういう意味では、ツッキーとじゃなくて俺と一緒でよかったな。」

黒尾は普段通り、何気なく『茶化した』つもりだった。
だが、山口から帰ってきた言葉に、開いた口が塞がらなかった。

「あ、それなら大丈夫です!
   俺…ツッキーと付き合ってるわけじゃないんで、嫉妬の対象外です。」


周りをゆったりと泳ぐ、白鳥達。
黒尾の頭の中では、黒い白鳥…ブラックスワンが飛び立った。

「ぶ…ブラックスワン理論って、知ってるか?」
「『黒い白鳥を探すようなものだ』は、昔、『青い薔薇』と同じ…
   『無駄な努力』っていう意味のことわざ…でしたっけ?」

突然の話題転換に、山口は困惑気味に答えた。

「ブラックスワンも、青い薔薇と同じく、『ありえないもの』だったが、
   こちらも後世発見されて…当時の人々は大仰天したんだ。
   そのことから、『常識を疑う』『物事を一変させる』の象徴になった。」
「『理論』ってことは…何かの用語になったんですか?」
「『ありえなくて起こり得ない』と思われていたことが起きた場合には、
   それは予測できず、非常に強い衝撃を与える…という理論だ。
   主に、金融危機や自然災害で使われる用語、だな。」

説明を終えると、黒尾は「はぁ~。」とため息をつき、
まさに今の俺が、この気分だ…と呟いた。


「お前さん方が『付き合ってない』とか…信じられねぇよ。
   だってよ、人前では到底できないような『いちゃいちゃ』…
   そういうのをガッツリとヤっちゃってる仲なんだろ?」
「えっ!!?あ、いや、その…」

わたわたと慌てふためく山口。
その動転が伝わり、乗っている白鳥もバタバタと大きく揺れた。

「他から見たら、『過剰に仲良しな幼馴染』程度に見えるだろうが、
   俺は…俺と赤葦は、お前らと何回も『酒屋談議』してんだろ?
   それを『察するな』という方が無理だろ…」

だから、俺らには隠す必要は、ねぇよ。
絶対に他言もしねぇから…な?

黒尾の優しい口調に、山口は観念し、
肩の力を抜いて…小さく小さく頷いた。


「俺達、経過年数では『幼馴染』ですけど、実態としては…
   一方的に俺がツッキーに引っ付いてるだけ、なんです。」

良く言えば小判鮫、悪く言えば金魚の糞ですよ。
自嘲気味に言い、山口は力なく笑った。

「今の関係は、いつもの『雑学考察』…実践的考察の結果、です。
   有り体に言えば、ツッキーの『好奇心が強すぎた』…だけです。」

山口の語った『きっかけ』は、黒尾にとって何ら意外でもなかった。
実にこの二人らしい、予想通りな話だ。
予想外だったのは、未だにその『きっかけ』地点で立ち止まり…
それより『先』に進んでいないということだ。

「俺にも『幼馴染』がいるから、すっげぇわかるぜ…
   長年積み重ねてきた『関係』を変えるのは、物凄く大変だ。」

相手のことを『知っている部分』は、『知りすぎ』なぐらいだが、
その分、今までずっと『知らなかった部分』を、新たに知る…
現状の変更に対して、二の足どころか七の足ぐらい踏んでしまうのだ。

「今だって、十分仲良しで幸せだし…『これ以上』はいいかな、って。」

慎ましい山口が考えそうなことだ。
本人がそれを良しとするなら、外野が出る幕は…ないのだが。

「…ついこの間までは、そうやって自分を納得させてました。」

ようやく出てきた、山口の『本音』…黒尾は力強く頷き、先を促した。


「ツッキーはあの通りの超イケメンなんで、学校でもすっごくモテます。
   でも、口を開くと、その『見た目』を全てぶち壊しちゃうんで…」
「…誰も、ツッキーには付いていけなかった、と。」

ホントに勿体無いですよね…と、山口は自分のことにように悔しがる。

「ところが、そんなツッキーに怯むことなく、堂々と渡り合う…
   同じように好き放題言える…語り合える人達ができたんです。」
「俺と…赤葦か。」
「博識なお二人と話しているツッキーは、本当に楽しそうで…
   俺、ツッキーのあんな顔見たの、初めてだったんです。」

あの仏頂面で?
というツッコミを、黒尾は黙って飲み込んだ。

「今までは、『ツッキーに付いていけるのは俺だけ』っていう、
   卑しい優越感…『もしかしたら』っていう自信?みたいなものが、
   自分の中にあったことは…間違いないんです。」

