接続不覚③・後編







「黒尾と赤葦が…『仲違い』したらしい。」


ゲームセンターを離れ、途中のコンビニで缶チューハイ数本と、各々好きなおつまみを購入。
京谷さんはレジ横からあげ(全種類)、二口さんは駄菓子(山盛り)、僕はスイーツ(苺づくし)…
お互いのを『一口寄越せ』とは言わない、協調性皆無な『好きなものだけ』追求×3人だ。

コンビニから向かった先は、近くの河川敷。
どこからともなく取り出したスポーツ新聞を、二口さんが3枚並べて敷いてくれて、
僕はお二人に挟まれる形で真ん中に座らされ、乾杯(完敗?)の音頭を取らされた。

逃げるのは、とっくに諦めた。
さっさと本題を進めて話を終わらせ、1本だけ飲み切ってお開きにするのが得策。
最初の一杯を『ぷは~っ♪』っと捧げ合ってから、僕はすぐさまお二人に話を促した。


「早速ですが、岩泉さんからのご依頼…
  『ダチを助けてやってくれ』の、詳細は?」

僕の問い掛けに、京谷さんは咳払い…姿勢をピンと正し、低めの声を仰々しく出した。

   黒尾と赤葦が…『仲違い』したらしい。

「と、岩泉さんは仰った。『仲違い』…要は喧嘩したってことだろ?」
「俺らに『仲直り』を頼むとか、岩泉さんとは思えない、人違い?人選ミス?だよな~」

全く以って、その通り。
喧嘩の売買や、仲裁され慣れてはいても、人と人との仲を取り持つなんて、
僕達3人がおそらく最も不向き…妖怪世代ランキングで、トップ3独占かもしれない。

その点についての自覚はあるらしく、京谷さんも二口さんも揃って首を傾げ、
言い訳のように「岩泉さんご自身も、困惑されているご様子だった。」と付け足した。

「なぁ、おかしくねぇ?」
「あぁ、違和感パねぇ。」
「僕も、そう思います。」


二口・京谷・月島…『ふきつ』トリオに仲直りの依頼をしたことも、勿論。
だけど僕は、もっともっと大きな違和感を覚えずにはいられない、根本的な確信?があった。

「黒尾さんと赤葦さんが『喧嘩』なんて…
   絶対にありえませんよ。」

科学を心から愛する僕が、極力使わないようにしている『絶対』という言葉の強さに、
二口さんはキョトン、京谷さんは驚愕。僕の目を黙って見つめ、次の言葉を待った。
このお二人は、口よりも目で相手を追い詰めるタイプ…『真っ直ぐの視線』は、凶器だ。

僕は傍らの『ふわふわ』二体を膝の上に抱え、缶チューハイをごくりと飲み込んでから、
僕自身が一番驚いた『絶対』について、目を閉じてゆっくりと口を開いた。


「黒赤コンビは、絶対に『喧嘩』しません。
   するのは…『議論』だと思います。」

二つは似ているようで、全く違う。
『怒る』と『叱る』ぐらい…『暴力的な殴り合い』と『岩泉さんの鉄拳制裁』ぐらい違う。

喧嘩は、ただの感情のぶつけ合い。
そんなことしたって、何の解決にもならない。
僕なんか足元にも及ばないほど理性的で、合理性を心から愛する黒赤コンビが、
不合理の極致たる喧嘩に時間や労力を割くなんて、そんな馬鹿げた無駄をするはずがない。

それに対し議論は、解決に向けての理性的な話し合い。
何か二人の間に懸案事項があれば、徹底的に論を尽くし、建設的な道を構築するだろう。
周りからは喧嘩しているように見えるかもしれないけれど、その内実は天と地の差がある。
本当に相性が良く、互いに信頼し合っている…『仲良し』じゃないと、議論はできないのだ。

「目と口を閉じて、『笑顔』を形作っていたとしても、決して感情を表さない。
   そんな黒赤コンビが、感情を最も露わにする喧嘩とか…何かの間違いとしか思えません。」

きっと岩泉さんも、自分の勘違いじゃないか?という思いがあったから、
困惑を隠さないまま、かつ、『喧嘩』ではなく『仲違い』と言ったのではないでしょうか?

何かの間違い?勘違い?によって、どうやら黒赤間に齟齬が生まれているらしい。
だから、感覚の優れた愛弟子のお二人に、その『違和感』の正体を探って欲しいというのが、
岩泉さんからのご依頼の『真意』なんだろうなと、僕は思います。

「あんなに仲良しの二人が、喧嘩…?
   正直、考えたくもない異常事態です。破滅的な未来しか、僕には想像できませんね。」

冗談めかして言ってみたが、自分の言葉に自分で身震いしてしまった。
黒赤コンビなら、感情を殺した笑顔のままで…何をしでかすか、想像を絶する怖さがある。
あの二人だけは、絶対に怒らせてはいけない。これは文字通りに『絶対』だ。


