ご注意下さい!

この話は、『R-18』すなわち、BLかつ性的な表現を含みます。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、閲覧をお控え下さい。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)

今年は全力で、『お馬鹿さん』します!


    それでもOK!な方  →
コチラをどうぞ。






















































※『花之季節』一年後。




    風邪予防







「どうやら、風邪を引いたらしい。」
マスクの下から、鼻声でツッキーが言った。

「風邪ねぇ…ふ~ん。」
返事は、盛大な『くしゃみ』の連発…そして、ぶるりと身震い。


このやりとりは、身に覚えがある。
いや、『耳に』覚えがある…と言った方が正確か。

去年の今日、ツッキーが勝手に妄想した『大嘘』の物語の出だしが、
コレとほぼ同じだった気がする。
去年と今年の違いは、この物語の出だしが『大嘘』なんじゃなくて、
『本当』にツッキーが風邪を引いている、ということだろう。

ツッキーは俺にしがみ付き、胸元に額を付け…全身でくしゃみ。
ずずず…と鼻をすすりながら、ぼんやりとした表情をしている。
熱もなく、まだ本格的な風邪には至っていないみたいだけど、
ギリギリの境界線上で免疫細胞が攻防中…一番養生しなきゃいけない時期だ。

「ツッキー、これ以上悪化しないように…温かくして、寝てなよ?」
「あぁ。予防的措置として…今日は大人しくしてるよ。」
もしかしたら、感染性かもしれないから、山口も今日は帰った方がいいよ。
落ち着いたらまた連絡するから…じゃあね。


そう言うと、ツッキーは俺を部屋から出し、扉を閉めた。
ごそごそと布団に潜る音…本当に大人しくしているつもりみたいだ。

今日はエイプリル・フール…漢語表現で『愚人節』というらしいけど、
今年のツッキーは『お馬鹿さん』でも『愚か者』でもなく、
実に聞き分けの良い、賢い子になっている。

何だか…気持ち悪い。できれば、ウソだと言って欲しい。
ワガママを言わない、俺の言うことを素直に聞くツッキーなんて…重症だ。

となれば、俺が取るべき行動は…決まってくる。
今年は俺の方が、『看護』で『愚人』を表現するしかない。

扉に耳を付け、静かになったのを確認してから、
俺はコッソリ部屋へ入り、頭から布団を被るツッキーの傍へと戻った。





***************





「ん…やま、ぐち?」
「大人しく…しといて。」

眠りに入りかけていたところ、人の気配と温もりを感じ、
うっすらと目を開けると…山口が戻って来ていた。

大人しくしていろ…と言われたが、言われたとおりにするしかない状況に、
朦朧としていた頭が、完全にフリーズしてしまった。

「え、あの、ちょっ…」
「風邪の初期には、しっかり汗をかいて…良質な睡眠、でしょ?」

それはそうだ。
だからと言って、これは…いや、嬉しいけど、でも…っ

僕のカラダが冷えてしまわないように、必要最低限の部分だけを開き、
その代わりに、掌と唇ですっぽりと覆い、舌をしっかりと纏わせながら、
一番効率的に発汗を促せる場所へ…山口は『看護』していた。

じわじわと煽られ、上昇する熱。
それよりも先に、上を向く…熱。

こういう『看護』をして貰ったことは、これが初めてというわけではないけど、
僕からオネガイするんじゃなくて、山口から自主的に…というのは、実にレア。
根元を上下する手指、先端を包み込む熱い粘膜。
時折チロチロと蠢く舌に合わせ、ビクビクと背が跳ね上がる。


「ん…ぁっ」

心の準備ができていなかったこともあり、いつもより早く『限界』に近づく。
風邪のせいで抑えきれなかった声が、詰まった鼻にかかり、
いつもとは違う、妙に甘い響きを伴い…