勘違い甚だしい、みっともない『期待』なんですけど。
ホントに俺、情けないですよね…と、山口は更に自嘲する。

「ただ『傍に居た』だけの、何の取り柄もない俺なんかよりも、
   ツッキーの才能を引き出す、最高に優秀な『参謀』の方が、
   ずっとずっとツッキーには…相応しいんじゃないかなぁって。」

きっと今頃…二人で楽しい時間を、過ごしてるでしょうし。
小声でそう言った山口は、ふぅ…と、ため息を溢した。


「もしツッキーが…ツッキーの好奇心が、そっちに向いたら?
   お前さんは、快くツッキーを送り出してやるつもりなのか?」

我ながら、酷なことを聞いていると思う。
だが、どうしても聞いておかなければならないことでもある。

「もちろんです。ツッキーのためを思えば、それがベストです。
   …俺が『できた人間』なら、そう即答できるんでしょうけど、
   『小さい人間』の俺は、分不相応にも、今…赤葦さんに嫉妬してます。」

弁財天も、俺の醜い嫉妬にはビックリでしょうね。
山口はそう言うと、慌てて付け足した。

「あ、あの、別に黒尾さんとの時間が楽しくないわけじゃなくて…!
   調子乗って、お耳を汚してしまって…本当にすみません。」

深々と下げる山口の頭を、黒尾はぎゅっと抱き締めた。

「やっぱりお前さんは…ホントに可愛いな。
   冗談抜きで、ツッキーが羨ましい。むしろ勿体無い。」

突然の抱擁に驚愕する山口。
黒尾はすぐに放し、ポンポンと背を撫でた。

「お前さんは、自分のことを『小さい人間』だって卑下するが、
   自分の中にある醜い部分…優越感や嫉妬心、弱いところを正視して、
   それをちゃんと認められる人間なんて、そうそういないぜ?」

きっとツッキーは、こいつの持つ『本質的な強さ』に、
心底惹かれているのだろう…多大なる好奇心と共に。

それを自覚した上で、あいつは『立ち止まっている』というわけだ。
そんな贅沢が許されているあいつが、羨ましくもあり…
こんなに一途な山口を悩ませているのが、許せなかった。


「…お前さん方の状況は、よくわかった。
   俺が言いたいことは、いくつかあるんだが…」

黒尾は真剣な表情で、山口の瞳を覗き込んだ。

「お前さんは、もっと自信を持て。変わる必要もねぇ。
   あと…お前さんからアクション起こす必要もない。」
「え…?どういうこと、ですか?」
山口は首を傾げ、黒尾に真意を尋ねる。

「もしツッキーから、何もアクションがなかったら…
   その時は、そんなヘタレ…お前の方から見限ってやれ。」
「…???」

この言い方では、全く伝わらない…か。
自分の方にも選択権があることなど、『黒い白鳥』の存在よりも、
山口にとっては 『ありえないこと』…なのかもしれない。

黒尾は頬を緩め、ポンポンと山口の頭を撫でながら言った。
「それじゃあ…もしツッキーが『どっか』に行ってしまったら、
   その時は、俺と赤葦が、誠心誠意…慰めてやるからな?」
「うぅっ…そ、その時が来たら…
   泣きながら『酒屋談義』を…ぜひお願いしますね!」

できれば、そんな日の到来は『ブラックスワン』でありますように…

黒尾と山口は笑いながら弁天堂に柏手を打つと、
勢いよくペダルを踏み、白鳥を発進させた。





***************





「檻に入れられ…『監禁』されて幸せを感じる世界があるなんて…
   僕は、生まれて初めて、それを知りました。」
「なかなか…悪くないでしょう?」


先程までの『夢のような時間』を思い出し、
月島は漏れ出る甘いため息を止められなかった。

「こちらが思っていた以上に悦んで貰えた…みたいだね。」
「えぇ…最高です。」


赤葦と月島の二人は、まず最初に動物園へと足を運んだ。
小規模ながら、ペンギンやカピバラ、日本最高齢アジアゾウのはな子…
なかなかの種類の動物たちがおり、非常に楽しい『お散歩』だった。

中でも、最後に見た…入った『リスの小径』に、月島は感激してしまった。
ニホンリス達が放し飼いにされている大きなゲージの中を、
人間達も入って間近に観察できる…という施設だ。