「破滅的な、未来…」
「そうかも、しれねぇ…」

半ば冗談のつもりだったのに、京谷さんと二口さんはそれを文字通りに捉え、
深刻な表情を見合わせ…重い重い溜息を吐き、想像をはるかに超える異常事態を告げた。

「赤葦が、黒尾さんとは絶対に違う相手と…」
「仲睦まじい姿を見たそうだ…ホテル街で。」



「っ!?ば、馬鹿!チューハイ、ボタボタ零れてんぞっ!?あぁっ!?イチゴ…待てっ!!」
「目も口もカっぴらいて、意識ブっとばしてんじゃねぇよ!た、タオルっ!ティッシュっ!」

京谷さんが濡れた僕をワタワタ拭き、二口さんが土手を転がるイチゴをバタバタ追いかけて。
そんならしくない甲斐甲斐しい姿を呆然と眺めながら、僕の理性は彼岸へフワフワ浮き…
此岸に残ったのは、全く僕らしくないドドドドな『激情』だった。


「赤葦さんが、想い人以外の人と…浮気?
   それこそ、絶っっっ対に、ありえません!」

あの人は、面倒見の良い参謀っぽいですけど、自分が認めた相手にしか尽力しません。
敬意等を抱いた相手にしか、その能力を使ったり、身を預けたりなんて、絶対しませんよ。
高校時代は木兎さん、今は宇内先生を心の底だけで『尊敬』し、誠心誠意尽くす日々…
『赤葦さんに認められた人』だから、木兎さんと宇内先生は『タダモノ』じゃないんです。

でも、赤葦さんが特に認めない相手を、蔑んだり憐れんだりはしません。ただ無関心なだけ。
赤葦さんが一番厳しいのは、自分自身に対してだけ…自己評価だけが、異常に低いんです。
その点はまぁ、今の僕達にはどうしようもないことなんで、一旦置いておきますが。

とにかく、僕でもはっきり断言できることは…

「自分を大切にしてくれる『特別な人』を、
   赤葦さんは絶対に、裏切ったりしない。」


高校時代、ほんの少しだけ黒赤コンビのお世話になった僕から見ても、
感情を見せないからこそ、赤葦さんの『特別』がよくわかりましたよ。
木兎さん単体を見ている時には尊敬や尊崇。でも木兎さんが『ある人』と一緒の時にだけ、
視線にいつもと違う『想い』が、ごくわずかに混じっていたんです。

「憧憬、もしくは…羨望。」

これの意味に気付かないほど、僕は子供じゃありませんでしたし、
幼馴染でも自チームの後輩でもなく、ましてや他チームの弟子でもないというのに、
あの人が赤葦さんのことだけを、隠れてコッソリ『特別扱い』していた意味だって、
無自覚のご本人と赤葦さん以外は…日向やリエーフですら、気付いていましたからね。

ま、そんなわけですから、僕の予想としては…
 ①赤葦さんは絶対に悪くない
 ②浮気じゃなくてむしろ本気?
 ③よって、黒尾さんが全部悪い!

「『仲違い』の原因は、最愛のお師匠様です。
   それじゃあ、ちょっと…行ってきます。」


「あ、おい!!行くって…どこへ!?」
「お師匠様にこの怒りをぶつけ…いえ、叱咤激励してます。」

「待てって!まずは着替えて…顔洗え。」
「僕は別に、泣いてませ…。。。」

「…あ?お、おい、どうした…?」
「落ちたな。放っといていいぞ。
  『1本飲んだら15分寝落ち』ループだ。」

いきなり黙ったかと思うと、その場にコテンとなった月島に、二口は唖然。
京谷は平然と月島の腹にジャージをかけ、ふわふわのぬいぐるみを頭の下に敷いてやると、
二本目の缶を開けて二口に渡し、話を再開させた。


「なぁ、兄弟。今の月島の話…どう思う?」
「そうだな…根本以外正解、じゃねぇか?」

たった1回だけど、俺は宇内先生とこでの例の対談で、黒尾さんと赤葦に会ってる。
その時に感じた第一印象は…『お前らが対談すりゃ良くね?』だったな。
俺と青根を呼ばなくても、『理想的なコンビ』の見本が、すぐ間近にいるじゃねぇかってな。

「黒と赤のコンビも、伊達じゃねぇ…って?」
「マジでソレ。いや兄弟、キレッキレだな!」


でも、その『印象』が、途中からガラっと変わったんだ。
きっかけは、俺が赤葦に『及川式』を伝授してやったこと…まさかの『確定』が出た。

「あーあれか?ムギュっと抱いてピタっとおでこつけて…『脈アリ/ナシ』を探るクソ方法。」
「既に完成したコンビだと思ってたのに、その片割れが今まさに『変化の兆し』を見せた…」

赤葦からは背後の黒尾さんは見えなかっただろうが、対面の俺からはバッチリ見えた。
鉄面皮で必死に隠していたつもりでも、俺らの『及川式』熟練度をナメてもらっちゃ困る。
観察力のずば抜けた漫画家先生も、『兆し』に気付いたっぽい…それが『決定打』かな。

