意之一番







「た…ただいま~」
「わ…わがやぁ~」


年末年始の『アッチコッチ』および『アレヤコレヤ』を終え、ようやく我が家に帰宅。
玄関に入って鍵を閉め、嵩張る荷物を降ろしつつ、冷え冷えした自宅へ御挨拶。

靴を脱いで、一緒に脱いだ靴下を持って洗面脱衣所に向かい、手洗いうがい。
それから、居間のエアコンを点け、Wi-Fiを接続して…あ、冷凍や冷蔵ものを入れないと。
お湯を沸かし、風呂のお湯を張り、部屋着に着替えてからゴロンと天を仰ぐ…その前に。

「やらねばならぬことは、山積してますが…」
「何よりも最優先で、すべきことがあるな…」


くるりと同時に互いの方へ向き直り、なかば倒れ込み、なかばしがみ付くように抱き合って。
腕の中いっぱいに互いの存在を確かめ、大きく深呼吸して互いの空気を取り込んでいく。

「危機的な…赤葦不足だ。」
「鉄朗欠乏症…限界です。」

邪魔なニット帽とネックウォーマーをずらし、マスクを剥ぎ取って投げ捨てる。
露わになった頬に両手を添え、おでことおでこを引っ付け、目を閉じてもう一度…深呼吸。
そして、吸い込んだ息を奪い取るようかのように、熱い唇で互いの『補給』を始めた。


「久々の赤葦…満たされるな。」
「やっと…帰って来ましたね。」

本当はキスぐらいじゃあ、全然満たされない。
おまけに、年末年始のシメ…年明け納品のためのド修羅場に、小一時間後から突入する。
とてもじゃないけれど、『全身あますところなく補給♪』なんてできやしない。

だから、せめて…あと3分。


「がんばるための、エネルギーを…」
「もうちょっとだけ…くださいね。」





- 終 -




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2020/03/03   (2020/01/05分 MEMO小咄移設)

 

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