▲ご注意下さい!▲
この話は、BLかつ性的表現を含みます。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、閲覧をお控え下さいませ。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)
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ウチって、こんなに…遠かったっけ?
通い慣れた道のはずが、全然知らない場所みたいに見えるのは、
閑静な住宅街、しかも休日の夕食時だから、自分達以外の誰もいないせい…だろうか。
駅から離れてきたとはいえ、23区内。
休日でも深夜には程遠い時間なのに、誰ともすれ違わないなんて、結構なレアケースだ。
お陰様で、五指を絡めたまま全速力で早歩きしている姿を、誰にも見られることはなかった。
(だから、余計に…)
ひとけのなさと、力を入れ過ぎて感覚の乏しくなった手指。
そして、大好きな人と手を繋いで帰宅するという、期待や希望や妄想を遥かに超える僥倖に、
『現実感』がどんどん薄れ…でも、意外と脳内はクリアという、不思議な状態に陥っていた。
(この指で触れているのは、本当に…?)
俺は今、黒尾さんと一緒に居る…のか?
練習試合終了後から、黒尾さんの影しか見ていないし、陽も落ちた今は影すら見えない。
でも、植栽の間に引き摺り込まれ、壁に縫い止められて以降、ずっと手を繋いだままだから、
感覚が消えたとはいえ、俺の指は黒尾さんをしっかり捕まえていることは、間違いないはず。
それなのに、『現実感』をいまいちはっきり認識できないのは…実は、いつものことだ。
(一緒に居るのが…信じられない。)
言葉では、どう表現したらいいのだろうか。
好きで堪らない人と一緒に居られる幸せが大き過ぎ、脳が全部受け止めきれていないような、
こんなに幸せでいいわけないと、欲に溺れ過ぎないよう、脳がセーブしているような…?
いや、逆…か。
幸せはとっくに俺の閾値を超え、脳がショートしているのかもしれない。
ともかく、ごく稀に訪れる黒尾さんと二人きりの時間を、いつも非リアルに感じるのだ。
(嬉し過ぎて…夢としか思えない。)
「お邪魔します…って、御両親はお留守か?」
「息子が居ない休日の晩は…おデートです。」
「それなら、よかった。今日は手土産…持って来てねぇからな。」
「そんな、お気になさらず…また日を改めて、お願いしますね。」
「和菓子洋菓子…何がお好きか、わかるか?」
「両親共に甘党…好みを調査しておきます。」
ご丁寧に膝までついて靴を揃え、マフラーを外してから、家の中に向かって深々と一礼。
几帳面で礼儀正しい『黒尾さんらしさ』を無意識に発揮する一方で、俺とは手を繋いだまま。
(というより、この人は近々、俺の両親に菓子折を持って、何をしに来るつもり…っ!?)
その『黒尾さんらしからぬ』無意識のちぐはぐさに、頬やら何やらが自然と綻び…
俺は黒尾さんの右肩に、コテンとおでこを乗せて、外れかけた『箍』をそっと預けた。
「今日は、お湯…一緒に浴びませんか?」
*****
「手、繋いだままだと…脱げねぇよな。」
二人合わせて十本の指同士が、全部引っ付いて一つになってしまったみたいだ。
空気すら入らない程に密着した掌を浮かせ、固く結び合う指を、端から徐々に解していく。
小指、薬指、中指、人差し指…そして、最後の親指が離れる寸前、
その代わりとでも言うかのように、今度は空気を閉じ籠め合うキスをし、舌を絡め合う。
「キス、すごいひさしぶり…ですよね…んっ」
「だから、キス…とめないで、くれよ…っ。」
そういえば、三週間前に漫画喫茶でおデートした時も、