足元をちょこちょこと猛スピードで駆け抜けたかと思うと、
目と鼻の先で、愛らしい目をクリクリと瞬かせ、
ふわふわの尻尾をゆらしながら、カリカリとクルミを頬張る…

その一つ一つの仕草が、とてつもなく…可愛いのだ。

極め付けに、月島のことがいたく気に入ったらしい子リスが、
月島の脚にしがみ付いて、ぐんぐんと上まで駆け上がると、
自分の大切なクルミを、月島のポケットに入れ、隠すのだ。
そして飛び降り、また上がって、隠したクルミを取り出して喜ぶ…
それを、何度も何度も繰り返すのだ。

「月島君が、あんなにデレッデレになるなんて…眼福でした。」
「あんなことされて、デレデレになるな、という方が無理ですよ。」

赤葦も、そんな『可愛らしいセット』を、しばらくは眺めていた。
だが、『長身のイケメンが輝く笑顔で子リスと戯れる姿』に、
周りの女性達が蕩けてしまうし、本人は一向に動こうとしないし…
仕方なく、小一時間遊ばせた後に、赤葦は月島を引き摺って出たのだ。

「月島君は、口を開くと物凄く凶悪ですが…
   開かなかったら、それはそれで別の意味で危険な存在ですね。」
「…何の話です?」
「いわゆる、ギャップ萌えの話…でしょうか。」
「僕がデレデレになったこと…他言無用でお願いします。」

言ったところで、誰も信じないでしょうね…と、
心の中で赤葦は呟き、月島にジュースを手渡した。


「リスと言えばやはり…葡萄しかないね。」
「さすが赤葦さん…これ以上ないセレクトです。」

動物園を出て、クヌギやコナラの生い茂る小高い山…
御殿山に登ると、緑あふれる静かなベンチを見つけた。
夢見心地のままベンチに座り、ウットリと木々を眺めた。

リスの余韻と、静かな森の空気を壊さない穏やかな口調で、
赤葦はゆっくりと言葉を紡いだ。

「『葡萄に栗鼠』の文様は、東洋の着物や陶磁器だけでなく、
   西洋でも人気の『おめでたい組み合わせ』だよね。」

年長者の黒尾がいない分、赤葦の口調もいつもより柔らかく、
より砕け…より親密な雰囲気になっている。

「日本刀の鍔にも、よくある文様らしいですね。
   『武道(葡萄)を律す(栗鼠)』…の、語呂合わせで。」
「葡萄も栗鼠も、多産・豊穣…子孫繁栄の吉祥文って解釈だけど、
   栗鼠の出産は年に1,2回、平均でも1回に3,4匹…そんなに多くない。
   どうしてそれが、多産の象徴になったのか…ちょっと謎だったんだ。」
「きっと、栗鼠は多産の『鼠に似ている』というだけで、
   選ばれたのはやはり…『可愛いから』じゃないでしょうか。」
「俺も、その説が正しいと…今日、やっとわかったカンジかな。」

冷徹そうな月島が、『葡萄に栗鼠』文の着物で太刀を振るう…
その『様になるギャップ』に、赤葦は密かに笑いを噛み殺した。


「『子どもの数』繋がりの話だけど…
   あの池の向こう側に、野口雨情の歌碑が立っているんだ。」
「雨情と言えば…有名な童謡作家でしたよね。
   代表作は、『シャボン玉』ぐらいしか…」

無学で申し訳ありません、と月島は苦笑した。

「月島君に関係ありそうなものだと、
   『雨降りお月さん』や『十五夜お月さん』に…『七つの子』かな。」
「烏、なぜ啼くの…可愛い『七つの子』があるから、ですね。」
「この『七つの子』についての論争があるんだ。
   烏は一度に七羽も雛を育てないし…」
「『七歳』だと、もう『子ども』とは言えない年齢ですよね。」

一応この論争は、モデルである雨情の子が、七歳の頃に書かれた…という、
『七歳説』に軍配が上がっているようだ。

七歳で思い出しましたが…と、今度は月島が話を振った。

「先日出た『ラプンツェル』と同じグリム童話の中に、
   よくご存じの『白雪姫』があります。」
「そこに出てくるのは…『七人』の小人だね。」
「白雪姫が継母に謀殺されそうになったのが…『七歳』の時です。」
「それはまた、随分と『考察』しがいのあるネタだね…
   そう言えば、『ラプンツェル』の王子が森を彷徨ったのが、確か『7年』…
   再会した双子も、『七歳』ってことになるよね。」

