ご注意下さい!

この話は、BLかつ性的表現を含みます。
18歳未満の方、性描写が苦手な方は、閲覧をお控え下さいませ。
(閲覧により不快感を抱かれた場合、当方は責任を負いかねます。)

※いつも通りただの『蛇足』ですので、こちらを読まなくとも、物語の完結にはさほど影響はございません。


    それでもOK!な方  →コチラへどうぞ。




























































    奏愛草子⑭ ~ ドリーマー ~







「僕の横で…隣の部屋で、待ってて。」


失恋から始まったと思い込んでいた、ツッキーとの同居(のちに別居)生活。
でも、どうやらそれは俺の勘違い?だったらしく、多分、ずっと…両想いだった?っぽい。

   (あんま…信じられない、けど。)

さっき玄関先でもらった言葉と、降り注いだ…甘い甘いキスのあめ。
夢にまで見たことが現実になったはずなのに、夢としか思えないぐらいの、現実感のなさ。
ココロもカラダも浮かれまわり、ふわふわと虚空を漂っているみたいな…まさに夢見心地。

   (ホントに、夢…だったりして?)

おそるおそる、震える手で頬に触れる。
自分の指の感触で、さっきまで触れていたモノが全く違う感覚だったことをはっきり自覚し、
耳朶の裏で冷たくなっていた、拭いきれなかった『あめ』の名残に、もっと震えてしまった。

   (夢じゃ…ないっ!!!!)


うわぁぁぁぁぁぁ~~~~っ!!!と、叫び出しそうな口を両手で抑え、自室へダッシュ!
真っ赤に熟した『イチゴ』を枕に埋めながら、ひゃぁぁぁぁぁぁ~~~~っ!!!と絶叫。
すると、その枕から『良い夢を…共に見続けろよ?』という返事が聞こえた気がした。

   (ツッキーと共に、この枕で、夢を…っ)

僕の横…隣の俺の部屋で待っててと、ツッキーはお風呂へ『イロイロな準備』をしに行った。
イロイロ準備的なモノを整えるって、つまりっそれはっ、『共に寝る』ための…ってコト!

カッコつけたがりだから、『はじめての…』の時にテンパって無様な姿を晒さないようにと、
きっと今頃、入念な事前準備として、酔い覚まし兼暴発防止対策をお風呂場でヤってるはず…

   (さすがツッキー!ヌけ目ない…あ、逆か?)


と・に・か・くっ!
ツッキーが全身をくまなく洗い、ぬるめの湯に浸かって酔いをさますのに…ざっと15分。
アルコールがだいぶヌけてきても、しばらくはヌけないだろうから…10分程タつのを待つ。
んで、なんやかんや妄想しつつ、イロイロな事前準備を終えるのに、まぁ5分ぐらいかな?
その後、お風呂から出てカラダを拭き、髪を乾かして歯を磨いたりで、10分ちょい。
最後に水分補給しつつ『ハウツー』を確認し、ココロを整えるのに…10分あれば足りる?

   (約一時間…俺を放置ってことじゃんか!)

自他共に認めるツッキーマニアの俺がはじき出した、この確度の高い概算…誤差は±5分。
お風呂に駆け込んで、まだ10分ほど。シャワーの音が聞こえているから、洗髪の途中だろう。
残り40~50分ぐらい、俺は独りで悶々と、羞恥やら期待やらをイロイロと籠らせながら、
ココで大人しく待ってなきゃいけない…いや、フツーに考えて、待てるわけないでしょ!

数年分の片想いで募りに募った妄想が暴走し、恥か死んじゃう!!…だったら、万々歳。
大人しく待ってる間に、ココロもカラダも大人しくなっちゃう…イロイロなモノがさめそう!

   (夢からさめたら…マズいよね!!?)


どう考えたって、『はじめての…』の時は、夢見心地の方がイイに決まってる。
冷静さなんて邪魔なだけ…できる限り現実から目を逸らし、夢を見続ける方が得策だと思う。
多分、この『夢見心地』という催眠術?の効力が続く期間が、俗に『新婚さん』ってやつで、
枕を共にし、一緒にステキな夢を…相手と自分のイイトコだけを見るのが、最善策だろうね。

だとすれば、俺がツッキー待ちの間にすべきことと言えば…?

