▲ご注意下さい!▲
この話は、どちらかといえばギリギリ『R-18』の向こう側…
すなわち、BLかつ性的な表現を含みます。
18歳未満の方、性描写に嫌悪感を抱かれる方は、閲覧をお控え下さい。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)
とは言え、ガッツリ『R-18』かというわけでもなく、
夢か現か、判断が微妙な『境界線上』の話です。
ガッツリをお求めの方には、むしろ申し訳ないような…
それでもOK!な方 →コチラをどうぞ。
「俺はこちらを干してくるので、新しい方を…お願いしますね。」
「あぁ、わかった。床も軽く…掃除機かけとけばいいんだよな?」
冬は、何故こんなに急いでやってくるのだろうか。
軽く羽織るものが欲しいな…と思った矢先に、ジャケットやコート、
それにマフラーまで必要になってきた。
黒尾さんと二人、この家で生活を始めた頃は、まだ真夏。
居間の座卓の下に敷いていたのも、涼しい井草のラグだった。
それをつい2週間程前、薄手の絨毯に変えたばかりなのに、
ここ数日の冷え込みに耐えられず、急遽真冬用を購入した。
座卓を和室へと移動し、『もっちり低反発ラグ(こたつ敷用)』に、
二人で模様替えしているところである。
この家は、本当に居心地が良くて、実に快適なのだが、
いくら気密性が高いとはいえ、鉄骨造の3階は…よく冷える。
真下の月島・山口宅…彼らがまだ寝室を利用していない時間帯は、
エアコンをガンガンにたかないと、じわじわと底冷えしてくるのだ。
(贅沢とはわかっていますが…床暖房が欲しいですね。)
特に黒尾さんは、床にゴロゴロしたがる習性があるため、
体が冷えないようにと、ウレタン入りの『もっちり』を購入した。
ついでに肌掛け用にと、『とろける肌触り』の毛布も揃えた。
両方とも、謳い文句通りの触り心地…
もし猫を飼っていたら、飼主より先にこの中に飛び込み、
トロンとした表情で、『ふみふみ』していることだろう。
絨毯を干し終え、居間の続き間…和室から部屋へと戻る。
和室には、まだ座卓がそのまま置かれており、
いつもより広く見える居間…真新しい『もっちり』の上に、
『とろける』に包まれたカタマリが転がっていた。
(ウチにも居ましたね…頭と腹の黒い猫が。)
どうやら、飼主より先に『ふみふみ』…ではなく、
『もっちり』と『とろける』の感触を、つまみ食しているようだ。
「居心地は…どうですか?」
声を掛けてみるが…返事がない。
どうやら、既に寝ているようだった。
相変わらずの寝つきの良さに呆れつつも、
そっと『とろける』の端を引き、中をチラリと覗き込んでみる。
(っ!!や…やりましたっ!!)
中には、猫のようにコロンと丸まって、穏やかな寝息を立てる姿。
しかも、普段はうつ伏せ寝で、稀にしか拝めない『天使の寝顔』が…
(『とろける』の称号に、偽りなしです!!)