「仕事上の話じゃなくて、プライベートの方に関して言うと、
   黒と赤は、コンビ?ペア?として…俺らとの対談時点で未だ、繋がってなかった。」

黒の方は、俺らとの対談中に気付いた。んで、赤の方は…無意識よりの意識?だったな。
『俺の顔が好きか?』って聞いたら、『好みです』って赤葦は答えたんだ。
文字にしてみたら『好』って言葉を返してるように見えるけど、音は『すき』じゃない。
あの場で、無意識のうちに『すき』って言葉を避けた…

「その『無意識』こそ…確定サインだよな。」
「『及川式』の精度…悔しいが間違いねぇ。」


対談の後、俺達と先生&黒赤の5人で、朝まで飲んだくれたんだけどさ、
黒赤のキモチに気付いた俺は、接続しそうでしねぇ二人の視線が、気になって気になって…
ヤキモキ?ドギマギ?ソワソワ?なんかもう、わぁぁぁぁぁ~!!!って。

「妹の少女漫画、見てる気分だったぜ…」
「俺にも、その気持ち…わかりみ深し。」

「それなのに、対談の後、何かがあって…?」
「黒赤の接続が、途切れそうになってる…?」


黒尾さんと仕事上の付き合いがある岩泉さん自身も、高校時代の黒赤を知ってる月島も、
『繋がってそうで繋がってねぇ』二人に、困惑しきり…何とかしてやりたくて堪んねぇんだ。
1回対談して、一晩一緒に飲んだだけの俺も、黒尾さんと赤葦のこと、大好きになった…
地味で腹黒な裏方?まさか!黒も赤も、惹かれてやまない、すげぇ魅力的な奴らなんだよ!!

「アイツらとまた、夜通し飲みてぇ~!」

月島の話を聞いて確信したが、岩泉さんは俺達に難しい『仲直り』を頼んだわけじゃない。
俺は袖すり合っただけ、兄弟はまだ黒赤と会ったことすらねぇ…
ほとんど二人と接点がないけど、繋がりそうな俺達に、『きっかけ』になって欲しいだけだ。

勿論、俺らにできることなんて、ほとんどないだろうし、黒赤物語的には『端役』だろうよ。
でも、端役にしかできないこともある…端役がいねぇと、物語全体が成立しないんだ。
だからさ、兄弟。俺からも頼む!黒赤を助けるのを、助けて欲しい。んでもって…

「物語が無事に完結したら、兄弟も一緒に…
   皆で飲みに行こうぜ!」


ガバリ!と二口が下げた頭を、京谷はムンズ!と鷲掴み、わしゃわしゃ。
驚いて顔を上げた二口に、ニカっと口の端だけを上げて微笑んだ。

「水臭ぇぞ兄弟。手伝うに決まってんだろ。」

あのクソ及川が、よく言ってたんだ。
『人は、その人にとって必要な時に、必要な人と出会う』んだって。

同じ時期に、同じ日本で、同じくらいの歳で、同じバレーをやってただけの俺達が、
宇内先生の対談をきっかけに、いろんな形で出会い、繋がっていくなんて、誰が予想できる?
俺達がゲーセンでバッタリ、そこで岩泉さんの薫陶を受け、義兄弟の契りを交わしたことが、
これからの黒赤に繋がるとか、マジで震える…壮大な仁義ありまくりドラマじゃねぇか!


「兄弟。青根に…電話してくれ。」
「は?ここで、青根?何で急に…」

「月島を運ぶ係。あと、俺も兄弟の相棒と…
   青根とも、飲み交わしてみたくなった。」
「兄弟と相棒がダチになるとか、最高だろ!
   俺も青根と、もっと…飲んでみてぇし。」


乾杯!と、二口と京谷は空っぽの缶をぶつけ合ってから。
二人は未開封の月島の缶にも、もう一度…両脇から缶をぶつけた。




********************




「…何しに来たんだ?」
「さっきも言ったでしょ?
   最愛のお師匠様を…叱咤激励に。」


マンション入口のロビーインターフォンが鳴ってから、やけに時間が経ったような気がする。
何かの予感?それとも推察?で、険しい表情のまま固まる黒尾さんを促し、
とりあえず部屋着(音駒ジャージ)を羽織って身だしなみをざっと整え、廊下で来客を待機。

そんなに高層階でもないのに、なかなか鳴らない玄関のインターフォン。
手持ち無沙汰で月島弟の到着を待っている間、やや落ち着きを取り戻した黒尾さんは、
俺をちょいちょいと手招き…手櫛で優しく髪をサっとまとめ、ハーフアップ?にしてくれた。

「意外な特技…妙に慣れてません?」
「ん?あー、ガキの頃、時々幼馴染に…」

「コヅケンさん…お元気ですか?」
「ん-、適度に元気にしてんだろ。」

ただ単に、心ここに在らず…テキトーに返事しているだけなんだろうけども。
アイツなら放っておいても大丈夫だという、絶対的な信頼?安心?みたいな気配も、
そこには確かに混じっているように、俺には聞こえた。

   (こういうのって、何となく…わかる。)


創作という仕事に活かすため、周りの人のほんのちょっとした仕種や受け答えに、
その人の内心がどう映し出されているか(描くべきか)を常々考え、観察する癖をつけている。
勿論これは、超絶デキる我が担当編集者様からの御指示…日日是鍛錬、だそうだ。

今、俺が一番長い時間を共にしているのも、この担当編集者の赤葦さん。
というより、赤葦さん以外の人に会うことの方がレアで、次が黒尾さんかもしれないレベル。
アシスタントさん達がいらっしゃるのは、切羽詰まったド修羅場真っ只中だけだから、
皆さんの職人技を遠目に見習わせて頂くので精一杯、観察なんてとてもできる余裕はない。
だから、俺が最も観察の練習をしている人が、赤葦さん…最高難易度の無表情っ!!!