   (同じ夢を見て…『イロイロな準備』っ!)

ベッド下の衣装ケースに、そろりそろりと手を伸ばし、タオルの奥から薬局の袋を引き出す。
『お隣さん』をよく見かけるスーパー内のテナントの、中身が透けない銀色ビニール袋には、
もうスッカリ完治したけれど、予備と(いうことに)して購入した大判キズテープが数箱と、
キズテープと同じ棚の『下』に並んでいた、イロイロで傷付かないための保護グッズ達…
『お隣の奥様』を見習い「『月島』で領収証下さい!」と、準備したアレコレが入っている。


   (『お隣さん』と言えば…)

数年振りにバッタリした知人達が、紆余曲折を経て、人生を共にする『パートナー』にっ!!
これは、ただの仲良しだとか大親友だとか、お付き合いしている恋人同士とはワケが違う。

相手のステキなとことか、スキなとこに惹かれて一緒に居るっていうだけじゃなくて、
むしろイヤなとこや、辛く悲しいことも全部含めて共有し、互いに受け止めなきゃいけない…
この人となら、喜怒哀楽も、ハレとケも、特別も普通も分かち合えるっていう、覚悟が必要。

   相手を慕い、深く思い合う…『恋』
   相手の全てを、受け入れる…『愛』
   両方が揃ってはじめて…相思相愛。

黒尾さんは、パートナーである赤葦さんのことを、『枕が合う』相手だと断言していた。
これは、『抱き枕』や『腕枕』としての資質が最高だという意味だけじゃなくて、
自分が心から信頼し、支えとなってくれる『よりどころ』だという、愛の告白に他ならない。

自分の全てを晒し、安心して預けられる…毎晩枕を並べ、穏やかな眠りを共有できること。
共に生き、共に活かす…『生活』できる相手に抱く想いは、もう『恋』のレベルじゃない。
『恋しい人』が『愛しい人』にまで深まったから、『お隣さん』は『新婚さん』になった…
数値では表せない程の幸運を惹き寄せ合った黒尾さん達を、心の底から羨ましく思う。

   (いつか俺も、俺達も…お隣さんみたいに…)


まだお隣さんの正体を知らなかった頃、ベランダの洗濯物を見ながら、二人で言ってたっけ。

   『夜深し 隣は何を する人ぞ』

正体を知った後は、その歌がちょっとだけ違うと気付き、脳内で修正。さしずめ、今なら…

   『欲深し 隣はナニを シてるやら』

やけに頻繁に薬局で見かける、お隣の奥様。
このギンギラの袋の中身と似たようなモノをた~っぷり使い、ギラギラな『共寝』を…っ、
まだ『恋』のスタートラインに立ったばかりのウチとは違い、『愛』に到ったお隣さんは、
それはそれはっ、濃厚かつ芳醇にっ…枕を並べたり重ねたり交わしたりしまくってるはずっ!
コッチのイミでの『枕』だって、ズッポリ合わせまくりに違いないよねっ!?

   (俺達も、『お隣さん』を…目指そうっ!)


お隣さんみたいに、相思相愛なパートナーになりたいと願うのなら、
俺も腹を括り、自ら動き、全てを晒し…『つみれだけ』にならないように、戦わないと!

   (俺ならできる…赤葦さんと、約束したっ!)

どうか俺に、力を貸して下さい!と、枕を隣の壁に向かって掲げ、深々と一礼。
そして、とろ~っとしたハニ~なアレを掴み出し、瞼を下ろして外装のビニールをペリペリ。
枕の下にそれを突っ込んで隠してから、ボフン!と枕に顔を沈め…更に固く目を閉じた。


「おおおっ俺も『イロイロな準備』しながら…
   熱をさまさないよう、がががんばるよっ!」




*******************




まずは、そう…このあたりから。

腹這いのままパジャマの上から腰をさわさわ。その手を横から下へ滑らせ…お尻をむにゅり。
当然と言えば当然だけど、思ったほど『むにゅり。』じゃなくて、薄っぺらくて固い。

   (俺、意外と…スレンダーボディ?)