キスを交わしたのはたった一度…お湯を浴びに行く前に、『充電』した時だけだった。
おクチいっぱいに、これでもか!というぐらいお互いの存在を感じ合ったけれど、
これだけいっぱい、唇で唇の感触を味わったのは、一体…いつ以来だろうか。
「キス、こんなに、イイもの、でした…か?」
「その、確認の、ためにも…キスだけ、な?」
合間に話すのを一旦止めて、じっくりと互いを味わい尽くすキスを、離さず続けながら、
真逆の速さでブレザーを脱いでハンガーに重ねて掛け、指一本で互いのネクタイを引き抜く。
セルフサービスでベルトを外し、ズボンもきちんと畳んで洗濯機の上に重ねて置いてから、
逸る気持ちを誤魔化せない指で、たどたどしくシャツのボタンを開けていく。
露わになった赤葦の肌に、黒尾は手を滑り込ませると、指二本で胸の小粒を優しく摘み始め、
もう片方の手は五指を大きく広げ、背中から腰へと撫で下ろしていった。
対する赤葦は、指三本で黒尾のシャツの裾をそっと握ると、何かを促すようにキュっと引き、
黒尾の胸元で揺れる、銀色の環…2つ並んだうちの1つに、四本目の指先を引っ掛けた。
黒尾が驚いて唇を離した隙に、赤葦は再び黒尾の右肩におでこを乗せて、震える声で囁いた。
「革紐…濡れない方が、宜しいのでは?」
「え、あ…そ、そうだな。外しとくか。」
「リングだけなら、濡れても大丈夫、かと…」
「外しちまったら、なくさねぇかなぁ、と…」
シャツを握る指三本の力が、ほんの少しだけ強くなる。
精一杯の『オネダリ』のカタチを示しても、なかなか『wish』を叶えてくれない黒尾に、
赤葦はなけなしの勇気を振り絞り、ちゃんと言葉で望みを伝え始めた。
「普段使う革紐の代わりに、金属製のチェーンを、上に用意してあります…にっ、二本分!」
「さすが、参謀!なら、それまでの間、お前の『四本目』に…つけて貰っても、いいかっ?」
「は、はい!絶対、一生…なくしませんっ!」
「お、おう!それ聞いて…安心、したぜっ!」
右肩を潤す、緊張が混じった熱い吐息。
黒尾が革紐を外しても、赤葦はそこから顔を上げようとせず、深呼吸を繰り返すばかり。
それが、赤葦が必死に羞恥に耐えている仕種だと気付いた黒尾は、
赤葦を思い切り抱き締めると、遅くなって悪かったと謝ってから、左手の四本目にキス…
そして、重なり合うペアリングの片方を、赤葦の右手薬指に差し込んだ。
「とりあえず、予行演習…で、いいんだな?」
「ご予約、承りました…で、正解ですよね?」
このリングが、俺のじゃなかったら、
どうしようかと…怖くて、聞けなかった…っ
右肩を新たに濡らした温もりと、溢れ落ちてきた本心を、一粒残さず受け止めるように、
黒尾はリングのはまった右手で赤葦の頬を包んで、左手の四本目を赤葦の唇に押し当てた。
そう遠くない、本番の…確約の時は、
絶対にお前を待たせないと…約束するから。
はっきり『近々』を宣言した黒尾の方が、今度は赤葦の右肩におでこをピタリと密着させ、
緊張と安堵が絡まり合った息を、細く長く吐き出した。
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右肩に、触れるだけのキス。
これが、赤葦の『箍』を外すスイッチだ。
なんやかんや言葉遊びをしつつ、必死に普段の冷静さを保ち、羞恥心を誤魔化していても、
赤葦ではなく『俺』の方が、縋り付くように赤葦の右肩に顔を埋めると…途端にモード変更。
「黒尾さん、お風呂へ…早くっ」
「焦るなって…ほら、こっち。」
一緒にお湯を浴びながら、カラダでカラダを洗い合うように、互いの全身を絡ませる。
赤葦のカラダから強張りが抜け、俺に少しずつ体重を預け始めたのを見計らって、
右肩に、音を立てて…キス1回。背骨を辿って手を撫で下ろし、繋がる部分に…指一本。