「常日頃から、俺で練習してください…はい、どうぞ。」
「無茶振りすぎ!どうせ、さっさとネーム出して下さいお願いします遅すぎる…でしょ!?」

「お茶もさっさと振る舞って下さいお願いします遅すぎ…」
「お湯、沸かします…遅くてスミマセン。」


まぁ、こんな環境で日夜過ごしている俺は、付き合いの長くなってきた黒尾さんのことも、
ある程度は読めるようになってきた。(赤葦さんよりは若干難易度低いぐらい、かな?)
だから、今の黒尾さんが無意識に醸す、焦り?緊張感?みたいな雰囲気に、既視感を覚えた。

   (あの時と…似てる。)

月島&山口コンビとの対談後。
黒尾さんは『阿吽コンビより安全』だと見積もって、愛弟子達を選択したのだろうけれど、
そのアテが外れ、愛弟子の姿に自分の中が大きく揺さ振られてしまった…あの時の顔。

まだ自身の想いは自覚しておらず、自らに生じた『揺れ』の正体を掴めず、
何とかそれを鎮め、自分の中から目を逸らすために…愛弟子に世話を焼きに行ったのだろう。

   (そんな急場しのぎなんて、もう手遅れ。)

真正面からぶつかり合う阿吽組。バレー内だけの相棒と言いつつ、どこよりも強固な鉄壁達。
そして、何一つ隠すことなく、真っ直ぐに『好き』を絶叫する、宮兄弟。
彼らとの対談で、徐々に広がってきた鉄面皮のヒビを、粉々に崩す決定打となるものを、
月島弟が今まさにここへぶち込んで来るであろうことを、本能で察している…緊張感だ。

   (既視感は、これだけじゃ…ない。)


そう、あれは…黒尾さん達とのコラボ事業が始まるよりも、もっと前。
ようやく連載が安定して、人気がちょっと上向きになってきた頃のこと。
まだ訓練は不慣れながらも、ごく僅かに感じ取った、微かな『内心の揺らぎ』だ。



*****



「宇内さん。巻頭が決まりました。」
「ほへ?完投??鯉軍、勝った?おめでと~」
「その『カントウ』じゃありませんし、我が鯉軍は…敢闘、しましたっ」
「ごっ、ゴメン…で、何のカントウ?竿頭…爆釣したの?」

「メテオアタックが、次々号の週刊少年ヴァーイで、巻頭カラーを飾ることになりました。」
「…やっぱ『釣り』じゃん。俺は信じない。」
「ある意味そうですし、宇内さん以上に俺が信じられないですけど、嘘くさい事実です。」

信じない…えぇ、信じたくないですよ!
俺がどんなに知恵を絞って、ありとあらゆる策を練って、キャンペーンを展開しても、
メテオアタックは鳴かず飛ばず…排球やめて野球とか蹴球に変えない?とウエからも言われ、
冗談抜きで『二匹目のゾンビ』コース目前かなぁと、文芸部への栄転も諦めかけていたのに。

「先週号の読者アンケートがいきなり上位。単行本の売上が、いっきに倍増ですよ!?」
「えっ!?嘘ウソ!それは絶対あり得ない!だって、別にイケメンキャラとか出してない…」

嘘ウソ!と首を傾げながら言いつつも、俺の両手は素直に『バンザ~イ♪』のポーズ。
暗転しかけていた『最強編集伝説~そして文芸部へ~』にも、ふっかつのじゅもんが…アレ?

「全然、嬉しくなさそう…ですね?」
「嬉しいわけ、ないでしょう。」

俺の多大なる策謀や、宇内さんの微々たるスキルアップが実り、皆様に認められたのならば、
これ以上に嬉しいことはない…たとえ鯉軍が完敗した翌日でも、諸手を挙げて踊り狂います。
でも、今回の『爆釣』は、俺達は全っっっく無関係のところで発生したもの…

「いんふるえんさー?な奴に、皆様が勝手に釣られただけなんですからねっ!」


事の発端は、世界規模のフォロワー数を誇る、某ゲーム攻略系動画投稿者の実況です。
予想よりもごく速く初見の新規モンスターを討伐してしまい、手持ち無沙汰になったところ、
たまたま部屋の隅に写ったものを視聴者が見つけて、投稿主に質問したことです。

   こたつの上の、漫画…?
   あーあれ、幼馴染が置いてったやつ。
   メテオアタックっていう、バレー漫画。
   スポ根プラス、リアルな描写がウリ、かな。

「…え、それだけ?」
「えぇ。たったこれだけ、です。」

大好物のゲームですらアッサリ。何にも執着せず、面白くないものには見向きもしない奴が、
幼馴染が置いてっただけの漫画を、おこたでゴロゴロ菓子食いながら何冊も読破したっぽい…
それって、むちゃくちゃ面白いってことじゃないのかっ!!?すっげぇ気になるーーーっ!!