「あっ、ツッキーの、声…何か、ゾクゾク、するね。」
「それ、風邪の、悪寒…じゃない、のっ?」

寒気は全然、感じないよ…その逆に、俺も…熱くなってきちゃった。

僕よりも熱に浮かされ、トロンとした表情で、
献身的に『看護』を続ける山口の姿に、どんどん熱が上がってくる。
山口の口内から漏れる、水気を含んだ音に、喉が渇いたような口寂しさを感じる。

「ね、山口…こっち、に…」
「いいよ、ツッキー。」

そう言うと、山口は咥えていた僕を離し、自分にマスクを付けた。
そしてそのまま、僕に覆い被さって…キス。


サラサラした触感が、妙にくすぐったい。
直接触れたいのに、触れられないもどかしさに、甘いため息が零れる。
僕からは見えないけれど、僕の上に乗った山口の素肌がシットリし、
さっきよりももっと、湿ったトコ…そこが擦れる音と動きが、伝わってくる。
そして、薄いマスクでは防ぎきれない熱い吐息が、僕の唇を擽り続ける。

じれったい間接的なキスに、マスクを取って…と言いたくなるが、
山口に風邪をうつすわけにはいかない。
とは言え、もうすっかりお互いの唾液で湿ってしまい、
予防効果が残っているのかどうか…実に怪しいところだ。


薄い隔たり通して感じる、吐息の温もり。
見えない下の方で、今度は僕の方にも『薄い隔たり』を付けた山口は、
大きく息を吐きながら、ゆっくりと僕を温かく包み込んでいく。

「う…あ…っ、ツッ、キー、そのまま、大人しく…っ」
さっきと同じセリフが、マスク越しに唇を震わせる。
籠った熱で、じんわりと潤む瞳。
その端から落ちる雫と、額から流れる汗が、マスクを更に濡らしていく。

「もう…じっと、してらんない、よ…」
「ダメ…それじゃ、看護に、ならない…でしょっ」

何とも言えない…『オアズケ』感だ。
いつもでは考えられない『積極的な山口』の姿に、
突き上げる動きを…止められるわけがない。
いつの間にか僕自身も、気持ちの良い汗…これなら、すぐに寝られそうだ。


「あ、ツッキー…もう、風邪…うつっても、いいっ」
そう言うと、山口はマスクを投げ捨て、熱烈なキスをしてくれた。

待ち望んだ柔らかい熱…そこで、僕の意識は途切れてしまった。




***************





「…っていうストーリーを、今年は俺が考えてみたんだけど。
   季節感溢れて、なかなか風流でしょ?」
「感激のあまり…涙が溢れてきたよ。」

箱ティッシュを引き寄せながら、ツッキーは俺の『大嘘』に感涙…
そして、布団を剥ぎ取ると、バっ!!っと大きく腕を広げた。


「何…?」
「何って…どうぞ!」

「どうぞって…ヤだなツッキー、これは『四月馬鹿』だよ?」
「知ってるけど…『嘘から出たマコト』コースを、ぜひ!!」

勢いよく喋ったせいか、ツッキーは再びゲホゲホと咳き込み、
まるで『弱り切った病人』のような目で、うらめしそうに見上げてきた。

「今年のは『本当』に風邪だから…『看病』お願いします…」
「馬鹿も休み休み言ってよ。って言うか、ちゃんと休んで。」

ツッキーの首元まで布団を掛け直し、これ見よがしにマスクを付ける。
シュン…と、音を立てて残念がるツッキー。
今年の表情は、紛れもなく『本当』に…シュンとしている。


その情けない表情に、マスクで隠し切れない笑みが零れてくる。
布団に潜ってベソをかくツッキーに背を向け、俺は静かに部屋を出た。
そして、息を殺して…扉に耳を付ける。


「もうそろそろ…いい、かな?」



- 完 -



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※本作は、4月1日のお馬鹿さんイベント用に作成致しました。
   笑って赦して頂けると幸いです。


2017/04/01

 

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