すぐ身近(真横)にモデル顔負けのツラ&カラダがあると、そっちばかりに目がイってしまい、
自分のカラダなんて、「ツッキーより小さい」とか、対ツッキー比でしか見てこなかった。
パーフェクトボディのツッキーよりは、俺のは『ふにっ』として触り心地良さそう…かな?

   ふにふにふにふにふにふに………。
   ………うん、特に何の感想もない。

まぁ、自分で自分を触ったって、こんなもん。妙に冷静になって…ダメだ、逆効果じゃん。
発想を転換して、コレはツッキーのカラダ!!って妄想して、再チャレンジしてみようかな。
この方法だと、俺が右だろうが左だろうが、ココを慣らしてもらう(あげる)練習になる…

   (…いやいや、『逆』の方がイイかな?)


   今からこの『左手』は、ツッキーの一部。
   ツッキーが、俺のカラダを、弄って…っ!

「っっっーーーっ!!!」

利き手じゃない…思うようには上手く動かせない左手を、『俺じゃない存在』とするだけで、
何だか一気に『誰かに触られてる』という感覚になり、ゾクリと腰が跳ねた。

   (あ、コレなら…イケそう。)

おそるおそる、まるで宝物…化石を扱うような手つきで、ゆるゆると撫で回す。
下着とパジャマ越しのフェザータッチなんて、じれったくてくすぐったいだけ…なのに、
それがまた、実は慎重派(ビビリとも言う)のツッキーっぽくて、何だかもぞもぞしてくる。

   (ツッキーっぽさを、より追求するなら…)

丁寧な発掘調査のためと言い訳しながら、隅々までスキャニング…トレンチ(溝)をなぞる。
そして、偶然にも『掘るべきポイント』を発見したかのように装って、
ボーリング棒を挿す一地点を指で入念に確認…そこを目指し、表土を少しずつ剥がしていく。


   「山口…大丈夫?怖くない?」

トレンチを辿り、パジャマの中に手を進める。シルキーな下着の手触りに、吐息が漏れる。
大丈夫…まだ、怖くないよ。でも、このまま固い地層を掘り進むのは、得策じゃないよね。

   「ねぇ、ちょっとだけ、腰…上げて。」

膝を肩幅より少し狭めに開いて曲げると、わずかに溝が広がり、指をスっと動かせるように。
でも、まだ太腿とお腹が密着した土下座みたいな格好のせいか、余計にお尻は固くなった。
ツッキーの手は、強張る俺を宥めるように大きくお尻を擦り、上へ持ち上げるように誘った。
その動きの合間合間に指で溝を撫で、掘削点を掠めるスピードだけを、やけに緩くしていく。

   (そんな風に、優しく撫でられちゃうと…っ)

その『緩める動き』に、徐々に息が上がり…同時に腰も、自然とじりじり上がってくる。
でも、腰は上がったのに、パジャマの高さはそのままの位置…膝あたりで留まっていた。

   「脚…腿、寒くない?」

露わになった素肌の腿裏を温めるように擦り上げられると、逆に寒気に似たゾクゾクが走る。
わざと窮屈な腿と下着の境から指を挿れ、溝を探り…ツッキーは困り顔でこう囁くんだ。

   「宝物を壊さないように…保護していい?」


これはしっかり保護するためだから。山口がイイよって言ったから。
そんな言い訳をしているみたいに、おずおずと躊躇いがちに下着をおろしていく。
腿の真ん中あたりまでずらすと、急に恥かしさが込み上げ、ドクンと心臓が跳ねた。

   「凄い…ヤらしい格好、だね。」

でも、これでもまだ調査しにくいから…枕にほっぺ付けて支えて、もうちょっと腰を上げて。
膝立ちになるぐらい、しっかり腰をこっちに…うん、脚は肩幅よりも広げてみてくれる?

   (このポーズ、前の方にも、熱が溜まっ…!)