「…はい、ぽちっとな。」
「お買い上げありがとうございますーーー!」

某ゲーム攻略系動画投稿者って、動画にも漫画にもアニメにも特にこれといって興味のない、
重度の活字中毒者(紙媒体派)な赤葦さんが、唯一チャンネル登録している、あの…
『世界のコヅケン』さんですよねっ!?嘘ウソうそうそっ!マジで嬉しい~~~♪
そんなビッグネームに偶然紹介して貰えたなんて、とんでもないラッキーじゃん!
神様仏様ビリケン様コヅケン様、あとはその幼馴染様?本当にありがとうございますぅぅぅ!

…と、皆様方に平伏す俺の傍らで、赤葦さんは一瞬だけ苦虫を1億匹ぐらい噛みつぶすと、
「チッ!!!」と、お見本のような舌打ちを盛大にかましてから、淡々と吐き捨てた。

「『何を』ではなく、『誰が』したか…
   世の中を動かすのは、結局そっちですよ。」


作者や担当編集者、出版社や書店。
創作に関わった『作り手』達がどんなに頑張っても、なかなか『買い手』には届きません。
しかし、消費者代表風を装うインフルエンサーが、たった一言「いいね♪」と言っただけで、
万人がそれに釣られ、世の中がガラリと大きく動いていってしまうんです。

しかも今回、アイツはメテオアタックを「面白い」とも何とも言ってない。
ただ単に、くろ…お、さななじみが、置いていっただけだと、視線すら寄越さなかったのに。
アイツの家に転がってただけで、念願の巻頭カラーがアッサリ転がり込んでくるなんて…

「宇内さんの努力は、一体何なんですか…っ」

リアルな描写?そりゃそうでしょ。
アイツなら、宇内さんの漫画がどれほどリアルかは、指先一本の動きでもすぐにわかるはず。
それならもっと、この漫画の凄いところを、微に入り細を穿つように語ってくれれば…
いやいや、じっくり語られるのも癪に触るし、らしくなさすぎてステマ臭い…じゃなくて。

「作品の内容や良し悪しそのものよりも、アイツが認めた(っぽい)ということの方が、
   世間の皆様にとっては、ずっと価値が高い…エモくてヤバくてマジ無理草生えるんです。」


これは、一次も二次も関係ありません。
どんなものを創作したかではなく、誰がその作品を認めたか…
インフルエンサーが「いいね」したり、リツイート数が多いものが、『良い』ものなんです。

「フォロワー数=いいね数=その人の価値…?」
「あくまでもSNS界隈に限った、ひとつの指標のはずなのに…不思議な話ですよね。」

SNSが情報拡散の主流である現代、この流れは決して変えられないでしょうね。
ですが、このままだと文芸界そのものが衰退の一途をたどるだけ…『作り手』が絶滅します。

「バエる?評価なきものは、見る価値ゼロ。」
「価値を生み出さないものは、消える宿命…」

二次創作はまだマシな方かもしれません。
第三者からの評価や、誰かと喜びを共有したい等の承認欲求を抑えることさえできるならば、
誰に見せるわけでもなく、ただ自分のためだけに、独りの趣味として創作を楽しめますから。
ですが、俺達出版社や宇内さんのような商業作家…プロは第三者の評価こそが全てです。

「作品が正当に評価されなければ、そこで…お終いなんです。」


それに、もう一つ大きな構造的な問題もあります。
読者アンケート等の評価が大勢を決める…ですが、回答してくれるのはほんの一部の人だけ。
WEBアンケートですら、最大有効回収率は3割程ですし、プレゼント次第で激変します。
大多数の人は、アンケートには答えない…いいねを1ポチするヒマすら、ありませんからね。
本当に作品が大好きで単行本を買い続けて下さる人でも、『声』まで出すのは稀でしょう?

「『好き』を声にして伝えなければ、その評価は『ない』のと同じ…我々には届きません。」
「『好き』は、自ら伝えないと…ゼロ。」

逆に言えば、簡単に声を発することができるツール…SNS等で『大きな声』を出せる人は、
声なき大多数の一般人よりも、はるかに『価値ある存在』となりうるんですよ。

「それが、インフルエンサー…」
「好きも嫌いも、『拡散力』が段違いです。」

まぁ、俺達が打つキャンペーン等の広告も、それと本質的には変わらないのかもしれません。
時代の流れと共に、使えるツールはどんどん使わなければ、滅びの道へ流れ逝くだけ…
メテオアタック…バレーの面白さを広く世に伝えるためには、どんな入口でも使うべきです。

アイツが本当にこの漫画を評価してくれていることは、俺にはよ~っくわかります。
だからこそ、余計に…編集者失格だと言われても、どうしても面白くないんです。

「たとえ御猫様の手を借りても、アイツの手を借りるのだけは…っ」


   …それに。
   何事にも全く興味なさそうなフリしといて、
   これ見よがしに撒かれた餌…それが罠でも、
   幼馴染が投げたものなら、素直に喰い付く…
   アイツも黙って大人しく釣られるってこと?
   バレーもきっと、そうやって始めたんだろ!