色々な『7』繋がりの話に、二人は徐々に夢中になってきた。


「ここの井の頭池…かっては湧水口が『7カ所』あったらしく、
   それ故に、『七井の池』と呼ばれていたみたいだよ。」
「あぁ…それで、黒尾さんと山口がボートに乗ったのが…『七井橋』」
「池の中にあるのが、弁天堂…」
「弁財天は、『七福神』の一人、ですね。」
「今日降りた駅の『吉祥寺』、元々そのお寺があった場所は、
   江戸の大火で焼失したんだ。その原因が…『八百屋お七』なんだ。」
「吉祥天も、弁財天の前に『七福神』だった女神…」

一気に思いつく限り、『7』を出し合い、
二人は同時に、ふぅっとため息をついた。


「前々からずっと思っていたんですが…
   赤葦さんのような『参謀』が居ると、本当に心強いですね。」

それに、一緒に居て、抜群に…楽しいです。
掛け値ない月島の評価に、赤葦は正直驚いた。

「あ…ありがとうございます…
   『下調べ』という、当たり前の仕事を褒められるとは…」

「いえ、その『下調べ』がいかに大変か…僕にはよくわかります。
   どんなに頑張っても、『役職だから当然』だと思われますし、
   調べたことが、全くの空振りに終わることも多々ある…
   『参謀』という役職は、なかなか報われないですよね。」

それでも、まだ『へぇ~』程度でも関心を払って貰えれば良い。
大抵は、練りに練ったネタでも、大した反応もなく、
『変わった事に興味持ってる面倒臭いヤツ』とみなされて…終わりだ。

そんな中、どうでもいい雑学をこよなく愛し、嬉々と聞いてくれて、
調べた内容だけでなく、その調査の努力自体も褒めてくれる…
黒尾や月島、山口に出会えたことに、赤葦は歓喜していた。

だからこそ、赤葦にはどうしても解せない疑問があった。

「それがわかっていながら、なんで月島君は…
   話を喜んで聞いてくれる存在を、もっと大事にしないんですか?」


赤葦の鋭い指摘に、月島は言葉を詰まらせた。

この人は、一体どこまで…
いや、きっと、全部わかっているのだろう。
隠すだけ、取り繕うだけ…無駄だ。


「僕達が、ただの『多少仲の良すぎる幼馴染』だということ…
   赤葦さんはお気付きだったんですね。」
「最初はまさか、と思ったけど…ね。」

セッターの観察力、なかなかでしょう?
赤葦は『セッター』に一般化して謙遜したが、そんな訳はない。
やはり、赤葦が…ただ者ではないのだ。

「月島君にどんな生い立ちや過去があるかは知らない。
   だけど、そこまで『拗れた』性格になった原因の一つは…
   紛れもなく、山口君だと思う。
   彼が君を甘やかし過ぎた…そうだよね?」

これは、俺にとっても自戒すべきことなんだけどね。
…と、赤葦は遠くを見つめながら苦笑いした。

「僕は、山口が全て受け止めてくれるのをいいことに…
   我が儘やりたい放題だったんです。
   今でもまだ、それは変わってないんですけど。
   そんな僕でも、山口は付いてきてくれるから…」

結局、山口に甘えているだけなのだ。


「今までは、月島君が山口君を独占して、後ろに隠してきたから、
   皆、山口君の『大きさ』に気が付かなかった。
   でも…彼の絶対的な包容力と強靭さに気付き、
   その魅力に惹かれる人間が、少しずつ現れている…」

黒尾さんに、俺。木兎さんも、本能で薄々勘付いてるよ。
もちろん…烏野の皆さんは言うまでもないよね?

赤葦の言葉に、月島は力なく頷いた。

「いつか…山口が『僕以外』の存在に目を向けてしまったら。
   きっと、僕なんかは、山口に選んでは貰えないでしょう。」

もうこれ以上、山口を『僕の檻』に閉じ込めては置けません。
その『いつか』は、もう間近に迫っているでしょうね。


「それがわかってて…このまま『何もしない』つもりなの?」

問い詰めるかのような、少し厳しめの口調。
月島は項垂れ、そして天を仰いだ。

「行動で『甘やかす』のと、『大事にする』のは違う…
   ちゃんと『言葉』で伝えなきゃ駄目だということも、
   本当はちゃんと…わかってるんです。」

わかってはいるのに…言葉が出てこないのだ。

「言わなくても山口はわかってくれるって…
   散々山口に甘えてきたツケ、ですね。」

「『多多多多多弁』な月島君とは思えない発言…だね。」
「余計なことしか言えない…本当に、情けないです。」

一体誰が、こんな弱気な月島君を想像できるだろうか。
いや、リスにデレデレな月島君も、想像を絶するものがあった。
こういう『弱さ』や『情けなさ』、意外な『可愛さ』も全部、
もっと山口君にも見せてあげればいいのに…