ちょっとお高かったが、思い切って買って、本当によかった。
たった一枚の毛布が作り上げる、奇跡の寝顔…
これだけでもう、完全に元は取れた…と、俺は一人で大満足した。
大満足した…とは言え、こんなチャンス、滅多にない。
俺は足音も息も止め、こっそりと近付き…
そっと『とろける』の中に入り込んだ。
ベージュの『もっちり』と、オフホワイトの『とろける』の中は、
レースのカーテン越しに部屋を照らす、昼下がりの陽射しを受け、
ほんわりと白く淡い光に包まれ…雲の上のような雰囲気だ。
(天国って…きっとこんなカンジでしょうね。)
柔らかい光と温もりの極上空間は、まさに夢見心地。
これは、寝てしまっても…仕方ないだろう。
ここ最近、突発的な仕事が立て続けに入り、
かなり慌ただしい日々が続いていた。
昼食後にこんなにゆっくり…絨毯を敷き替える余裕ができたのも、
本当に久しぶりのことだった。
(黒尾さん…毎日お疲れさまです。)
起こさないように、少しだけ身を寄せると、
黒尾さんは無意識のうちに俺を抱きすくめ、脚を絡めてきた。
これは…睡眠時ご愛用の『ペンギン型抱き枕』と、勘違いされている。
腕と脚の両方で、ガッチリと抱き締められ、逃げられなくなったが…
もとより逃げる気は、さらさらない。言い訳ができて、むしろ好都合だ。
『もっちり』と『とろける』、そして『ぬくぬく』の黒尾さんに包まれ、
しかも目の前には、激レアな天使の寝顔である。
(これぞ極楽…生きててよかった…)
『爽やか好青年』の笑顔下には、鋼鉄製の厚い壁…
感情を自分の腹の中に隠し、中々ガードを崩さない黒尾さん。
その人が今、自分の目の前で、安心しきった寝顔を曝しているのだ。
警戒心の強い猫が、飼主と二人きりの時だけに、ごく稀に見せる隙…
僅かな時間でも、こういう姿を見られ…飼主冥利に尽きるというものだ。
極上の幸福感に満たされた俺は、頬の緩みを止められないまま…
…少しの間、寝ていたようだ。
この気持ちよさ…眠くなって当然である。
黒尾さんは、さっきと同じ格好のまま、静かな寝息を繰り返していた。
だが、俺が寝る前とは一か所だけ、大きく変わっている部分があった。
溜まった疲れと心地好さ、そして絶対的な安心感…
(こうなって…当然、ですよね。)
『気持ちイイ』を一番素直かつハッキリと表す部分が、
『今…サイコーに気持ちイイです…』と、声高に主張していた。
これは、抗うことなどできない、生理現象だ。
実際に、黒尾さんのだけではなく…自分の方も、似たような状況だ。
だが、体全体で抱き締められ、密着した状態の今、
生理現象ではない『気持ちイイ』を、誘発される…当然ながら。
息を吸って…吐いて…
次に吸い込む直前に、ピクリと動き、大きくなってくる。
穏やかな呼吸の度に、脈打つ熱…
密着する自分の熱も、その動きに否応なく煽られてしまう。
最近多忙だったのは、こちらも全く同じ。
こうして触れ合うのも…結構久しぶりなのだ。
一緒に生活と仕事をし、毎日四六時中顔を合わていると、
逆に禁欲が長くなってしまうことがある…
個人事業主の家庭では、特にありがちな話でもあり、
ウチも実際にここのところ、その『御多分に漏れない』状態だった。
つまるところ…イロイロと溜まった状態、である。
それはもう…こうなって至極『当然』。不可抗力だ。
(ちょっとだけ…)
そろりと腕を伸ばし、背中に手を回そうとした。
その途中、シャツが捲れ上がって、腰が出ていることに気付いた。
(風邪、引いてしまいますよ…)
本当は、シャツを引っ張り、ズボンに挟むつもりだったのだが、
不意に触れた素肌の感触に、思わずそのまま手を滑らせ…
自分から抱き着き、すべらかな背中を夢中で撫でていた。
『もっちり』と『とろける』、『ぬくぬく』に…『すべすべ』だ。