「幼馴染なんて、クソ喰らえ…っ?」



*****



この時はまだ、コヅケンさんとの繋がりや、彼の『お幼馴染さん』のことは知らなかった。
協会とのコラボのきっかけとなった、妖怪世代スペシャルマッチ以降、徐々にそれが判明し、
数々の対談を通じて、「幼馴染なんて、クソ喰らえ…っ?」と零した時の困惑&緊張顔と、
隠し切れなかった語尾の『…っ?』の意味が、俺にもようやくわかってきたところだ。

   (種類はちょっと違うけど…似てる。)

玄関扉を見つめたまま固まる、お幼馴染さん…黒尾さんの横顔。
その無意識の強張りが、既視感を覚えるぐらいに似ているのだ。

   (やっぱり、二人は…似た者同士だ♪)


「ん?人の顔見て、何をニヤついてんだよ?」
「えっ!?いやいや、べっつに~♪むふふ♪」

「あ。先生、目尻に睫毛が…じっとしてろ。」
「おっ、お手数お掛けしま〜す。」

黒尾さんが俺の頬に手を伸ばし、俺が目を閉じて『お手数』を待機しはじめた…瞬間。
ドン!!!という破裂音が玄関から響き、俺達はヒュッと息を飲み込み互いにしがみ付いた。
直後、既に鍵が開いていた玄関から、待ち続けていた月島弟が爆音と共に転がり込んで来た。

「おやおや。風呂上がり姿で、頬に手を添え熱烈抱擁…お邪魔してしまいましたか?」
「ちっ、違ぇよ!これはただ、鬱陶しいモジャモジャに…お前が急に飛び込んで来たから!」
「その咄嗟の言い訳?も、ものすっごいデジャビュるんですけど!」

あらぬ誤解を抱かれないように、俺は黒尾さんを突き放そうとしたけれど、時既に遅し。
月島弟は遠~~~く冷た~~~い目で俺達を見下ろし、はぁ~~~と重々しい溜息を吐いた。

「まさか、こんなことに、なってるなんて…」


ここに来るまでは、僕も半信半疑でしたよ?
いくら最愛のお師匠様でも、あの赤葦さんから愛想尽かされる程のヘタレじゃないはず…と。
でも、この状況を見れば、『あの噂』の信憑性も一気に増す…あからさまなぐらい歴然です。
黒赤の接続は、僕達が手を貸すまでもなく、もうとっくに…切れていたみたいですねぇ?

「…何しに来たんだ?」
「さっきも言ったでしょ?
   最愛のお師匠様を…叱咤激励に。」

あぁ、でも、もう無駄ですよね。
というかそもそも僕としては、ここに来たところで何かするつもりなんて、毛頭なかった…
デキる愛弟子の僕に会いたかったって、正直に言って下さってもいいんですけど…お生憎様。
対談後、お師匠様から賜ったありがたいオコトバを、熨斗付けて返しに来ただけですから。

   こうやって愛弟子に個別に電話したからって
   師匠が手ぇ貸してくれると…期待すんなよ?
   期待っつーのは、人をアテにして待つこと…
   自分では何も動かねぇ、ただの他力本願だ。
   人に期待した結果、腹立つことも多いだろ?
   だから、もう一度言う。俺に…

「僕に、期待しないで下さい。」
「っ…」


愛弟子からの『叱咤激励』返しに、ぐっと押し黙る師匠。
人をアテにするな。自分で考えて動け…何て厳しい教えなんだろう。
もし俺がこんな電話を受けたら、ケチ!とか無責任!と逆ギレし、結局何もしないと思う。
でも、対談後に教えを受けた月島弟は、発奮…おそらく、自分から動いたのだろう。
だからこそ、わざわざここに再びやって来て、師匠に教えを返した…

   (本当の意味で、師匠を助けるために。)

あぁ、何て奥深い…師弟関係。
コレを見たくなかったから、赤葦さんは月島&山口組を呼びたくなかったんだろうね〜

…って、ちょい待った。
何で月島弟は、師匠に『叱咤激励』しなきゃいけない事態が発生してることを、知ってんの?
それに、『あの噂』って何?とにかく、いろいろいっぱい、月島弟には聞かなきゃいけない…

   (ほら、お師匠様!しっかりして!)