「山口君の求める『カッコいいツッキー』という幻想…
   月島君はそれに囚われて…『がんじがらめ』になってるんだね。」

赤葦の言葉に、月島は息を飲んで固まった。
そして、くしゃくしゃに顔を歪ませると、頭を抱え込んだ。

「やっぱり僕も、あの人と同じ…血は争えないんですね…」

目に浮かぶのは、外見的にはあまり似てないが、
本質的な部分では、非常によく似た…兄。
僕の勝手な幻想…『カッコいい兄ちゃん』であり続けようと、
苦しみもがき…辛い思いをさせてしまった。

その僕もまた、『ツッキーかっこいい!!』から抜け出せないまま、
『カッコ悪い』と思い込んでいる自分の一部…
山口に対する『本心』を隠し続けているのだ。
そしてそれが、巡り巡って山口を傷付けている…

本当に、僕はカッコ悪くて…兄ちゃんに、ソックリじゃないか。


赤葦はそっと 手を伸ばし、月島の頭をゆっくりと撫で続けた。
しばらくそうやって月島を落ち着かせると、
そのまま肩を組み、池の方を指差した。

「ねぇ月島君。『弁財天』って、もともとどういう字を書くか…知ってる?」

「確か…『弁才天』、もしくは『辨財天』だったような…」
ようやく『いつも通り』を取り戻した月島は、
赤葦の問いに、はっきりとした語調で答えた。

「もとは、ヒンドゥー教の女神サラスヴァティーだけど、
   これを原語通りに漢訳すると、『辯才天』になるんだ。」

赤葦は、空いた方の手で、月島の腿に字を書いて見せた。

「そうか…『才』は『財』の音に通じるから、
   後に財宝神の性格が与えられた神様…ってことですね。」
「『辨財』は、財産をおさめること。でも、もともとの意味は、
   『辯才』…言語の才能なんだ。彼女は…『言葉の神様』だよ。」

だから、ほら…
赤葦は月島の腕を取り、池に向かって合掌させた。

「しっかり神様にお願いしときなよ…
   『山口にちゃんと言えますように』って。」
現状の月島君では、『神頼み』ぐらいしかできないからね。

おどけながら言う赤葦に、月島もようやく表情を和らげた。


「もし僕が、辯才天にも山口にも見捨てられたら…」
「その時は、俺が…黒尾さんより先に、山口君を頂戴しに行くよ。」

「…そこは、僕を慰めてくれんじゃないんですか?」
「ミッチリとガッチリと…アレやソレで『玩ぶコース』で宜しければ。」

月島は勢いよく立ち上がると、赤葦の手を引いて山を下り始めた。


「…弁天堂へ行きましょう!!」





***************





黒尾と赤葦は、結局、集合場所まで見送ってくれた。

「時期的に、この4人で集まるのは…
   今回が最後だったかもしれませんね。」
「黒尾さんはすぐ引退でしたっけ?お疲れさまでした。」
「まだ全国があるっつーの!
   それに、部活引退しても…『酒屋談義』はこれからが本番だろうが。」
「黒尾さんの奢り…俺は本気で楽しみにしてますからね!!」

口では散々言いながらも、4人は清々しい笑顔で握手を交わした。

「では…『また』会いましょう。」




帰路に付くバスの中では、合宿が終わったという開放感と、
今日一日どこでどう過ごしたかという話題で、
隣の声も聞こえないぐらいの、大騒ぎになっていた。

結局、合宿中に仲良くなった他校の面々に、
それぞれ色んな所を案内してもらったようだった。

最後列に座っていた月島と山口も、
井の頭公園でもらったパンフレットを交換しながら、
お互いに見聞きしたことを、当たり障りない程度に披露し合った。


「ツッキーの方でも、やっぱり『弁財天』の話が出たんだ。
   言葉の神様が、財産の神様かぁ…あ、もしかして…
   『甘い言葉で騙り、財産を得る』神様…じゃないよね?」
「それじゃあ詐欺だよ。でも…ちょっと一理あるかもしれない。」