このスペシャルコラボに『気持ちヨく』ならない人がいるのなら、
ぜひとも教えて欲しいぐらいである。
(もうちょっとだけ…)
お腹側のシャツもそっと引き出し、お臍の上ぐらいまで捲り上げる。
起こさないように、慎重に…下の方に体をずらしていく。
そして、露わになった腹部に、ぴたりと頬を擦り寄せる。
(ホントに…気持ち、イイ…)
掌以外で直接触れた素肌の感触に、思わず吐息が零れ落ちる。
それがくすぐったかったようで、黒尾さんは少し身動ぎをし、
俺を抱く力が、ちょっとだけ緩んだ。
自由に動ける範囲が増えた俺は、これ幸いにと…
背中から腰へと大きく手を動かし、撫で続けた。
最初はあやす様に。そして、いつしか…煽る様に。
(もうそろそろ…起きて、下さい…)
『とろける』空間に居るせいか、脳内も蕩けてきた。
もっともっと、気持ちヨくなりたい…それだけが、思考を支配する。
手が入るギリギリのところまで…背中から腰へ、腰から仙骨へ、
そして尾てい骨の辺りまで、そわそわと撫で回していく。
その『なでなで』が余程気持ち良かったのだろうか、
黒尾さんは大きく深呼吸し、手足をぎゅ~~~っと伸ばすと、
ふにゃり…と、全身をゆったり弛緩させた。
(まるっきり、猫じゃないですか…)
リラックスの極致。緩み切った姿を、無防備に曝す。
こんな姿を見られるのは、俺だけ…その事実が、更に自分を熱くする。
黒尾さんの『幸福度』バロメーターも、MAX状態。
さっきよりも下にずれた分、胸元から喉の辺りにその熱が触れ、
時折ピクリと動き…俺のバロメーターを振り切らせようとする。
下腹部から頬を離し、ちょっとだけ下を向いたら。
唇が触れる位置に、その熱が…
(………。。。)
すっかり蕩けきった思考。
ゴクリと喉を鳴らした音が、『もっちり』と『とろける』の中で響く。
背を撫でていた手が、ジャージの腰ゴムに引っ掛かり、
ほとんど無意識のうちに、ほんの少しだけ…それを下ろしていた。
目の前にちょろっと顔を出した、黒尾さんの熱。
その後は…よく覚えてない、ということにする。
**********
(すっげぇ…気持ちイイ…)
まるで雲の上を歩いているような…
でっかい白猫の、ふわふわの腹毛に埋もれている感じ。
柔らかい温もりに包まれ、極上の微睡みの中、漂っていた意識。
そわそわと触れる…毛先?
そのくすぐったさに、右目だけを薄く開ける。
(ここは…天国か?)
本当に雲の中に居るような、明るい白の世界。
周りの雲がゆらゆらと揺れ、その緩慢な動きが、また心地良い。
ふと、下の方で黒い塊が動いているのが見えた。
少しうねる毛…それが、白い世界をゆらゆら揺らしていたようだ。
(猫…か?)
普段はツンと澄ました飼猫が、ごくたまに、飼主に甘えてくる…
飼主が寝ている隙を狙って、こっそりと擦り寄ってくるのだ。
何となく、そんな情景が頭に浮かび…似たような奴を思い出した。
(何か、赤葦みてぇな猫、だな…)
全てを見透かすような、澄んだ瞳。
気を抜くと、羽毛の下から鋭い爪で、襲い掛かってくる…
猛禽類のそんな姿は、猫科の動物にも通じるものがある。
どちらも見た目とは裏腹に、獰猛で狡猾なハンターだ。
だが、そんなハンターが誰かに懐いた時、ごくごく稀に、
スイッチが入った(切れた?)かのように…甘えてくることがある。
(それが、滅茶苦茶…可愛いんだよな。)
いつも引っ付いて、従順に尻尾を振ってくれる犬も、勿論可愛い。
だが、俺自身も猫…『レアな瞬間』にこそ、喜びを見出すタイプだ。
気高い獣に、尽くしてきて良かった…飼主冥利に尽きる瞬間である。
薄く開いていた右目は、いつの間にかまた閉じていた。
本当にここは…気持ちイイのだ。瞼が自然と降りてくる。
瞼は降りようとするのだが…何かが湧き上がってくる感じもする。
この不思議な浮遊感…やっぱりここは、天国か?