俺を片腕に抱えたまま佇む黒尾さんの裾を、ちょんちょんと指先で引っ張ると、
ようやくハッと息を飲み、視線をしっかり合わせてから、俺の背をポンポン…
月島弟に向き直り、相対する言葉を発しようとしたところ、月島弟がそれを遮った。


「言い訳とか、僕は聞きたくありません。」

というより、そんなヒマは無くなった…黒尾さんがご自身のために動く時間は、消えました。
これは僕にとっても想定外でして、こんな『お土産』をお待ちしたことに関しては、その…
あ!ちゃんとした宇内先生宛のお土産は、京谷さんが手配して下さったそうですから!
だから、これはっ、つまり…

「まさか、こんなことに、なるなんて…っ」
「…?」


突然しどろもどろし始めた月島弟は、やや涙目で手と声を震わせながら、
それでは失礼しますお邪魔しました健闘を祈りますごめんなさい!と言い捨てると、くるり…
唖然とする俺達が止める間もなく、玄関扉を開けっ放したまま飛び出した。

「おい、ツッキー…うわぁっ!?」

追いかけようとした黒尾さんの元へ、ドン!という衝撃音と共に…月島弟、即カムバック?
そして続けざまに、ドドン!!と何が黒尾さんに突撃し、再びデジャビュる爆音を轟かせた。


「黒尾さん!今すぐココに、北さん出して!」
「行方不明なんや…北さんカモン!早ぅっ!」




********************




『貴方に、お贈りしたいものがあるんです。』
『この【星座早見表】…受け取って下さい。』

「…あ、ダメです!ゲージが下がりました!」
「何でや!?【星座早見表】一択やろっ!?」


炊き立て新米ホカホカカップルこと、赤葦京治&北信介の『恋人練習計画』の実態は、
『おデート』と称した都内社寺仏閣巡りがメイン…実に有意義で楽しいばかりの観光だった。

まさかトーキョーのビルの谷間に、大きな社寺がキレイに残っとるやなんて…!!
しかも『富士塚』て!こんなん、西じゃあ見たことあらへんで!?
このミニ富士山登ったら、ホンモノの富士山見えて、しかも登頂したことになるん!?と、
おのぼりさん北信介、大フィーバー…残念ながら、高層ビルに阻まれて見えなかったが。

「しんすけさんが、こんなに喜んで下さるなんて…人生初のおデート計画、大成功ですね!」
「恋人が喜んでくれるトコを、ドンピシャにセレクト…さすがけいじ君、レベルアップや!」

特にお気に入りだったのが、西新宿にある天神さん。
ここには、全国的にも珍しい『三柱鳥居』が、井戸を囲うように建っている。

「三基の鳥居が、柱三本を共有して、正三角形に隣り合って繋がっとる…初めて見たで。」
「京都・太秦にある蚕ノ社…木嶋坐天照御魂神社のものが、一番有名だそうですよ。」

   三本の柱で接続し、スクラムを組む…鳥居。
   三人がガッチリ結び合う、安定した…関係?

「まるで、どこぞの…やなぁ?」
「見えなくも、ないです…ね?」

お互いが思い浮かべたのは、自分が『柱』に組み込まれない側の、三角形。
それに聡く気付いた二人は、お互いからも鳥居からも目を逸らし、高層ビルを見上げた。


「正三角形なら、バランスが良いんですが…」
「柱へ向かうベクトルが、同じやない時は…」

柱二本が残り一本の方に向きを集中させる時。柱二本が直線に結ばれ一本が取り残される時。
ベクトルの向きと大きさが変われば、安定していた三柱の関係は、いっきに崩れるのでは…?

「柱二本の想いの大きさが均等なら、二等辺三角形でバランスとれるかもしれへんけど…」
「残された一本にできることなど、もうない…動きたくても動けないのが、実情ですね。」

一体、どの『三角』の話をしているのだろう?
新米の二人にもわかったのは、これは『おデート』中に語るべき話題ではない、ということ。
日本最大三角(のミニチュア)に登った疲れを癒すため、会話を止めて休憩処へ方向を変えた。



*****



二人が向かったのは、完全防音個室のネットカフェ。
床が全面クッション(ソファー?)になっているため、ゴロゴロ昼寝もできる遊興施設だ。

「徹夜明けで自宅に帰る時間がない時や、スッポリ空いた仕事の合間に、よく使ってます。」
「漫画読んだり、映画見たり、おデートで途中休憩したり…都会には便利なもんがあるな~」

足を伸ばして座椅子に背を預け、ゲーム機の電源を入れる。
ゲームなんてするつもりはなかったが、受付に置いてあったものに、興味を惹かれたのだ。

「恋愛シミュレーション、人生初挑戦です!」
「俺らの『予行演習』に、ピッタリやで!」

「要は、攻略対象の好みを把握し、それに応じた会話やプレゼントを贈り…」
「♡♡♡…の恋愛ゲージを満タンにできたら、結ばれるっちゅうことやな?」

何だ、結構チョロそう。すぐクリアやな。
そう高を括ってのんびりはじめたが、二人が選ぶものはことごとくハズレ…一向に進まない。

「『一緒にお星様見たいね♪』って、言うたやん?星座早見表は必携アイテムやんか!」
「攻略サイトによりますと、正解の選択肢は…は?シルバーのネックレス???」

「お星様、どこ行った?それに、ネックレスって…めっちゃ高いやつやなかったか!?」
「高校生が『はいどうぞ♪』って、気軽にプレゼントできるものじゃないでしょっ!!」

理屈が通らず、納得できないことだらけのシミュレーションゲームに、二人は疲労困憊。
コントローラーも四肢も投げ出し、ゴロリと寝そべって大文句を垂れ始めた。


「ツッコミどころが多すぎて、疲れたけど…」

一番納得いかへんのは、プレゼントの金額が高いほど好感度ゲージが大きく上がることや。
貢いだ額が評価に直結するとか、ここはキャバクラか?ホストクラブかっ!?
しかも、大層貢いで好感度上げたかて、ゲームをクリアできるわけやない…
ホンモノの『好き』はお金で買われへんっちゅうあたりが、リアル甚だしいわ!