「お…意外と柔らけぇな。」
「俺は、参謀…ですからっ」
いやいや、参謀はあんまカンケーねぇだろ。
俺は参謀。これはツツガナイ進行のため…とか言い訳しつつ、アレコレ致す姿が目に浮かび、
思わず頬がデレっとニヤけ…ふわっと緩み、それと同じくらい解すべく、指を深行させる。
「ん…っ」
感度を一段階嵩ませるポイントを掠めると、赤葦の指が、俺の右肩に爪痕を1つ付ける。
今度は俺が、赤葦の右肩にキスを2つ…指二本に増やしてもいいかと、尋ねてみる。
「…っ」
まだ…か。
それならばと、後ろではなく前へ。
赤葦らしさを体現するような、慎ましく自己主張をする胸を、反対側の指一本で擽ってみる。
前後合わせて指二本分の刺激を丁寧に与え続けると、『OKサイン』が唇から漏れてきた。
「んん…っ」
なんて素直で、わかりやすいんだろう。
指を一本ずつ増やす毎に、箍を留める番が一つずつ外れて、閉ざされた部分が開かれてくる。
なんだか、赤葦がカラダだけじゃなくて、俺にココロも全部開いてくれるようで…
(嬉しくて、たまんねぇ…っ)
後ろを指二本で十分解し、赤葦が体重を全て俺に預けて、右肩に爪痕を…2つ。
その先を催促するように、指三本で俺の熱を擦り始める前に、風呂から上がって一時休止。
ココでするのは、指二本迄…まだギリギリ理性を保ち、嬌声を『ん』に留めて置ける範囲だ。
あらゆる熱を冷まさないよう、キスを交わしながらバスタオルで包み、
五指をしっかり絡めて手を繋ぎ、2階の自室へと向かう。
すぐさまベッドに重なり合い、右肩にキス3回落とし、指を一、二、三本…順次沈めていく。
「んんんっ、あああ…っ!!!」
嬌声と共に、右肩に掛かる、3つ目の爪痕。
右肩にキスと爪痕が乗り、指の数が増えるにつれて、感度が右肩上がりに嵩ましていくとは、
まるで指数関数みたい…右肩に二乗、三乗、四乗すると、感度は四倍、八倍、十六倍。
もう、俺一人の指だけじゃ、あっという間に足りなくなってくる。
(五本乗せたら、二人の全部が…)
いつの間にか、両手の指二本ずつ、計四本指で箍を開き、
赤葦からの合図も、右肩に4つ…互いの視界も蕩け、俺の思考もそろそろ…閉じる。
指を全部引き抜き、五指で腿裏を擦って抱え上げ、全身で覆い被さりながら、
右肩に5回のキス…最後の1回だけは、繋がり合う証を残すように、強く吸い上げる。
「…っ、」
両脚を俺の腰に掛け、両手の五指をしっかり握り合って手を繋ぐ…前に、
赤葦は俺の五番目の指に、同じ指をキュっと絡め、強く上下に揺すった。
「誰かに、モフモフ甘えたくなったら、俺を呼んで下さい。飛んで行くと…約束、しますっ」
俺以外の誰かとモフモフして、寂しさを紛らわせるぐらいなら…
その姿を間接的に俺に見せて、俺を寂しがらせるぐらいなら、どうか俺を呼び寄せて下さい。
俺は、参謀…いえ、貴方の恋人なんですから、素直に頼られ、甘えられる方が…嬉しいです。
「もっと、俺を求め…一緒に居て下さ…ぁっ」
「今ので、完全に…俺の箍が、外れた…んっ」
赤葦の中に最後の熱一本を挿れて繋ぎ合うと、俺の右肩にも同時に、指五本分の爪痕が入る。
固く結び合った五番目の指と、深く番い合った熱を同じリズムで揺すり上げ、
俺は赤葦に、カラダもココロも全部開き…想いを曝け出した。
「お前の恋人は、想像よりずっと甘ったれ…すぐにモフりに行くから、覚悟しといてくれっ」
あー、もう、どうしよう。
俺の恋人…可愛すぎるっ!
- 完 -
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※指数関数 →y=ax
aをx乗したらyになる関数のこと。
a>1なら、右肩上がり…『ノ』っぽい形のグラフ。
2020/12/03