月島は、ポケットから折り畳んだ1枚の紙切れを取り出した。
どうやら、ノートの切れ端らしいが…

「これ、赤葦さんから貰った『ネタ帳』の一部なんだ。
   『七福神の吉祥天が弁財天に変わった理由について』って…」

広げた紙を、山口は横から覗き込んだ。
そこには、なんとか解読可能な…殴り書きがあった。

    ・吉祥天は、七福神の一人『毘沙門天』の妻。
    ・毘沙門天は、超イケメン。後からきた弁財天が、彼に惚れる。
    ・弁財天は、吉祥天に嫉妬しまくる。
    ・吉祥天は、弁財天に毘沙門天も七福神の座も譲る。

    ・寛容で懐の深い吉祥天は、貴族の間で人気。
    ・その後、ワガママだが強い弁財天が庶民の間で大流行。


「え…吉祥天、譲っちゃったのっ!?優しすぎにも程があるよ…」
「どうやって弁財天が毘沙門天に取り入ったかはわからないけど、
   そこにはやっぱり、『言葉の神様』の力があったかもね。」

吉祥天も、弁財天も、どっちも『問題アリ』な気もするが、
少なくとも江戸の庶民には、嫉妬深く強欲な弁財天が支持されたのだ。

「心優しい吉祥天は…貴族の間だけの『綺麗事』だったのかな。」
「現実の色恋沙汰で勝つのはどちらか…それを如実に表したのが、
   吉祥天と弁才天…二人の『入れ替え』ってことかもね。」


誰かの話に、どっとバスの中が沸く。
相変わらず、バスの中ではてんやわんやの大騒ぎが続き、
バスの外も、都会の喧騒とエンジンの爆音に包まれている。


月島は、隣の山口にだけ聞こえる声で、問い掛けた。

「もし山口が吉祥天だったら…どうする?」

月島の質問に、山口は数秒間考え…
ゆっくり慎重に、言葉を選びながら答えた。

「毘沙門天のことを考えると、
   言語や財産の才能に恵まれた弁財天に、譲ってあげた方が…
   自分は身を引いた方がいいんだろうなぁ…って。」

やっぱり…と、月島はそっと嘆息し、車窓の方を向いた。
だが、その月島の手から、山口は紙切れを奪い取り…握り潰した。

「でも、俺は…吉祥天みたいな『出来のいい』神様には、なれないや。
   弁財天もどん引きしそうなぐらい…嫉妬の炎で狂っちゃうかも。」

山口の力強い言葉に、月島は驚いて振り返った。
真っ直ぐにこちらを見る山口の瞳に、射貫かれる。

「この話…毘沙門天は一体何をしてたんだろう?
   何もせずに、ただ…見てただけ、なのかな。」


今度は、月島が静かに、一つ一つ言葉を紡ぐ。

「僕は…『天邪鬼』を抑えつけられない僕は、毘沙門天にはなれない。
   そんな『出来損ない』には、『出来のいい』女神様は似合わないよ。
   だから…そんな自分でも良しとしてくれる人を、
   ずっと大事にしていく…かな。」

七福神が吉祥天から弁財天へと交代した後も、
毘沙門天は吉祥天と離婚したり、弁財天と再婚したりはしなかった。
ずっとそのまま…吉祥天の傍に居た。

きっと、毘沙門天にとって、
吉祥天は『なくてはならない存在』だったのだろう。

それは、僕も同じだ。


    「僕には、山口が必要なんだろうな…」



天啓の様に、ふっと零れ落ちた言葉。

その瞬間、バスの中では偶発的に全ての会話が途切れ、
バス自体もアイドリングストップしていた。

静寂の中、月島の言葉だけが…はっきりと響き渡った。

弁財天の『恩恵』が、月島に『言葉』を与え、
彼女の『嫉妬』が、その場に『静寂』を与え賜うた。


エンジン始動の音と共に、全員の顔からボっと火が出た。


とんでもない偶然と、自らの失態に、月島は目を閉じて呟いた。

「い…今のは、『寝言』だから…」

赤い顔のまま、コクリと頷き、 排球部全員で『寝たふり』をした。



こうして、何度目かの東京遠征合宿は、
月島の『公開告白』で幕を閉じた。



- 完 -



**************************************************

※吊り橋効果(理論)→橋が揺れるドキドキを、
   一緒に橋を渡った相手への恋愛感情と勘違いすること。

※この直後のクロ赤 →『諸恋確率
  
※ラブコメ20題『14.甘い言葉に騙されてみました』

2016/04/13(P)  :  2016/09/13 加筆修正

 

NOVELS