「理屈が通らん、お金がそこそこの鍵、好感度や評価が高くてもダメ…難易度高すぎる。」
「恋愛シミュレーション…恋愛の難しさをリアルに教えてくれる教材かもしれませんね。」

自分達はリアルに非モテだと、完膚なきまで打ち砕かれた二人は、天井に向けて大きく溜息。
今回の訓練は大失敗(だが、人生の貴重な教訓を得た面では大成功?)だったと割り切り、
赤葦は話題と気分を転換すべく、そういえば…と明るい声を出した。

「今や自分の評価や価値は、お金さえ出せば買える時代…その鍵が『プレゼント』です。」


SNS上に時折流れてくる、『プレゼント企画』というやつが、それです。
当該企画を拡散し、企画主をフォローするだけで、アニメや漫画のグッズが当たるかも…?
2ぽち程度で気軽に運試しできるからか、ダメ元でプレゼント企画に応募してしまいます。

「北農園をフォロー&リツイしてくれた方のうち、10名様に『ちゃんと米』5kg贈呈や♪」
「ぐっ…それは、魅力的すぎます!おにぎり宮の30円割引券10枚つづりとかも…ズルい!」

北農園さんや、おにぎり宮さん…
プレゼント企画主体が、プレゼントの生産者や販売者そのものであった時は、
それはよくある企業のキャンペーンですから、宣伝広告の一環で、特に問題ありません。
その際には、景品表示法等の法規制も受けますから、比較的安全なものと思われます。

問題は、ただの一個人が企画しているもの…
○○好きな人と繋がりたい!的な謳い文句で、○○グッズをプレゼントするというものです。

「太っ腹な慈善家…なわけないか。その企画主に、何のメリットがあるんや???」
「何の見返りや目的もなく、自分の金を使って他人にプレゼントするわけありませんよね。」


ホンモノの慈善家は、そもそもSNSで告知なんてしませんし、グッズ?なんて贈りません。
本当に必要な団体や施設に、本当に必要なものをドン!と黙って寄贈していくと思われます。
そういう例外的な偉人聖人の話は、今回置いとくとして…

たった数千円程度、高くても10万円以下ぐらいのものを、たった数人にプレゼント?
とは言え、金のかかったものを、タダで他人に(梱包の手間と送料もかけて)贈るには、
『それ以上』に大きなメリットがあるからに、他なりません。

「好きな人と繋がりたい…もしかして、『ともだち』が欲しかったんかいな~?なんてな。」
「それで、ほぼ正解です。」

「…は?」
「より正確には、フォロワー欲しさ、です。」


SNSが情報発信・拡散の主流の現代、発信力を持つ人が『価値の高い』人とみなされます。
発信・拡散力の強さは、いいねとリツイ数そのものといえますから、
それらの数をより多く稼げる人が、SNS界隈では『価値ある』存在とされています。

「いいねを増やすには…フォロワーが多い方がえぇよな。」
「フォロワー数が多い=価値が高い=信頼性が高いアカウントに見えてしまうんですよね。」

「つまり、信頼という自分の評価を、カンタンに上げるために…『フォロワー』を買う?」
「もっとカンタンに…『フォロワー数の多いアカウント』そのものを買えばいいんです。」

「『フォロワー数の多いアカウント』は、高く売れる…そういうことか!」
「これが、公式さん以外が行うプレゼント企画の、『大きなメリット』なんですね。」

プレゼントの主目的は、カンタンな応募条件である『このアカウントをフォロー』の方です。
また、詐欺サイトへの誘導…『釣り』の場合もありますから、どうかご用心を。
タダにはタダの理由がちゃんとある…『下心』を観察する訓練も、必要かもしれませんね。

「いくらSNS上の評価が高くても、『リアルな自分』の価値とは、別物やな。」
「高価なプレゼントをくれた人を好きになるわけじゃないのと、同じですね。」


今回の『練習』の総括。
ホンモノの『好き』は、そうカンタンには手に入らない。そして…

「おデートでこんなおカタい話を延々してしまう俺達は…万人には非モテ確定です。」
「でも、そんな俺らを好いてくれる人だって、ごく少数ながら存在…それで十分や。」


   (ん?ということは、もしかして俺達って…)
   (相性抜群…ベストカップル、かもしれん?)




- ④へ続く -




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三柱鳥居(西新宿・成子天神社)


勘違いまたは人違いです5題
『2.僕に会いたかったって、
   正直に言ってしまっていいんですよ。』

恋ってやつは5題
『2.お金では買えないらしい』



2022/09/09
(04/16、09/08、09/09分SS小咄移設)


 

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