再度ぼぅ…っとしかけた意識だが、
ドクリと突き上げる熱に、一気に意識も浮上した。
はっきりと両目を開け、下で蠢く猫?を見て…
すぐにギュっと、再び固く目を閉じた。
(なっ…!?これは…夢に違いないっ!!)
目が覚めたら、愛しい人が、自分の中心で舌を蠢かせていました。
…なんてのは、古今東西全人類の男が妄想する『極楽』だろうが、
そんな光景が本当に目下にあったら…夢としか思えなかった。
人間は、とんでもなく悪いことと、とんでもなく良いことが起きた時、
そのどちらの場合にも『これは夢だ。』と思う生き物…らしい。
あまりに現実感のない情景に、御多分に漏れず俺もそう思った。
だが、腹をくすぐる柔らかい毛先の感触と、
腹の底からじわじわと発熱する痺れは…やけにリアルだ。
奇跡的とも言える『夢のような光景』を、
しっかり目に焼き付けておきたい…という願望もあるのだが、
この光景を視覚情報として脳に入れてしまうと、
その瞬間に『極楽』にイってしまいそうだった。
ここ数日の(致し方ない)禁欲もあり、この情報は…刺激が強すぎる。
何よりも、自分一人だけで極楽直行なのは、申し訳ない。
禁欲生活は、あいつも同じ…これが夢なら、同じ夢を見ていたいし、
現実であるならば、共に夢見心地を味わいたい。
(よし…他のことを考えて、冷静に…)
今、俺が居るのはどこで、何をしていたのか…?
…そうだ。新しい『もっちり』こたつ敷に替えて、
その上に『とろける』毛布を掛けて…
あまりの気持ちよさに、即オチしてしまったのだろう。
最高の肌触り…本当に『買主』冥利に尽きる、良い買い物をした。
奮発してダブルサイズを買って、大正解だったな。
少しだけ出た背中に、直に触れる『とろける』の感触…
これだけでも、ため息モノの気持ちヨさだ。
(もっと…素肌に、触れてほしい…)
触れて欲しいのは、『とろける』だけじゃない。
横向きに寝ているせいで、少ししか下げられなかったのだろう。
赤葦はジャージの腰ゴムを片手で抑えながら、
僅かに覗いた先の方だけを、チラチラと…
まるで猫が毛繕いするかのように、舌を這わせている。
(そんなんじゃ…足りねぇよ…)
もっともっと、気持ちヨくなりたい…
焦れったさに身動ぎをしようとした瞬間、赤葦は口と手を離した。
どうやら、ゴムを抑えていた手が、疲れてしまったらしい。
刺激が途切れてようやく、これが『現実』であることを理解し、
また『夢』に戻りたいという欲望が、脳内を完全に支配した。
トロンとした表情で、何とか肌を出そうとする、健気な姿…
その一途な仕草だけでもう、蕩けそうだった。
(お前と一緒に…気持ちヨくなりてぇ…)
俺は何も言わないまま、そっと腰を浮かせ、自分で引き下ろした。
仰向けになり、指先で赤葦の頬をくすぐると、嬉しそうに微笑んだ。
喉を撫でると、本当に猫みたいに、その手に頬を擦り寄せる。
首輪の鈴を鳴らすように、上着のチャックを弾くと、
待ってましたとばかりにそれを開け、俺のチャックにも食い付いた。
吐息以外の『言葉』を発してしまわないように。
この『とろける』世界から出てしまわないように。
慎重に慎重に、少しずつ被っていた『猫』を脱いでいく。
夢か現か…境界が曖昧な、オフホワイトの空間。
たった一枚の毛布が作った、奇跡的な世界を壊さないように、
脳も体も全て…『とろける』に任せてしまおう。
『もっちり』と『とろける』、そして…『あかあし』。
素肌に直接触れる、最高に気持ちイイものに包まれ、
俺は本当に幸せ者だなぁと、心からそう思った。
- 完
-
**************************************************
2016/11/18