ツッキーは枕の下からそっとローションを抜き出し、左手三本指に乗るだけ…トロリ。
零さないように注意しながら、それを静かに溝に沿わせて垂らした。

   「あっ!ごめんっ…冷たかった?」

はじめて体感する独特の感触に、思わず「ひゃぁっ!?」と声を上擦らせると、
ツッキーは咄嗟に拭おうと指を滑らせ、その動きに俺は潤んだ声を枕に漏らしてしまった。
自分でも驚くような艶っぽさに、ゴクリ…と唾を飲み込む音が聞こえてきた。


   「触っても、いいよね?」

正直、ココを触られる『感触そのもの』がどうか?っていうのは、まだイマイチわかんない。
ぬるぬるして、キュっとして…まぁ、想像してたよりはヤじゃないかも?程度の感想だ。

   (それでも、声が、漏れちゃうのは…っんん)

こんな格好を見られ、こんな場所を弄られ、こんな俺と繋がるのが夢だと言わんばかりに。
それら全部を『ツッキーにされてる』から、溶けるぐらい熱いってことだけは…わかった。

   (大好きな人と、触れ合える、喜び…っ)

左手のツッキーが俺のナカで奏でる、くちゅくちゅ…と絡み滴る音に合わせて、
右手の俺も同じリズムで『ただし君』を擦り上げ、しゅるしゅる…衣摺れ音で伴奏を続ける。

   (もし、右手もツッキーだったら…ぁあっ!)

そう考えた瞬間、右手の中の熱がドクッ!と跳ね、俺のナカの左指をギュッ!と締め付けた。
ココってこんなにも、ココロとキモチイイに連動して、ツッキーに思いを伝えちゃうんだ…


   「凄い…きもち、ヨさそう…だねっ」

   『ナニ』するか?じゃないんだ。
   『誰と』するか?の方が、重要。
   愛しい人と共に、奏で合うから…

   (二人で一緒に、きもちヨく、なりたい…っ)

   あぁ、もぅ…はやく。
   お願いだから、もう…
   ツッキー、俺の隣に…
   ココに、入ってキて!

「俺、もう…待てないよっ!!」



「ゴメン山口…お待たせっ!!」



*****



「…え?」


あれ…?ここは…???
頬に当たる、ふにふには…山口のお尻?
いや、違う…これは、僕の部屋の…僕の枕だ。

ゆっくり身体を起こそうと肘を付くと、右手にスマホ、左手に…あ、トロ~リなローション。
えーっと、僕は、黒尾さんと飲んで飲まれて、全部出し尽くし、これから更にダす気満々で…
そうだ、風呂と水分補給と事前準備を済ませ、いざ!山口の部屋へ…の前に、
グッズを自室に取りに行きがてら最後のハウツー確認(及び勇気振り絞り)してたはず…???

   (ままままっ…まさかっ!!!)

目を凝らしてスマホを見ると、入浴前から…いいいっ、一時間半も経ってるっ!!?
これは、山口が最大限待ってくれそうなタイムリミットを、30分もオーバー!
僕は、人生で一番してはならない時に、寝落ちによる大遅刻をしてしまった…ってこと!?

   さっきのは、全部…僕が見ていた、夢!?
   いや、これからが…悪夢の、はじまり!?


自らの大失態に、泣きたくなってくる。
僕はこのまま、隣へ…山口の所に行っても、いいのだろうか?
いや、そもそも…激怒した山口が、隣の部屋(と、山口のナカ)に、僕をイれてくれるのか?

   (隣に行くのも…怖いっ!)

…って、悠長にビビったり怯んだり悩んだり考えたりするヒマは、1秒たりとも残ってない。
ソッコーで山口の所に馳せ参じ、誠心誠意を込めて謝罪…思いの丈を包み隠さず晒すのみ!!

迷いを断ち切り、二人で夢を叶える覚悟を示すため、僕は自らを包むモノを全て脱ぎ捨て、
山口を護るためのモノだけを両手にしっかり握りしめて、隣の部屋へと全力で駆け込んだ。


「ゴメン山口!もう…待ったナシだからっ!」
「ん…?つっ、きー?おはよ…ぅえぇっ!?」




- 月山編・完 -




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ドリーマーへ30題 『蛇足.ドリーマー』

お題は『確かに恋だった』様よりお借り致しました。



2020/07/04

 

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